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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「アルタライザー」後編

「(あっちからも来た、あわわ)」

本当の虫のように、あっちから、こっちから巨大な蜘蛛が姿を見せてきたので、とりあえず上空に逃げるヘル。でもルアが光矢を撃っていけば蜘蛛たちは絶命していき、再びヘルは建物に降り立った。

「ガルゼルジャンの感じとは全然違うね」

「(うん。何か、違う種類の支配って感じ。あっちにも臭いがある、ん?)」

「どうかした?」

「(怪我人)」

ヘルが飛んでいきながら、ルアは治癒玉を撃ち出す。すると治癒玉も自分の意思で飛んでいって、とある大型スーパーの立体駐車場に辿り着いた。

「(うわ、避難者かな)」

まるで“怪物と戦う映画の避難者”のように身を寄せ合っていた何十人がルア達に気が付けば、同時に治癒玉は倒れている人の周りをくるっとした。言葉は分からないけど、嬉しがってくれてるのは分かった。そこでヘルはみんなにテレパシーを送った。言語じゃなく気持ちを。自分達はサクリアから来たと。だからすぐ、その人から警戒心が消えていった。

「こん、にち、は」

拙いサクリア語で、子供がそう言えばルアは微笑む。

「(さっきの蜘蛛?それならやっつけたよ?)」

ヘルがそう言えば、みんなが少なからず安心したのはルアでも分かった。

「(シェルターとか無いの?・・・まあそうだよね)」

ルアはふと思い出した。ジェクスが言っていた、解析(アンリズ)の魔法。それは人の思考や感情を解析する魔法。同時に言語情報も解析して、それを思考と照らし合わせればつまり、外国人と話が出来る。そういえば、ヘルは遺伝子的に人の感情が分かるんだった。だからルアも、みんなの思考を解析していく。人の気持ちが分かる。それだけでもルアは安心した。急にモンスターが街に出現し、沢山の人達が犠牲になった。軍が戦ってるが、自分達には何も出来ない。ただ恐怖でしかない。ルアは拳を握った。

「情報収集したら、早くアーサー達にも来て貰おう」

「(うん。あ、近くに来てる。みんな、隠れててね)」

ルアを乗せてヘルが上空に飛び出せば、まるで動物のように、巨大な蜘蛛はキョロキョロしていた。するとそんな時だった、街路樹の数本が変身し、巨大な蜘蛛になったのは。

「(え!何、どういう、事・・・。木が蜘蛛になった)」

「でもちっちゃいね」

「(さっきよりかはね。これは、やっぱり駆除した方が、あ、逃げた)」

生まれたての巨大な蜘蛛を追いかけようとした瞬間、別の巨大な蜘蛛が糸を吐いてきて、ルア達は糸まみれになる。

「(うわー!)」

体からクウカクを広げ、まるで風船を膨らませるように糸を押し退けたルア。でもその糸まみれの丸いクウカクごと巨大な蜘蛛にのしかかられて、丸いクウカクはドスンと墜落する。複眼にギョロりと見つめられたルアは思わず光矢を放った。いかにも虫らしい顔で、すごく気色悪かったから。仰向けに倒れて動かなくなったところでもっとクウカクを広げて、糸を引きちぎってようやく脱出。

「(やっぱりそう来るよね)」

「逃げられちゃった」

「(何か、本当の生き物っぽいよね?絶対カルベスの力なのに)」

「どこにいるのか探ろう。シーザー」

「(あっ)」

道の向こうからやって来たのは軍用車だった。出てきた軍人達は巨大な蜘蛛の亡骸を見ながら、当然のようにルア達の下に近付いた。

「(独立自警団だよ)」

ルアもその軍人から少しだけ解ける警戒心を感じていると、直後に空から人間ではないものが飛んできて、軍人の隣に降り立った。人型で、鳥顔っぽくて、それはどこかアーサーっぽい外見だった。

