第四十二話 四つの選択
後ろに回って見てみるが、そこにドアがあるだけだった。
つまり、これは移動式。
しかも、どこに繋がっているかも分からないし、四つ用意されているということは分断目的なのも明らかだ。
それに、この中に当たりがあるとしたら、それは元神と対峙することを意味している。
部屋の作り自体は、下とそこまで変わらない。窓から見える絶景も……。
ここまでお膳立てしていることから、確実に一つは当たりがあるだろうけど。このドアはフェイクで、移動先は元神が決めているのだとしたら、選ぶ必要性はなくなる。
「ここまで来ちまったわけだし? 元神のワナだろうが、乗るしかねェよなァ?」
「うん……。私が来たときは、一人だったし、そもそもこの建物もなかったから全然違うけど」
「……必ず、みんなで合流しよう!」
誠も身体を小刻みに震わせているが、小さく頷いている。
適当に好きな色を選ぶと、自然に被ることなく分かれた。
これも、元神の思惑じゃないと思いたい……。
赤いドアの前で、多月が仁王立ちする。それから俺は青を選び、黄色がヒメ。物騒な考えしか及ばなかった黒は、誠が普通に選んだ。
ドアは全員で一斉に開けることにした俺たちは、自然と干渉に浸る。
短い関係と時間なのに、長く旅をしてきたような感覚だ……。
「アタシらの中で、唯一オマエの正体は判明してる。あっちの世界に戻ったら、アタシは無一文かもしれねェ。だから、金せびりに行くから、追い返すなよォ? 誠ォオ!」
「へっ!? そ、それって、ただの恐喝じゃない!? でも、僕の家族が、帰りを待ってくれているのは……ナイトのおかげで、分かっているから。だから、友人として、ご飯くらいなら、ご馳走するよ」
「何か困ったら言ってくれ。あとで、俺の住所渡すからさ。みんなで、元の世界に帰ろう」
「うん! 私も……。ナイトくん。絶対に帰ったら、一番に会いに来て! 待ってるから――せーの!」
ヒメの合図で、ガチャッと大きく音を出して一斉に開くと、そのまま中に吸い込まれるように姿を消す。
強く肌を打つような感覚に、今いる場所が室内じゃないことは分かった。
――これは……風?
だけど、次に目を開けた瞬間。ズルズルと引きずるように足が滑る感覚に、思わず両手で手元にあった何かにしがみつく。
無我夢中で前を確認すらしていなかったが、掴まった先は、まさかの航空障害灯の一部だった。
「――う、嘘だろ……!?」
驚きのあまり声を絞りだす俺の前に広がるのは、白黒の空が大半を占めているだろう上空。
しかも、突風に身体が流されて、鯉のぼりのように必死でしがみついた。
いや、鯉のぼりの気持ちを分かりたくはない……。
ただ、掴まる場所があっただけマシだ。
「力を、込めて……ッ!」
一瞬の風が止む瞬間に力を入れて、なんとか航空障害灯に身体を密着させる。
余裕ができたことで、辺りを見回すが俺以外は誰の姿も見えない。
さすが、人が作り出した建物の再現なだけあって、降りられる構造になっていたのは有り難かった。
先ずは白と赤で、とぐろを巻くようなアンテナ群まで降りていく。
「風は、しのげるか……。みんな、無事だと良いけど。先ずは、建物内部に戻るために下まで降りないとな」
1番の心配は誠だが、俺みたいな場所に飛ばされていた場合、空間を開けるだろうか……。
みんなの無事を祈りながら、俺は軽くなった足取りで下に降りていく。
「……よしっ。無事にトップデッキの上まで降りてこられたが……どうしたら中に入れるんだ?」
さすがに、ここからじゃ窓を覗くことも出来ない。
耳を当ててみるが、中の声が聞こえるほど薄くもなく立ち往生だ。
工事とかで外から中に入ることも出来そうな気はするが、所詮はハリボテでしかない。
「俺が出来ること……。剣術と、光魔法……ライト以外にも覚えてるはずだ」
鑑定を使えないから分からないが、光線とか出せないか……?
ビームサーベルとかみたいに、光で溶かせそうな気がする。
まぁ、それに近い光の剣は出したけど……あれは、奇跡の力っていうスキルのおかげだったからな。
外壁に背中を預けていると中から微かな音が聞こえてくる。
思わず両手を添えてみると、ヒメから貰ったミサンガが淡く光り輝いていた。
「えっ……? もしかして、ヒメが中に!?」
このミサンガは、ヒメに出会った最初の頃に俺たちを、この世界に繋ぐものだと言って渡されたもの――。
だから、ヒメと繋がっていると勝手に思っている。
「だけど、元神が用意したドアに、全員で入ったはず……。まさか、狙いはヒメか!?」
何かのスキルを使って肉体と魂を切り離して一度始末したと思っていた相手が生きていると知ったんだ。
ヒメの肉体を使ってこんな建造物も作ったくらい、コマとして使っているのなら奪い返されるわけにはいかないだろう。
つまり、今度こそヒメの魂を殺して肉体を完全に奪う気か……!
「――嘘……でしょう?」




