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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第3章「ロードスターの進撃」

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「太陽は目覚める」中編

「ケイシン!」

話だけは風に流れてきたから知っていた。見た事もないギガスがギガスアーマーを襲ったと。しかしそれは漆黒の霊気を纏っていて、およそ理性など無かったと。ようやく見つけたケイシンは大人しい顔をしていた。そういう風にしてしまったのは自分のせいだと、クロキスは駆け寄った。

「大丈夫か?」

「うん」

「ごめんな。オレがサクリアに連れてったから」

「え?何の事」

「え?黒い魔力でギガスアーマーを襲ったって、見た事もないギガスだと有名だぞ。でも黒い魔力に包まれて苦しそうだったって」

「それが、覚えてない」

「・・・そうなのか。やっぱりそういう風になってしまうって事だよな。やっぱり、オレのせいだな」

「何でよ。先生は手伝ってくれただけだし。オレが望んだんだし」

「ワン」

臭いを見つけてどこからか走ってきたミルクとチーズ。そばにはレイトも居た。でもレイトはただ帰ってきたのかという顔を見せるだけ。

「何してたの?」

「いや、別に、ちょっとフラフラしてただけっていうか」

「ふーん」

「母さんは病院?」

「ううん。今日は休み。結構心配してるよ」

「あぁ。じゃあ、とりあえず帰らないと」

何て言おうかというより、帰りたかった。アイコンタクトだけするとケイシンは歩き出した。2人と2匹を見送るクロキス。

三国、合同演習場。ルアとヘルは見渡していた。演習場で使ったものを片付けるテリッテ達、それを手伝っているホープやグズィールを。それからグラシアを呼び出したルア達。見え始める夕焼け。

「──それで決めたんです。特攻部隊、軍から独立させようって」

「独立。つまり軍隊じゃなくなるから、自由にシューガーに行けるようになるって事?」

「はい」

「そっか。うん、私は賛成だよ?ノイルは何て言ってるの?」

「賛成してくれました」

「(ノイルが言ってたけど、独立に大事なのは宣伝だってさ)」

「宣伝?」

「(ロードスター連合王国とか他の国に、もうサクリア軍とは関係ないよって分かって貰わなきゃだめだから)」

「そっか、そうだね。またマスコミの人達に話せばいいのかな」

「(うん。それでね、団長はルアだから、副団長はグラシアさんにお願いしたいんだよね)」

「ルア、大丈夫?」

「はい。私がみんなにお願いしてるので、私がちゃんと団長やります」

「そっか。隊長での事で悩んだら何でも相談乗るからね?」

「はいっ」

テリッテ、ヒーター、クロム、ロックエル、マスカット、そしてたまたまそこに居たホープとグズィールが集まってくる。グラシアが呼べばすぐに集まるし、グラシアが説明すれば反論する者は出ない。ルアはふとグラシアの横顔を見ていた。

「──そういう事だからよろしくね」

「じゃあアーサー達にも言わなきゃ。今どこかな」

グズィールに顔を向けるホープ。

「私も行くよ。団長だし」

霊気検索をして転移すればすぐ目の前。そうして行ったルアとヘル、ホープとグズィールはそれから首を傾げた。立っているアーサーの足元には直径1メートルほどの穴が空いていたのだ。そしてアーサーはその穴をただ眺めていた。

「何それ」

「アルツだ。中に居んだ。おーい!」

「・・・わーん」

あれからアルツは無事に脱皮を終え、喋れるようにもなった。でもヘルと仲が良く、ヘルの「ワン」をよく真似する。それから“スルッと”出てきたアルツ。胴長短足で、ハリネズミのような危ない毛並みが背中を覆い、肩甲骨から伸びた2本の尾状器官は嗅覚が鋭敏。そんなアルツはにんまりと笑った。突き出た鼻やヒゲ、三角の耳は犬みたいで、だからヘルも親近感を湧かせる。

「やっぱ地面の中は暖かいよ」

「(寝床なの?)」

「別荘かな」

「(えへへ。へー)」

「んで、何か用なのか?」

「うん。特攻部隊の事で報告があるの。グラシアさんとテリッテ達、ホープとグズィールは知ってるから、あとは他のみんなに報告するだけで、特攻部隊は独立して、独立自警団アルテミスになったの」

