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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第1章「ザ・デッドアイ」

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「女神の誕生」中編

「ママっちょっと出掛けてくる」

「どこ行くの?」

「お父さんのとこ」

ソファーに座ってテレビを観ていたレーティはふとした素の表情を見せ、ランディと顔を見合わせる。

「すぐ戻ってくるから」

「分かったわ」

――少し前。

「(何だ、いい人じゃん)」

「どうしたんですか?もしかしてザ・デッドアイの事でノイルに報告しに来たとか」

「いや、それはアテナから言うはずだ。私は私の任務の為に来たのだ」

「そうですか」

「でもお兄様、ザ・デッドアイの人間に会うなら、きっとノイルが手配してくれますよ」

「あの、ザ・デッドアイの人間に、会うって」

「アマバラにあるザ・デッドアイ拠点に詳しい人間に会えればと思ってこちらに来たのだ」

「そう、ですか」

ルアはヘルと顔を見合わせ、そんな素振りをアルテミスは気に掛ける。

「ノイル以外に心当たりでもあるのですか?」

「実は・・・私のお父さん、ザ・デッドアイを作った人だったんです」

「何だと。どこに居る」

「案内しますけど、この前、アテナさんに言った、ザ・デッドアイとは戦わないって、本当ですか?」

「あぁ。心配するな、お前の父とは話がしたいだけだ」

プリマベーラは持たず、ルアは母に一言断りを入れると玄関先に戻り、ヘルに跨がった。同じ首都にはあるが、家からニルヴァーナまでには1時間以上もかかる。ルアがそんな説明をするとアポロンは鎧を出現させ、アルテミスをお姫さま抱っこした。

背中から光の翼を噴出させ、アポロンは街を眼下にしていく。その隣には、変身した守護獣。アポロンは横目に、そんなヘルを見ていた。普通、守護獣はそもそも精霊使いにはならない。何故ならそもそも動物は精霊と話が出来、契約しなくても僅かに霊力を借りれるからだ。しかし敢えて、改めて契約した場合、まさかこんな変身が出来るようになるとは。そうアポロンはジロジロとヘルを見ていた。

ロータリーに降り立つアポロンとヘル。ニルヴァーナの門前には、そんな者達を何者だと見物するマスコミやら。アポロンは鎧を納め、変身を解いたヘルの首筋を撫でながら建物に入っていくルアについていく。

「お兄様、こんな庭園、プライトリアでも作って下さい。きっと精霊も沢山来ます」

「そうか、ならやってみるか」

「あ、お父さぁーん」

父に駆け寄っていくルアに、静かについていくアポロン達。ユピテルを目に留め、アポロンは眉間を寄せた。――しかしザ・デッドアイを作ったとあらば、考えてみれば不思議ではないのか?。

「プライトリアの人だよ。ザ・デッドアイの人と話したいみたいで、連れてきたの」

いつもそうなのかと第一印象で思えてしまうような、恐れ知らずそうな面持ちの男。「そうか」と眉を上げて、椅子に座っていた男は立ち上がり、こちらに顔を向けた。

「どうも、俺はユピテル」

「私はアポロン。妹のアルテミスだ」

「アルテミスさんは、面識はありますよ。娘のルアと、ヘルだ。それで、ご用件は何かな?」

「ザ・デッドアイを作ったというのは本当なのか?」

「えぇ。人類を、進化させる為、色々と研究していてね」

「何故アマバラに」

「まぁ偶然というか、奇跡というか、こっちとあっちのホールが、繋がっちゃって。それでアマバラにも拠点をね」

「アマテラス姫とザ・デッドアイの関係は」

「んー、無いかな」

「何だと?アマテラス姫は、ザ・デッドアイの人間を使ってプライトリアの霊器を奪わせたのだ」

「それは、恐らくアマテラスさんが、ザ・デッドアイの人をたらし込んだのかな。アマテラスさんにも目的があったようだし」

「ギガスの長は、今どうしている」

「大人しく過ごしているよ。ベルデルートくん、ああ、1人のギガスが説得したからね」

どことなく詰め寄るような問いにもユピテルは粛々と、しかし柔らかい表情で応えてくる。アポロンは内心で、警戒と疑念を沸かせていき、アルテミスはふと、ロドニオスのザ・デッドアイ拠点で会ったギガスを思い出していた。

