栄養ドリンク男の番外編・イルミネーション準備中
真の最終回の前編です。
まずは和目線です。
「真琴さん?」
「あ、和くん。遅かったねー」
「なんで居るんですか?」
俺が仕事を終わって外に出ると、入口の前で白いコートを着た真琴さんが立っていた。
日も暮れて雪も降ってて寒いだろうに。明日会う約束してるんだから明日でもいいのに・・・
そう思って真琴さんに訪ねた。
「ちょっと和くんに会いたくなったから来ちゃった」
グハッ!!
その笑顔に今のセリフは反則ですよ。目の前で死人が出ます。
心の中で血反吐を吐きながら真琴さんを見る。
やっぱり恥ずかしいのか、真琴さんも赤くなってるし。可愛いなぁ。
「可愛いって・・・こんなところで言わないでよ」
「あ、すみません! つい心の声が・・・」
「ま、いいや。じゃあどっか行こっか」
「どこ行きます?」
「なんか良いとこない?」
相変わらず無計画だなぁ。ってこんなこと言ったらまた怒られるから自重しないと。
「行きたいとことか無いんですか?」
「うーん・・・」
「あれ? そういえば今日からじゃなかったでしたっけ?」
「何が?」
「ほら、大通公園でイルミネーション始まるじゃないですか!」
「今日からだっけ?」
「あれ? 違いましたっけ?」
「えー。和くんがそーゆーこと言うからわからなくなってきたじゃん」
「俺のせいですか!? じゃあせっかくだし見に行ってみましょうよ」
「やってなかったらご飯おごってね」
「やってたらその場でキスしてやりますからね」
「!!!」
謎の勝負が成立してしまうのも真琴さんだからなんだろうなぁ。
相変わらず真琴さんは恥ずかしがりやというかなんというか、外でキスするのに慣れてない。
まぁ俺としても慣れないほうが、真琴さんの恥ずかしがる顔が見れるからいいんだけどね。
歩きだした真琴さんの手には、いつのまにか取り出した豆乳が握られていた。いつ出したんだ?
「お、見えてきた! ってやっぱりやってないじゃん!」
大通公園に着くと、完全に準備中のイルミネーション達が俺たちを迎えてくれた。
これで夜ご飯は俺が奢ることが決まった。元々払うつもりだったから大した痛手ではないけどね。
「でもこれはこれでレア度高くないですか?」
「私、逆に準備中って初めて見たかも」
「でしょ? せっかくだし歩きましょうよ」
真琴さんの手を引いて公園を歩く。
いざ電飾が点いたら何かわかるんだろうけど、今の段階だと何か全然わからない。
二人で歩きながら、電飾の点いていないイルミネーションの正体を当てながらのんびりと歩いていく。
「これなんだろ?」
「なんですかね? 佳子さんならわかりそうですけどね」
謎のアニメキャラクターのイルミネーションがあって、それだけは全然わからなかった。
「ふぅ。なんやかんやで全部見ましたねー」
「歩いたらお腹減ってきた」
「俺もです」
「おっ。久々にシンクロしたねー」
「そうですか? で、どこ行きます?」
「私、あそこ行きたい。和くんと初めて行ったびっくりゴリラ」
「あーいいですねー。こっからだと近いですし。そっち向かって歩きましょうか」
あのアニメショップ前を通って行くので、自然と初めて真琴さんとデート(?)した時と同じコースを通ることになった。
懐かしいなぁ。あの時、お腹が減らなかったら今真琴さんと付き合ってなかったんだろうなぁ。
そう思うと俺の愛のキューピットって胃袋? ありがとう胃袋さん。
「急にお腹撫でちゃってどうしたの? そんなにお腹減った?」
顔を向けると、真琴さんが笑いながらこっちを見ていた。
素直に今考えていたことを真琴さんに話した。
「胃袋神か。でも確かにお腹減ってなかったら今の私はいないもんね」
「真琴さん」
「ん?」
「好きです。真琴さんに会えて、今とても幸せです」
「そんなの今言わなくても・・・・・・私も好きだよ。すごい好き。和くんのこと大好き」
真琴さんの『好き』の三段活用は破壊力がありすぎるな。
あ、やべー。なんかすごいキスしたくなってきた。
よし。周りに誰もいないな。
「真琴さん。キスしてもいいですか?」
「へっ?!」
「大丈夫です。今なら誰も見てませんよ」
「え、ちょっと、でも恥ずかしっ、んっ!」
強引にキスしてやった。最近、照れる真琴さんを見るとどうしても我慢できなくなって、無性にキスしたくなってしまう。
本当はこの気持ちも抑えたほうがいいんだろうけど、抑えられない気持ちというのもあるのだ。
多めに見てください。
顔を離すと、真琴さんが珍しく不服そうに赤い顔で怒ってた。
「もう! なんでそうやって無理矢理するのさ!」
「だって真琴さんが可愛いんですもん」
「なんでもかんでも可愛いって言えば私が許すと思ったら大間違いよ!」
・・・マジギレ?
「マジギレよ! たまには私の了解をとった上でキスしてよ!」
「ちょっと、真琴さんっ。叫ばないでくださいよ」
「これが叫ばずにいられますか! いっつもいっつも強引にしてきて! 私にだって心の準備ってものが!」
「真琴さん。みんな見てますよー・・・」
周りにはさっきまでの静かさが嘘のように、人でいっぱいだった。その中で叫んでいる真琴さんは目立ちまくっていた。
ハッとして周りを見て、カァっと赤くなった顔を押さえて俺の胸に飛びついてきた。
そのまま背中に手を回して真琴さんを抱きしめる。
「おバカさんですか?」
「もう・・・いじわる。もっと早く教えてよ・・・」
これだから真琴さんは可愛い。付き合えば付き合うほど味が出てくる真琴さん。
まるでスルメのようだ。
「・・・誰がスルメよ」
「あ、聞こえてましたか・・・」
真琴さんに胸を軽く叩かれたあと、二人でびっくりゴリラへと歩いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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