表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/275

「集う者達」後編

「ビュクラ、お主はウェッシュエッジを捕獲しておけ。援護はそれで十分だ」

スッとビュクラは顔を上げた。どうやらディンクルスを倒せそうにないと思ったのか、ウェッシュエッジは個室に逃げ込んでいた。

「分かりましたっ」

動き出したビュクラ。その方向を見て手下の男達がビュクラを追いかけていく中、ディンクルスとハデスは衝突した。バチンッと紺碧の電気が散っていく。一方、レイハはまた1人、男を斬り倒した。しつこく襲いかかっていく男達。巨大な尾状器官で男を1人鷲掴みしてブンブンと振り回す。ゴロゴロと転がっていく仲間など気にも留めず、男はそんなレイハに熱線を浴びせる。普通のウパーディセーサとは違って、高熱に集束したビーム。そんな攻撃を食らってしまえばレイハも動きが鈍り、それから蹴り飛ばされてしまう。

「その程度か」

素早く立ち上がるレイハ。その直後、レイハは爆笑した。男達は皆戸惑っていた。

「何だお前」

その時だった、レイハが金色のオーラを纏ったのは。気を引き締める男達。

「あんた達、ほんとバカ」

「あ?」

「蘇りし者の力、嘗めてんの?」

金色のオーラが体に吸収されるようにスッと消えれば、レイハのカラフルな全身の鎧には金色が追加された。それから思い切り剣が振り下ろされれば金色の一閃が放たれて、地面をも裂きながら駆け抜けていくそれは熊ウパーディセーサを真っ二つにした。

「な、んだと・・・」

「私もフラグ立てちゃおうかな」

「あ?」

「これが私の本気だと思うなら、嘗めてかかってきな!」

廃工場内、3階の個室にビュクラは突撃した。まるでトラックが突撃したかのように個室を破壊しながら。しかしすでにウェッシュエッジはまた奥の扉に逃げていたようで、ビュクラは更に扉を壊しながら追いかけると、そこは廃工場の非常階段だった。廃工場は1つだけではなく、小さな倉庫も合わせればその一帯の建物は全部で5つ。すでにウェッシュエッジの姿は見失っていた。だからビュクラはディンクルスが戦っている廃工場の隣に立つ、同じくらい大きな廃工場に入っていく。

「待てこら!」

「あっ」

瞬く間に5人に囲まれたビュクラ。そして1人の男がビュクラに襲いかかる。先端が“トゲ鉄球”の尾状器官に殴り飛ばされたビュクラ。それから立ち上がるとすぐに先端が大砲の尾状器官からの砲撃を受け、再び転がっていく。

「さっさと殺すぞ」

立ち上がるビュクラ。しかしもうすでに先端が剣になった尾状器官を持つ男が目の前まで迫っていた。振り下ろされる尾状器官。勝ちを確信した男は直後、体を硬直させた。何故なら間一髪で、ビュクラは男の尾状器官を掴んでいたから。そして男は吹き飛ばされた。警戒する男達。ビュクラは銅色のオーラを纏っていた。

ディンクルスは拳ではハデスを倒せないと悟った。どうやらこの生き物は、少し本気を出すに値すると。未だ無傷で動きも軽やかなハデスは、超速移動をしながら殴りかかってくる。しかしディンクルスは“感じていた”。それは電気のように走る直感と、空気中へ迸る“紺碧の道筋”。──私は、紺碧!・・・。

「はあっ!」

超速の拳を、光速で弾き返したディンクルス。それは転移ではない。例え自分が瞬間移動出来たとしても、目にも止まらない動きを見せる相手を見極める感覚はまた別の話。でも紺碧の電気と“同化すれば”周囲の状況把握も、自らの動きも、電気が走るように全てが一瞬。それから超速で攻撃を仕掛けるハデスを、ディンクルスは雷のように鋭く捌き、そして華麗に反撃していく。とはいえ、ディンクルスは思った。ハデスには“切り傷すら付かない”と。──これほどまで硬い相手は初めてだ。

