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始まり

 異世界転移物です。


 暖かく見守っていただけると嬉しいです。

 一人でできることは、それほど多くない。だが、四人は、四人が揃えばほとんどの事は、可能だろうと今は思っている。


 何のきっかけも、説明もなく、ある日突然この世界に四人が連れてこられたのは、もう一年も前のことになる。だが、この世界に四人を連れてきた王やその取り巻きは、すでにこの世にはいないのだ。


「ずいぶんと予定が狂ったな」


 四人のリーダーである大輔が、そう言うと他の三人も頷いた。


「まったくだね。せっかくここまで色々と隠してきたのに、その相手がもういないとはね」


 参謀役の君人が、ため息混じりに言う。


「でも、結局これってチャンスじゃないの?」


 みずきが、手をあげてそう言った。


「建国のチャンスだよね」


 最後に和美が、みずきに賛同する。確かに四人がこの世界に来て今日まで色々と隠してきたのは、自分達をこの世界に召還したモラール王国から独立するチャンスをうかがうためだ。

 様々な情報を把握し、有利に事を運ぶには、どうしてもその時間が必要だった。だが、ようやく準備に目処が立ったとき、モラール王国は、他国に侵攻されてあっさりと敗北し、イアリスから消えたのだ。

 おそらく王達は、捕らえられたか、殺された事だろうが、四人にとっては、もうどうでもよいことだ。


 一年前、4人は普通に高校に通う3年生だった。だが、ある日突然、この異世界であるイアリスに召喚されこちらにやってきた。

 召喚術を行使したのは、モラール王国の王やその取り巻き達だが、聞けばこのイアリスでは、多くの国がその召喚術を使い、この世界に様々な場所から異世界人を呼び出していると言う。


 幸い4人は、奴隷にされたり、脅されたりする事はなかったが、監視をつけられ半ば幽閉状態となっていたのだ。大輔達は、他の国の間者に見つからないように王都から遠い辺境の村に連れていかれ、そこで監視付きの生活を送るように指示された。


 モラール王達が、望んだのは、異世界の知識や技術だった。他の国で、この世界にない技術を召喚した異世界人から得た事で、国が発展したと聞いたモラール王が、自国も負けれてはおられんと召喚術に踏み切ったのがそもそもの始まりだ。


「まあ。あまり頭の良い人達じゃなくて助かったよ。もし、人質を取られたりしていたら危険な知識も教えなければいけなかったかもしれないしね」


 君人が、そう言うと皆も頷く。他国に追随したモラールの国王達は、そこまで考えていたわけではないのだ。


「さて、それじゃあ。俺達【自由な牢獄】のメンバーとしては、今後の事を決めたいと思う。これまで秘匿してきたジョブの事も、もう隠す必要はないかもしれない」


 自由な牢獄と言うのは、4人が作ったこの世界の組織の事だ。元の世界に帰還する事はできないが、この世界では自由に生きようと言う意味でその名をつけた。

 また、ジョブと言うのは、このイアリスと言う世界では、当たり前の事なのだが、18歳までに神の祝福を受け、1つだけジョブを得る事ができる。ジョブは、生涯1つしか得る事ができないし、自分でそのジョブを選ぶ事はできないが、その得られるジョブによって人生が大きく変わるのだ。この世界では、他者のジョブを知る手段はなく、自己申告するしか方法はない。そして、他者のジョブを聞く事は、マナー的にタブーなのだ。これは、過去に王のジョブが「農夫」だったことがあり、それを隠す意図があったからだと4人は聞いている。


伊藤君人いとうきみひと】のジョブは、四天王暗黒軍師となっている。この世界に来て、ジョブがあると言う説明を受けた時には、軍師と言うジョブだったのだが、大輔の四天王になった時にジョブが変化した。ジョブが変わる事はほとんどないと聞いていたが、こうしたイレギュラーもあるようだ。


田原たはらみずき】のジョブは、四天王剣姫となっている。この世界に来た時は、剣聖と言うジョブだったが、君人同様に四天王となり変化した。


近藤和美こんどうかずみ】のジョブは、四天王錬金術師。この世界に来た時は、錬金術士だったが、やはり四天王となったときに変化した。


 そして、【品田大輔しなだだいすけ】のジョブは、ラスボス。彼のジョブは、少々ぶっとんでいて、多くの異色のスキルや魔法を使える。そのスキルの1つに四天王の選定と言うものがあり、3人を四天王とする事で大きく能力をあげている。四天王とする事で、3人は、大輔の配下扱いとなるが、転移魔法の利用や異空間操作と呼ばれる物を出し入れする魔法の利用が可能となった。


 モラール王達は、4人の異常なジョブを最後まで知る事なく消えていった。この世界ではあまり珍しいジョブがいない事と異世界人がそうした珍しいジョブを持つと言う情報をモラールの王達は、持っていなかったのだ。国民の大半が、剣士や魔法士と呼ばれるジョブや農夫や漁師、商人などとなっており、珍しいジョブがある事は知っていてもまさか異世界人が、そのようなジョブを持つとは考えもしなかったのだ。


 大輔達のジョブは、この国の住人からすれば、かなり異常なものだ。このイアリスと言う世界には、魔王や勇者もいると聞いているが、そんな者は、数百年に1度くらいしか現れない伝説の存在だ。

 だから4人は、自分たちのその力を使ってモラール王国から独立し、自分達の国を作るつもりでいた。


「モラールの王国は、今どうなっているの?」


 みずきが、そう聞くと君人が答える。役割で言うと君人は、ジョブ通り軍師なのだ。


「僕の使い魔が、確認したところ。すでにジルバルダ王国の兵士が、王都を制圧しているようだね。すでに周囲の街なんかもジルバルダ軍によって攻め落とされたりしているようだし、降伏する村なんかも多いようだよ」


 モラール王国は、中規模の国家だったが、さらに大きなジルバルダが戦争を始めれば、こうなる可能性はあったのだ。イアリスには、多くの種族が住み大小様々な国家が群雄割拠している。


「マトレ村としては、どうするの?」


 和美が、聞く。


「そのマトレ村だけどさ。もうモラール王国じゃないから、ついでに名前も変えようと思う。俺としては、国名も決めた上でジルバルダと対峙したいんだ。国の名前だけど、何か良い名前はあるか?」


「そうだね。威厳のある名前が良いかな。品田魔王国とかは?」


「え~。どっちかって言うとかわいい名前の方が良くない? シルバリア国とか」


 君人や和美が、提案するがどちらもピンと来ない。


「自由な牢獄、イアリス……。ちょっともじって【イアフリード】なんてのはどう?」


 みずきが、照れながら言う。


「あっ何か良いかもな。俺、イアフリードでいいな」


 大輔が、みずきの案に乗ると君人も和美も賛成する。


「それじゃあ。俺達の国は、イアフリードだな。首都となるこの村は、マリードってつけても良いか?」


 一応自由な牢獄のリーダーである大輔は、このイアフリードの王となる予定だ。3人に、異論はなく国家の名前と首都名が決まった。


「おそらくもう少ししたら、王都なんかからジルバルダ軍がここにも来るだろう。それまでに準備しないといけないね」


「そうだな。それじゃさっそくだが、建国の始まりだ」



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