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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第3章「ロードスターの進撃」

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「歪んだコロナ」後編

それは太陽だと、誰かが言った。誰が言ったかは分からないけど、その言い回しが気に入ったのか、新聞とかワイドショーとかでそんな言葉が使われた。それはギガスアーマー。けどその太陽はどうやら、ちょっと歪んでるみたい。その太陽がもたらしたのは独占、支配。太陽の光は命を作る。植物を育てて、動物を育む。じゃあ、あれって、その太陽が生み出したものかな。そうテルビオが眺めていたのは、レジスタンスの新しい力。聞いてみたら、ザ・デッドアイからウパーディセーサの薬を貰ったって。灰色の体に白い差し色が浮かび上がって、体がゴツくなって、例の尾状器官を手に入れて、戦力はギガスアーマーとほぼ互角になった。そんな力をマスコミも報道し、レジスタンスという組織の存在感も結構有名になった。そして今日もまたギガスアーマー部隊とレジスタンスの戦いが街の穴で繰り広げられようという時だった。それが現れたのは。

「ウガアアアアア!!」

体から吹き荒れる黒い風のような光。軍人、レジスタンス、その周りの全ての目がそれに釘付けになる。同時に思い出す。あの時の忌々しい、ダークエルフを。それは正にテムネルだ。人間をギガスにしたり、そして何より、街を抉り取った、あの漆黒の光だ。一体そいつは何なのかと、その場の誰もが硬直する。

「シークフィン、あれは、まさか異世界のギガスかな」

「どうかなー」

ギガスのようだけど見たこともないギガス。しかも一目見ただけで、そいつの挙動は殺気に溢れていた。すると先ずそいつが向かったのはギガスアーマーだった。すかさず鳴り出す銃声。避けるとか隠れるとか、そういう理性が無いのかそいつは何発も被弾して転がってまた走り出して、また被弾して転がる。しかし誰もが目を見張るのが、そいつはまるで大きなダメージを負っていないという事。どんなに撃たれても、動物のように飛び上がって立ち上がりながら走り出す。そいつがもしゾンビゲームのゾンビだったら絶対勝てない、それぐらい素早い。そしてそいつは1人のギガスアーマーに飛び掛かり、馬乗りになって拳を降り下ろした。

「ぐああ!」

ギガスアーマーの声が掻き消えそうなほどに、地面が悲鳴を上げた。凄まじく鈍い音に地面は結構窪んでいて、そいつがスッとその場から離れてもギガスアーマーは動く気配が無い。

「何だよ、あれ」

呟くバルオ。

「レジスタンスの誰かじゃないのか?」

ユウソルが音量を落とした声で応えた直後、それからそいつは動物のように、同時にどことなくケンカを吹っ掛けたいだけのヤンキーみたいにギガスアーマー達を襲っていく。

「聞いてないだろ、あんな奴が居るなんて、しかもあいつ、白と灰色じゃない。黒と白と灰色だ」

「ウパーディセーサって、白だよな?」

「え?知らないの?」

そう声をかけてきたのはハヤジョウ。

「ウパーディセーサは2種類あるんだよ。ザ・デッドアイとザ・マッドアイのね」

「マッドアイって何だよ」

「ザ・デッドアイから独立した組織みたい。普通マフィアに行くってなったら少し調べるでしょ?2人がザ・デッドアイから薬を貰ったって言ったから僕は自分で調べたんだ。でも2人が行ったのはザ・マッドアイの方だった」

「はぁ?おい、ユウソルだぞ、調べもしないですぐ行ったのは」

「いや、だってそんなの知らねえよ」

「いやでも、結果的に良かったと思うよ?ザ・マッドアイの人に聞いたら、ザ・マッドアイのウパーディセーサはザ・デッドアイのより強く改良してるって言ってたから」

「は、はは・・・だろ?いいんだよこれで」

「だろって何だ。まぁそれならそれでいいか。ユウソル、そういうとこ、地味にツイてるよな」

「おう、まあな。じゃあ、あいつは・・・・・あれ、あいつは?」

「居なくなった、みたいだな。つーか、たった1人で、ギガスアーマーを蹴散らしやがった。何だったんだ」

倒れたギガスアーマーの1人がゆっくり人間に戻ると、間もなく息を引き取った。人間に戻る途中で、ギガスアーマーの体組織と人間の体が混ざり合って、何とも無惨だ。そんな遺体を背後にし、1人の軍人が変身銃を片手にレジスタンスを見据える。