「グルルル・・・」

突然喉を鳴らしたハデス。初めて生き物らしい素振りを見せた事にディンクルスは少しだけ驚く。すると何やら、ハデスは尾状器官を“無数に割いた”。まるで髪の毛のように細いものが束になっていた尾状器官。そう理解したところで、尾状器官は再び集束していき砲身だった先端は剣となった。

「ほう、妙な体だな」

そう独り言を漏らせば、ディンクルスはもう1本剣を作り出した。

銅色の衝撃波を放つビュクラ。それは普通のウパーディセーサの衝撃波とはまるで違う威力で、1人の男は凄まじく吹き飛んで壁をぶち破っていった。

「悪いけど、僕は本気を出させて貰う」

「何だって」

銅色のオーラはビュクラの体に吸収され、ビュクラの全身は一変した。それはちょっと強くなったように見えるものとかではない。ウエットスーツのように滑らかな見た目だった全身はまるで特撮ヒーローのように派手になり、4本の尾状器官の内、上段の2本は両肩に同化して砲身となり、下段の2本は脚と同化して更に強固な鎧になった。──ディンクルスさんは、そもそも“全員”とチェインしてる。そして魔法は“イメージ通り”に自分に力を与えてくれる。

「うおおおっ!」

魔力という推進力。シンプルに言えば、速く動くイメージをすれば、それが魔法として実現される。オリジナルの魔改造ウパーディセーサと言えど、ビュクラの速さには全くついていけず、それから30秒ほどで男達は皆地に伏した。ビュクラはフウッと溜め息。

「悪いけど、そもそも負けると思ってないから」

どうやらこの建物にはウェッシュエッジは居ないようだからと外に出たビュクラ。

「ビュクラ、うお、何そのフォーム」

「本気モード。レイハも終わった?」

「うん」

「じゃあウェッシュエッジ捜そう」

4本の剣が凄まじい速度で衝突していく。普通の鉄ならとっくに砕かれてる衝撃。ディンクルスの魔法の剣はまだしも、この未知のウパーディセーサの体組織が何故こんなに頑丈なのか、ディンクルスは興味を抱いていた。だが相手は言葉も通じない様子。ふと一瞬、隙を突いたディンクルスは2本の剣をハデスの腹に押し当てる。

「ディスペリオン!」

爆発する紺碧。盛大に吹き飛んだハデスはそのまま何らかの機械に激突した。バラバラと散らばる機械。しかし立ち上がったハデスは無傷だった。小さく首を傾げるディンクルス。するとハデスは2本の尾状器官を無数に割いていき、1本の太い尾状器官を形成した。その先端はバカデカい砲身だった。睨み合う2人。そして2人は衝突した。砲身を警戒してハデスの拳をかわすディンクルス。だがその保守的な動きに付け入り、ディンクルスの懐に飛び込んだハデスは素早く蹴りを繰り出す。その瞬間、電気が走るような速さで、ディンクルスは“避けられない事”を悟った。放たれた熱線。

「くっ」

2本の時と比べて何倍も威力の高い、大口径熱線。ディンクルスはそれを真正面から受け止めた。とっさに剣をクロスして紺碧の電気でガードしているが、ディンクルスはそのまま廃工場の壁を突き破っていった。目の前が真っ白の中、ディンクルスは足を踏ん張った。そして双剣に力を込め、紺碧の十字閃を放った。一瞬で熱線を切り裂いた紺碧。その直後、ハデスは自分が吹き飛んだ状況を理解出来ずにいた。渾身の熱線で相手は跡形も無く焼け死んだはず。しかし自分は予想もしない衝撃に吹き飛んでいた。

「なかなかしぶといな」

ガラクタを払い除けてハデスは起き上がる。目の前に立っていたのは、無傷のディンクルスだった。

「だが良い動きをしている」

「グルルル」

立ち上がりから殴りかかりまで、トップスピード。ハデスは本気だった。しかし気が付けば殴り飛ばされていた。ドカンと大きな機械にぶつかるハデス。全く1歩も退く事なく、ディンクルスは自分の拳を受け止め、殴り返した。理解出来なかった。今まで“普通”に戦っていたはずなのに。

