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姉様は乙女ゲームの悪役令嬢

『弱くて可憐な姉』の取り扱い説明書〜弟の愛が重すぎて、世界を裏から支配することにしました〜

作者: 花庫
掲載日:2026/10/08

『愛する姉様は乙女ゲームの悪役令嬢~姉様を守るため脱!乙女ゲーム!脱!断罪ルート!脱!国外追放!』https://ncode.syosetu.com/n9457mv/

のアンサーストーリー


「可愛すぎる弟の勘違いと暴走を、お姉様はいかにして愛で、完璧に手のひらで転がしていたのか」——アイリス(姉)目線のアンサーストーリーです!


『愛する姉様は乙女ゲームの悪役令嬢~姉様を守るため脱!乙女ゲーム!脱!断罪ルート!脱!国外追放!』を是非先に読んでからお読みください。


愛する姉様は乙女ゲームの悪役令嬢~姉様を守るため脱!乙女ゲーム!脱!断罪ルート!脱!国外追放!

https://ncode.syosetu.com/n9457mv/


鏡の前で淡い桃色の髪を整えていると、背後から愛しい弟——レオンがそっとリボンを添えてくれた。


「姉さん、今日の髪型も世界で一番似合っていますよ」

「ありがとう、レオン。ふふ、あなたにそう言われると本当に綺麗になれた気がするわ」


少し首を傾げて微笑むと、鏡の中でレオンが感動に震えている。

(……ああ、今日も私の可愛い弟は、世界一尊いわね)


白状すると、私は自分の「顔立ち」と「雰囲気」の使い道を熟知している。

可憐で、儚げで、のんびりとしていて、主張しない伯爵令嬢。

それが私——アイリス・フォン・ローゼンベルクの表の顔だ。

けれど、私の内面はそんなにヤワじゃない。何しろ、お父様の「冷徹な洞察力」と、お母様の「一度敵と定めたら絶対に逃がさない狩人の血」を完璧に受け継いでいるのだから。


そして何より、私には人生をかけて護るべき「宝物」がある。

それが、前世の記憶とやらを持ち、私を過保護なまでに愛してくれる弟のレオンだ。


思い返せば、レオンが7歳の頃。

お父様の執務室で「なぜ僕をあと2年早く産まなかったのですか!?」と机を叩いて大泣きしていたあの頃から、私は悟っていた。


(この子は私を『乙女ゲームの悲劇の悪役令嬢』だと思い込んでいて、私を守るために命を削ろうとしているわ)


正直、乙女ゲームなんてどうでもいい。

公爵家のドラ息子からの婚約打診?

あんな下品で手癖の悪い男、私自身が裏で社会的・物理的に潰そうと準備を進めていた。だが、私が手を下す前に、11歳になったレオンが目を血走らせて魔道具を売りさばき、情報を流し、完璧に廃嫡まで追い込んで消し去ってくれた。


……報告書を読んだ時、私は自室で悶絶した。

(何て健気なの……! 私のためにそこまで……っ! 可愛すぎて頭がおかしくなりそう……!)


弟の健気な暴走を傷つけないよう、私は「あら、婚約のお話、いつの間にか立ち消えになって良かったわねぇ」と呑気な可憐な姉を演じ切った。

裏で糸を引いていたお父様とは、視線だけで『レオンの成果を褒めてあげましょうね』と無言の合意を交わした。


◇


そして、私がグランドール魔導学園に入学して半年。


王太子のシルヴェスター殿下が、私に近づいてきた。

自作自演で私を助けたフリをし、私の「高純度の魔力」を利用しようと生徒会に勧誘してきたのだ。

さらに、男爵令嬢のアリアという少女。彼女は怪しげな魅惑魔道具で男子生徒を魅了し、私に対して不自然な殺気を向けていた。


(……ウザいわね)


私は入学3日目で、生徒会の不透明な帳簿の裏金をすべて暗号解読し、シルヴェスター殿下が王室の資金を不正流用している証拠を完璧に押さえた。

アリアの魅惑魔道具の波長も、お父様から贈られた鑑別魔道具で特定済み。いつでも王立騎士団に通報して、国家叛逆罪で吊るし上げられる状態に整えていた。


ただ、私は待っていたのだ。

……だって、王都から届くレオンの手紙にこう書いてあったから。


『姉さん、僕が飛び級試験に合格して、すぐに行きます! 絶対に僕が守りますからね!』


(ふふ、レオンが私をヒーローのように助けに来てくれるのね。それなら、その舞台を整えてあげなくちゃ)


