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呪われた侯爵令嬢は、湖のほとりで無口な画家に恋をする。  作者: 久慈 美麗


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4. 招待状

説明回です。

季節が春から夏へと移り変わった頃。

リザヴェール家に、1通の招待状が届いた。

それは、真っ白で上質な封筒に宛名が金色のインクで書かれており、王家の国璽が赤い封蝋に押印されていた。


リザヴェール侯爵はエルディネを自分の執務室に呼ぶと、応接用のソファに座るよう促した。

それから、エルディネの前にこの封筒を娘の前にすっと差し出した。

エルディネは父から差し出された封筒を受け取ると、その表裏を確認し、既にペーパーナイフで開封されていた部分から中の厚い二つ折りの用紙を取り出した。

そして、静かにその内容に目を通したあと、用紙を元通りに封書に戻しながら言った。

「お父様」

侯爵は、返事をする代わりに娘の美しいエメラルドグリーンの瞳を見つめた。

「お父様も一緒に行ってくださるのよね?」

「もちろんだ」

侯爵は、想定していたのとは全く違う娘からの質問に、少々驚きつつ答えた。


小さなエルディネの身体で目覚めたナナミは、最初こそ戸惑っていたが、すぐにエルディネの行動や記憶を自分のものとして発言し、自然に行動できるようになっていた。

ナナミとしての記憶や経験は、必要だと感じた時だけ、エルディネの言動に少し乗せる程度で活用していた。

つまり、21歳のナナミの補助もその程度で済むくらい、元から存在していたエルディネは頭の回転も早く、知識も豊富で聡明な子どもだった、


父の答えを聞いて、エルディネはにっこりと笑った。

「お父様が一緒なら、行くわ。品定めされるのはあまり良い気分じゃないけれど」

侯爵は、たった7歳の娘が、この招待状が届いた意味を的確に理解しているとわかり、軽く瞠目した。

それから思わず苦笑いし、こう言った。

「お前の好きな色で、新しいドレスを作ろう」



エルディネが住んでいるメルベイユ王国は、広大で緑豊かな土地に恵まれ、国土のほぼ中心部には縦に連なる2つの大きな湖が存在している。

王都はその湖の北東に位置し、市街地は白を基調とした美しい建物が並んでいる。

エルディネは、自分が暮らしているリザヴェール家の本邸がある王都を、自然の中に美術品のような街並みをそのまま嵌め込んだみたいだと思っていた。

国の為政者である王が住む王城には、現在オディロン国王、アリーシャ王妃、今年10歳になるアルベルト王子、6歳になるイリス王女、そして側妃ジルヴァラが居住している。

そして今回の封書は、表向きは王子の11歳の誕生日を祝うパーティへの招待状だが、内実は次期王太子となるアルベルトの婚約者候補になったという通知書でもあった。

健康で王太子の妻として申し分のない家柄や後ろ盾のある令嬢は言わずもがな、家格が少し下がっても教養、器量や評判、全ての基準を最低限クリアした令嬢、果ては基準に届いているか怪しい自薦や他薦の令嬢も数名混じっているとかいないとか…。

ひとまず招待されることが野心ある者にとっては第一関門突破であり、あとは当日のアルベルト王子との雰囲気や、王族や臣下の厳しいチェックが入って最終的に未来の王太子妃が選定されることになる。


筆頭侯爵家の1つであり、国家財務を司るリザヴェール侯爵の1人娘であるエルディネも、もちろん早い段階から最有力候補としてその名が挙がっていた。

王国には他に3つの筆頭侯爵家が存在するが、今年3歳になる娘を持つ国の軍事を司るフォルティス家以外は、男児しかいない主に貿易を司るアールディー家、娘が既に成人し嫁いでいる司法を司るエレミア家と、それぞれ候補となる令嬢がいなかった。


王子の誕生日を祝うパーティーは、2ヶ月後。

リザヴェール侯爵邸は、主人も家令も準備で俄かにせわしなくなった。

相変わらず美術史や絵画の本を眺めて幸せそうにしている、エルディネただ1人を除いては。

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