「グルルルッ」

1本の尾状器官を砲身から大剣に変えたハデス。そしてまたトップスピードで斬りかかる。しかし直後、ハデスの剣は1本の剣で受け止められた。

「グッ・・・」

ハデスはふと目線を自分の懐に向ける。気が付けば、もう1本のディンクルスの剣が自分の腹を貫通していた。剣を引き抜かれると直後に回し蹴りを受けて地面に転がるハデス。──何故だ。まさか、これがこいつの本気。今まで、力の半分も出してなかったのか。

「くそっ」

コロンとガラクタが音を出して、男が思わず声を漏らす。ハデスが振り返ると、物陰に隠れていたウェッシュエッジはすでにディンクルスに背後を取られていた。首筋に当てられるように見つけられた剣を、ウェッシュエッジは恐る恐る横目で確認する。

「ハデスがお前を殺した頃に迎えに来たんだが、まさかハデスが負けるなんてな、ハハ」

ゆっくりと両手を上げるウェッシュエッジ。

「お主が作った者か?」

「勿論。ハデスは、最高傑作のウパーディセーサだ」

ゆっくり立ち上がるハデス。穴が空いたはずの腹はすでに埋められていた。

「あいつの体は、最高硬度の極細繊維で出来てる。最高硬度の金属を高密度に編み込む事でより硬度を増しているんだ。しかも生体ベースは裏取引で手に入れたシーザリアンの遺伝子を使ってるから、魔法のようなスピードも出せる。最高だろ?」

「確かに良い動きをしている。それで、もう言い残す事は無いか?」

「・・・頼む」

「ん?」

「ハデスだけは、殺さないでくれ」

レイハとビュクラが戻ってきた。2人はすでにウェッシュエッジが絶命しているのを理解し、ただ“立ち尽くす”ハデスとディンクルスに歩み寄った。

「そいつ、どうすんの?」

「・・・どうしたものか」

「え・・・さっさと始末しないと」

「グルルル」

「喋るの?」

「お主は、生きたいか?」

ハデスは首を傾げた。自分を見つめるディンクルスの眼差しには、揺るがない強さと、少しの慈愛があった。ハデスはまだ生まれてから2週間ほどしか経ってない。だから別にウェッシュエッジに思い入れもなく、ただ敗北した事、独りになった事に戸惑っていた。

「お主が望むなら、力を与えてやる」

「えー、まじですか」

「ビュクラうるさい。ディンクルスはこういう人なんだから」

「そう、ですよね」

「グルルル」

ディンクルスとハデスは見つめ合った。そしてディンクルスが小さく頷くと、ハデスは驚くように自分の体を見下ろした。それからハデスは銀色のオーラを纏った。

「ジャガーノートみたいなのがまた増えちゃった」

やがてゼーレ軍が廃工場を制圧した。その功績はディンクルスにある事も、ウェッシュエッジ一派全員の死亡も報じられた。

「グガグガ」

「グルールー」

「キュン、キュン」

ディンクルス軍の城がある公園。その片隅で“3匹”が何やら喋っている。そんな状況をブレンは微笑ましく、そして若干怠そうに眺めていた。そんな時にデークスが、ちょうど通り掛かったハンバルスに声をかける。