私はわざと決め手を出さず、おとなしく「困った可憐な先輩」を演じてレオンの到着を待った。


◇


そして今日。

超特例の飛び級試験を圧倒的な破壊力で突破し、学園の廊下に現れたレオン。

抱きしめた時の小さくてあたたかい体。半年ぶりに嗅ぐ弟の匂い。


「姉さん……! 会いたかったです!」

「ふふ、おめでとう。レオン」


そこに、空気を読まないシルヴェスター殿下とアリアが割り込んできた。

殿下はレオンを自分の手駒にしようと勧誘し、アリアは「アイリス様ばかり特別扱いズルい!」と金切り声を上げる。


レオンは即座に「善人な弟」を演じ、涙目で辞退してみせた。

(ふふ、嘘泣きも上手になったわね、可愛いわ)


けれど、アリアがさらにレオンを責め立てようとした瞬間——

私の胸の中で、お母様から受け継いだ「狩人の血」が冷たく沸騰した。


(……私の可愛いレオンに、汚い声を浴びせないでちょうだい)


私はそっと一歩前へ出た。

首を少し傾げ、おどおどとした「儚げな姉」の仮面を被る。


「あの……アリア男爵令嬢……? 私の弟は……まだ11歳で幼いですし、自分自身の未熟さを心配して辞退しただけなのです……。それを『ズルい』とおっしゃられても……あの子、何か悪いことをしてしまったのでしょうか……?」


声は可憐で、儚げで、震えている。

だが、アリアの瞳をじっと見つめる私の瞳の奥には、「これ以上私の弟に不快な言葉をかけたら、例の公爵令息みたいに社交界から消してあげるけれど、覚悟はできているかしら?」という絶大な殺意を込めておいた。


「ひっ……! あ、いや……別に責めたわけじゃ……!」


本能的な恐怖を察知したアリアが、顔面を蒼白にして後ずさる。

(あら、察しがよくて結構ね)


続いて、シルヴェスター殿下へ向き直る。おっとりと、柔らかく微笑みかけながら。


「殿下……アリア様はきっと、生徒会で殿下のお役に立とうと一生懸命になられているのですね……。素晴らしいご意気込みですわ。……アリア様、私のような者には分からないけれど、きっと何か素敵なご実績を準備されているのでしょう……?」


(逃げ道は塞いだわ。帳簿の不正を隠したまま、実績ゼロのアリアを生徒会に入れる口実なんて、殿下には作れないでしょう?)


言葉に詰まり、冷や汗を流す2人。

完璧なチェックメイトだ。


横を見ると、レオンが「姉さん! 自分は出しゃばらず、相手を立ててあげるなんて……! なんてお優しいんだ……!」と感動に目を輝かせていた。


(……ふふっ。やっぱり気づいていないのね。本当に可愛いわ)


「では殿下、失礼いたします。レオン、行きましょうか」

「はい、姉さん!」


2人を置き去りにして歩き出す。

レオンはポケットの中で録音魔道具を操作し、「王子の不正を暴いて、姉さんに内緒で失脚させてやる……!」と鼻息を荒くしていた。


(ええ、頑張ってねレオン。あなたが集めた証拠と、私がすでに握っている証拠を合わせれば、王太子の首なんて一発で飛ぶわ。あなたが『僕が守ったんだ!』って達成感を得られるように、最後のおいしいところはあなたに譲ってあげるからね)


「レオン?」

「はい、姉さん!」

「ふふ、やっぱりレオンが近くにいてくれると安心するわ。私、要領が悪いから……レオンがいてくれないとダメね」


くすくす笑いながら、伸び上がってレオンの頬にチュッとキスをする。

真っ赤になって「僕が一生、害虫どもから守って養いますからね!」と叫ぶ弟。


(ええ、楽しみにしているわ。私を世界一愛してくれる、可愛い私の騎士様)


脱!乙女ゲーム?

脱!断罪ルート?


ふふ、そんなもの、最初から存在すらさせないわ。

私の可憐な手のひらの上で、弟が一生懸命に世界を救おうと走り回る——この最高に愛おしい日常を、私は誰にも邪魔させないのだから。

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