「お前達だけか」

「(言葉分かるの?)」

「俺達は世界共通語を含めた5ヶ国語を修得している」

「(わーお。すごいね。ボク達様子見で来たんだよ。シーザーの居場所が知りたくて)」

一瞬黙った後、その軍人のようなものは軍人と話し、何かを同意した。

「こちらから情報を提供する事はない。どうせ自力で分かるんだろ?」

「(まぁ、ね。ねえ、まさかアルタライザー?)」

「・・・そうだ」

「(わーお)」

「独立自警団としてケルタニアに入国する事は拒絶しない。瞬間移動をいちいち追いかけてられないからな。だが戦闘によって街に被害をもたらすなら問答無用で制圧する」

「戦闘によってって、向こうが原因でも?私達は、人を助ける為に戦ってる」

「ゼーレ帝国での戦闘の際、お前達の制圧方法によってどれだけ街が被害を受けたか、自覚しているのか?」

「それは・・・」

「(確かに、派手にやっちゃったけど。ああでもしないと、勝てなかったよ)」

「人を救っても、街が失くなってたら意味が無い」

ふと軍人が通信を受けるとすぐに指示が飛び、ルア達の事など全く気にする事なくアルタライザーは動き出した。背中から伸びたのは漆黒の尾状器官。飛び立っていったアルタライザー、それを追いかける軍人達。それをルア達は遠くから眺めていると、やがてケルタニア軍は巨大な蜘蛛を3体捕捉した。響く銃声。巨大な蜘蛛の動きが鈍るとそこにアルタライザーが飛んでいき、“赤黒い光の衝撃波”で仕留めていった。ビルの壁に居た別の巨大な蜘蛛が糸を吐いて、軍人達が動けなくなるが、アルタライザーは素早く衝撃波でその蜘蛛を撃ち落とし、地上でトドメを刺した。

「(あっ。ビルを壊さない為に、手加減して撃ち落としたんだ)」

それから3体目の巨大な蜘蛛も軍人と連携して仕留めたアルタライザーは、尾状器官から火炎放射して糸を燃やし、軍人達を解放した。

「(すごいねー。ザ・軍人じゃん)」

一瞬、ビルの屋上に居たルア達を見上げたアルタライザーだが、まるで気にしないような態度なので、とりあえずルア達は禁界に戻っていった。

「おう、どうだった?」

「(アルタライザー、カッコ良かったよ)」

「そういう事を聞いてる訳じゃないんだが」

「モンスターは、何か本当の生き物みたいでした。しかも街路樹が急にモンスターになりました」

「そうか。原理なんてもんは考えてもしょうがないが」

「けど数も多くないので、それほど危険じゃないと思いますけど、あの状態がずっと続くとは限りません」

「あぁ。ゼーレのように、一気に被害が加速してもおかしくはない。シーザーの居場所は?」

「これから調べます」

「(あ、ガグナ、久し振り)」

「あぁ」

「ガグナってずっとロードスターに居るの?」

「まあな。血剣の奴らの動きを監視するには1番だからな」

「そうなんだ」

「何にしても、行動は早い方が良い」

「はい」

それからグラバード達が去っていったので、ルア達はゼーレ帝国にやって来た。そこはゼーレ軍基地、新アンゼルジ支部。ふと目が合ったエストーンはリクライニング出来るキャンプチェアで寝転んでいた。

