召喚されました2
「剣と魔法の世界に行きたいです!!是非お願いします」
「あはは。ここに来て初めて興奮してるね。その世界で決まりかな。普段なら世界の均衡が崩れてしまうから能力は贈ったりしないんだけどね。君には是非とももらって欲しい。能力は・・・何がいいかな?」
何がいいかな?とか言われても何にも思いつかない。剣と魔法の世界といったらギルドだから全く闘えないのも困る。もふもふできないのも困る。
目の前で傷ついている人がいたら助けたいと思ってしまう。
見たことのない世界がどれだけの危険があるのかも予想できない。
うーん。と悩んでいるとそれを見ていた神が提案してくれた。
「まずは、世界の知識だね。普通なら自我を形成するうちに世界に馴染むものだけど、君は元々地球に生まれた。言葉や文字を習得するには、自我を持つ君はあまりにも困難だからね。君の性格だと治癒の属性は必須かな。あとは便利な空間属性を贈ろう。君の魂が持つ魔力、属性、能力は君が努力するたびに開花する」
魂が持つ?魂が魔力を持ってたら地球でも魔法は使えたのか?霊視とか超能力の類だろうか。そんなのは一切無かった。
「生まれてこのかた、魔力や能力を持ってると感じたためしがありません。俺にも何か備わっているのでしょうか」
すると神様は俺の額に手を翳し、どこか楽しそうで、なにかを思案するように頷いた。これは・・・とつぶやいた気がする。
「人は輪廻の輪に加わり浄化されていくと新たな世界へと廻る。それを繰り返すことによって魂には様々な物が刻まれていく。」
俺が自分の素質に不安に思ったの感じ取ったのか魂について説明してくれた。
「霊視や超能力の類は魂に備わる魔力を変換し使っている。君は武道に長けていたね。君が使う覇気などもそれと変わらない。魔法が無い世界でそれができる君にも魔法の素質が充分にある。まあ、向こうに行けば魔力を使わずとも覇気は容易いだろう。世界にはそれぞれ向き不向きがあるからね」
「それに君は、竹林で何かを感じとっていただろう。」
確かにあの庭は、ここに似て、心が浄化されるような空気を持っていた。幼い頃から慣れ親しんだ場所だし、自然に囲まれていたからかと思っていたが。
「ふふ。あそこには地神が住んでいたんだ。努力を怠らず、他者に優しい君をあそこの神は気にいっていた。もちろん私もね。君が産まれ直しても、努力を怠ることはきっとないだろう」
え!待った。このまま転生じゃないのか?赤ん坊からスタートするのは全く考えてなかった。いきなりの事実に焦る。
「もしかして、俺はこのまま転生ではなく、赤ん坊からですか?その時記憶とかは・・・」
「君には新しく家族を作ってあげたい。そのためには赤ん坊からのスタートになるね。記憶は・・・どうかな?」
ふふっ、とおちゃめな顔をした。この神様。最初の慈愛に満ちた神様からの印象とは、打って変わった表情だ。
でも、新しい家族は嬉しい。地球に残した家族はとても大切な存在だ。それは今でも変わらない。けれど、俺は一人では生きていけないから・・・
「大丈夫だよ。君には世界を楽しんで欲しい。他者に優しく、周りから愛される子だ。大丈夫」
俺に近づくとそっと後ろに手を回し、ぽんぽんと頭を撫でる。優しい声音に安心する。声に出さずとも汲み取ってくれた。
体の力みも取れ、なんとか落ち着くことができた。
「よし。落ち着いたね。君とはまだ話していたいけどそろそろね。落ち着いたらまた遊びに来て欲しい。その時は念話するよ。次、君の行く世界はリュミエール(光)。存分に楽しんでおいで!」
足元がサークル状に光ると神様がその中に入ってきた。
頭を手で包み額に顔を近づける。
ちゅっ
「私は君を愛している。君に加護を・・・」
段々と意識が薄れていく。でもこれだけは言いたい。
「神様!ありがとうございました!」
最後の言葉は聞こえていたかわからない。
優希君。いってらっしゃい。