「レジスタンス!調子に乗るなよ?・・・装着」

ギガスアーマーに変身した軍人。しかしその姿は初めて見るものだった。シルバーグレーの戦闘スーツという見た目の上に、マントを着け、肩や腕、脚が更に頑丈そうになっていた。それからすぐ、そのギガスアーマーは銃を両手で構え、腰を据えた。その瞬間から銃口に集束する光。

「逃げろっ」

とっさに口走るバルオ。その直後、放たれたのは直径1メートルはあろうかというほどの光弾だった。バルオは目を見張る。その収束して消えていく光の弾の迫力に。爆発ではなく、中心に向かって焼き消えていくその光は、そこに居たら本能的にただでは済まないと思わされる。

「バルオ、そっちからだ」

左右から挟み込むように走り出すバルオとユウソル。尾状器官から炎を吹き出して得る推進力と、その勢いを乗せたパンチ。そんな新しい戦い方で追い詰める2人だが、マントは華麗に揺れた。高速移動が持ち前のギガスアーマー。“ただ推進力が増しただけ”のレジスタンスにも引けは取らない。それでももう2人増え、4人で囲まれれば隙も生まれ、ギガスアーマーは背後から頭を殴られてつんのめる。するともうただのリンチみたいに殴る蹴るを繰り返すレジスタンス。従来型ギガスアーマーも加勢して来て、少しは魔法が飛び交うけど結局は殴り合いなんだなと、テルビオは遠くから眺める中、テルビオはふと目を向けた。何故ならシークフィンが「あれ」って言ったから。物陰から自分達と同じように眺めているのは見るからに怪しいフードを被った人。男かも女かも分からない。すると直後、フードの人はパッと消えた。

「え?ギガスでもないのに」

「だってー、今の人、霊気持ちだったしー」

「えっと、あ分かった、あっちの世界から来た魔法使いなんだ」

「そういう事だねー」

「でも何しに来たんだろう。シューガー軍の仲間なら隠れる必要ないし、ミキーナの知り合いかな。シークフィン、捜してくれない?」

「いいけどー、そろそろ約束の時間だよー」

「そうだね。どっちにしても先ずは出来た霊器の受け取りが先だね」

異世界間でさえ簡単にパッと移動出来る、そんな力に地味に感心しながら、テルビオは霊器屋のドアを開けた。ドアに付けられたベルがカランカランと鳴る。古き良き音には異世界の異文化でさえ懐かしさを感じさせる。

「来た来た」

「早いね。何分待ってたの?」

「私は30分前から目の前のカフェで待ってた」

「そっか」

「気にしないで。ミキーナがせっかちなだけだから」

精霊といえど顔は人間なので、ニュウニュウの笑顔には普通に照れてしまうテルビオ。そんなテルビオの横顔を見つめるシークフィン。

「よお兄ちゃん」

「こんにちは」

すると店主はさっさとカウンターの下に潜り込み、軽そうな白い箱を出してきた。そしてまるで段ボール箱を開けるように紐をほどくと、そこから2つのガントレットを見せた。

「霊鉄は多めにしといてやったぞ。2つのガントレット、収納してある胸当て、合わせて値は50万ってとこだな」

何かリアルな値段だな。そうテルビオは内心で焦る。ミキーナが領収書らしきものを店主に渡している傍ら、ふとテルビオは拳骨にした時に相手に当たる部分を見る。付けられた鉄板は何かもうこれだけで痛そうだと。手を通し、腕部分は3つのベルトを金具の輪に通し、ぴったりと巻き込んでからマジックテープで固定する。まるで靴みたい、そう思いながらもテルビオは思わずニヤけた。採寸してるからぴったりなのは当たり前だけど、すごいフィットして、カッコイイ。

