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君逝く朝に  作者: 杉山薫
5/7

迷宮

ここは?


暗い⋯⋯。


「あらっ、あなたは誰?」


聞き覚えのある女の声。


「ボクは湊。あなたはあの時の女の人ですよね」


ボクの言葉に考え込む女。


「知らないわ」


「迷いの森でボクに泉の場所を教えてくれましたよね。水車小屋の家で会いましたよね」


ボクは必死で声を紡ぐ。


「迷宮は■■■■■■■■■■」


まただ。

肝心なところがノイズがかかっていてまったく聞き取れない。


「ミナト、助けて⋯⋯」


この声は!



次の瞬間、ボクは迷宮の薄暗い入口に倒れ込んでいた。


 ボクは立ち上がり迷宮を彷徨う。ダンジョン攻略、そんな軽いものじゃない。迷宮をただ迷っているだけ。


疲れた⋯⋯。


しかも、迷宮の門の部屋からここまでほぼ強制的に連れてこれられている。どこかで小休止くらい取りたい。


しばらく歩いていくと、迷いながら彷徨っているということにはなるが、向こうに灯りが見えてきた。


なんだろう。

あの灯りは⋯⋯。


さらにその灯りに近づいていくとポツンと街灯があった。そこには女の人が一人立っていた。


水車小屋の女の人だ。

でも、この女性の顔や声ってなんだか⋯⋯。


「昨日、お会いしましたよね」


ボクがそう言うと彼女は首を横に振る。


「私には覚えはないわ。さっきの迷宮の門は私だけど。そんなことよりさっきの声は聞き取れた?」


「いいえ、何かのノイズに邪魔されて⋯⋯」


「管理者の仕業よ。迷宮は■■■■■■■■■■」


「ごめんなさい。やっぱりノイズが入ってきて聞き取れません」


『じゃあ、これはどう? 迷宮は旅人の侵入を拒絶する』


「あ、聞こえました。そうなんですね。でも、それじゃどうやって?」


「そうね。だから、私もずっとここで立ち止まってるのよ」


「ずっとって、いつからですか?」


「わからない。もう自分が何者だったかも⋯⋯」


彼女の言葉にボクは言葉を失う。


そんなことがあるのか?


「じゃあ、ボクはもう行きますね。やっぱり迷宮はそんなに長くいてはいけないみたいだから」


「そうね⋯⋯」


ボクは彼女に背を向けて出ていく。


「じゃあ、先に行ってるね。未来ちゃん!」


えっ、未来ちゃん?


ボクは何を言ってるんだ。

そういえば彼女の顔は⋯⋯。


そう思って、ボクは振り返る。

そこにはすでに家はなく、代わりに鏡がポツンと立っていた。


身代わりの鏡?


ボクがそう思っていると、鏡に文字が浮かび上がる。



その夢、真の姿を示さず

その夢、真の時を示さず

その夢、真の意を示さず


我を崇めよ

己を讃えよ

彼を讃えよ


さすれば真の姿を示さん

さすれば真の時を示さん

さすれば真の意を示さん



なんだろう。

やっぱり意味がわからない。


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