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――フゥー
ボォォォ…
――WLがサービス開始されて早四日目。
僕は冒険者ギルドからの依頼の三日間木工ギルドの運搬手伝いの任務をやり遂げた。
冒険者ギルドの指定依頼はかなり実りあるものだった。
木工ギルドや冒険者ギルドの人と仲良くなれたり、スキルを色々と新しく取得できたりできた。
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種族:ドラゴン <幼体> (人化中)
名前:ミツキ <女の子>
セットスキル:
・<歌唱>Lv32
・<採取>Lv9
・<運搬>Lv16
・<第六感>Lv7
・<鑑定>Lv6
・<魔力操作>Lv9
・<竜言語>☆Master☆
・<息吹>Lv12
・<飛行>Lv25
・<*竜化>Lv22*控えに移動不可
控えスキル:
<短剣>Lv3/<料理>Lv8/<伐採>Lv12/<斧>Lv8
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冒険者ギルドから食料が支給されるおかげで、依頼中の間気にせず<竜化>と<飛行>をどんどん使うことができてモリモリとスキルがあがった。
<竜化>はLvがあがると、竜化中の大きさをある程度変えることができるようになり、体感で空腹になるまでの時間が若干延びた、<飛行>も飛べる高度が上がり、飛行速度も上がったりと大分良くなった。
それだけではなく、<竜化>や<飛行>のスキルのLvが上がるとどうやらステータス上昇効果もあるようで、<竜化>を使わなくても原木の一本なら持てるぐらいになっていたり、MP上昇効果があるようだった。
<息吹>レベルが先ほどの2つに比べてあまり上がっていない理由が、実は未だにモンスターとの戦闘を|一度もしたことがなかったりするせいだ。
では何故戦闘をしていないのにスキルLvが上がっているのかについて語る前に、いくつか他のスキルをみてほしい。
戦闘スキルの<短剣>と<斧>スキルを僕は取得しているけれど、これは戦闘で得たスキルではなく<料理>と<伐採>が関係している。
<斧>は木工ギルドで原木運搬する際に、ギルドの人が木を伐採してみないかということで伐採斧を貸してくれたので、試しにやってみたら取得、さらに<伐採>も取得できた。
<短剣>も同様に、料理にチャレンジする為に、まずは包丁の使い方に慣れるには桂剥きで練習するのがいいクロハが教えてくれたので、大根片手に練習してたらこちらも<料理>と一緒に取得した。
なんというスキルの無駄取得。
ちなみに、<採取>と<鑑定>はギルド指定依頼時間外で掲示板に貼り出されていた初心者ご用達の薬草採取や清掃作業依頼で上がっている。
<歌唱>については、まあ、うん……ついつい歌いすぎてここまで上がった。
も、もちろん、それなりの理由がある。
現実世界では、言わずもがな僕は男性、しかしWLでは性別は女性で声が違うのだ。
つまり何が言いたいかというと、女性の声で歌えるというのが大きいからだ。
あの曲を歌うとどうなるのか、あの歌いにくかった曲はどうなるのか、色々やってみると新鮮で楽しかったのだ。
さらに現実世界では本職でもない限り出来ない、木の伐採を斧を持ってやる、となると、そりゃもう歌うしかない。
――歌った結果、アンコールもらったりリクエストもらったりお金くれたりしたのにはちょっと驚きを通りこして恥ずかしかった。
ちなみにどうでもいい余談ではあるが、今流行りの流行歌より童謡やマイナーな歌や昔の歌といった方が好みだ。
とまあ、そんなこんなでちょっと街をブラブラしたり、休憩したり、暇なときに歌った結果が一番スキルLvが高くなったのだ!
後、スキル効果については何がどうなるのか良く分かっていない。
まあ趣味のようなものだし気にしない方向でいこう。
話が全くの別方向に行った。
つまりは何が言いたいのかというと、戦闘とは使用用途が別なことで<息吹>を使っているのだ。
今みたいに――
フゥー……フゥー……
――ボゥゥゥゥ…
――パチパチジュウゥゥ……
お肉を焼くときに便利なのだ!!
最初は、ライターの火のような火の玉しか吐けず、薪を集めてそれに着火程度としょっぱいものだったが、<息吹>がLv10になったところで火炎放射のように持続的に火を吐くことが出来るようになった。
そのおかげで直接お肉を焼いたりすることが出来るようになった。
肉を多少の火力調整が必要なので試行錯誤していると、<魔力操作>を取得できて火力調整が楽になったりした。
色々とスキル使用用途が間違ってる気がするが、ドラゴンなんて僕には宝の持ち腐れなのだ、使えそうなものは有効活用させてもらおう――戦闘以外の方面で!
ジュゥゥゥ――
うんうん、いい具合に焼けてきた、こんなもんだろう。
はむっはふはふ……うん、美味しい。
しかし、お肉を食べると白ご飯が欲しくなる。
お米が手に入ったら、飯盒炊爨とかも欲しくなるなぁ。
となるとWLでなら気兼ね無く、外で焚き火しながら飯盒炊爨でお米を炊いたりも出来るから、ゆっくりするというのも楽しそうだ。
そうだ!さつまいも売ってるんだし、ここは焼き芋にするのも良いだろう。
<息吹>で直接焼くより、落ち葉を集めて焼き芋をするほうが風情がでていいし、何より楽しそうだ。
よし、そうと決まればあとで落ち葉を袋に詰めて集めよう!
そして美味しい焼き芋を―――
そんな事を考えつつ、街中で肉を焼くのに勤しむミツキを、全てクロハや他冒険者が微笑ましく見ていたのであった。
そんなごく普通の一日。