「新入りだとさ。お前も覚えとけよ?」

ロボットのようにスッとブレンに顔を向けてから、ハンバルスはハデスをまじまじと見つめる。

「キュン」

そう言うとハンバルスは去っていった。“自分の名前を言っただけ”。そんなハンバルスの後ろ姿に、ブレンは思わず笑いを吹き出した。──人見知りだっけ?あいつ。

「キュンキュン」

「ま、あいつの生き甲斐はパトロールだからな」

「グルー」

「ん、いや、デークスとハンバルスと、さっき見たトールは金銀銅の力は無いんだ」

「グルー?」

「何でかは分からないけど。多分、蘇りし者の力だからじゃないかな?」

城内のとある一部屋。そこは普通の家で考えればリビングのような大広間。そこのソファーで、レイハはスマホを見ていた。当然、自分達のニュースを確認していた。

「初仕事上手くいった?」

声をかけてきたのはペネ。

「まあね。でも私達が強すぎて全然手応えなかったけどね」

「そうなんだ」

「でも楽しいよ。隠れてる奴見つけてやっつけるの」

「ディンクルスさんが良い人で良かったね。本人は正義じゃないなんて言ってるけど、照れ臭いのかな」

「へへ、どうかな。あっ」

「ん?」

「アミセルのレストラン。正式に開店するらしいよ」

「ほんと?やったぁ」

「行ったんだ」

「うん!すごく美味しかったもん。いつ?」

「1ヶ月後みたいだよ。スポンサーが決まったんだって」

ダーラ、アミセルの居る古城のある街アンエイの、とある建物。そこはチェーン店のレストランが閉店してから数週間の空き店舗。そこにやって来たのはアミセルとクラウン、女性シェフのエレモナ、そしてカースベルクとファティマ。まだ内装工事も始まってないまっさらな状態のところに、やがてやって来たのは普通の内装業者の人達。出迎えるアミセル。

「来たか」

内装業者の現場責任者との挨拶も済ませればそれから工事が始まり、アミセルは現場責任者との打ち合わせを詰めていく。

「何か私もワクワクしてきた」

内装工事中の空き店舗を外から眺めながら、そうファティマが口を開く。

「まさかオレがレストランもやるなんてなぁ」

──昨日。

ふとファティマは、アミセルの居る古城を訪ねた。王座にアミセルの姿はなく、クラウンに言われてキッチンに行けば、アミセルは料理を味見していた。

「ん?どうした」

シーザーに会った事を話す間にも、アミセルは相槌だけ打ちながら料理の味見に集中していた。

「──シーザーは、私が幸運を運んできたって言ってたけど、あなたもそう思う?」

「まぁ、確かに。お前がシーザーの果実を持ってきた事が全ての始まりと言えばそうだな。お前が破滅の炎だとしても、不幸を運んでくるという意味ではないのかもな」

「それなら、私は、何を破滅させるのかしら」

「あたしは忙しいんだ。そんな事は自分で見つけるしかない」

「そうよね。ねえ、次はいつレストランやるの?」

「・・・決まってない」

「そうなの?この前の場所は?」

「このままレストランが無料なら、こっちの売り上げに影響があるからと断られた。協力してくれたシーザーの部下の男も新しい場所を探してくれたが、“無料高級レストラン”に協力してくれる者はいないそうだ」

「そう。大変ね。場所が欲しいなら、私も協力するわよ」

「何が出来るんだ。我々蘇りし者は、この時代では余所者だ」

「んー。大丈夫、カースベルクなら何とか出来ると思う。大きな会社のトップだし。その、お金、いっぱい持ってるみたいだから。でもカースベルクが言ってたわ──」

それからファティマとアミセルはベルセルク自社ビルにやって来た。リビングの端っこにあるデスクで書類に目を通していたカースベルクは妙な客に少し驚く。

「カースベルク、お願いがある」

「ん?」

アミセルからちゃんとお願いしてくるのなら、協力してやるか。そうカースベルクはアミセルの要望に合った空き店舗を買い取った。それからデザイン会社、内装業者を探して仕事を依頼したのだった。空き店舗は土地と建物を丸ごと2000万で買い取った。元々近くに出来た大型ショッピングモールの影響で集客が悪化して閉店した、立地としては悪い場所。それから改装、開店資金も全てカースベルクが持つ。でもカースベルクは期待していた。そのレストランは必ず“利益がある”と。

読んで頂きありがとうございました。

ディンクルス軍に“集う者達”は人間も動物も、生き物じゃないものも関係ないですね。そして生き甲斐を見つけるという事は、この世界に馴染むという事なんでしょうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