「お?」

「(元気そうだね)」

「まあな」

周りを見渡せば街はまだまだ破壊し尽くされた状態で、逆に何でそんなに寛げているんだと、ヘルはふと思った。

「おうルア達、どうしたんだよ」

「ジェクス。今良い?」

「え?あぁ」

「今私達、ホールズ地方のケルタニアって国に居る、蘇った人の事調べてて、その国でも、今沢山のモンスターに襲われてて」

「今度はそのケルタニアってところか」

「うん」

すると両手を頭に乗せて寝ながら、エストーンですら呆れたような溜め息を吐き、その明らかに面倒だという空気はジェクスの表情にも伝染した。

「(さっき様子見しに行ったんだけど、まだそれほど大変そうじゃなかったよ)」

「けど今後はどうなるか分からないよな」

エストーンがそう言えばジェクスも頷く。

「蘇った人はシーザーって人で、とりあえず居場所だけでも突き止めたいから、手伝って欲しいん、だけど」

「まぁそれは良いけど。やっぱり、あのクラウンって奴を捕まえないとな」

「(今どこに居るのかな。今だったら勝てるもんね)」

「けど捜すにしたって、イシュレでさえ世界全体を見る事は無理だろ?」

「(でも分かりやすいんでしょ?カルベスの霊気)」

「って言っても2つの世界だからな。簡単じゃない」

「(何か良いアイデア無いかな?)」

「どうかした?」

「(あ、イシュレ)」

「ちょうどレヴァクに交代か」

「うん」

「(ねえねえイシュレ、クラウンを捜すのに良いアイデア無い?)」

「・・・あるよ?」

「お、マジか。どうすんだよ」

「あの霊気を記憶させて、(スーヴェ)に捜して貰う」

真顔でイシュレがそう応えれば、エストーンもジェクスも、さすがイシュレだといったように「あ~」と声を揃える。

「さっき考えた」

「(すごいねイシュレ)」

ふとルアは見た。口角を真っ直ぐ横に伸ばした真顔の笑顔を見せるイシュレが、照れ臭そうに少し俯くのを。そしてそんな態度が可愛かった。それからイシュレは(スーヴェ)を1つ、掌の上にポンッと光らせた。そしてダークグリーンの霊気が入った光壁の玉に(スーヴェ)を近付けさせる。そこでヘルはルアを見た。まるで犬みたい。そんなテレパシーを共有していた。

「一先ず捜してきて貰って、帰ってきたら同じ根源の霊気を持つ人のところまで連れていってくれるよ」

「(誰かは特定出来ないの?)」

「この(スーヴェ)は同じ根源で捜してるから」

「追いかけたい奴の霊気を取って来ないと、そいつを追いかける事は出来ないんだな」

「うん」

「(そっか)」

「行っておいで」

イシュレの(スーヴェ)が勢いよくすっ飛んでいくと、イシュレは満足そうに生活拠点の建物に去っていった。

「どれくらいかかるのかな」

「(数えるほどしか居ないんだし、すぐじゃない?せっかくだから寛ごうよ)」

見渡す限り、破壊跡。ルアはアルタライザーの言葉を思い出していた。魔法じゃ建物は作れない。でもだからといって、形振り構ってられない。きっと、これが“最小限の被害”。そんな時にペルーニが横顔を覗いてくれば、ルアは微笑んだ。

「来てたんだ」

「・・・イエン」

ふらっと姿を見せたイエンは、大きな紙袋いっぱいにパンを抱えていた。ペルーニがフルーピスの体毛を撫でれば、ウリネックとエターもひらひらとやってくる。破壊跡では休む事なく、ゼリア・ノヴァがせっせと瓦礫を撤去していく。それを遠目に眺めながら、ヘルは魔法の手でパンをちぎり、それを一口。

「(生き返った人達ってどうしてるの?)」

「そりゃあ、ああいう風に四角い家が並んだところで暮らしてる」

そう応えながら、ジェクスは強化プレハブを眼差しで差す。それからヘルは散歩した。瓦礫しかない街の跡を。ゼリア・ノヴァと軍人が瓦礫を撤去しているが、見るからにその作業スピードはもどかしい。何故なら人手が足りないのがよく分かるから。

「(ねえねえイエン、リッショウに魔法を混ぜるのってどういう感覚?)」

「魔法を魂子レベルに細かくして、リッショウに染み込ませていく意識」

「(おっけー)」

リッショウを発動したヘルを、ルアはキャンプチェアから眺める。ヘルの目の前には火と光が灯ったが、そこでイエンは声をかけた。それじゃあただの火と光だと。

「(へ?)」

直後にイエンが掌に灯らせたのは、火と光が混ざり合うものではなく、“燃えるように光り、光るように燃える、熱く眩しいもの”だった。

「魂子同士を融合させるの」

「(魂子同士・・・魂子からちゃんと作ってるんだ。そうなんだ。じゃあイエンって、いつも魂子から魔法を作ってるの?)」

「うん。多分、エルフだから出来るのかも。呪文で出す魔法は、魂子を自由に使えない人間の為のやり方だから」

「(そっか。でも練習すれば出来るよね?)」

「どうかな。練習するなら、精霊に憑依して貰いながらの方がいいと思う」

「(おお!おっけー)」

シュナカラクに憑依して貰うと、ヘルは目の前に灯らせた火を細かくしていった。それは空気に溶けるように形を崩していき、最早火ではなくなった。

「(魂子になった)」

それから目には見えなくなった火がゆっくりと復元されるとヘルは喜んで、イエンも頷いた。光も同じように作っては細かくして、また作って、そして火の魂子と光の魂子を混ぜ合わせてから形を作れば、それは火と光が完全に融合したものとして灯った。