「ふーん、そうか」

「(アーサー、独立のメリット分かってないね。今までは軍の管轄だったから外国には行けなかったけど、これからは自由に行けるんだよ)」

「てことは、シューガーに行って戦えるのか?」

「うん」

「おお、つうかもっと早くそうして欲しかったぜ。すぐ行けるのか?」

「もうちょっと待って。独立した事を宣伝しないと」

「宣伝って?」

問いかけるアルツ。

「(もう軍とは関係ないって事を相手も分かってないと、独立した意味無いからね。だから先ずは知らせるんだよ)」

「へー。土が山盛りだ」

穴を掘ったから当然出来た、掻き出された土の山に登るアルツ。

「それならすぐやってくれよ。俺、最近はハルクとかアルファとしか戦ってなくて、やっぱ実戦じゃないと、スリルが無いんだよ」

「うん。でも他のデュープリケーター達にも伝えないと」

「それは俺がやっておくから。独立したって言えばいいんだろ?」

「え、でも私団長だし」

「いいじゃねえかよそれくらい」

「・・・分かった、じゃあお願いするね」

シューガー、街の穴。今日は仕事が休み。だからといってクレインはどこかに遊びに行く事はしない。何故ならケイシンがいつ帰ってくるか分からないから。多感な時期なのにテント暮らしなんて、出ていきたくなって当たり前だ。ずっと我慢してるのは分かってた。だから帰らなくなっても、そっとしてあげようと思った。でもさすがに2日は長いけど。でもケイシンは優しい子だから、悪い事はしないだろうと、クレインは独りで佇んでいた。

「ただいま」

「・・・ケイシン」

最初に思ったのは、いつものように我慢している表情だという事。

「お帰り。遊びに行くお金あげられなくて大丈夫だった?」

「うん。クロキス先生に、助けて貰った」

「お金も?」

「ちゃんと返すよ」

「そう」

「こんにちは」

そこにやって来たのはハロナだった。ミルクとチーズは嬉しそうに尻尾を振り、クレインも微笑みを返す。

「どうかした?」

「どうかした?って、それはケイシンでしょ。あれからどうしてるかなって。2人は生き返ったけどさ、大丈夫かなって」

「別に大丈夫だけど」

「ふーん」

「兄ちゃん、広場行く?」

「あぁうん」

どうやらケイシンには友達が居たようだ。そうクレインは頷いた。「いってきます」と安心したような顔で言ったレイトに。屋台通りで食べ物を買い、花壇やベンチも増えたトロフィー公園。レイトはふと首を傾げた。そういえばエリミールは?と。しかし声をかけようと思った時、ハロナはキラキラに微笑みかける。

「エリミールは?」

「え、ああ。人間に戻るとね、精霊って見えなくなるの」

「そうなの」

「でもケイシンには見えてるよ」

「え」

エリミールはその円らな瞳で真っ直ぐと見つめる。表情から色が抜けてしまったケイシンを。

「どういう事?ケイシンも人間に戻ったんだよね?」

「そ、その・・・いや、見えてないよ」

「・・・見えてるよ」

ケイシンは思わず顔を上げた。エリミールは真っ直ぐ自分の事を見つめていて、それでも目が合った事を理解するとすぐに目を逸らす。

「目、合ったよね?」

「合ってない」

「ケイシン、ギガスに戻ったの?」

「戻ってない」

何かもう明らかにギガスに戻った事を認めてるような雰囲気。しかしハロナは目で訴えた。そう言うならそれでいいんじゃない?と。ハロナとエリミールは心で通じてるから分かるが、レイトはソーセージを食べながら何となくハロナの横顔を見ていた。それから夜になって夕食の時も、テントに戻って寛いでる時もレイトはケイシンの顔を伺っていた。そして電気も消して寝袋に入った時だった。

