勇者は静かに戦いたい ~なのに聖剣が毎回ライブを始める~
毎度毎度の異世界ファンタジーの疑問
勇者が「希少な材料」で名工に武器を注文する。もし、鍛冶屋が勇者の理想とかけ離れた武器を作ったらどうするのだろう? そんな疑問で1本書いてみました。(また、鍛冶屋ものです。5作目参照)
第9作目
王都の外れ。
ドワーフ鍛冶師フレア・ビルハートの工房には、その日いつも以上の熱気が満ちていた。
工房の中心でフレアは胸を張っていた。
「ついに完成したよ!究極の一振り!」
工房へやってきた勇者レオンハルトは期待していた。
魔王討伐の切り札。
希少な七色の魔鉱石で作られた究極の聖剣。
名工フレアが人生を懸けて鍛えた一振り。
そのはずだった。
「……」
レオンハルトは無言になった。
台座の上に置かれた聖剣を見て。
「どう?」
「率直に言っていいか?」
「もちろん!」
「何があった?」
「最高傑作ができた!」
「そうじゃない」
レオンハルトは頭を抱えた。
まず鞘。
純白の下地に金細工。
宝石。
装飾紋様。
ここまではいい。
問題はその合間に彫られた花柄とリボンだった。
さらに小さなハート。
さらに猫。
さらに星。
なぜか妖精。
少女向け高級アクセサリーと聖剣を混ぜて爆発させたような見た目だった。
「可愛くない?」
「勇者の装備なんだが」
「可愛いじゃん!」
「否定はしないけど、何か違う!」
恐る恐る剣を抜く。
シャリン。
刀身が露わになる。
レオンハルトはさらに沈黙した。
漆黒。
その表面には紫色の脈動するような紋様。
所々に赤黒い光が揺らめいている。
どう見ても聖剣ではない。
封印から解き放たれた邪神の遺物だ。
「フレア」
「うん」
「俺、勇者だよな?」
「そうだね」
「魔王じゃなくて?」
「勇者だね」
「じゃあなんで聖剣が魔王より邪悪そうなんだ?」
フレアは首を傾げた。
「だってかっこいいし」
「発想がお子様なんだよ」
しかしフレアは全く気にしていない。
目を輝かせながら説明を始める。
「見た目だけじゃないよ!」
「嫌な予感がする」
フレアは剣を軽く振り下ろした
「第一の機能!」
バチバチバチィッ!!!
工房を青白い光が埋める。
雷鳴まで轟いた。
レオンハルトが飛び退く。
「おお!?」
「どう?」
「雷属性か!?」
「違う!」
「違うのか!?」
「雷っぽい演出!」
「演出!?」
「ほら、強そうでしょ?」
「……」
工房の棚から工具が一つ落ちた。
フレアは満面の笑み。
「これで敵がビビるよ!」
「味方もビビるよ!」
「英雄感あるじゃん!」
「劇団じゃないんだぞ!」
第二の機能の説明に移った。
レオンハルトは嫌な汗を流している。
「必殺技補助機能!」
「聞いただけだとまともそうだな」
「技名を代わりに叫んでくれる!」
「まともじゃなかった」
フレアはわくわくしながら剣を押し付けた。
「やってみて!」
「いやだ」
「やってみて!」
「いやだ」
数分後。
根負けした。
「……聖光斬」
すると剣が震えた。
次の瞬間。
『聖ォォォォォォ光ォォォォォォォォォ斬んんんんんんんんっ!!!!!』
工房の窓ガラスが震えた。
外で鳥が飛び立った。
レオンハルトは剣を置いた。
「返品したい」
「他にも凄い機能があるから!」
第三機能。
ここまで来るとレオンハルトは覚悟を決め始めていた。
どうせろくでもない。
「長期戦闘支援機能!」
「嫌な名前だ」
「戦闘時間が十分を超えると主題歌が流れる!」
「……、帰る!」
「待って!」
「待たない」
「数日かけて作詞したんだよ!」
「作るな!」
フレアは胸を張る。
「勇者の孤独と希望をテーマにした感動的な曲!」
「誰が歌う」
「剣」
「剣が歌うのか……」
「剣が歌うよ」
「そうか……」
レオンハルトは遠くを見る目になった。
