栄養ドリンク男・VS豆乳鍋
言い忘れてますが、現在9月です。
なんと。こんなに展開が早くていいのかと思うほどの早い展開に驚いている。
今、俺は高倉さんの家の中にいる。
手料理をごちそうしてくれるという高倉さんを台所へと見送った直後だ。
テーブルの前にちょこんと正座をしてキョロキョロしている。
何をしていればいいのかわからず視線をさまよわせている。
それにしても・・・
「すごい本棚だなぁ」
部屋にはベッドとテレビ、テーブルと座椅子、そして壁一面をほとんど覆う形で本棚があった。
しかもその本棚は全てがぎっしりと詰まっているわけでもなく、多分棚ごとにジャンルを分けていると思われる。
ある棚はぎっしりと詰まっていて、ある棚は本が倒れるぐらいスカスカだったりした。
本はいろいろなジャンルの本があった。
思わず本棚に近づいて本の後ろに書いてあるあらすじを読んでみたりする。
ちょっと本屋で立ち読みしてるみたいな感覚になる。
「人の部屋を物色するとは何事かね」
「うおっ!」
いつの間にか背後に高倉さんが立っていた。
俺、そんなに本読んでたのか?
時々高倉さんってこんな口調になるよな。
「私はおとなしく待っててねって言ったはずなんですけど」
すごいジト目で見てくる。
これ怒ってるのか?
「別に怒ってないけどさ。これすごいでしょ?」
表情を戻して本棚を指さした。
「すごいです。本屋で立ち読みしてるみたいでした」
「これね、一人暮らししたらやりたかったんだよねー。実家だとこんなことしてるとお父さんが拗ねちゃうから」
「怒るんじゃなくて拗ねるんですか?」
「うん。子どもっぽいお父さんでね。私が構ってあげないとお母さんに泣きつくの。真琴が構ってくれないよー!って」
変なお父さんでしょ?、と言って笑った。
僕もつられて笑う。
「いいお父さんじゃないですか」
「まぁね」
高倉さんの笑顔は素敵だ。
「そういえば料理はどうしたんですか?」
「今はコトコト煮込んでます」
「何作ってるんですか?」
「それは見てからのお楽しみ」
~なんやかんやで10分後~
そろそろかな?、と言って台所へと向かった高倉さん。
俺はおとなしくテーブルの前に正座して待っていた。
そのテーブルの上にはガスコンロが置いてあった。
「動かないでねー」
そう言いながら台所から戻ってきた高倉さんが持っていたのは、土鍋。
そう。今夜は鍋だった。
ガスコンロの上に土鍋を置くと、カチッとコンロに火をつける。
「さぁたくさん食べてねー」
言いながら蓋を取ると白い湯気が立ち上った。
そして鍋の中身も真っ白だった。
豆乳鍋である。
「うわぁ・・・」
「あれっ?ごめん、もしかして豆乳鍋嫌いだった?」
「いや、初めて食べます」
「初めて!?こんなに美味しいものを初めて食べるなんて人生損してるよ!」
豆乳トークでテンションが上がった高倉さんが、色々喋りながらお玉で具をすくってくれた。
受けっとった器には白菜、豆腐、ネギ、しめじ、えのき、肉とおそらくすべての具が入っていた。
「さぁお食べ。いただきます」
「いただきます」
自分の分をよそった高倉さんといただきますをして食べ始める。
汁を飲む。豆乳の味はするけど、独特の豆乳臭さはない。
そして豆腐、ネギと次々と口に入れていく。
ふと高倉さんを見ると目が合った。
恥ずかしかったのか、高倉さんはすぐに視線をそらす。そのまま見てると、また目が合う。
チラチラと見ているようだ。
表情から察するに美味しいかどうか問われているようだ。
「美味しいです。初めて食べましたけど、美味しいです」
「ホント!?」
急に目を輝かせる高倉さん。
可愛い。
ちょっと長めに高倉さんを見てニヤけた。
また食事を再開する。
「これってどうやって作るんですか?」
「ただ豆乳入れて具材入れて煮込むだけ!」
「そんなに簡単なんですか」
「手抜きしてるとか思ったんでしょー」
「思ってませんよ!」
ホントニオモッテマセン。
「まぁ佳子にもよく作ってるし、簡単だしね。それに豆乳減らしに来たって言ってたから豆乳料理のほうがいいのかと思って」
「料理ってよくするんですか?」
「外食だとそれなりにお金かさんじゃうからね。基本自炊かな」
「へー。意外でした」
「私ってどんなイメージなのさ」
「うーん・・・ご飯食べるよりも、、豆乳飲みながら本ばっかり読んでて、気づいたら寝てて、ご飯食べそこねたー!ってなってる感じですかね」
「さすがにそれはない・・・こともないかな」
「じゃああることもあるんですね」
「いや、ないこともないけどあることもないとはいいきれないけど時々なきにしもあらず」
よくわからないことを言ってる高倉さん。
きっとよくあるのだろう、と解釈しておく。
「わけわかめですね」
「海草パラダイスだね」
「何言ってるんですか?」
「よくわかんない」
そして豆乳鍋を完食した。
2人前ぐらいの土鍋なので普通に美味しく食べれた。
「ねぇ。お腹いっぱい?」
「はい」
「デザートとかあるんだけど食べてみない?」
「デザートまであるんですか?」
「昨日の夜に作っておいて、今日の夜に帰ってきてから食べようと思ってたの」
「お菓子も作るんですか」
ちょっと驚いた。
「ううん。初めて」
「そうでしたか。で、なに作ったんですか?」
「豆乳レアケーキ」
「・・・なんですか?それ?」
ってゆーかどんだけ豆乳好きなんですか?
ここまでご覧いただきありがとうございます。
よろしければ感想とかどうですか?
しかし、今年の秋は気温が安定しませんね。
体には気を付けましょう。
では次回もお楽しみにー!