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02

一瞬の浮遊感のあと、目を閉じて真っ暗だった視界に光が差す。


すると少しづつ、たくさんの人の話し声や水の音が聞こえてきた。

ゆっくりと目を開けると、そこにはたくさんの人、人、人で一杯だった。


辺りを見回すと現代にはないような、大きな看板が掲げられた様々なマークがついた建物が沢山見える。

次に周りにいる人達の服装をみると、どの人も同じ見た目、同じ色をした簡素な服を着用しているだけではなく、腰や背中には剣や短剣、斧といった、所謂武器も所持している。


また、それらを身に付けている人の外見的特長も多種多様だ。

普通の人もいれば、耳の長い、ファンタジー世界でお馴染みのエルフといった人もいる。

なかには犬耳や兎耳や、尻尾もついている人、所謂獣人、コスプレにも見えるがそれを自在に動かしたりしている。

彼らは皆それぞれ思い思いに会話に花を咲かせているようだ。

そんな中には僕と同じように辺りをきょろきょろ見渡してる人だったり、自分の服装を見たり、システムウィンドウを開いてみたりしてる人もいる。


僕は、彼らの様子をみて一人感動に打震えていた。

―嗚呼、僕は遂にWLの世界に来たんだな・・・!!


感動もそこそこに、乙葉―クロハに連絡を取ろうと行動を開始しようしたところで、周囲からたくさんの視線と同時に違和感を覚えた。


何だろうか?何かがおかしい気がする。

違和感のほうはいまひとつはっきりとしない。

しかし視線のほうは感じられる。

でもひょっとしたら、ただの自意識過剰かもしれないけど、念のためにと視線を感じる辺りの方に目を向ける。

すると、一斉にさっと顔を逸らされた。

えっ、どういうことなの。


そこでふと思い出す―今の自分の髪は銀色で、瞳は赤・・・ああ。

なるほどと、一人納得して頷く。

視線を逸らされるということは、やはり威圧感が出ているのだろう。

別方向から感じた視線のほうにも振り向くと、やはり顔を逸らされてるからそうなのだろう。

・・・いや、大体の人の頬が顔が赤い人が多いところをみると、これはもしかしたら痛い人を見たことで笑いを堪えてるのかもしれないなぁ・・・。


そんなことを考えていると<<ポポーン>>と軽快な音が鳴った。

視界の端に受話器のアイコンとその横に、『クロエ』と名前が表示されている。


なるほど、これがどこでも特定の人と、1:1会話ができる『念話』と呼ばれる機能の許可合図のようだ。

ええっと、念話を開始するのには思考操作か許可だったけか。


*

思考操作とは、非常に簡単に言ってしまうと、システム操作を『頭の中で思い描いて操作する』というものである。

例えば、戦闘中に両手は剣と盾で塞がっている状態で体力を回復させる回復薬をアイテムボックスから取り出したい思った場合、通常なら指を使ってメニュー操作からインベントリを開き、アイテムリストから目的のアイテムをクリックして取り出すという工程の為、手間とリスクが大きい。

しかし思考操作の場合は、手を使わずに頭の中で思い描いてメニューを開いてアイテムを使用、実現化させたりすることが出来るのだ。

これはVR機器が脳波を読み取ることで実現が可能となっているのだ。

*


よし、許可っと―これで念話が出来るはずだ。


<あーあー。もしもーし乙・・・じゃない、クロハ聞こえる?>

<<・・・!!!>>


どうやら聞こえてるようだけど、何故か息を呑む声が聞こえてきた。

少し前にも似たような事あったような気がする。

まあ気のせいだろう。


<おーいクロハ?もしもーし?>

<<・・・・ふふふ。ミツキね・・・兄さんも無事にログインできたようですね・・・うふふ・・・>>

<お、おう。せやで?>


様子がおかしいクロハに、僕も思わず口調がおかしくなってしまった。

とりあえず当初の目的の合流を果たさねば。


<それで、クロハは今どの辺りにいるんだ?場所の特徴教えてくれたら<<駄目です!!>>こっちから・・・えっ?>


えっ、何どういう事?


<<()()()()()()!迎えに行きます!いいえ行かせて下さいッ!!>>

<あっ、はい。わかりました>


クロエさん、何が貴女をそこまで駆り立てるのでしょうか。

僕は思わず敬語を使ってしまうほど、どビックリです。


クロハ何か特徴になるものはないかと言われて辺りを見回すと近くに噴水があるので、それを伝えると、すぐに向かうから絶対に動かないでとの念押しをされた。

理由はよく分からないが、とりあえずクロハが来るまで辺りをきょろきょろと見渡す。



僕は、少し冷静になって辺りを見回していてようやく違和感の正体に気づいた。


何故、周りの物が大きく見えるのだろうか?


何故、僕の髪が肩にかかるぐらいまで伸びているのだろうか?


何故、僕は










周囲の人を













()()()()()()いるのだろうか?



―これは、まさか・・・。

さっと両手を前に出し、視界に入れる。

その手の指は、現実世界(あっち)より短く、腕は細く肌は白かった。

・・・いや元々肌は白かったか。


そして、現在の身長。

僕の現実世界の身長は全く伸びなかったが155cmはあった。

ところが、今の身長は130cmあるかないかぐらいに縮んでいるのだ。

ちなみにキャラクター作成の際に身長設定をいじった覚えはない。

たぶん、ランダム設定の影響がでているのだろう。


そして次に、さっき(・・・)から自在に動かすことの出来るモノ(・・)が気になり、上半身を捻って確認する。

そこには、お尻のところでピョコピョコと動いてる―もとい自分で動かしている、短い爬虫類のような尻尾(・・)―さらには、背中には()が生えていた。


・・・うん、驚かないぞ!