「(やったあーー!!本物の聖なる炎だ!!いえーい!ルア!見て見て!)」

そんな時だった、(スーヴェ)がすごい勢いでブンッとやって来て、キュキュッと空中で止まったのは。

「(あ!戻ってきた)」

イシュレが外に出てくると、(スーヴェ)はイシュレに近付いてシュシュッと上下に揺れた。

「うん。この世界にある同じ根源の居場所、覚えてきたって」

「(じゃあ早速、ケルタニアに居るシーザーのところに行こうよ)」

「アーサーは?」

「(居場所知ってからでしょ?)」

ルアを背に乗せると、ヘルはイシュレの(スーヴェ)も連れて転移した。ケルタニアの首都、ジエスでは相変わらず巨大な蜘蛛がちらほらと見えて、相変わらず軍人達が追いかけていた。

「(じゃあ(スーヴェ)、この辺りに居る、同じ根源の人のところに連れてって)」

(スーヴェ)がシュシュッと上下に揺れると飛んでいき始めたので、ヘルがそれを追いかけるとやがて辿り着いたのは起伏の激しい大地に広がる樹海だった。

「(わーお。げげっ。蜘蛛がいっぱい)」

「何か、森、おかしくない?」

「(え?んー。何か、所々木が無いけど、こういう地形なんじゃない?)」

「そうかも知れないけど。木が蜘蛛になったんだし、このままじゃ、木が全部モンスターになっちゃうんじゃないかなって」

「(あ、そうだね)」

そして(スーヴェ)が止まれば、目の前にあったのは大きな洞窟と、複数の軍用車だった。振り返る軍人達と、アルタライザーたち。ゆっくりとヘルが地上に降り立った直後、(スーヴェ)はすぐに洞窟に向かっていったがその瞬間、素早く伸びた漆黒の尾状器官に捕まった。

「あっ(スーヴェ)、戻ってきて?もう大丈夫だよ」

尾状器官を振り払った(スーヴェ)が戻ってくると、ルアは(スーヴェ)をポケットにしまった。

「(この洞窟にシーザーが居るって事で間違いないみたいだね。戦うのはいいんでしょ?自由に来て良いって言ってたじゃん)」

「往来には干渉しない。だが、自由に戦闘させる訳にはいかない」

何となく女性っぽい声でそう応えたのは、人型で、オオカミっぽい顔をしたアルタライザー。

「(でも、多分その内、絶対君達だけなら負けるよ?こっちは経験者だからね)」

「シーザーは完全に包囲しているし、モンスターは減少傾向にある。我が国も、ゼーレの二の舞にならないように最善を尽くしている。何も問題無い」

「(ふーん)」

洞窟から突然の獣声。反響してきたその声は余計に迫力を上乗せし、軍人達は皆一様に振り返る。直後に震動が伝わってきて、それは何かが出てくる足音というのがすぐに理解出来た。

人間の軍人達が後方に下がり、5体のアルタライザーたちがモンスターを待ち構える。近付いてくる足音。それは絶対に蜘蛛ではないのは分かる。ふと足音が止んだ。暗闇で絶妙に見えないモンスター。1体のアルタライザーが目を細めたそんな瞬間だった、まるで間欠泉の中から飛び出したように、複数の岩がアルタライザーたちを襲ったのは。何体かのアルタライザーが吹き飛び、幾つかの岩が激しく軍用車にめり込んだ。運良く岩がぶつからなかったアルタライザーたちが洞窟に向かって、赤黒い衝撃波を撃ちまくっていく。衝撃音が洞窟から響いてくる。ヘルはふと鼻を効かせた。モンスターからは、ちゃんと獣臭がした。

読んで頂きありがとうございました。


次の相手も“支配”ですね。どんな戦いになっていくんでしょうか。

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