「何故、ギガスの長の事を、あなたが知っているんだ?アマバラの人間から聞いたのか?」

「長の事はベルデルートくんから聞いたんだ。俺が偶然出会ったベルデルートくんに、ギガスのDNAが欲しいと頼んだら、条件としてギガスを創ってくれという事でね」

「ギガスを、創るだと?まさかそれは・・・ギガスの、母か?」

「あぁ。女のギガスを創るまでは、長は大人しくしているはずだよ」

「それが出来たら、長はアマバラを滅ぼすと?」

「そう、かもね」

「なるほど、そうか」

顎に指を置き、目線を無意識に流していくアポロンを、アルテミスはただ眺め、ルアとヘルはさながら刑事ドラマの刑事みたいな動きだなぁと眺めていく。

「君の、目的は何だい?」

「プライトリアとアマバラの停戦だ。その為に、もしかしたらギガスの長を味方に付ければ或いはと思ったのだ」

「ギガスの長を味方に付けてどうするんだい?」

「ギガスの長は、アマバラを怨んでいる。もしギガスの長や一族をプライトリアで受け入れ、怒りを抑えられれば、アマバラはプライトリアに借りが出来る」

「ほー、随分と良心的な国なんだね、プライトリアって」

「だがその為に先ず、ギガスの長と対話したい。しかし私はアマバラが敵対する国の者で、迂闊に国には入れない。だがもし、アマバラの城内のザ・デッドアイ拠点へ直接行けるホールでもあればと思って、こちらに来たのだ」

「そうだったのかぁ。いやぁあはは、アポロンくん、君は運が良いね」

「ん?」

「アマバラの蔵のホールはね、こっちの警察に見つからないように、1つのホールからしか行けないようにしてる。そしてそのホールは、ここの地下にある」

「何だと!」

「君になら、地下のホール、使わせてあげるよ」

「本当か!おお、礼を言う」

「うん。じゃあついて来てよ」

「・・・1つ聞いていいか」

「うん」

「ハイクラスの精霊と、契約しているのか?」

振り向いたユピテルは、微笑んだ。その微笑みを前にアルテミスは静かに驚き、ルアとヘルは首を傾げる。

「ただの興味本位さ、俺は学者だからね」

「え、お父さん、魔法使いなの!?」

「ああ、言ってなかったね」

「そう、だったんだ。ねぇお父さんの友達、どんな精霊?」

「サハギーくん」

「(うわぁ!)」

突如ユピテルの隣に現れた精霊。皆は足を止め、アルテミスは微笑み、アポロンは頷き、ヘルは思わずピョンと跳ねた。そしてルアは、固まっていた。――精霊って、見えないはずじゃ。

「ハイクラスの精霊と、まして精霊など知らなかった者が簡単に契約出来るとは」

「およおよ、ハイクラスだからって、みんなバスみたいな性格じゃないよぉ」

「あ?」

サハギーとバスが見つめ合う。角は生えてるが普通の人間のような見た目のバスと、足を地面に着けておらず、尻尾の先っぽにある平たい部分だけで体を支えている、ドラゴンのような見た目のサハギー。しかしドラゴンとは言え眼鏡を掛け、まるでどこかの博士かのように白衣を1枚羽織っている。

「お前、育ちは?」

「ウラはエルフヘイムだよ。察するに、じゃあバスはキャニオン辺りかな」

「まあな」

「・・・お父さん」

「ん?」

「見えないんじゃないの?精霊って」

「精霊にはクラスがあってね、ハイクラスの精霊は、人間にも自分の姿を見せられるようになるそうだよ」

「そ、そう、なんだ」

声紋認証で開ける扉の先には、ホールがあった。ホールを見つめ、ルアはふと、これまでの事を振り返る。全部、お父さんの思惑の中での事だった。――でも私達の出発点であるママは生き返った。何だかまるで、長い夢でも見ていたかのよう。