「何だよ」

見兼ねてそう問いかけるケイシン。しかしレイトはクレインの方を一瞬見ると寝袋の中に潜る。

「行ってくるね」

「うん」

それから翌朝、クレインが出勤していった時になってからだった、レイトがケイシンに問いかけたのは。

「ギガスに戻ったの?」

遊びに出かけようと2人でテントを出た直後の事で、それはまるで母親が居なくなるのを待ってたかのような詰め寄り方。タイミングを図っていた事を理解するからこそ、ケイシンは半ば諦めるように溜め息を漏らす。

「絶対に母さんに言わないって約束するか?」

「・・・うん。何で?」

「オレだけ生き残って、何か、戦いたくなった。ムカつくんだよ、軍が」

「でも生き返ったけど」

「関係ない。殺したって事実は無くならない」

「レジスタンスになるの?」

「あれには入らないよ。オレが戦ってるなんて知られたら母さん何て言うか。誰にもバレないように戦うんだ、ヴレスターみたいに」

「ふーん。でもあれって最終回で死んじゃうよね」

「ギガスは死なないだろ」

「ハロナみたいに精霊に仲間になって貰えば?」

「え、でも、すぐ喋るじゃん、あのフラミンゴ」

「違う精霊でいいじゃん。ヒーローには必ず相棒が居るんだから」

「相棒かぁ」

パシャパシャと鳴くカメラたち。注目されているのは2人と1匹。真ん中にルアが立っていて、その隣には伏せているヘルとグラシアが居る。芸能人でもないのに囲み取材だなんて、そうそうあるものじゃない。そうヘルは内心ウキウキしていたが、ルアはやっぱり緊張していた。適当な広場。それから会見を終えて解散していく記者達という中、ルアは振り返った。ダイヤテレビの記者、オーリスとミシアに。

「久し振りだなルアちゃん。独立したって事は、俺達とも仲良くしてくれるって事でいいんだよな?」

「えっと、そうですね」

「でも本当に大丈夫なのか?独立したって事は味方が減るって事だ。ロードスターに行った事で問題が起こっても、この前みたいにサクリアの政府は守ってくれない」

「分かってます。それでもやらなきゃいけない事があるって思ったんです」

「そうか。1つ聞きたいんだが、グラシアさん」

「え、はい」

「・・・芸能関係の仕事に興味は?」

「え?」

「ちょっとオーリス何言ってんの」

「まぁもし興味があるなら?ダイヤテレビでって事で。恐らくこれからそういう話が方々から持ちかけられるだろうからな。先手を打つのも俺達の仕事だろ。悪い話じゃないと思うけどな。ルアちゃんとヘルくんはすでにちょっとした有名人だ。そこに翼人が加わってましてや芸能界に入ってくるとなると宣伝効果は絶大だ」

「(本業が疎かになっちゃだめじゃない?現場の密着取材くらいならいいけど)」

「なるほど。意外と堅実だな」

「(まあね)」

シューガー、街の穴。パッと現れたイエンとフルーピス。そこは誰も居ない物陰。ちょっと顔を出しても誰も居ない。だからイエンとフルーピスは静かに歩き出す。フードを深く被って顔を隠しながらふと見上げると、隠れていたそれは大きなトロフィー。

「何のトロフィーかな」

「分かんない。でもあたしへの憎しみとかそういうんじゃないっぽいから、別にいいけど。それより何か静かじゃない?公園なのに誰も居ない」

「みんなお仕事とか?」

「んー」

そんな時、パッと現れたのは数人のギガス。と言ってもそれは灰色の体に白い色が混ざった特異なもの。思わずまたトロフィーの下に隠れるイエンとフルーピス。

「何してるのかな」

「分かんな・・・ん、また出た。あれ、ギガスアーマーだ。この雰囲気って・・・」

その時だった。イエンとフルーピスの目の前に、ギガスアーマーが1人、パッと現れたのは。

「貴様、あのダークエルフだな?見物に来たのか」

「もうダークエルフじゃないけど、見物って?」

「惚けてるのか?トロフィー公園一帯は政府による避難勧告が出てる。本格的な掃討作戦だ。それを聞いて来たんだろ?まさかレジスタンスと手を組んでるのか?」

「あたし達、人を捜してるだけ」

「この状況でそんな事、まるで子供の嘘だ」

「何なの?一旦離れよう。変な事に巻き込まれたくないし」

「無理みたい。この前みたいに光壁で囲まれちゃってる」

「え・・・じゃあ、歩いていこう」

「うん」

「待て。返事は受け付けている」

振り返るイエンとフルーピス。一体何の話かと思うけど本人は分かってて話してるっぽい。そうイエンは仕方なくそのギガスアーマーを見つめる。同時に周囲ではレジスタンスとギガスアーマーの戦闘が始まった。

