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悪魔召喚の第一人者なのに出来損ない扱いされている私を悪魔達は可哀想にと慰めてくれて仕返しもしてくれるから呑気にお菓子を食べる

作者: リーシャ
掲載日:2025/01/04

彼女は召喚の儀式があった日、なにも召喚出来なかった。


それに伴い周りや両親から冷たい態度を取られるようになった。


クラスメイト達から蔑まれ、親や兄弟から居ないものとして扱われる日々。


「召喚は出来たのか」


期待されていない声に押され、肩を狭めていいえと言う。


どれほど冷たい目に晒されても召喚を毎日していた。


ある日、クラスメイトの投げたボールに当たり脳震盪を起こす。


「あ、でき損ないに当たった」


蔑みをなくさない辺り、わざとだろう。


薄れ行く意識、放置される。


気付くと放課後になっていた。


痛む頭を押さえて帰宅すれば姉の嫌味が。


「こんな時間までなにをしてたの。恥さらしが」


なにも言えずにうつ向いてやり過ごす。


ずこずこと部屋へ入り慣れた様子で召喚をする。








「私が第一人者なのにのうのうと使われている悪魔召喚!」






召喚出来るのとやり方や生態を研究しまくった女性、フェルナンド・カーネリア。


それが現在能無しと呼ばれる自分の前世だ。


当時、悪魔を見つけたと発表した周りの反応は氷河よりも冷たかった。


悪魔だなんて不吉だ。


邪悪なものに取りつかれた魔女。


様々な非難がごうごうと渦巻き、彼女を引きこもらせた。


でも、一応会話相手は居たからなんでもなかった。


でも、でも!でもおおおお!


許せん。


世間は愚か、見向きもしなかった上流階級の者達が悪魔を召喚しようだなんて。


時代的に先を行き過ぎたかもしれないが、それがなんだというのだ!?