「テルビオ、霊匣にするのー、どっちがいいー?」

「えっと、精霊との契約だっけ、じゃあ右かな。右利きだし」

シークフィンはするとそのウサギの手でテルビオが着けているガントレットにペタッと触れた。よく見るとすごく可愛い。だからテルビオは思わずシークフィンの手に触れる。

「肉体は無いのに、ちゃんと毛皮なんだ」

「そうだよー。これで完了ー」

「あたしの尻尾だってね、ふわふわしてるよ?ほら」

差し出された尻尾。空気的にテルビオは触ってみる。笑顔のニュウニュウ。でもまるで女の子に触ってるみたいだと、微笑みを返すテルビオは内心で戸惑った。それから左手にもガントレットを着け、意識するだけでいいというミキーナのアドバイスらしくはないアドバイスを意識して、テルビオはガントレットに収納されている胸当てを出した。まるで転移みたいにパッと現れる胸当て。採寸してるからサイズは勿論ぴったり。軽鎧なので重さも5キロほどでそこまで気にならない。

「すごいな。異世界じゃこうやってみんな武器を作るのか」

「うん、いいね。不具合がでたらいつでもおじさんのとこに持っていってね、請求はこっちに回すから」

「うん、ありがとう」

胸当てはしまって霊器屋を後にすると、ミキーナ達はパッと転移した。向かった先はシャークと待ち合わせしている場所。と言っても目印は場所ではなく、シャーク本人。つまりシャークの居るところに転移しただけ。禁界の外で待っていたシャークは何をしている訳でもなくただ浮いていて、テルビオは何故か哀愁を感じた。

「お待たせ」

「あぁ。それがテルビオの霊器か」

「うん」

「それじゃあシャンバート行こっか」

それから偵察に来たシャンバートの街、トニカ。あれからこっちの大規模工場でもシューガーは動きは見せない。あの大爆発は嘘かのように復旧されていて、ホールがある倉庫以外は普通に動いている。だからミキーナ達はそのままホールのある倉庫の中に転移した。

「んー、埃っぽいね。本当に人が来てないって事か。でも私達にとっては好都合。あ、ニュウニュウ、あっち何かありそうじゃない?」

こういう場所でも楽しそうに偵察をするミキーナ。そんな姿にテルビオは内心で戸惑うが、見たところ本当に人気は無いのでテルビオも気軽に歩き回る。

「シューガーに新しい動きはあるのか?」

「1つだけ。ギガスアーマーがさ、改良されたんだ。もう普通のギガスじゃ敵わない。でもそれはレジスタンスの人達も自分達を強化したからでさ、何かサクリアに行ってウパーディセーサの薬を貰ってきたって。背中の尻尾みたいなやつが生えてきて、強くなったんだ」

「ギガスとウパーディセーサの力が融合したのか?」

「あぁ。もしかしたらその内デュープリケーターの力とか手に入れちゃうかな」

「何故だ」

「え、いやまぁ、ただの勘だけど。あでも何か、ギガスでもウパーディセーサでもないようなギガスっぽいやつが、レジスタンスと軍の戦いに乱入してきてさ。もしかしたらそういう事なのかな」

「そいつはレジスタンスじゃないのか?」

「分からない。でもレジスタンスの人達も戸惑ってたし、そうなんじゃないかな。後ね、この世界に来る直前、シューガーの街の穴で怪しい人を見たんだ。転移して消えていったからこっちの世界の人だと思うんだけど」

「どんな人だったの?」

シャークとの話を聞いていたのか、そう尋ねてくるミキーナ。

「それがフードを被ってて男か女かも分からなかった。でもシークフィンが居場所捜してくれるから、後で会いに行こうかと思って」

「そっか、じゃあ私達もついていくよ、面白そうだし」

「あぁうん」

それからやって来たのは小綺麗な廊下。当然だが電気はついてないので暗くて不気味。するとテルビオはふと思い出して1つの扉を開けた。そこはホールのある部屋に続く部屋。学校の教室くらいの広さで、デスクやパソコンが並べられたそこは教室に見えなくもない。あの時は軍人と白衣の人が忙しそうに行き交っていて、今ここに立っていると何だか純粋に寂しさを感じる。