「我々の為に戦え。貴様が今、レジスタンスと戦い、レジスタンスを葬れば罪人というレッテルを緩和する」

「あんた達だって、見た目変わってるし、強くなったんじゃないの?」

「レジスタンスもウパーディセーサの力を手に入れてる。戦況にはあまり差が無い」

「あたしには関係ない。ダークエルフに来て貰えばいいのに」

「それが、直前になって拒否した」

「嫌われてるの?」

「・・・知らないだろうが、独立自警団アルテミスというもののせいだ。今までは国境を越えなかったが、ダークエルフ達はそれに関わるのが嫌だと」

「さっきニュースで見た。でもあたしには関係ないし。それに意味もなく力を使ったらあたしの方が命を狙われるし」

「・・・意味があればいい」

「え?」

「意味の無い戦いなど、実はそう多くはない。ギガスアーマーは埋もれた過去に光を当てる為のもの。所詮埋もれるような小さなものだとしても、人間ってのは覚悟を決めたら何でもする。見てみろ」

内心で首を傾げるイエン。表情は分からない。しかしそのギガスアーマーから垣間見えた人間味に免じて、イエンは眺めた。レジスタンスとギガスアーマーの戦いを。

「愚かだよな。抵抗勢力とは言え、こればっかりはただの縄張り争いだ。少なくともあいつらには埋もれた過去なんてものはないんだろう。ただ前だけ見てる奴は挫折した時に心まで折れる。100年を背負った我々には敵わない」

「あんた、本当にシューガーの人間?」

顔を向けてきたギガスアーマー。表情は分からない。惚けているのか、笑っているのか。感じたのは、わざと顔を隠して自分を見ているような面倒臭い雰囲気。しかしその時だった。ドンッという地面を叩く轟音が響いたのは。思わず顔を向けるイエン。

「あ、来た」

レジスタンスとギガスアーマー達が一旦動きを止め、それは注目される。そのギガスからはテムネルは感じない。内心で安堵するイエン。

「未確認ギガスか」

「お前も軍に恨みがあるんだろ?一緒に戦え」

ケイシンに声をかけたのはバルオ。ケイシンはバレないようにと声は出さず、振り返るとただ頷く。その瞬間から変わる空気。レジスタンスの士気は上がり、軍人達も士気を尖らせる。

「あ!!」

イエンは固まった。レジスタンスの1人の大声と指で、サッと全ての目線は流される。

「ダークエルフ!」

「違うってば」

そんなイエンの呟きなど誰にも届かず、それから軍人達の尖った殺気もイエンに向けられ、イエンはとりあえず“戦場”に背を向けて歩き出す。しかしそこにさっきからそばに居たギガスアーマーが立ちはだかり、戦場を顎で差した。

「何でよ、関係ないのに」

「貴様はな、太陽なんだよ」

「え?」

「太陽の光は無慈悲に、そして平等に世界を焼き尽くす、でも使いようによっては恵みになる。我々にとっては、貴様はある意味恵みだった。貴様らがシューガーに来たから今がある訳だしな」

「ただの偶然じゃないの?」

「出会いが偶然だったとしても、その後にどう関わっていくかは変える事が出来る。貴様と街の穴は関係ない訳ない。だから決めろ。レジスタンスを潰すか、軍を潰すか」

「え、選んでいいの?」

「人は皆、選んで生きてる。何も選ばないで自分の人生をサボってる奴はただのバカだ」

表情は分からない。でもイエンは、再び戦場を見た。

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