嫌なら使うなと悪態をついて引きこもったのも忘れられて使われている事実に震えて光る床を眺めた。


悪魔は突発的に起こる事故のような確率で召喚され奇跡の存在と呼ばれていた。


とはいっても人の見た目ではないふわふわした綿のような形をしている。


人型というのは更に上をいく存在だ。


「え!?」


出てきた悪魔は、間の抜けた声を上げて部屋を見回していた。


「こらオルミネ!お前裏切ったなっ!」


「え、誰!?」


「カーネリアだ!」


「ええええ。見た目違うじゃんか」


「魂の色確認くらいしてよ」


呆れた声にオルミネという悪魔は、じろじろと心臓の方へ目を向けて見つめた。


「乙女の胸ガン見するな!」


「理不尽な!?って、違う。お前確かにカーネリアだけどよ」


今はイリスという名前なのだと説明しておく。


「私以外に召喚されるようになった、シリガル悪魔達はなんで召喚されるようになったの?」


オルミネはしりがる発言にショックを受けている。


「深い意味なんてねーよ。ただ好奇心で外に出てるだけだ」


「そのわりに、ここじゃ悪魔は上位の召喚体扱いされてるけど!」


「あー、そりゃあの人が仕組んだことだな」


あの人、と彼か言う人物など一人しか居ない。


その男を思い出してむむっと眉間にシワが寄る。


「私を引きこもらせて太らせた人のこと?」


「いや、運動しなかったのお前だろ……」


掠れた声でジト目。


それから目をそらしてから、怒っているぞというポーズを取ったまま尋問を一旦止める。


「全く、頭悪い時代に生まれたもんだよ」


「どうしたんだ」


悪態をつくと、わざわざ聞いてきてくれる優しい性格だ。


「召喚出来ないと裏切り者の村八分みたいな扱いされちゃって」


「ああ。噂には聞いてるぞ」


悪魔の世界でも有名なんて末期なんじゃないの。


「でも国によっては対応や扱いが違うって聞いたけどな」


「そうだ、この国出ていこう」


「おー、いいんじゃねぇの」


「出ていった後、この国をボロボロにしなくちゃ」


「面白そうだな」


親、周りからの仕打ちを思い出して口元がにやりと上がる。


オルミネとはまた会う約束をして戻した。


復讐するにはこのまま無能でいとかなくては。


因みに学校には王子が居て、天使持ちだ。


天使は悪魔より下。


人の形をしたものはほぼ居ない。


この国の精度が悪いかもしれない。


過去、人の成りをした妖精や天使が居たのでここまで落ちると疑いたくもなる。


とりあえず呼び出した悪魔は放置し、改めて部屋のベッドにダイブすることにした。


さっぱりした気持ちで寝る。


「おい」


夜中。


──ガン


「きぶへ!?」


ベッドが揺れて驚いて跳ね起きた。


「なに!?」


「おれをなぜ直ぐ呼ばなかった?」


起き抜けに言われてもわけわらんことを。


ぼやぼやしていると髪を一本摘ままれて、引っ張られる。


凄く痛いから寝起きが覚める。


「いったい!分かったから離して!スーメニ!」


地味な嫌がらせに涙目になって抗議。


一本抜けることなく、取り戻して彼を見る。


「呼ばなかったのは悪かったけど、別にスーメニだって!今まで私に会いにこなかったでしょ」


おあいこだと反論して頷く。


正論正論。


「転生させてやったおれになんだ?その口の聞き方は」


細かい部分をまだ思い出していないから、そんなことを言われても困惑。


「それに、この部屋はなんだ?物置だろどう見ても」


「今の私は物置の廃棄品扱いらしいよ」


目を更に吊り上げ、怒気をたゆらせる彼は今にも物置を吹き飛ばしそうだ。


待って、とストップをかけた。


──ドォオオオン


遅かった。


このベッドを除いて、全てが大爆発した。


いや、もう家も吹き飛んだのではないか?


貴族でもなく一般的な家なので悪魔なら簡単に壊せるし。


「もー。待ってって言ったのに」


「こんなのよりも、もっといいやつ用意してやるよ」


見た目と違ってやること派手だ。


半壊といった形で家を失った四名は、一人を残して叫びパニックに陥る。


誰だって叫びたくもなる。


夜なので視界が暗くて、把握しずらいのも難点た。


それにしても、もっといいやつ用意してくれるって。


物置に住んでいたし、家を歩き回るのを禁止されていたから家がなくなっても特に不便になるな、としか思わない。


どうせ出ていくのだから、なくなってもいいや。


それから間もなく警察がやってきて、姉が拘束される。


イリスが召喚体を持っていないのは有名なので当然、疑わしき破壊者は姉か親。


で、部屋的に爆発の位置の部屋に近い姉が一時捕まる。


例えまだ確定してなくても、捕まったら経歴に傷付くから縁談とかおしまいかも。


しきりに母親が姉を庇い、父親は憤怒の顔で姉を見ていた。


結局どちらも疑ってる。


しかし、こちらに疑惑が向かないのは無能だと格下に見られているからだろうな。


魚が跳ねても気づかないみたいもんだ。


家がなくなったので、ホテルで過ごすこととなる。


でも、親と一緒なのが煩い。


「仕方ないから、外で簡易テントをやってもらうよ」


「おれを呼ぶ必要はあったのか?」


ムイルは複雑な顔をして聞く。


彼も悪魔の一人。


三人はよくこちらを世話してくれるから、なにかしら共にいたのだろう。


家を吹き飛ばしたことなどを、スーメニからあらましは聞いているのだろう。


「だってムイル。あなたは人の家を爆発させる?」


「まぁ、時と場合による」


「私の家を確認なく爆発させる?」


「確認は取るな」


「ほらっ、性格の問題じゃん」


「運が悪かったとは思うぞ」


「もー、ほんとそう。オルミネお喋り!絶対軽く話題にしたから来ちゃったんだよ」


言わねば彼が来ることもなかった。


「おれにも話してたな」


「オルミネしばく」


二人で話していると唐突に陰り、スーメニが現れたと気配で知る。


こういう場合やって来るのは噂をした者。


「あ!破壊者」


「テント用意したぞ」


「盗み聞きを、さりげにしないでほしいんだけど」


家を破壊したりといった性格を今まで知らなかったのは、ここまで環境が悪くなかったからだろうとは考えている。


なんというか、引きこもり人生はずっと悪魔達と暮らしてきたから不便も脅威も、なかったし。


「お前に敬意を払ってるが」


「「はああああ!?」」


ムイルとハモる。


そういう反応されるくらいには、敬意を払ってるように見えなかったってことですよ!


