栄養ドリンク男・最後の話
真の最終回
「いらっしゃっせー!」
今日は俺と真琴さん、先輩、山田さんの4人であのラーメン屋に来ていた。
「まいどー」
俺たち4人はボックスの席に腰をかけた。
前と同じ席だけど、俺の隣には真琴さん、向かいの席に二人の山田さんが座っている。
店員のおばちゃんが来た。
「いらっしゃいませ。今日は何にする?」
「俺、味噌」
「私は豆乳」
「私はじゃがバター」
「ちょっと!なんで皆メニュー見てないんですか!?」
「「「だって決まってるもん」」」
そんなにハモって言わなくても・・・
「じゃあ佐々木くんは何にする?」
おばちゃんが笑いながら聞いていた。
「じゃあ・・・醤油で」
「まいど」
やっと決まった。
ん?なんか変だな?
「あのーなんで俺の名前知ってるんですか?どっかで会いましたっけ?」
「え?なんでって」
「あーあーあーあーあーあーあーあー!!!!」
「どうしたの佳子?」
急に山田さんが叫び始めた。
笑いながら去っていくおばさん。
向かいで先輩も笑ってる。
「なぁ佳子。もういいんじゃね?」
「えー!恥ずかしいって!」
「おじさん!佳子がここのこと自慢するの恥ずかしいらしよ!」
「なんだと!?」
カウンター席の向こう側にいた店主らしきおじさんが、もの凄い形相で振り返った。
「佳子!どういうことだ!?お前はここの跡取り娘としてラーメンの修行をだな!」
「あ、跡取り娘!?!?」
俺と真琴さんは驚いて顔を見合わせる。
「だから跡なんか継がないって何回も言ってるじゃん!」
「もうお前が生まれた時から決まってたんだ!」
「勝手に人の運命決めんなし!」
向かいで笑っている先輩にたずねた。
「ど、どいうことですか?」
「ここ佳子の家なんだよ」
「え!?ホントですか?」
「もともとおじさんは自分の子どもに店を継がせるつもりでラーメン屋をやってたらしいんだけど、まさか女の子が生まれてくるなんて考えてもみなかったそうだ」
「そうなんですか・・・」
「で、佳子はそんなおじさんと家族に見られるのが嫌だったから隠してたってわけ」
「じゃあ連れてこなければいいのに・・・」
真琴さんがつぶやく。
山田さんはまだ白熱バトルの真っ最中。
「まぁ高倉さんのことを佳子がおじさんに話したら、『よし!豆乳ラーメンでも開発するか!今度その子を連れてきなさい!』ってなったらしいよ。実際ここのラーメンうまいしな」
「珍しいと思ってたら佳子のお父さんが考えたんだ」
「でもおじさんが第一人者ってわけでもないけどな」
カウンター席のほうを見ると、山田さんのお父さんと山田さんが二人しておばさんに怒られてる。
他のお客さんも「元気が良い娘さんだねぇ」とか言ってるだけで、全然気にしてない様子。
「ちなみにあのおばさんは佳子のお母さんだ」
「そんな気はしてました」
その後ラーメンが運ばれて、みんなで美味しく食べた。
食後。
「よし。決めた」
先輩が急に言った。
「どうかしたんですか?」
こっちの質問には答えずに、先輩は立ち上がりカウンター席の前に立った。
正確にはその向こう側にいるおじさんに見える位置に立った。
「おじさん」
「ん?どうした?」
「佳子さんと付き合ってもいいですか?」
「もちろんだ!頑張れよ!」
カウンター越しに男と男の熱い握手を交わした。
「異議ありっ!なんで当事者の私を置いてけぼりで話進めてんの!?」
山田さんが立ち上がって指をさしながら講義する。
「先に周りを固めておこうかと。というわけで俺と付き合わないか?」
店内の時間が止まった。
真琴さんが口を両手で抑える。
そりゃ驚くわ。
だって他のお客さんがまだいるところで告白が始まったんだ。
先輩のことなのにこっちまでドキドキしてきた。
みんなが山田さんの答えを待っている。
「そんなの・・・良いに決まってるじゃん!!」
「おぉ~!」
店内に拍手が鳴り響いた。
「やったな!兄ちゃん!」
「幸せにしてやれよ!」
「これで跡継ぎは決定だな」
みんなが口々に言った。
「よかったー」
「なんかこういうのいいですね」
「佳子もずっと山田さんのこと好きだって言ってたしね」
「え?そうなんですか?」
「うん。内緒にしててって言われてたから言わなかった。ごめんね」
「いいですよ。それにしてもこのまま結婚しちゃいそうな雰囲気ですね」
「だね」
二人で顔を見合わせて笑う。
店内にはキスコールが始まっていた。
照れる二人を見てる真琴さんの横顔をちらりと見た。
俺も真琴さんを幸せにしようと決めた。
終わり。
真の最終回まで読んでいただきありがとうございます。
前回の予告通り、ホントのあとがきとなります。
詳細はユーザーページの「活動報告」ご覧ください。
まず「豆乳女と栄養ドリンク男」をごらんいただきありがとうございます。
僕の処女作というわけではないんですが、こんなに長く連載したのは初めてでした。
それも応援・閲覧してくれたみなさまのおかげです。
ほんとにありがとうございました。
一応次回作も毎日投稿という形で続けて行きたいと思ってますので、そちらもよろしくお願いいたします。
次回作は最初からやりたかったはずのコメディにします!
というわけで長くなりすぎてもアレなので、ここらへんで終わりたいと思います。
今まで応援していただきほんとにほんとにありがとうございました!!
ノシ