表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/275

「アキレス」後編

まだ実戦を経験していない頃、尾状器官の可能性を自覚した。熱を生み出し、それを衝撃波として放出する。伸縮させて打撃に使う。そして“形状を変化させる”。しかしそれにはDNAを新しくインストールする必要がある。

「どうだった?」

「大分理解出来た」

「ユテスは判断速度を改善すべき」

「そういうエテュオンだってさ、指示が分かりにくいんだよね」

「指示の簡潔さは重要でしょ」

「オレも分からなかったぞ。もっと具体的に言って欲しいな」

「ほらリュナークだって」

「・・・分かった」

「私は理解出来た。最後のは挟み撃ちを指示したんだろ?だから私は直進した」

「はははっ」

「何を笑う」

「分かってないじゃん。回り込む指示だって事」

「もういい。私の指示に具体性が欠けていた」

「ホーンに理解させるのって、多分1番ムズいよな?」

「だな」

最初に尾状器官を“カスタム”したのはリュナークだった。“人型”で編成された第1チームの中で、リュナークは1番身軽。それは性格もだ。だからそれを活かせるようにと、リュナークは“刃を飛ばす”ようにした。尾状器官から生成した“小さな鱗”は刃のように対象に突き刺さる。その鱗に熱を保たせる事によって、爆発性能も生み出した。

「色々調べてさ、決めたんだ。アキレスは?」

「俺も決めてはいるが、何かもう1つアイデアが欲しいと思っている」

「あ、エテュオン戻ってきた。調整は良い感じ?」

「演習場で試してくる」

「エテュオンって硬いよなー」

「性格が?」

「うん」

「隊には必要だ」

「まあな」

エテュオンは硬い。それは戦法もだ。戦場においてエテュオンの目的は的確に動く事。博士も、ユテスたちも、本人もそれを期待してる。だからエテュオンは“全身を硬くした”。それから初めての実戦。相手はテロ組織。

「リュナークとアキレスが正面から。ユテスとホーンがそれぞれ別方向から逃げ道を塞ぐ。私は後方から様子を見て空から」

「うん」

「実戦かぁ」

「事前のマップ把握と、想定訓練もしたから、問題無いでしょ」

「だよな。いけるよな」

ウパーディセーサ・ブラックが何人か居るテロ組織。でも生物的に我々の方が格上。現場に着いて、エテュオンの指示通りに向かって早々テロリストウパーディセーサを制圧したところで、想定外の事態が起こった。

「何だよあれ。ウパーディセーサ・ブラック、すごい改造してるじゃん」

「こちらアキレス。改造ウパーディセーサを確認。数は3」

「こちらエテュオン。私が行く。ホーンたちは引き続きテロリストの制圧と確保を」

改造ウパーディセーサは、とにかく筋肉量を増大させていて、尾状器官がまるで本物の戦艦の砲身かのようだった。それなのに尾状器官においてのブースターの役割は失くしていない。相手の砲撃は食らえばすぐには動けそうにない。だがその分、連射機能は無い。そこが隙だった。尾状器官から複数の鱗を発射し、それを爆発させていくリュナークの攻撃によって1人を制圧した後、俺は隙を突き、正確に相手の顔面に衝撃波を撃ち込んだ。それでも衝撃波だけではノックアウト出来ないのは分かっていた。

「後ろ!」

「何っ・・・」

相手の砲撃を食らってしまって、俺は凄まじく吹き飛んだ。思っていたよりも衝撃は重く、すぐには動けなかった。でもその直後だった、空からエテュオンが落ちてきたのは。猛スピードでそのまま相手の脳天に打撃を食らわせた。

「こちらエテュオン、テロリストは全て制圧した」

「アキレス、終わったよ」

「あぁ」

「自己再生出来るけど、さすがに重たい攻撃だったね」

「それでもミスはミスだ。油断した」

テロ組織は壊滅させた。その功績でアルタライザーの価値、必要性は証明出来た。それからも訓練と実践の積み重ねで、着実に第1チームは自信をつけていった。

「“四足歩行型”の第2チームのアルタライザーたちも、ゲリラテロの鎮圧に成功したって」

「お、良かったじゃん。誰から聞いたの?」

「第2チームのリーダー。さっき会った」

それは世界情勢を調べている時だった。自分という存在の“ベース”がウパーディセーサと聞かされ、実際にそれがいつどこで生まれたか、記事を検索して閲覧していた。その延長にあったのが、デュープリケーター。

