栄養ドリンク男・食事
「ほんとにここでいいんですか?」
「だから何回聞かれても答えは一緒だよ。佐々木くん」
今、俺と高倉さんはハンバーグレストランの前に立っている。
特に高級とかでもなく、有名でもない・・・いや、チェーン店だから有名なのか?
よくわからなくなってきた。
こーゆーのってちょっといいレストランみたいなところに行くかと思ってたんだけど、高倉さんが「別にどこでもいいよ。あ。あそこにしようよ」みたいな感じで勢いで決まってしまった。
お金なら俺が払うから問題ないのに。もしかして遠慮してるのか?
「え?遠慮なんてしてないよ?」
「あー・・・ですよねー」
「とりあえず入ろうか」
「ですよねー」
なんか高倉さんに引っぱってもらってばっかりだな。俺。
前を歩く高倉さんについて階段を登る。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「あ・・・」
「二名です」
「おタバコは?」
「吸いません」
高倉さんが店員に話しかけられて固まったので、俺が答えた。
今日一日(実際は1時間半ぐらい)高倉さんと行動を共にして分かったことがいくつかあった。
一つ目。『計画性がない』
最初のアニメショップの時もそうだったけど、意外と行き当たりばったりな人だ。
それも真っ先に走っていって、崖に落ちてから困っているタイプの人間だ。
二つ目。『興味があるものと無いものの差がはっきりしてる』
豆乳ラーメンの時もそうだったけど、自分の興味があることはすごい楽しそうだけど、どうでもいいときはホントにどうでもいいような口調になる。
でも普段から淡々とした話し方なので、あんまり気にならないところが高倉さんの魅力かも。
最後に三つ目『子供っぽい』
多分本人に言ったら怒りそうなので細心の注意を払う。
嬉しい時はホントに嬉しそうに笑うし、さっき登っていた階段も、少しウキウキしながら軽快に登っていた。
こんな高倉さんがモテないのはなぜだろう?
俺なんかイチコロなのに。
「ここってこんななんだね」
「こんなってなにがですか?」
「ん?内装のこと」
ここのハンバーグレストランもとい、『びっくりゴリラ』は普通の店舗のジャングルみたいな内装とは違い、大きな木の中にあるような内装になっている。
また、ボックス席よりもカウンター席のほうが多くなっているのも珍しい。
「ここ初めて来たんですか?」
「うん。佐々木くんは来たことあるの?」
「まぁ何回かですけどありますよ」
「ふーん。なに食べる?」
高倉さんと話をすると、話題がコロコロ変わる。
だがそれが楽しい。
それぞれが注文(もちろん店員へは俺がした)したあと、俺は高倉さんに聞きたかったことを聞いてみた。
「そういえば高倉さんって豆乳好きなんですか?」
「え、あ、うん」
微妙に聞くタイミングがなかったから聞いただけなのに、高倉さんの反応がちょっと変だ。
乗ってくると思ったのに。地雷だったのかなぁ?
「・・・変だよね」
「え?」
「豆乳好きだからって飲みすぎーとか思ってるんでしょ?」
「お、思ってませんよ!」
「またまた。だって私の職場の人たちも『また豆乳飲んでるの?』みたいにバカにしてくるもん」
「職場は知りませんが、俺は思ってないですよ」
職場は職場。俺は俺だ。
ってゆーか高倉さんがそんなに気にするような人だったとは・・・。
「それに豆乳好きって言ってますけど、俺だって栄養ドリンクが好きなんですよ。毎朝欠かさずの飲んでますし、さっきだってコンビニの前で飲んでるの見たでしょ?あんな感じでよく飲んでるんですよ。だから豆乳ばっかり飲んでたって気にしませんって」
我ながら結構な長台詞だったと思う。
「え?栄養ドリンク好きなの?」
「はい。って別に自慢するようなことじゃないですけどね。アハハ」
急に素で返されて恥ずかしくなってきた。
「ふーん。佐々木くんて変わってるね」
「今、自分のこと棚に上げませんでしたか?」
「栄養ドリンク男は黙ってなさい」
「高倉さんだって豆乳女じゃないですか」
「何を失礼な・・・ぷっ」
「アッハハハハハハ!」
「ハハハハハハ!」
おかしくなって二人で同時に二人で吹き出した。
高倉さんってこんなに笑うんだなぁ。
「お客様。他のお客様もおりますので・・・」
「あ、すみません・・・」
店員が後ろに立っていて注意されてしまった。
「お待たせしました」
どうやら注文した品を持ってきたついでに注意したらしい。
「さ。食べましょうか。栄養ドリンクさん」
「そうですね。豆乳さん」
知ってますからね。ドンキー=ロバですよね。
わざとゴリラにしてるんですよ。
ここまで書いてて思ったんですが、「オレンジのコンビニ」ってわかりますよね?
地方のコンビニだけど有名ですよね?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もおたのしみにー




