chapter2 落下
早く目覚めた理由は悪い予感だったのかもしれない。
この女が絡むとろくな事が無いからだ。
「わざわざ出迎えてやってるんだ、家にくらい入れてくれてもいいだろう?」
再び聞き慣れた女の声。
ドンドンとドアを叩く音がゴスゴスと鈍い音に変わっていた。
溜め息をつきながら玄関を開けると、そこには水澤流子が得意気な顔で立っていた。
「やぁ、いい朝だなシンジ」
「…今日は何の用で?」
「遊びに来てやった。それだけだ。何か問題でも?」
「あの、俺の予定は」
「結構ッ!彼女も居ない勉学も人並み以下見た目も悪人の貴様の予定帳など完ッッッ全に空白だろう!」
確かに今日の予定は何も無かった。
が、こんな言われ方をすれば気分も悪いと言う物である。
俺はこの女に一泡吹かせようと試みる事にした。
「…帰ってください」
「…なに?」
「帰ってくださいと言っているんです」
「帰ってくれ、だと?何故だ」
「…彼女が遊びに来るんです、今日」
「なっ…!?ハハ、冗談がきついぞシンジ?」
「本当に来るんです。ですから、帰ってください」
「貴様のような顔面暴力団に彼女など_____」
押しかけてきた隣人との会話に、聞き慣れぬ音を感じる。
鈍く、大きな音だ。それも、生物の物ではなく、無機質な感じの。
何かを感じ、真上を見上げると。
「はじめましてだな、我が愛人よ、そしてその隣人よ」
どうやら俺も一泡吹かなければならないようだ。
第二話 終わり
続く