「リスベラ博士、これは」

「ウパーディセーサを応用して作られた生物よ。察しの通り、あなた達もね。でも別にデュープリケーターという名称は商標登録されてないし、デュープリケーターかと言われれば明確な定義は無いのよね。だからあなた達の正式名称はアルタライザー。デュープリケーターといえば──」

自分達を創造したリスベラ博士は話が長い。デュープリケーターは元々マフィアによって作られた“武器”だった。しかし心を入れ替えた事で自警団として活躍していき、そのニュースが広まり、それから世界中でウパーディセーサDNAの応用が為された。

「デュープリケーターって、定義無い、のか。へー」

「俺は、このアーサーというデュープリケーターをモデルにしたのか?」

「そう、とも言うし、厳密には違う。様々な動物のDNAを組み合わせて、結果的に似ているだけ」

「偶然に顔が似るものなのか?」

「まぁ、見た目というより、強さをモデルにしてるのは確かよ。それは世界中でそう。見た目を真似したら、モロじゃんってなるでしょ。アーサーのあの尾状器官の手は強いしカッコイイ。だからってそれをそのまま真似出来ないから、その機能を“集約”したものを作ったのよ。あなた達の尾状器官は可能性に溢れてる。例えば──」

「そろそろ訓練の時間」

「博士、後でまた聞かせてね」

「ん?ああ、沢山可能性を探ってみなさいな。尾状器官の」

我々は、俺は、オリジナルではなかった。いや、厳密には過去の様々なデータを参考にしたオリジナル。でもアーサーというデュープリケーターの姿を見た途端、自信が揺らいだ気がした。それはアーサーという存在に対してだけじゃなく、シューガーの戦いにおいての記録に対して、確かに嫉妬を抱いた。

「今回の訓練はアキレスとユテス、デリス達全員で、私達3人の相手」

「オレ達、テロリスト役?」

「そういう事」

「ぐへへ、テロリストだー、がおー」

「そういう事じゃない」

デリス達は第1チームの人間組。人間組のリーダー、デリスと、サンバル、カルバーニは中距離アタッカー。バリトル、ジグは後方支援、ヴェッジはメディック。基本的に前線アタッカーと、索敵をするポインターはアルタライザーが担当。

「デリス達、スタンピストルだよね」

「実弾はマズイが、スタンだけじゃエテュオンは止められない。オレ達は榴弾でいく。足止めだ。2人がそれで支援して、こっちが狙われたら、ネットを使う。ま、迂闊に人間に近付くような真似をする可能性は低そうだが」

「あぁ」

障害物のある演習場。先ず最初に向かってきたのはリュナークとエテュオンだった。先手必勝を狙われた。リュナークの鱗が足元にばら撒かれ、一瞬だけ分断された。でもその一瞬で、ユテスはエテュオンに吹き飛ばされた。エテュオンは硬い。尾状器官から作る熱で外皮を硬化させる。その上、硬化中は衝撃波の威力も増大する。それでも直後にデリス達が榴弾を撃ってエテュオンとリュナークを牽制した。それはリュナークの戦い方を真似たもの。

「え、ちょっ」

しかもその瞬間、出来ると判断したのか、ジグがネットを撃った。見事にリュナークがネットに絡まったので、俺は大きくした上段の尾状器官から“溜めた衝撃波”を放った。隙は一瞬だったが、それもリュナークに命中し、リュナークは吹き飛んだ。しかしそこにホーンが突撃してきて、“先端を槍状に変化させた尾状器官”を突き伸ばしてきた。尾状器官は伸縮性が高い。その特性を活かした槍。そしてその槍は4本。俺は間一髪でそれらをかわしたが、上空からエテュオンが殴りかかってきた。だから尾状器官から瞬間的に炎を吹かして跳んでかわし、衝撃波で応戦していった。

