薄暗い闇の中で。
久方ぶりです!結構時間かかりました(滝汗)
バトル回その①。感想聞かせてくれると嬉しいです。
例)もっと長いのあく書けよ 描写足りねぇんだよ 等々……
side:南雲
――ギィン!!
路地裏。そこでわたしと彼女は対峙しています。
――ギィン!!ガギッ、ギィン!!
薄暗い空間。
圧迫感、閉塞感の強い、路地裏。
光源は、路地の上部、僅かに覗く青空と。
―――ギギィン!ギギギン!ギ、ガギィン!!
互いの武器の演出のみ。
「すぅ―――――っ」
息を吸う。そして。
「――っ!!」
止める!!
瞬間、ナイフを投げる。当然に、人体の急所を狙って。
「……ッ!…!…ッ!!……ッ……ッ!…ッ、ィやぁっ!!」
一息の間に、間断なく、ナイフを投げる、投げる、投げる!攻撃する!
銀の閃光を、幾つも、幾つも、薄暗い路地裏の空間に奔らせる……!!
(軌道、タイミング、目標。ミスは無い!!コレなら当たる!!)
吸い込まれるように、投げナイフが。喉元へ、眼球へ、心臓へ。軌跡を描き―――
「……だーから、さー。」
そして、弾かれる。
いともたやすく、弾かれたナイフは、鈍い金属音を立てて地面に叩き付けられる。
「つまんないんだよー。『グレムリン』!!」
その主の声に呼応して奇声を上げる、ずんぐりむっくりのクマのような体形から、長い両腕に鋭い鉤爪を生やした異形の化物。
――グレムリン。
飛行機などに乗り込み、計器にイタズラをしたり、配線を噛み千切ったりする妖精の一種、らしい。
プレイヤーが親しみやすい様にかなりファンシーな外見ではあるが。
確か、課金アイテムの召喚モンスターの中でも、中堅より下程度の強さだった。
「なーにノンビリ思考タイムしてんのさ!まだ、戦闘の最中だよー!」
そう言うと彼女はグレムリンに指示を飛ばしーー
「って、うわわわ!?」
考えに浸りきっていた私に襲い掛かってきました。
皮鎧を、鉤爪がザリッ、とかすめます。
「危ないですね!もうちょっとで当たる所でしたよ!?」
「……え、いや、当たるようにしてるんだけど。もひとつ言うなら潰そうとしてるんだけど……え、もしかしてバカなの?」
「知ってますよそんなの!うるさいですね!」
「え、否定無し?もしかして本当にバカ?」
「違う!!!」
「おー髪の毛逆立ってるー。マジもんの猫みたいだねー。」
「あーもー!貴女は呑気にーーーってゆうか!ズルいですよそれ!『召喚モンスター』!」
背後に立った羽ダルマを指差し、抗議する。
「んぇ?」
「んえぇ?じゃ、ない!!」
軽く地団駄を踏む。
「グレムリン!あんたの後ろにいるヤツ!!」
件の毛ダルマは………主からの合図待ち。あくびかましてやがりました。
「あ。あー。この子の事?なんか課金回したら出たの。
折角引いたんだし、使ってあげないとこの子も可哀想だしね。」
スライムはそういうと頭をぽりぽりと掻く。
「っていうか、さ。それよりーーー。」
「早く対策しないと、その白い喉元、かっさばいちゃうよ?」
ニタニタとわらう。
「このゲーム良くできてるよねー。モンスターを倒せばしっかりと血が出る。肉を裂く手応えもある。ならーーー。」
ニチャリ、と熔けるかのような微笑みを浮かべ。
「人間の肉って、どんな切れ味なんだろうねー。たっのしみー♪」
ぞくり、と、背中に寒気が走る。
『――発動!『凶刃乱舞!!』』
『ぶっ裂く!!!』
『死ぃねぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
『あぁれぇ?もう終わりなのぉ?もっと斬らせてよー?もっと裂かせてよー?もっと。もっともっと。もっともっともっとぉ!!!!』
そう、その姿が、『あの時』のリオンと被って見えてーーー。
「っ、『スロウアクト』ッ!!」
(違う!リオンは、リオンはーーー!)
頭の中でダブったその姿をかき消すようにナイフを投げる。
「って、もう少し話そうよー、もぅ。『グレムリン、弾いちゃって!』」
その声に機敏に反応した『グレムリン』は私の放ったナイフを弾きます。
弾かれたナイフたちは、甲高い音を立て、路地の壁に当たり、跳ね返って。
それは、モンスターの怪力により、グニャリと曲げられてしまい。不恰好な鉄屑のように見えます。
「っち!」
その内の一つ。弾かれ、足元まで飛ばされたものを。
私は、やけくそっぽく足で軽く蹴り飛ばしました。視界の端で、耐久力が切れた、必要ないと見なされたナイフが、独特のエフェクトと共に、消失していきます。
「…まったく。ナイフだって、安くはないのですから、もう少し丁寧に無力化して貰いたい物です。」
平静を装い、軽口を叩きます。
声が震えていなかったかは、少し気になりましたが。
「んー?なに?なんでわたしがあなたの事を気に掛けて戦わないといけないのさ?むーしーろーぉ、こぉんな貧弱ナイフ、何本飛んできたって意味ないしねー。」
……気付かれなかったようです。
しっかし…あー……もう。身振り手振り、やる気無さそうに悪態を吐いてくれやがりました(半ギレ)。
……"ウマ"の合わない人間とでも言いますか、私は目の前の『スライム』に対し、非常に性格の相性が悪いようです。
「ま、どっちみち、あなたがわたしに勝つなんて無理だったってことでー。」
まったくカンに障る言い種です。腹が立ちますね。
「ああ、それは良かった。」
「へ?」
―――ですがそれも一つの事実。
確かに私は『彼女に勝つなんてできないかもしれない』でしょう。
相手は、遠距離から攻撃のできるユニットを持っていて、さらに此方の攻撃を無効化できる。
まさに理想の、私が相手取るには相性最低最悪の遠距離型。
「無理、不可能、無茶難題。そんなの無意味なんですよ。」
状況は絶望的にこちら側の不利。
「全部纏めてひっくるめて、“そんなのは”ただ単に正答を、完全完璧な答えを、叩き出す為に、在るんです。」
―――自分でも解ります。こんな、整合性の無い言葉。
意味なんて無い。必要性も無い、空虚な「嘘」。
でも。その言葉は、言葉にする事で。
口から出すことで。
その場を支える『柱』になる。
そう。あのバカがそうしたように。
「それに、『正義のヒーロー』が必ず勝つように。脚本はそう描かれるのですから。」
私は『戦場』を。私のやりかたで。
捻じ繰り、引っくり返す……!!
「さーて、ここから私の本領、見せ場、真骨頂!この先のシーンは、私の勝ち描写山盛り、ギガ盛り、おかわり自由タイムってなもんなんですよっ!!」
高らかに宣言して。
足元にトラップの基礎詠唱を気付かれないように施しておく。
「勝つのは、私です!」