「おれ達は今まで。お前に召喚されるまで他の世界を知らず、出ることも出来ないからストレスを溜めていた。だが、お前がこの世界と繋いだことで世界は広がった」


ムイルも心当たりがあるのか口を閉ざす。


悪魔は自由に出入りして、好きなように暴れているとばかり思っていたのに。


意外な真実になんといっていいか。


「だからお前を最大に甘やかしていた」


「んうううううん」


「文句あるのか」


「家壊した件については大有りだけど。ないかなー」


直ぐに家がなくなるとは思わなかったので、旅の準備だけが出来ないことが残念だ。


「取り敢えず縁切りして、帝国に行くぞ」


いくぞ?


「帝国!?いや無理でしょ」


帝国は功績を立てないと入国も出来ない。


焦って止めようとすると、スーメニはコネがあるから平気だという。


一体いつコネを得たというのだ。


驚いていると、悪魔の地位を向上させたついでになと悪い笑顔を向けられる。






スーメニが他国に移るぞと宣言してから2日。


いくら家がなくなっても、学校にはいかなくてはいけない。


こういうところ、もうちょっと配慮して休ませてくれればいいのに。


家が火事になっても、通えよと言われるのと大差ないくらい全く気を遣ってもらえない。


ま、召喚出来ないくらいで無能扱いをしてしまう程の国なので、期待など初めからしてなかった。


姉はまだ事情聴取の真っ只中。


つまり通えない。


爆発したタイムリーな家の子ということで、凄い視線に晒されているが、昔の自分はもう居ないので平気だ。


それに、悪魔を既に召喚しているので不出来を見る目に怯える条件は、既に消えている。


気兼ねなく歩けるわけだ。


登校していると、待ち伏せしていたのかよく突っかかってくる女達がとおせんぼしてくる。


姉はどうしただの、家を吹き飛ばされたのかなどと無遠慮に聞いてくるが話せないと簡潔に教えてあげる。


教えないとギャンギャン煩いもん。


『消してやろうか』


おっと、スーメニの声が聞こえてきた。


あまりの唐突な選択視。


思わずイエスと言いそうになるが我慢した。


こいつらをボコボコにするのはイリスなのだ。


まだそのときではないと彼に伝えて教室へ。


教室でも遠慮のない残念な視線がべっとりとまとわりつく。


人の不幸をペロペロ舐めては、美味しいと味わってるのだろう。


なんともお目出度い奴等だと、逆にせせら笑っておく。


イリスも一度、警察機関に事情を聞かれたが目撃していないというだけで直ぐに返された。


そちらも絶対バカにされてる結果。


ただの能力を持ってない子供に、期待してないと露骨。


家に帰ったら、スーメニにミートパイを作ってもらう約束をしているので楽しみに午後を過ごす。


多分作るのは別人になるんだろうけど。


彼が世話をするのは主に敵の排除だから。


休み時間になると他のクラスから野次馬がこちらへ来る。


聞いてくる内容がえげつないこと。


誰も可愛そうと口先だけで全くなにも考えてないのが透けて見えるのが笑えた。


お前達は同じことが起こったら同じ目に合うわけだが、絶対なにも考えてなさそう。


家がなくなって5日目。


姉が釈放されて帰ってくると、親が4人を揃えて会議みたいな風に集める。


なにが話されるのかと待っていると、姉が勝ち誇った顔をしているのでなんとなーく察した。


顔で知れてしまうなんてアホ過ぎ。


「うちには金がないから学校はやめてもらう。独立するように」


三人が前から、召喚出来ない不出来なこちらを追放したがっていたのは知っていたので、すんなり理解。


喜んで出ていきますとも。


ここではどこの施設にも入れないのは、個人を知られ過ぎていて言外が悪いからだろう。


「わ、わかり、ました」


悲しげにショックを受けている演技をしながら、泣いて出ていく。


