1:プロローグ
初投稿&初作品です。
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夢を見た。
君と2人で街を歩いている。
お互い制服ということはきっと学校の帰り道だろう。
街には夕方だというのに人があまりおらず、静かな雰囲気が流れている。
君は俺の半歩先を歩いていて、こちらから顔は見えない。
「今日も暑かったね〜。」
手で顔を扇ぎながら君が振り返らずに後ろの俺に話しかける。
「そうだな…しんどかった…」
額の汗を拭いながら俺もそれに答える。
「明日はもっと暑いらしいよ〜。本格的に夏になってきたね。」
「これより暑くなるのか…?家から出たくなくなるな。」
「まったくだよね〜。やんなっちゃうよ〜。」
こんな感じのたわいのない話をだらだらと続けながらもゆっくりと、しかし着実に家に向かって歩いていく。
「あ、そういえば期末試験もうすぐだね!試験範囲って全教科もう発表されてた?」
街の中を進み住宅街へと入っていく道の途中で君が突然思い出したように俺に聞いた。
「まだ数学と英語だけだったと思うぞ。歴史は明後日とか先生が言ってた気がする。」
「そっか。じゃ、まだ勉強に本腰入れなくても大丈夫だね♩」
君が嬉しそうに返す。
「余裕かまして失敗すんなよ〜。」
「あたしは誰かさんみたいなヘマはしないもんね〜。」
「う」
誰かさんとは中間テストで盛大に失敗した俺のことを言ってるとすぐにわかった。言葉に詰まる。
「まあまた失敗してもあたしとあいつで教えてあげないこともないから心配しなくてもいいよ〜?」
後ろからでは見えないがきっと君は悪い顔でニヤニヤしてるんだろう。そんな言い方だ。
「失敗する前提で話すのやめろ…」
「あはは!それもそうだね!ごめんごめん!」
明るく、そして楽しそうに笑いながら君が言う。
「・・・っと、そんなこと言ってるうちにもうここまで来ちゃったか。」
住宅街に入ってから真っ直ぐに進んで、いつの間にか目の前は俺達がいつも別れる十字路まで来ていた。
ここからはお互い左右別方向だ。
「じゃ、また明日な。」
俺が先に左の道へと進もうとしたとき。
「あのさ。」と君が俺の背中に声をかけた。
不思議そうに俺が振り返ると君はこっちを向いて立ち止まっていた。
君の後ろで沈んでいく夕日のせいか、君の表情は俯いているような、見方によれば泣いているような、そんな風だった。
「どうかしたか?」と夕日の光に目を細めながら俺が尋ねる。
すると君は顔を上げて
「ーーーーーーーーーー」、
儚げに、そして切なげに、何かを俺に言った。
聞こえなかったのか聞きたくなかったのか、その言葉はその声は、俺に届くことはなかった。
ただ届かなかったが、君が何かを言ったということは、その何かを俺に伝えようとしたということは、何故かわかった。わかってしまった。
それがきっと大事なことだということも、わかった。
ただそのときの君の表情だけが、俺の脳裏から離れることはなかった。
「ーーーえ」
ぼーっとしていたわけでも他のことを考えていたわけでもない。
ただその言葉だけが俺には何故か届かず、そしてどう答えていいかわからず、思わず口から疑問の音が漏れる。
そんな俺の反応を見てどう思ったのか、納得したのかあるいは失望したのか。
「なんでもない!!じゃあね!また明日!」と君は右の道へと駆けていく。
離れていく君の背中に待ってくれを叫ぶこともできず、届かないとわかっているのにこの手を伸ばすことしかできなかった。