これはランダム設定の結果、獣人の爬虫類型の何かになったのだろう。

トカゲコウモリとかそういうオリジナルのがいるに違いない。

そうに違いない。


意を決して、メニュー画面から自分のステータスウィンドウを表示する。










*************************************************************



種族:ドラゴン <幼体> (人化中)

名前:ミツキ <女>


セットスキル:

New!<竜言語Master>

New!<息吹Lv1>

New!<飛行Lv1>

New!<*竜化Lv1>*控えに移動不可


控えスキル:

なし



*************************************************************











・・・・。


なるほどなるほど。ドラゴンさんでしたか、これは一本取られた。

これは間違いなくシークレット種族の1つなのだろう。

なんてラッキーなんだ!

でも、今は正直種族とか括弧書きの幼体だとかはどうでもいい、重要なところじゃない。

今、現在、一番重要な部分は、僕の名前の横の表記である。



ミツキ <女>




<女>




<女>である。

コレガヨクワカラナイ。

どこからツッコんでいいのか分からない。

何ですか<女>って?

ここは<男>じゃないのかと、小一時間ぐらい問い詰めたい。

それとも、僕の目がおかしくなったのだろうか?

ああ、ひょっとしたらこれはただの見間違いなのだろう、そうに違いない。

そう思って目をゴシゴシと擦り、もう一度ステータスウィンドウを見る。



ミツキ <女の子>



ちょっと待ってほしい。

今さっきまで認めたくはない<女>表記だったのが、何故、<女の子>に変わっているのか。

これは何かの陰謀なのだろうか?

運営(神々)の遊びなのだろうか。

運営さん、あなた今どこからか見てるんじゃないのでしょうか。

しかも修正したのだとしたら場所が違う、ソコじゃないんですよ。




・・・何か一気にドっと疲れてしまった。

まだWLが始まって、しかもまだ一歩も歩いていない状態でだ。


だがしかし、WLは始まったばかり・・・そう、始まったばかりなのである。

時間にして20分もたぶん経っていない。

気持ちを切り替えよう。

色々と出だしがアレだったけども、これからは楽しいことやらが一杯あるに違いない。

種族がレアだったり、性別がアレだったりもしたが、細かいことはもう気にしないでおこう!

ここから楽しい楽しい冒険の始まりなのだ!


そう自分に言い聞かせた(誤魔化した)


あと、スキルに関してはもう一切ツッコまない。

もう知らん。見なかったことにした。


しかし、ここで少し困った事がでてきた。

こっちに向かっているクロハは僕のことがわかるのだろうか。

さらに言うと、クロハが僕の姿を見てどう思・・・・?


―そこで突如、僕の脳内に電流が走る。

―何故こう思ったのか、自分でも分からない突然の閃き。

―WLが始まるまでの現実世界での会話、念話でのあの食いつき様。

―ひょっとしてクロハは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


・・・種族の事まではさすがに分からないだろう。

そうなると、性別が女性になるという方面で何か確証があったのかもしれない。

今思い返すと、念話のときに自分の声が幼ない子供のような声だった気がする。


と、そこまで考えてみて、これから合流するであろうクロハのことを思い浮かべると。




―ゾクゥッ!!




<ポーン>

<<第六感>スキルを習得しました。>


急激に背筋が寒くなったと同時に、軽快な音が鳴り、音声アナウンスが流れた。

なぜこのタイミングで習得したのか分からないけど今はそれどころじゃない。


―まずい。

―よく分からないけど、このままだとタブンヒジョ~~~ニマズイ。

―クロハニ ミツカルマエニ イマスグ ココカラ ハナレタホウガイイ。


ここは自分の直感、もとい習得したというたぶん言葉通りのスキル<第六感>に従うべきなのだろう。

この場を離れよう、そう思って駆け出そうとして―。


「・・・えっ?」


よく考えてみたら、そりゃそうだろう。

本来の身長から大きく変化したのだ。


当然体のバランスも全く違う―故に、そう―。


すっ転んだ。

顔面からビタァンと音がするぐらい、見事にすっ転んでしまった。


「・・・」


(うわあああ!これは恥ずかしい!!恥ずかしすぎて起き上がれない!)


背中に思いっきり視線を感じる。

何より今まで騒がしかった周りが、しんと静まり返ってる。

ごめんなさい許してください!

無言が痛い、痛いんです!


やらかしてしまったものは仕方ない、覚悟を決め(諦め)て起き上がる。(顔は色んな意味で真っ赤だけれども)


もそもそと手をついて体を起こす最中、影が差した。

影をさした方向に顔を向けると、こちらに手をさし伸ばしてる人物がいた。




その人物は―



「大丈夫ですか?ミツキ()()()



ものすっごい良い笑顔で、頬を紅潮させたクロハさんでございました。


現在習得済みスキルの簡易説明(デメリット説明抜き)


<第六感>:直感が鋭くなり、危機管理能力や本質を見抜き、いままで見えなかったものが見えるようになる。


<竜言語>:竜の言語で書かれた文字や言葉を理解し、竜の言葉を話すことができる。


<息吹(ブレス)>:様々なブレス攻撃をすることができる。


<飛行>翼をはばたかせて空を飛べるようになる。


<*竜化>自身の肉体をドラゴンへと変化させ、ステータスを上昇させる。*竜化中、<竜化>スキルは<人化>スキルへと変化する。


<*人化>ドラゴンの姿から人の姿に変化させる。*人化中、角・翼・尻尾は任意で隠すことができる。

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