第四十三話 一方その頃 〜五十嵐多月〜
「ウソだろッ!? ナイト! ヒメー!!」
「――えっ……僕たち、二人しかいない。そんな……」
四人全員で一斉にドアを通った瞬間、強い力に引っ張られるようにして暗闇を抜ける。
次に目を開けると、直ぐに戦闘態勢をとったアタシは手と足を竜化させて辺りを見回した。
そこで直ぐに気づいたぜ。アタシが飛ばされた場所は最初の町だった――。
まぁ、直ぐ横にポッカリ空いた穴で誠の心配はしないで済んだけどよォ。
まさか、初期メンじゃないアタシらを厄介払しやがったな……。
今回アタシが協力した最初の目的は、ヒメの肉体を奪還すること。
それと、今のメンツで元の世界に帰ることだ。
油断はしてなかったが、考えが甘すぎた……だが、後悔しても仕方ねェ!
穴から出てきた誠の首根っこを掴むと、そのまま町の外まで引きずっていく。
周りの連中が、陰口を叩いていようが関係ねェ。
「ちょっ……あ、姐さん!?」
「――このまま、ヤラレっぱなしは癪だ! 戻るぞ! 誠ォオ!」
町から出て広い草原まで歩くと、誠の首根っこから手を離す。
アタシは、怒りのまま全身を竜化させた。
ニ本の角が太くなり、顔の形態が変わり目もギョロっとした爬虫類特有に変わる。
赤いウロコが身体全身を覆い、硬い皮膚に姿を変えた。
この姿なら、人一人運ぶことが可能になる。
アタシが豹変した姿に、なぜか身体を震わせている誠が視界に入った。
「あァん? なんだ、その顔は! アタシの本来の姿でビビってんじゃねェよ!」
「ひぃぃい!! ご、ごめんなさい! 姐さん! カッコいいです!」
アタシは乗れと言わんばかりに広げた片方の羽根を地面に這わせるように下に向ける。
その意図に気づいた誠が、おずおずと這い上がってきやがるから、そのまま羽根を動かして放り投げた。
「うひゃーー!!」
「変な声を出すんじゃねェ! 本当に、ビビりな野郎だぜ」
「ふ、普通だよ!? 姐さん! い、異世界に、染まりすぎ――」
跳ねるようにして背中にしがみついた誠の小言を塞ぐように身体を揺らすと、また上で騒いでやがる。
ヒメは賢者って職業らしいし、異世界も長いから心配はしてねェ。問題はナイトだ。
二人がアタシらみたいに一緒にいると良いんだけどよ。
「んじゃあ、飛び上がるから、しっかり捕まってろよォ!」
「は、はい!」
アタシは仕方なく風圧を防ぐ防御魔法も展開する。
翼を大きく広げて空中に飛び上がると、この距離からだと見えない目的地に向かって一気に加速した。
直ぐに戻れると思っていたアタシは、加速して数秒で羽根を止める。
「クハハハッ! まさかの、金銀銅の空飛ぶ豚に、虹色までが空を覆い尽くしていやがる!」
「ひぃぃい!? あ、姐さん!? ど、どうするの!?」
「そりゃあ、コイツらを蹴散らして、二人のところに帰るだけだろがァア!」
振り落とされないよう首にしがみつく誠に、アタシは大きく口を開けてドラゴンブレスを放った――。