アポロンとアルテミスがホールの向こうへ消え、ホールの電源が落とされた後、ふと訪れた静寂の中、ルアは父を見上げた。エントランスパークに戻ると、そこには魔獣の少女の2人が居た。ニルヴァーナの女性研究員がユピテルを呼ぶ。

「チュクナに、ジュリだね。俺はユピテル。先ずはお礼を言うよ。ベルデルートくんの願いを聞いてくれて、ありがとう」

膝を曲げて腰を落とし、目線を合わせながらユピテルは2人の少女に微笑んでみせる。2人の少女は特に嫌そうでも寂しそうでもなく、笑顔でもなく落ち着いていた。

「おっきい犬だね」

「(ボクはヘルだよ。ルーナの家族で、こっちはルーナのお姉ちゃんのルア)」

ジュリの問いにヘルが応えると2人は大人しく驚く。

「ルーナ元気?」

「うん、元気だよ。お父さん、何でここに?」

「兵器研究施設は魔獣の少女の管理を辞めたんだ。世間からあれだけ叩かれたしね。そもそも魔獣の少女は戦う為でも何でもなく、ベルデルートくんの為のプロジェクトなんだ。とは言えそれだって強制じゃない。人間に戻りたければそうするつもりだった」

「(あのおじさんの為ってどういう事?)」

「つまり、精霊になって貰って、子供を産んで貰って、種族が絶えないようにして貰うんだ」

「(え、ルーナも?)」

「まぁ、本人が望めばだけどね。でもそうなったって永遠の別れって訳じゃない。むしろ逆に、精霊になったら魔法が使えるし寿命だって伸びるし、ホールを使わなくたって異世界を行き来出来る」

「(え、そんなに!?)」

ヘルの驚きと共に2人も驚き、その表情からは若干の嬉しさも伺えた。2人が微笑んだのは初めてだと、ルアはふと気に留める。そんな時にユピテルは玄関の方へと手を挙げてみせ、ルアは振り返る。

「カルハン。保釈されたんだね」

「いや、もう大方、不起訴だろう」

「そうだね」

蔵の中、スサノオを呼びに行ったザ・デッドアイの人間が戻ってくるのを、アポロンとアルテミスは待っていた。やがてスサノオがやって来ると、それからアポロンはアルテミスと共にアマテラスを前にした。

「アポロン様、お怒りにならないの?」

「同情しているのだ」

〈要らぬ同情だ。元より人間共に理解出来る事ではない〉

「そうかも知れない。だが、その怒り、プライトリアで、受け入れさせては貰えないだろうか」

〈何だと?〉

「プライトリアなら、ギガスを受け入れる。ギガスが傷付けられないよう法律だって作る」

〈・・・断る〉

「何故だ、いや、人間を信用出来ないというのは分かる。だがプライトリアの伝統は、精霊を尊重する事だ。子供でさえ、精霊を蔑むような事はしない」

〈フンッ城で生まれ育った者が、平民の心など分からん。ギガスが何故アマバラへの襲撃を始めたか、それは王族を恨む、貧困を骨身に染み込ませた人間によって、無理矢理そう強いられたからだ。しかし下克上は無駄に終わり、ギガスは反逆者の片棒を担いだ種として、アマバラに滅ぼされた〉

アマテラスは冷ややかに見つめる。言葉を失うアポロンや、苦虫を噛むような顔で頭を掻くスサノオ、悲しそうに目線を伏すツクヨミとアルテミスを。

〈アマバラの人間ですらそう、自らの浅薄さに何も言えないだろう。プライトリアの王子よ、この怨念を忘れて他の地に移り住めと、そんな馬鹿な話があると思うのか?〉

「・・・なら、決闘はどうだ」

〈何だと?〉

「私が負けたら、もう関与しない。その代わり、私が勝ったら、プライトリアで平穏に暮らして貰う」

その訪れた沈黙に、アマテラスさえも自身の胸元に目線を落とす。

〈・・・解せないな。お前はそもそも、アマバラの人間ではないだろ〉

「現在プライトリアとアマバラは戦争している。ギガスをプライトリアが受け入れればアマバラはプライトリアに借りが出来、停戦の呼びかけに応じざるを得ない。そういう手筈だ」