荷造りして直ぐにホテルから出た。


今更召し使いにされるのも、ごめんだし。


給金など出されないだろうから、誰かの気が変わらないうちに姿を眩ませるに限る。


『金の卵を自ら手放すとは』


くつくつと笑う男は全てを知っていて、爆発させたのだ。


爆発してしまえば、追い出す口実が出来ておしまい。


そんな親達の思惑を感じ取ったのだ。


こちらも手間が省ける。


一連の行動を起こし、道の途中で悪魔作成の異空間を作りミートパイを食べた。


作ったのはムイルだったので美味しいと何度もおかわりした。


彼は満更でもなさげに笑い、また好きなものを作ってやると嬉しそうにはにかむ。


悪魔が可愛い。


微笑ましさと癒しをもらい道を進んだ。


途中から筋肉痛になり悪魔達に運んでもらった。


学生が筋肉モリモリなわけがない。


過酷な旅を短縮して帝国に着くと、あっさり通されて呆気。


本当に通れたんだと、スーメニを見るとどや顔が視界に。


「学校に行けるように手続きしといた」


帝国の学校は、全ての学生が入りたいと願って止まぬ高嶺の学び場所。


そんなところに、ポッと入れられるなど思わなかったので、びっくりする。


説明してくれなかったことを拗ねると、悪魔的な笑みが見えた。


「あいつらの後悔する顔が早く見たい」


相当腹に据えかねていたらしい。


それには同意しているので、ホテル前に学校へ突撃。


スーメニが現れた時から、色々用意していたのだと筆記用具から始まり、最高の道具を持たされる。


生まれた国で渡さなかったのは盗られるからとの返答にそんなわけない、という否定が出てこなかった。


学校へ入ると、前の学校とは比べてなにもかもが凄い光景。


口をぱかりと開けてしまう。


「虫入るぞ」


後ろを歩いているオルミネが指摘したが、閉じられない。


中を見て回り、学校の生徒が人の形をした召喚体を連れているの見て確信。


やはり、あの国は大幅に遅れていた。


自分がダメだった訳ではないと証明される。


血筋か土地がダメだったのか。


それとも召喚の陣が不完全か。


モヤモヤが晴れると、スーメニ達が学校の寮に案内してくれる。


詳しいと言っていたのは、こういうことかとほーっと抜けて息。


明日から通うんだと言われて、すごく急だなと震えた。








半年後、イリスの居た学校と帝国の学校との合同授業が行われる。


帝国と顔繋ぎがしたいがために、夕方には立食会もある。


設立から初めて授業をする者達と違って、帝国は遠目からでも分かる召喚体の違いに目が退屈だと分かりやすく、色を失っていた。


今更、あのくらいの召喚体を相手に授業が成立するなどなんのためにここまで来たのか、という失意。


あれならもう、初等部で終わらせているくらいの感覚だ。


イリスは悪魔を三体侍らせて、臨戦に備えていた。


スーメニがそばでせっせと世話を焼いている。


髪をといてくれたりと、今する必要があるのかと思うけど。


最初は一人だけでいいやと思っていたが、やるならもっと徹底的にやろうと提案された。


クラスメイト達には、触り程度に事情を説明しているのであそこの出身だと、知られている。


それに関して、バスの中で盛大に同情の目や言葉を浴びている。


悪魔三体の召喚は、帝国でも滅多に居ない。


それを成している自分が召喚出来なかったのは、学校や環境が劣悪だったのではという想像がクラスメイト達の中で組み立てられている頃。


あながち間違っていないので、否定も肯定もしない。


バスから降りると、向こうからの視線を浴びる。


向こうは悪魔や天使、妖精が人の形をしていることに大層びっくりしていた。


己にとっては、本来それが本当の世界の姿と知っているのでこの国は遅れていると相変わらずの価値観に、呆れを滲ませた。


これから合同授業を行うという言葉に、あらかじめ決められていたグループに別れる。