ふと、彼の視線が工房の奥へ向く。
そこには山積みの設計図。
失敗した試作品。
折れた工具。
大量の空瓶。
床には寝袋まで転がっている。
どう見ても泊まり込みだ。
壁にはびっしりメモ。
『勇者のために最高傑作を作る』
その文字が何枚も貼られていた。
レオンハルトは黙る。
フレアの小さな手は火傷だらけだった。
包帯も巻かれている。
目の下にはうっすら隈。
「……まあ」
レオンハルトが呟く。
「ずいぶん苦労したみたいだな」
「へへっ」
フレアは照れ臭そうに笑った。
「最高の武器を作りたかったからね!」
その笑顔は本当に嬉しそうだった。
純粋だった。
悪意は欠片もない。
だからこそ厄介だった。
レオンハルトは大きくため息をついた。
「分かった、受け取る」
「本当!?」
「本当だ」
「やったぁ!」
フレアが飛び上がる。
レオンハルトは心の中で泣いていた。
そして彼は知らなかった。
フレアが説明しなかった隠し機能がある事を。
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数日後。
巨大な翼を持つ魔王四天王ガルーダ。
その圧倒的な魔力に、王国騎士団は押されていた。
「行くぞ」
レオンハルトは騎士団の先頭を駆け剣を抜く。
バチバチバチィッ!!!
派手な雷光。
騎士団がどよめく。
「おおおおお!」
「神剣の力だ!」
違う。
演出である。
しかしガルーダは一瞬だけ目を細めた。
「……なんだ今のは」
レオンハルトは気付く。
意外と効いてる。
突撃。
激突。
剣と爪が火花を散らす。
レオンハルトが得意の一閃を放つ。
すると。
『聖ォォォォォォォ光ォォォォォ斬んんんんんっ!!!!!』
大音量。
山彦。
ガルーダが思わず怯む。
「うるさっ!?」
初めて剣に動揺した。
レオンハルトも動揺した。
しかし隙は生まれた。
勇者の一撃が四天王の翼を切り裂く。
「この程度か!」
ガルーダが怒る。
戦闘は続く。
十分が過ぎる
そして。
剣から前奏が流れ始めた。
「まさか」
レオンハルトの顔が引きつる。
『遥かなる空の彼方ぁぁぁぁ~♪』
「やめろ!」
『希望を胸に進めぇぇぇぇ~♪』
「やめてくれ!!」
歌い始めた。
しかも妙に上手い。
戦場全体が静まる。
騎士団も。
魔物も。
ガルーダすら。
みんな聞いている。
なぜなら気になるからである。
歌は二番まであった。
フルコーラスだった。
長かった。
だが――
なぜか騎士団の士気が爆上がりした。
「勇者様ぁぁぁ!」
「いけええええ!」
「なんか知らんが頑張れる!!」
フレアの作詞能力だけ妙に高かった。
追い詰められたガルーダが叫ぶ。
「なぜだ!なぜお前たちは折れない!」
レオンハルトが答える。
「俺にも分からん!」
本当に分からない。
最後の一撃。
『聖ォォォォォォォォォ光ォォォォォォォォ斬んんんんんん極ぅぅぅぅぅっ!!!!!』
轟音。
ガルーダ撃破。
レオンハルトは剣を高らかに掲げた。
騎士団は歓声を上げた。
その時だった刀身が光を放ちはじめた。
虹色に輝く魔法文字。
『製作者:フレア・ビルハート』
騎士団 「おおおおおお!!」
レオンハルト 「!!、なんじゃこりゃ~~!!!」
遠く離れた鍛冶工房で。
フレアはくしゃみをした。
「ん?」
そして何も知らずに笑った。
「きっと勇者くん、喜んで使ってくれてるよね!」
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戦闘シーンどう書こう?と悩んでいて、アニメだったら~と想像していたら、ここでBGMがかかって~と動作描写より音楽が出てきたので…歌のネタが出来きましたww
オチが思い浮かばなかったので、以前書いた作品の公告ネタを再度使いました。(第3作目参照)




