決闘
軽くR15かな?
………はい。
という訳で、『鉄の武人』とやらと決闘する事になりました。
「がはははは!よくぞ逃げずに来たなぁっ!」
「……おいデカブツ。何でこんなに沢山見物客を呼んだんだよ。」
そう。
なぜか周りには野次馬がたくさん。
「んん!?おお、貴様を相手に、この『鉄の武人』様が戦う。そう掲示板に書き込みをしたのだ!そして貴様がやられるのを皆が見に来たのだ!」
そう言ってやたらと笑いを上げる。
[行けー鉄の武人!]
[そんな奴なんて軽く捻ってポイだwww]
[さぁさぁ張った張った!かの『鉄の武人』対『黒髪包帯美少女』!!1000ゴールドから受付中だよー!]
[観戦のお供に~チッコイ鳥の串焼きはいかがっすかー!よく冷やしたビールもありやーす!]
[頑張れ李音(゜ω゜) ]
つーか。屋台まがいのことまで始めてやがるヤツ居るし。
それになんで南雲がいるんだよ…。
「てゆーかさー…。お前本当に鉄の武人なの?
名前借りてるだけのクソ野郎だろ。」
「ば、馬鹿を言うな!!
俺様こそ本物の鉄の武人だ!!」
「……ふーん。ま、やっぱりそう言うよな。」
軽くため息を吐く。
「まぁいいや。しっかりと踊れよ?泥人形。」
「ふん、ほざけクソ女。」
『決闘を開始しますか?』
【yes】/【no】
『決闘を受理しました
先に相手のHPをレッドゾーンまで下げた側の勝利となります』
countdown!!!
5!
周囲の歓声、喧騒が聞こえなくなる。
視界が縦に伸びる。
相手に集中する。
4!
相手の身体中に力が溜まる。
3!
対して俺は武器の包丁を構え前傾姿勢を取る。
2!
身体に登る、むせ返るほどの高揚感――
1!
【―――FIGHT!!!】
side:『鉄の武人』
フハハハ!
最高だ!こいつは傑作だ!『モンスターズ・オンライン』の掲示板で偶然見た、鉄の武人の噂。
種族はゴーレム、戦場に現れ、拳の一振りで十人を吹き飛ばすという。
そんなプレイヤーの名を名乗るだけで、ここまでの羨望を集められるものなのか!!
目の前にいる自信過剰な、不遇種族である【マミー】の美少女。
まずはこいつを潰す。
――そして、俺の強さを思い知らせて、俺の女にしてやる!
「フハハハ!!喰らえぃ!」
俺は声も高らかに両の拳を組み。包帯女に向かって振り下ろす。
「『アースハンマー!!』」
―――ズゴォン!!!
余りの衝撃に地面が陥没する音がする。
「フハハハ!!一撃か?他愛も無いな!当然だ、我は名高き『鋼鉄の武人』!」
立ち込める砂煙。
(ああ、堪らんなあ、騙るのは。強者の名を語り、威を借り、自らが強者であると謀るのは!羨望、尊敬入り混じるこの視線が!!俺にある、俺の物である!!)
「まぁ、貴様など、何度やっても俺様には敵わないだろうな!!はははは!」
そう言って高笑いをした――
「それは置いといてさー…」
「…ぁは?」
消える砂煙。
そこに居たのは、包帯の女。
傷ひとつ負わない、包帯の女が。あろうことか、地を叩いた俺の両こぶしに、腰を下ろしていた。
「ゴーレム、硬いんだけどさ。まずデメリット多すぎんだぜ。まず触覚が無いんだわ。お陰で宝箱の鍵開けやらトラップ解除がムズイの何のって。」
まあ、結局気合で慣れたからいいんだけどさ。と頬杖を突きつつそいつは愚痴って居るのだ。
「あとな、いいこと教えてやんよ。PVPで勝った時には、やったら地味な演出で『YOU WIN』って出るんだぜ。負けたほうには何も無し。」
「なぜだ!」
俺様は叫んだ。
「は?」
「スキルが完全に決まったはずだ!貴様は俺の一撃で…」
「あ、あー。普通の『アームハンマー』なら確1で死んでるぞ、確かに。」
「ならばなぜ!」
俺様は女を吹き飛ばすべく腕を振り回した。
「腕が上がりすぎなんだよ、殆ど真上からだろ。」
しかしそれを予見するかのごとく女は腰を上げる。何も無い空間を腕が切り裂く。
「くっ……。」
「これはVRMMO…仮想とはいえ人間が直接体を動かすゲームだ。俺らはゲームのキャラであってキャラクターじゃない。命中90%越えのスキルだってそっぽ向いて打てば外れるんだから。」
説明中…だが、構うものか!
「ふん、ぬあっ!がぁあああ!」
攻撃を当てるべく腕を振り下ろす、振り回す。
振り回す、が…
「だから大振り過ぎんの。1秒までは行かなくても0.7~8秒は隙が出来てる。」
ひらり、ひらりと避けられてしまう。
「……ぜだ、一体なぜだ。なぜ、わかるッ、まるで、まるで…。」
見てきたように、ゴーレムという種族を、使ったように。
「ん?ああ。なんでって……。」
そこで彼女は見る者を萎縮させるような微笑みを浮かべ。
「そんなの、俺が本物の『鉄の武人』だからだよ。」
凄惨に、可憐に、相反する二つの表情を混ぜて、
微笑む。
「クタバレ泥人形。」
軽く包丁を相手の腹に刺す。
HPが数ドット消える。
「――発動!
『凶刃乱舞!!』」
side:李音
さて。
取り敢えず、俺の名を騙った大馬鹿野郎を。
「ぶっ裂く!!!」
凶刃スキル特有の。身体中から滴る血のようなエフェクトを身に纏い。
「ィヒァはははははっはははっははあっははっはははは!!!!!」
狂喜。凶器。悦び、喜び。
「死ぃねぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ただ斬る。斬り。刻み。
切る切る切る切る切る切る切る「ぎっ」切る切る切る切る切る切る切る「ガッ」切る切る切る切る切る「もうやめ」切る切る切る切る切る切る切る切「あがあぁ!」る切る切る切る切る切る切る切る切る切る!!!!!
[ WIN:李音 ]
簡素なシステムメッセージが勝利を告げ。
ふぉん、とスキルの残滓が獲物の居ない中空を滑る。
「あれぇ?もう終わりなの?もっと斬らせてよ?もっと裂かせてよ?もっと。もっともっと。もっともっともっとぉ!!!!」
(目の奥があつい。きもちいい)
ぐらりと視界が揺れる、膝から力が抜ける。
(あたまがふわふわする。なにしてんだっけ、おれ。
ああ、そうだ。そうだよ。もっと斬らなくちゃ。自分で言ってる…斬る斬る…ki)
石畳が顔に突っ込んでくる。そう見えた。
(たおれた…勝った…きる)
そこを境に俺の意識は。
黒い闇の中へしずんでいった。