3人ずつで向こうも3人。


6人でなにかしら、レクリエーションを行う。


例えば3人で召喚体同士を戦わせるとか。


向こうに勝ち目が無さすぎて、こちらの学校の生徒らは皆退屈な顔で見ている。


向こうには王子も居る。


あっちの学校の生徒達が口をぱかりと開けたまま、授業は始まる。


先ずは向こうと合流して、互いに自己紹介しあう。


名前を言ったときの向こうの、信じられないといったような顔は最高だ。


悪魔三体はまだ見せていない。


向こうがこちらを軽んじて、地獄を教える。


という、彼らの計画をなぞるだけだが。


ざわざわするが、レクリエーションで3人対抗の召喚体バトル。


イリスに見下し切った目を向ける生徒達の中、のらりと三体を召喚。


「無能が悪魔を!?」


「え、あの子って」


「なんで帝国のところに?」


段々、気付く子達が増えてきた頃、ホイッスルか鳴る。


一人ずつやろうと計画をするまでもないが、話したので取り敢えず一人早々に召喚体を切った。


それは瞬殺。


あくびを出す時間もない。


お疲れ様でしたと、必要最低限の挨拶を口にしてから3人はさっさと用意されていたコートから出る。


ここだけの光景でなく、全ての帝国組が起こしている刹那の光景だ。


決着が早すぎて、向こうの担当がうろたえていた。


こちらの担当が、次にいこうというので散策のスタンプラリー。


もう、こちらとあちらの対抗にしたらいいのに。


こちらにおんぶさせている状態になるのは、目に見えている。


スタンプを終えたら立食だが、昼前になりそうだ。


早く帰れるねと3人で話し、向こうの生徒が顔面蒼白で突っ立っているのを見て少し満足した。


なにを差別し蔑ろにしていたのか、そうやって後悔するべきだ。


こちらの親は来てないが、向こうは顔繋ぎ目的なので親と親族が立食に参加可能という体を、取っている。


こちらとしては、生徒に負担をかけたくないと生徒以外は声をかけないようにという、約束を取り付けていた。


学生にとって知らない大人に話しかけられるのは、ストレスになる。


こちらの親が来ると思っていたので、了承したらしいが見ていても誰も居ないので期待外れなことになるだろう。


スタンプラリーが始まると、話しかけてこなくなった子達はただついてくることしかしなくなった。


半分こと役割を平等に分けたが、遅くて最後はとくに盛り上がらない。


皆も同じ方法だったのか、盛り上がる空気は皆無。


これで立食会はキツいことになるな。


まさに、今のこの人達は過去の自分の肩身の狭さを、同じぐらい感じていることだろう。


顔色悪くて、今にも倒れそうな感じだったし。


悪い空気のまま、立食会場に入ると思わず顔をしかめた。


生徒の三倍は大人達が居る。


これで約束は守れるのかと、生徒が担当に不安を伝えると担当も疑問に感じたようで、向こうの担当に再三、言っとけよと圧をかけに行く。


悪魔三体という快挙を成し遂げたイリスが、開幕のスピーチをすることになっていた。


祭壇に悪魔達と上がると、向こうの国のざわざわが酷くなる。


もっと絶望してくよと、笑みを前回にする。


「今の学校のお陰で、私はかけがえのないパートナーに出会えました」


とことん今を強調し、過去は全く役に立たずと含みを持たせた。


途中で姉らしき声が「なんであいつが!」と聞こえたが人のスピーチの最中に指摘するわけにもいかないのだ。


終わると拍手がされる。


対するあちらはまばらで、顔が真っ白け。


今頃無能が、悪魔三体という王族でも居ない才能を持っていた事実を噛み締めているだろう。


そんな激ヤバな空気をものともせず、ズカズカやって来るのは元家族。


「なんで、あんたが!?」


「あの?すみませんが誰かとお間違いですよ?」


縁は切れている。


「能無しが帝国に居るなんて可笑しいでしょう!」