「やはり硬いな・・・」

エテュオンとホーンから逃げていく中、ふとデリスと目が合ったので、デリス達の方に2人を誘導して2人に榴弾の牽制を浴びせた。その隙にホーンに溜めた衝撃波を撃ち込み、ホーンを吹き飛ばした。それでもエテュオンは身軽に動いてきて、俺は鞭のようにしなやかに、岩のように硬い尾状器官に叩かれた。

「・・・くそ」

「ふう、良い訓練だった」

「結局テロリスト組の勝ちだったかー」

「デリス達、榴弾を選んだのは良かった。でも私はスタンの方を使うべきだったと思う」

「そうか?」

「少なくとも私以外は捕獲出来た」

「ああそうか。いや、迷ったんだがな」

積み重ねた訓練と実績。それらは確実な自信だった。だから偉人の復活という事態がこの国に降りかかっても、問題無いと思った。しかし現実はそんなに甘くなかった。最初に確認された巨大な蜘蛛。単体では戦闘力は高くないが、群れとなれば一気に形勢が逆転した。

「・・・さっき見つけた蜘蛛の巣は処理出来たけど、あれがそこら中にあるんだよな」

「地道にやってくしかないだろ。幸い人間でも榴弾があれば問題無い。軍隊だって群れだ」

「そうだよな。デリスの言う通りだよな」

ユテスは性格は明るいが、どこか子供っぽい。だがユテスがあっけらかんとそう言えば、その場の空気も和らぐ。ユテスにはそんな不思議な力がある。

「おい皆!良い報告があるぞ」

「あ、ジグ達帰ってきた。どうかした?」

「蜘蛛の巣を探して国立保全樹海に入ったんだが、その中の洞窟から蜘蛛が出てくるのを確認して、そのまま追跡してみた。そしたら居たんだよ。シーザーが」

「おお!すごいじゃん!」

「これから3班に分けてた第1チームを合流させて、樹海に向かう」

シーザーは生きている。つまり、敵が来れば意思をもって対抗する。それがあの岩獣。エテュオンでさえ弾かれ、リュナークでさえ動きを止められない。ゼーレ帝国の事は常に頭にある。“抵抗に際限は無い”。岩獣だって、ただの通過点に過ぎないはずだ。

「私テリッテ。よろしくね?こっちがアーサー」

「私はエテュオン」

独立自警団アルテミス。その戦闘力は、我々を遥かに越えている。ゼーレ帝国だって、この自警団が居なければ壊滅していただろう。それだけではなく、ガルゼルジャンの力は全世界に及んでいただろう。魔法を教えて貰い、アルタライザーもケルタニアも、この者達に頼るしかないのか。

「こっちがアキレス」

アーサーの目は、ずっと洞窟を向いていた。我々を見てもない。

「ヘル、こん中に居るんだろ?シーザーって奴」

「(うん)」

「ガルゼルジャンみたいになる前にやるしかない」

「(うん、だよね。でもアルタライザーたちに魔法を教えないと)」

「待ってられるか」

アーサーの声色からは焦りが伺えた。それは俺達に期待してないからとかではなく、単純に怯えているように見えた。すると直後にアーサーは青い炎を纏い、洞窟に消えていった。

