いざ異世界へ2
そんな会話の中、新しい命の意識が浮上した。
ここはどこだろうか。
ゆらゆら、ゆらゆらとまるで、水に揺られているような心地よさである。それに、トクン、トクン、と心落ち着く子守歌のような安心感。
真っ暗で目を開けてるかもわからず、わかるのは水のようなとこに揺られてる感覚。また、朗らかに話しているであろう会話である。
手足のうち足しか動かなかったので足を動かしてみる。すぐ何かにぶつかりここが狭い場所だということがわかった。
頭が覚醒してきて、初めてここが母親のお腹の中だと理解するさっきまで神様のところにいたはずだ。それと共に自分の過去も全て把握した優希は絶望感に打ちひしがれていた。
記憶を封印されていない。
自分は、赤ん坊のときのあの羞恥にたえなくてはいけない。
せめて。せめて、2、3歳までは封印しといて欲しかったと。神様のおちゃめ心に遊び心を理解し、考えることに疲れた優希はまた目を閉じ眠りにつく。
一週間後。
何度か寝起きを繰り返し、多分もうすぐ生まれるのだろうと直感した。
段々と下がっていき、入り口に差し掛かる瞬間激痛が走る。
いぃっったぁああ!
頭が割れる。かち割れる。どうしよう、生まれたときに頭が凹んでたら。
もう随分と泣いてないけど、久しぶりに泣きそうになった。
本当に余裕のない激痛に襲われながらもついに頭が通過した。その後は早かった。
無事生まれたときには、激痛からの解放と生まれたことによる安堵感に泣いてしまった。
「旦那様、奥様。元気な男の子がお生まれになりました」
屋敷中喜びに包まれた。
ライト家はこの日、母子共に無事の中、一人の男の子が誕生した。
初めての子と男の子の誕生ということで、大きくなったら当主候補となるであろう。
「この子は、フィーベルト!フィーベルト・ライトだ!!」
生まれてすぐにタオルに包まれ、父親のところに向かった・・・らしい。
らしい、と言ったのは全く目が見えないからだ。今まで暗く、明かりのない場所にいたのだから目が見えない場所にいたのだから当然と言えば当然なのだが。
地球で生きていたときは視力は人よりも良く、2.5以上だった。さすがに不安である。
お腹の中でも聞こえた父と母の声。無事に産んでくれた妻を労わり称えるような声と、安心し疲れたのか大分枯れている声。
神様からもらった知識のおかげで苦労なく会話が理解できた。とてもありがたい。
父と母は生まれた俺に無事生まれてくれてありがとうといっぱい話しかけてくれた。
両親はとても優しく聡明そうな声に改めて安心した。
とりあえず、子供のうちは子供らしくしよう。俺から僕に矯正しよう。