「えっと、失礼ですが、学生としか話してはいけないというのが今回の決まりでして」


「うるさいわね!早く答えなさいよっ」


「黙るのはお前だろ」


スーメニがズイッと前へ出た。


キタキタ追い討ちタイム。


先に約束を破るので、スーメニの出現は正当防衛になる。


というのがムイル達の予想だったから。






自分的には悪魔が三体も居るので、口に出してくることはないのではないかと意見したが見事にそれを忘れて、文句を言いにきた。


これには帝国側も考えられない暴挙なので、会場は今無音と化している。


実力主義な国でこの態度はありえない。


スーメニが黙れと発言したが、まだまだ色々言わせる気なのはわかる。


その空気に沿って、姉がぎゃんぎゃんと言い、悪魔が言い返す。


「あんたが悪魔を出すなんてありえない!」


「現に出してるだろ。お前と言い合ってるのがおれだという現実を、見ようとしてない」


「誰かを雇ったんでしょ!」


「雇ったとして、おれらがそいつ以外に従うとてめぇは言いたいんだな。この国の総意と取るぞ?」


スーメニが決定的な宣戦布告をする頃には、元親達も姉の側へ募る。


ようやく来たのか。


あきれるほどに手遅れたが。


「あなたのことを探していたのよ」


おや、どうやら悲劇の家族を印象つけたいらしい。


「私は既に出ていけと追放されます。誰かとお間違いでは」


「そんなわけないわ。私たちは毎日探してたのよ」


「そんなお前らに朗報だ」


ムイルがとある装置を起動させる。


「我が家ではお前を養うことは出来ない」


その装置からかつて追い出された発端の音声が会場じゅうに流れる。


蒼白になる親一同。


向こうの国の者達まで顔色が悪い。


しかし、生け贄として三人を悪者にするのを決めたのか責める声がちらほら聞こえた。


いやいや、あなた達も言ってましたよ。


罵倒もなにもかも。


知っているので、彼らに躊躇なく冷えた瞳を向ける。


目が合った人達はもれなく、目を気まずげに反らすけど。


そんなのは知ったこっちゃない。


「お前らが心配してた?精々してたの間違いじゃねぇの」


オルミネがずんずん前に出る。


三人はイリスの前に完全に出ると、守るように囲む。


「ま。これからは関係ない国には二度と来ないから、どうでもいーけどな」


オルミネが最後に笑って、爆弾をポトリと落とす。


悪魔三体、という実績の実力者が今後ここには来ないと言うのだ。


会場に居る貴族はその意味に震えだす。


やっと、自分達の立場が大変なことを自覚したのかと呆れた。


どうして、これからも良好な関係を築けると思えたのかと、頭の中身が可笑しい。


それに、唯一の王族である王子の顔なんて絶望に染まりきっている。


自分が場にいながらのトラブルだもんな。


自国の女が他国の悪魔持ちに喧嘩を売る。


王子はイリスのことを噂で知っていただろうし、今日だって生徒達から耳打ちされた筈。


だから、知りませんでしたは通用しない。


既にお互いが認識して、姉がトラブルを招いているのを見ていて、火を見るよりも明らか。


こちらはわざわざ人間違えではないかと、一度言ったのに何度も関係を主張した。


家がなくなるのはすぐだが、平民にだけ責任を取らせて終わりとならないだろう。


だって、悪魔持ちを怒らせ、今も尚迷惑をかけている。


あんなに怒鳴り散らし恥を振り撒いたのは、ただの自爆だ。


それでも引き下がらなければ、テープを流すと決められていた。


事前にその通りにすれば家の評判も、全ての段取りが上手く行くとスーメニ達が耳に入れていった。


で、こうなったわけだ。


スーメニが現れてからは、たった二日程度だったがそれでも元家族な醜悪な責めは醜く、前まではどれほど悪意をぶつせられても周りが推進しているから、問題にされることはなかった。