「言っとくけどよ、アマバラの兵を動かしてんのはワシらじゃない。ドウガソンっつう守護大名だ」

「守護大名とは」

「政治を取り仕切る総指揮官です」

アマテラスがそう応えると、そのふとした親切心にアポロンは思わずアマテラスに目線を垂れる。

「それは、貴女達では、意見を通せないという事なのか?」

「えぇ。ドウガソン様はお父様もお祖父様も政治をお指揮していたお方で、ドウガソン様も国民からのご支持が厚いのですわ」

「けどよ、やれツクヨミはまだ子供だとか、ワシもまだ青いとか、姉貴にさえ子供扱いする、ただの頑固ジジイよ。ギガスの事があるからって言う事聞くとは思えないんだなぁ」

〈プライトリアの王子よ。我がアマバラを滅ぼす事は、お前達には利益になるはずだが〉

「損得の前に、精霊を尊ぶ、骨身に染みたただの伝統だ」

〈フンッ。・・・そんなに死にたいなら決闘でも何でもしてやろう〉

「ギガスの母なる存在というのは、いつやって来るのですか」

ふとアルテミスの横顔を伺うアポロン。今まで見た事のない真剣な表情をしている妹に、アポロンはただ目を奪われていた。ハッキリと見開いたその目つき、緊張しているのか、いやどこか怒りを宿しているようにも見える。

〈後は転生の儀式だけと言っていた。もう間もなくだろう〉

「ギガスの半身はどうなるのですか」

〈蒔いた種に花が咲いたとしても、どうするもない。摘み取られるとでも思ったのか?〉

「いえ」

〈ギガスの一族として、共に暮らし、ギガスを繁栄させればいい、お前も〉

「何の話をしている」

〈プライトリアの王子よ。知らなかったのか?。アルテミスは、アマテラスと同じギガスの半身だ〉

振り向き、生唾を飲み込むアポロン。上目遣いで、申し訳なさそうに顔を合わせてくるアルテミス。

〈我の封印を解かせる為の種を蒔いた地はアマバラだけではない。万が一アマテラスがアマバラによって滅されたとしても、アルテミスによってギガスは残り続ける。しかしベルデルートの計画は幸運だった。アマバラを滅ぼした後、アマバラは半身ではないギガスの国になる〉

「いや、ギガスの国はプライトリア圏に出来るさ」

〈フンッ減らず口を〉

ベルデルートはニルヴァーナの屋上に居た。呼びかけられて、ふと振り返る。尻尾の先だけで体を支え、指を這わせるように“尻尾で歩いてきた”サハギー。

「プリンセス来たよ」

「あぁ」

歩き出すベルデルート。今でも、鮮明に思い出せる。村のあちこちから、湧き水のように鬱積していく、人間への怒り。最初は「プリンセス」が捕らえられたという知らせだった。しかし取り返そうと集められた猛者達はアマバラの城門の前で、愕然とした。虹色の光鎖で縛られ、晒されているプリンセスを前にしては誰もが手を出せなかった。それから、ギガス狩りが始まった。しかしその対象は全て、女性だった。空を飛び交う、虹色の光鎖、女性のギガスだけが縛られ、城の方へと吸い寄せられ連れ去られていく。それからそのギガス達には、2度と会う事はなかった。戦おうとした者は尽く滅され、そして最後に、長老が虹色の光鎖に襲われた。

「長老!!」

見た事もない拘束魔法。成す術なく縛られていくバルセルンク。

「人間に紛れ込み、術者から解除方法を聞き出せ!」

そして瞬く間に、バルセルンクは飛んでいった。その時にはもう女性のギガスは1人もおらず、それでも自棄でアマバラに楯突いた者は滅された。残ったギガスは今や8人。術者も死に、解除方法も分からないまま100年が過ぎた頃、出会った男ユピテル。

ベルデルートはエレベーターを降りてエントランスパークに出る。手を挙げてみせるユピテルに歩み寄りながら、ベルデルートはチュクナとジュリを目に留める。

「ベルデルートくん、プリンセス候補の準備は整ったよ」

「あぁ」

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