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豆乳女・サプライズ

時刻、午後4時半。


少し話し込んでしまった私たちは、ロッテリアを出ると次の古本屋へ向かった。

その間に、カバンから豆乳を取り出して、エネルギーチャージするのを忘れない。

次というか今日最後の古本屋だった。

黄色い看板に青い文字の古本を扱うお店だ。

しかもここはそのお店のなかでも大きいほうで、ジャンルによってフロアが分かれている。

私は見る商品のフロアが違ったので、店中で佳子と別れて中古本を漁った。


そして今。

レジで会計を済ませて外で待っている佳子の元へと向かった。


「お待たせー」

「お?その顔はなんかいいの見つけたな?」

「まぁね」


今の私はすごくご機嫌だ。

もともと買う予定だった本が定価の半額で売っていたのだ。

中古だろうがなんだろうが読めてそれなりに状態が良ければいいので、新品とか中古とかは気にしない。

本もきっと喜んでいるはずだ。


「何冊買ったの?」

「多分10冊ぐらいかな」

「ちょっ!なんという大人買い!」


少しジャンプしてみるとリュックがかなり重かった。

はぁ。幸せ。

リュックで来ててよかった。


「あんまり回ることしないからこーゆー時に沢山買っておかないと!」

「はいはい。よかったですねー。じゃあ隣寄ってもいい?」

「ってそのつもりだったんでしょ?」


隣というのは、例のアニメショップのことだ。

今日は新刊が出るから買いたいらしい。

佳子に続いて階段を登って店内に入った。


「じゃあまこちゃん。行ってくるね」

「いってらっしゃい」


佳子を見送っていつものように店内をぶらぶらする。

不意に思い出した。

和くんってここで『通常』を読んだんだっけ。

たしかあの出版社は・・・

こう見えて一応書店の社員をしているんだ。

出版社さえわかればなんとなくで見つけられる。


「あった」


さすが私。

早速見本を読んでみる。



数分後。


何これ!すごい面白い!


「お待たせー!ってまこちゃんも『通常』読んでるし」

「佳子!これ面白すぎ!私にも貸して!」

「ついにまこちゃんがこっちの世界に!」

「私は本だけでいいからね」

「なんてこったい!」


大げさに頭を抱える佳子。


「でも今私もってないんだよねー」

「もしかして売っちゃったの?」

「違う違う。まだあんたの彼氏くんから帰ってきてないのだよ」

「まだ返してなかったんだ。じゃあ今度会ったときに聞いてみるね」

「何を悠長な・・・。そんなに待たなくたって、今メールで聞いてみたらいいじゃん」

「でも仕事中だろうし・・・」

「メールなら大丈夫だって!もしそれで佐々木くんが怒られてたら、私が五郎をぶん殴ってやんよ!」


たしかにメールなら仕事中だったとしても、あとで見ることできるよね。


「わかった。じゃあ聞いてみる」


ポチポチっと。


「こんな感じでいいかなぁ?」

「ん?どれどれ?ってなんで私が確認しなきゃならんのだ」


笑いながらスマホをのぞき込んでくる。


『こんばんわ。佳子から借りてる『通常』を借りたいんだけどいいなかぁ?仕事中ならあとで返事ちょうだいね』


我ながらすごい無難な文章だと思った。


「なんか他人のメール見るのってちょっとドキドキするね」

「そう?見せてるから問題ないよ」


というわけで送信っと。


「あとは返事を待つだけ」

「じゃあこのあとどうする?」

「リュックも重くなってきたし帰ろうかな」

「だねー。私も戦利品を読みたいし」

「じゃあ解散ってことで。お?・・・もう返事返ってきた」

「早いな。サボリ中か?五郎にチクッてやろう」


スマホを操作して内容を確認した。


『こんばんわ。いいですよーって言っても山田さんの了解を貰わないとダメですけどね(笑)』


すぐに返事を返す。


『仕事中かと思ってた(笑)今佳子と一緒に居るんだ。だから問題ない』


送信。

そしてすぐに着信。


『もしかして休みだったんですか?俺も今日は休みでした。連絡すれば良かったです』


「和くんも今日休みだったんだって!」

「なんと!あんたらは互いの休みも確認しないのか!」

「うん・・・こんなことなら聞いておけば良かった。まぁでももともと佳子と遊ぶ予定だったから仕方ないよ」

「私のことなんか気にするな。付き合いたては一番アツアツなんだから会えるときは会いなよ。そして私に面白い話を聞かせてくれ」


きっと後半が本音だろう。

とにかくまずはメールを送信。


『じゃあ今は家にいるの?』


送信&着信。


『いえ、今は友達とあのアニメショップの近くにいます』


「和くん近くにいるって!」

「ホントにすごいシンクロ率だな!これなら暴走モードも制御できるよ!」

「どうしよう?これってどうしたらいいの?私って大丈夫?どんなことしたらいいの?」

「うん。落ち着け。言葉がよくわからなくなってきたから落ち着け。深呼吸ー」


すーはーすーはー。

ちょっと落ち着いた。


「よし。こうなったら会っちゃえ。どうせ会いたいんでしょ?」

「うん」

「素直でよろしい。ならまずはメールを返そう」


佳子に言われたとおりにメールを送る。


『今私そこのアニメショップにいるよ』


リリース&キャッチ。


『マジすか!って見つけました』


「佳子。見つけたって・・・」


顔を上げると、ニヤニヤした佳子の隣に和くんが立っていた。


「こんばんわ。真琴さん」


微笑んだ和くんが言った。


「こ、こんばんわ」


自分でも不思議なくらい緊張していた。

きっと顔は真っ赤になっていたと思う。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると激しく躍り狂います。


というわけで、今回のテーマは「すれ違い」でした。


次回もお楽しみに!


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