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いつもの日常

北風が吹き始めた寒空の下トリプルワーカーの俺は自転車を走らせる。

「あー寒いな」

「手袋用意しなきゃな」

なんてことを考えながらどこの誰か知らない人の家へご飯を運んでる。

そう俺は街中でよく見かけるKber Eatsの配達員だ。

「もうこんな時間か、そろそろ帰って夜勤の準備するか」

トリプルワーカーともなれば、仕事から仕事へと休む暇なく準備をしている。


Kber Eatsの仕事は夏前の梅雨の真っ只中に始めたのでかれこれ5ヶ月ほどになる。きっかけはホントに些細なことだった。とにかく金が無いのさ。びっくりするくらいにね。借金??とうに借り尽くしてるよ。カードの限度額??とんでもない額だよ。ちなみに俺は親父と2人暮らしだ。親父の名前でも借金もあるしカードの限度額ももういっぱいいっぱい。日々の飯を食うのも精いっぱいだよ。


そんな2人で暮らしてる俺たち仲は良い方だと思う。2人して競馬が好きなのさ。そして2人して働くのが嫌いなのさ。そりゃあ金も無くなるさ。だがそんな俺たちもついにどうしようもなくやべー時期がきてしまった。マジで金が無い。今月は何とかなるが来月の家賃払えない、そんなやばい日がついにきたのさ。いやそんな日がくるのはもちろん知ってたさ。当たり前に家賃は何年も前から二ヶ月遅れてるし、貸主から裁判起されて一ヶ月遅れたら即退去なんて状況になってはや数年レベルの俺たちだからな。ただお互い運良く計算早く、話も早いから何となくダラダラ過ごしながらヤバい時期を工夫して乗り越えたよ。でももう無理って時がついに来たのよ。それが皆が大好きな日本ダービーの直前だったのよ。


2人してここで互いの予想で、納得いくところに計1万突っ込んで何とかこの局面乗り越えようなんて驚きのアイデアを出しあった。ホントどこぞの人生設計士さんが聞けば仰天するようなアイデアだよ。


ちなみに俺たちの予想は、ゴリゴリの一番人気ジャスティンドリアの頭は無いんじゃないかというお互い同じ結論に至り、ジャスティン軸の馬連で相手2頭に絞り勝負した。結果俺たちの予想は見事に外れた。確かにドリアは一着じゃなく二着だったが、一着は全く予想してなかったベテラン横田則弘騎乗のデノンダサイルが一着だった。開いた口がふさがらないとはまさしくこの通りだよ。もう金無いって言ってるのにものの二分ほどで1万無くしてるんだからよ。にしても則さんてのはホントいつ来るか分かんねーよな。中川記念のメテンロウスケイだってそうだったし、ホントバカヤロー。という訳で俺たちは翌月の家賃支払い日までに一生懸命働くことが確定し、めでたく俺はKber Eatsに登録して、夜勤と昼間の予備校講師の傍ら合間を縫っては自転車で街を爆走する日々が始まった。


「今日の夜勤は6:00上がりか。最近明るくなるの遅いから帰りは寒いだろうな。」なんて考えながら俺は夜勤のコールセンターで半分寝ながら、いや暇な時間はしっかり寝ながら退勤まで時間を潰した。まさかこんなことがあるとはつゆ知らずに。


「お疲れ様でーす」いつも一緒に働く仲の良いおばさんに別れを告げ、普段と違う道を自転車で走った。現在俺は子供時代を過ごしたいわゆる地元の隣町で暮らしている。夜勤の仕事場は偶然にも地元のど真ん中にあるが、大体近い道を走るので昔は通らなかった道を走っている。しかし今日は何気なく母校である中学校の正門前の道を走った。ホントに偶然だ。今思えばこれが俺の人生の分岐点だったのかもな。でもその時の俺はそんなこと知る由もなかった。


「昔から変わらねーな」

所々黒ずみペンキがはがれた壁面を見ながら、正門に来ると扉が開いていた。

(こんな時間に来てる先生が居るのかよ)

なんて考えたのも束の間

(入ってみるか、、、)

この時の俺は不法侵入だなんて思わなかったと言うと、もちろん嘘だが好奇心に負け自転車を停め、まだまだ薄暗い空の下、蛍光灯も点いていないさらに暗い門をくぐった。


(うわー久しぶりだな)

門をくぐり数歩歩いた薄暗い廊下の右手奥に階段が見える。そして左側には事務室、校長室、職員室が見える。

(職員室の隣何だっけ??確か放送室的なやつだったか?確かその奥に階段があって、俺がよく使ったのこっちの階段だったよな)

薄暗い廊下を音も無く俺は歩く。冷たい空気が俺の頬、耳、手をより冷ましてくる。


ガラッ!!


突然の音に俺は腰を抜かしてその場に転げてしまった。

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