chapter3 予兆
午前6時32分。起床から32分経つが、俺は未だにこの状況を理解できずにいる。
真上にいる謎の少女。冷静な態度の流子。そしてなにより、その少女が自分を知っているかのように言葉を口にした事。
何一つ理解できない。理解不能理解不能、というやつであろう。
「貴様、何者だ?」
「隣人よ、警戒しないでくれ給え」
「頭上から落下してきた者に警戒しない者があるか」
「すまないが、今はそこの愛人に話さねばならない事がある」
「あいじ…あぁ!」
謎の少女と話していた流子がなるほど、という風に手を打つ。
「そうか、シンジ…にわかに信じ難いがこれが貴様の彼女か!」
この言葉を聞いた瞬間、俺は反射で言ってしまった。
「そうだ」と。
何故ならこのままでは流子の買い物に付き合わされるからである。
奴は人遣いが荒く、大量に物を購入し全て俺が荷物を持たされるのでタチが悪いのだ。
落下娘には悪いが後で謝って帰ってもらおう、そう考えていた。
しかし、落下娘が発したのは芝居だとかそんなものでは無かった。
「我が愛人よ、私と来るがいい。このままではあと僅かで『ニホン』は消滅するであろう」
やはり理解が追い付かなかった。
第三話 終わり
続く