「(あー。テリッテ、ボクがついてくから)」

「うん」

ゼーレ帝国の惨状を経験してない俺には、分からないだけなのだろう。何故アーサーが、それでは守れないと、怒りをぶつけたのか。

「今から教えるのはリッショウっていう魔法だよ」

ヘルはキュッと止まった。何故なら(スーヴェ)が照らすアーサーは壁の前で立ち止まっていたから。

「行き止まりじゃねえか」

「(そんな訳ないよ、さっきまで道があったのに)」

「どうなってんだ」

「(もしかしたら、地形を操るのかな。さっき魔法で見たシーザー、人間じゃなかった。本当の岩みたいになってた)」

背後からの轟音にアーサーとヘルは振り返る。その瞬間からもう岩が突き上がっていて、一瞬で帰り道も無くなった。

「(あちゃ)」

「チッ。転移していくぞ」

ヘルとアーサーはパッと転移していき、目の前にシーザーを確認する。しかしその瞬間からその広い空間で岩が蠢き、壁が出来て、岩獣が2体精製された。

「(そうだ。ボクね、フェニックスソウルをパワーアップさせたんだよ。イエンに教えて貰ったんだ。イエンもリッショウをパワーアップさせたみたいで)」

「え、どんな風に」

オージャソウルのアーサーとフェニックスソウルのヘルを前に岩獣は簡単に撃退される中、そこでは常に岩が蠢き、轟音が響く。

「(何かすごかったよ。リッショウに魔法を融合させたんだよ。ボク達のクウカクみたいに。それで魔──を融──せる──ツを教えて貰ったん──)」

「チッうるせえ」

気が付けば、岩獣が何十体も精製され始めていた。壁のそこら中に顔があって何だか気色悪い。

「(ヤバくない?)」

「やっぱり、こうなるのか」

そして直後、何十の顔がビームのように超高水圧の水を吐き出した。パッと洞窟を出たヘルとアーサー。

「(みんな!岩の奴が何十体も出てくるよ!)」

「・・・何だと」

呟くデリス。するとまたすぐにアーサーが洞窟に入っていく。

「俺が全部ぶっ壊す!テリッテ、そっちは任せる」

「分かった!みんな、先ずは魔法を。次はクウカクっていう魔法を教えるね?」

洞窟を進んでいくアーサー。目の前にはさっきの壁があったが、それはまるで自動ドアのように壁に消えていった。ドカドカと凄まじい足音が響いてくる。だからアーサーは一先ずクウカクで壁を作った。

「魔力を網目のように想像して、その網目を小さくしていくんだよ。そうすると魔力が硬くなって壁になるの」

ユテスもリュナークもそわそわしているのが見て分かる。あの岩のモンスターが、押し寄せてくる。魔法を覚えたとしても、俺達はどれほど戦えるんだろうか。

「(うわあああ!)」

犬の叫び声に驚いたが、気が付けば周囲の地面の岩肌が岩獣になり始めた。それも数え切れないほど。

「くっ・・・」

油断していた。そもそも巨大な蜘蛛は“木から生まれた”。岩獣だって、こうなっても不思議じゃない。

「デリス達、退避!」

「いや車がねえ」

「とにかく走って!」

「くそ!」

「大丈夫だよ。クウカクで壁を作って、そこに避難すれば」

一先ずテリッテが作ったドーム状のクウカクにデリス達が避難すると、デリスを守るようにアキレス達は周囲を警戒した。先程覚えたばかりのリッショウのお陰か、衝撃波の威力が増したが、それでも岩獣の群れは脅威的。

「カーミソウル!」

ロックエルとメアの魔法の鎧は岩の鎧。でもただの岩というより、キレイな宝石のようなカッコイイもの。それからロックエルの、岩の鎧に覆われた大きな右腕から黒い光が洩れていく。それは悪魔の力。黒い光が込められた大きな拳が叩き込まれれば、岩獣はバラバラになった。

「強いな」

ボソッと呟いたのはリュナーク。あんな合体、俺達には無理だ。ヘルという犬だって、まるで不死鳥のように鮮やかな変身を遂げれば、一撃で岩獣を粉砕するし、あんなものを見せられたら、無力を感じざるを得ない。だがそんな事は言ってられない。

「なるべく連携を取っていくぞ」

「あぁ」

幸い、強く目立つ者に岩獣は注目している。だから俺達はデリス達を守る為に、生存第一で戦う。

「うわ、蜘蛛も来てる」

ユテスは尾状器官の先端に鉤爪を着けた。それは物を掴みやすくする為。尾状器官で対象を掴めば、そのまま真っ直ぐ対象に突っ込んでいって、打撃を与えたり、掴んだ尾状器官からゼロ距離で衝撃波を放ったり。その俊敏な格闘を、俺は後方支援していく。我々には、我々の戦い方がある。

読んで頂きありがとうございました。


ここからはケルタニアを中心としたストーリーとなっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