「わあ。でもこれからまた再開される事を考えたら、ちょっと怖いね。気付かれないくらいに壊しちゃおっか。コードだけ切っちゃうとか」

「そんな事したって取り換えたら済んじゃうよ?」

「そうだね」

冗談なのか本気なのか分からないようなトーンで話しながら、ミキーナは扉を開ける。しかしそこにはホールは無く、見たところ倉庫のような空間だった。それでも逆にミキーナは何かありそうだと入っていく。テルビオが開けたのはミキーナが開けた扉とは違うもの。そこは正にホールのある部屋。テルビオが何となくホールを眺めていると、そこにシャークがやって来る。

「何故、ステカなんだ?」

「え?」

「ステカに一目惚れしたんだろ?」

「シャーク、一目惚れには理由は無いよ」

「理由は無い。顔が好みなんじゃないのか?」

「え、あ、まぁ、そうなんだけど。そりゃあ顔も可愛いけど、やっぱり雰囲気かなあ。雰囲気って育った環境が1番出るところだし、あ、それに昔から言われてるんだよ、天使は翼人がモデルだって。本当にそうだったしさ」

「そうか。ついこの前禁界で聞いたんだが、翼人は人間とは結婚しないんだろ?」

「そうみたいね」

「だが人間じゃ無くなれば結婚する。そうやって来た者も居るようだ」

「人間じゃ無くなればって?」

「翼の力は自由に分け与える事が出来るからな。元は人間でも翼の力を持てばいいという事だ」

「そうなんだ」

「テルビオ、ここに居たんだ。おお、ホールだね。ニュウニュウ、気付かれないように部品、抜き取っちゃう?」

「何に使うの?そんなの」

「え、えーと、霊器屋のおじさんにあげたら喜ぶかな」

「どうかなぁ・・・こういうのとか?」

「いいねそれ。抜き取っちゃおう・・・・・お、取れた。フッフッフ。じゃあそろそろ戻ろっか」

シューガー、街の穴。レイトは不安そうに歩いていた。何故なら人を捜しているから。不安そうなレイトにミルクとチーズが寄り添うが、レイトの表情は曇ったまま。お兄ちゃんの居そうなところに向かっては落胆する。その繰り返し。レイトがトロフィー公園のベンチに座れば2匹も座り、静寂が流れる。あれからお兄ちゃんは姿を消した。お母さんと僕が生き返って、死亡届も撤回されて、人間に戻った。でもその代わり、出掛けてくるって言ったきり帰って来なくなった。一体何をしてるんだろう。いつもくっついていっても何も言わなかったのに、1人で行くって言った時から何かおかしかった。お母さんもずっと心配してるけど・・・。

「ワン」

「ん、ミルク、どうかした?あ、ちょっと」

急に歩き出したミルクについていくとそこは屋台通り。その1番端っこには初めて見る店があった。何だかすごく良い匂い。思わず近付いたけど、そこでレイトは冷静になった。

「僕お金無いよ」

「お金はいらないよ、ここの子だろ?」

「いいの?やった」

近くのテーブルに着いて、レイトはコロコロしたフライドチキンを1つ食べる。皮がパリパリで身はふっくらしてて、濃くてまろやかな甘い粉がすごく美味しい。これだけで気分が晴れやかになる。白い粉が何なのか分からないけど、レイトは爪楊枝で刺したフライドチキンを2匹に食べさせる。──お母さんも言ってたけど、その内帰って来るか。

今理解するのは、森の中、握り締める土、そして自分の荒い息だけ。少し遠い意識。まるで夢の中みたい。ここがどこだかは分からない。何故ならそんな事は考えず、逃げてきたから。でも、何で逃げてきたんだっけ。オレは、一体、何者だっけ・・・。

「ここにいたんだ。あんた、どうなってるの?」

理解したのは、虹色の瞳だった。

「それも、ウパウパなんだよね?」

読んで頂きありがとうございました。

美味くてヤバイ白い粉はよくあるやつですかね。

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