が、もう違う。


イリスは向こうに恨みしかないことは証明され、悪魔らも同じ気持ちなのは伝わった。


もう騒ぐ手伝いをする意味もない。


帝国のところへ戻り、生徒達に手を振られる。


よくやったという声援。


皆知っていたから見守ってくれていた。


当時、悪魔が使えなくて苦労したのを知って大層憤ってくれたのは慰められた。


何度お礼を言いたくなったことか。


彼らがいたから恨みを晴らしに行こうと思えた。


言いたいやつに言わせておけ、とならなかったのは心ない言葉を言われたことを知ってくれて、やり返そうではないかという空気になったからだ。


と、ここで王国側の王子があせあせとしながら登場する。


周りに泣きつかれた感じだ。


こちらへ来るときには生け贄の子羊に見えた。


「わ、私はこの国の──と申します」


「そうですか。どうも」


よろしくお願いいたします、なんて言わん。


言ったら、今後来るように言われやすくなるかもしれないのだから。


王子は、言葉の含みを聞き取ったのか更に顔色が悪くなる。


しかし、そんなのはもう関係ない国の人のことだ。


可哀想になんてことは絶対に思えないし、見限っているのだから。


王子は、こちらが普通に蔑まれているのを見ているだけだった。


視界に入ったことがないのかもしれないが、噂程度には耳に入れていた筈。


なのに、劣悪な環境になんら関心を抱かなかったのだから才能多きという評価も国内だけだろう。


帝国では、成績が伸び悩んでいる子に声をかけるところを目撃して目を疑ったものだ。


能力が自分より劣っていても毒を撒かないところにキュンとした。


しかし、人を見ただけの上部だけで判断し軽んじる人には厳しい。


実力者主義の真の意味を、深く骨まで刻みたいと思ったものだ。


実力者とて驕ってはいけないのだ、という教訓。


今回、あまりに差がありすぎて悪態をつく言葉は聞こえてこないが、合同ならば土俵を揃えて欲しいということは聞こえてきた。


教鞭に立つという交流なら、彼らとてちゃんと教えようと声をかけたはずだ。


それが合同レクリエーションなのだから、困惑と複雑なあれこれを抱いたと思う。


同等の扱いにするには、こちらが低く歩調を合わせるしかないのだ。


王子はまだ、なにかつらつらと耳障りのいい言葉を言うが、元家族はちゃんと罰するとか聞こえてきた。


本当に加害者達を罰するのなら、この国はなくなるのではないかな。


ほとんどの人が悪魔を召喚できないとバカにしたのだから、王子は今キュッと色々自身で身分を危うくしている。




王子は、こちらが全く話を聞いていないことに気付きがくりと項垂れた。


王族なのに感情が出るなんてよっぽど動揺しているんだな、と至極他人事。


話は終わったのだからそれではと去る。


まだ元家族はぎゃんぎゃん言ったり、顔を青くし周りの目におろおろしていた。


元親や元姉は段々、言い訳をしても空気がよくならないことを察したのかどんどん体から力がぬけ、へなへなとなっていくのがよく見える。


どうにもならないのだと、諦めてくれ。


イリスは、今までどんな理由があろうと軽んじられた事実を許したくはなかった。


反省もいらない、ただ純粋な因果応報が欲しかった。


かつて欲望のままに悪魔のシステムを知らぬ間に、普及した人間として沽券に関わるし。


今日は、彼らにとって最高のデザートになっていることだろう。




後日、スーメニから聞いた話では元家族は平民よりも下の存在に落とされたと。


別になにかしてくれとか頼んだわけもなく、勝手に周りがやらかしているだけ。


暴走している民を、あそこの王達は抑えきれないやも。


今まで偉ぶれていた理由が、帝国を見てしまい揺らいでいる。


人は、自分の持っているものよりもいいものがあるとほしくなるのだ。


当然、欲しくても手に入らない。


そうなると、ぶんどるという方向に行く。


でも、勝てる見込みもない。


そうしてぐらぐらとなり、帝国に行きたがる向こうの大人達。


だが、帝国は受け入れない。


ここではなんの意味もない人達だ。


向こうなら地位があっても、ここへ入った途端に肩書きはゼロ。


それなのに偉ぶられても迷惑。


選択肢などない。


ぺらりと昔よりも増えた悪魔の文献に目を通して、悪魔の入れた紅茶を手に窓の外を見る。


悪魔は朝も夜も関係ない。


いつでもどこでもこちらを世話してくれる。


スーメニは頬についた水滴を指先で拭うと甘やかに笑いかけてくる。


その瞳が今は少し気恥ずかしい。


「今回の味はどうだ」


スーメニが自信家のように言うので、少し考えるふりをして振り向いた。






「とっても美味しかった」

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