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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第四章

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第四十話 格子網の外階段

 涙を我慢する様子は、なぜかとてもキレイだった。

 それが、悲しい涙ではなく嬉し涙だからかもしれない。


 それでも泣きそうな女性を前にして、そんな考え方をする男は嫌われるだろう。

 これも、ヒメには言えないな……。


 そんなやり取りをしている最中、少し離れた場所から多月の声が響く。


「オイ! 二人共! 外階段見つけたぜェ!」

「今行く! 行こう、ヒメ……両親に会うためにも」

「うん! もっともっと頑張らなきゃね!」


 壁と同化していたドアを開けて外に身体を出す多月と、その腕を引っ張り涙目の誠がいた。

 まったく気がついていなかったが、そのドアはエレベーターがあった場所から直ぐの壁だったらしい。


 元の世界の東京タワーと外見は同じなら、此処が展望台のメインデッキだとすると有名な空中散歩と称した外階段だろう。


「――有名なメインデッキまでの階段だと思っていたが、上階段しか無くないか……?」

「うん……しかも、高っ! 思った以上に高いよ〜!」

「メ、メインデッキは、150mあるからね……トップデッキになると……250mって、怖っ! 無理!!」


 何気に詳しい誠に、多月の横から外を眺めると、網状の階段から下が透けて見えた。上に続く格子網の階段は、誠の言うように大体予想通りの場所まで繋がっていそうにみえる。


 階段自体も、本物さながらに見えなくはないが、立ってみると目線の高さから上は少し空いているのが気になった。

 これは、明らかに罠がある。


 先ほどのエレベーターもそうだったが、元神は完全にヒメから知識を得て実験していると考えられる。


 ――つまり、俺たちは丁度良いタイミングで来たモルモット……。


「完全に、舐められてるな」

「ああ、アタシもそう思うぜ。ぶん殴らねェと気が済まねェ! まぁ――殺す(・・)んだけどなァ?」

「――そうだけど、もう一度死んでるから。魂は、殺すには入らないよ!」


 ある犯罪などは、心を殺すとは良く言うが……魂が抜けた身体は既に死人(しびと)と判断されるから、そう思うことにしよう。

 それにしても、いつにも増して強気なヒメには全員が鼓舞された。


 最後まで怖がっていた誠は、階段の鉄格子に手をついて足をカタカタ震わせながら歩いている。

 そのため、最後尾にいるヒメは呆れ顔で少しだけ距離があいていた。


「誠ォオ! 気張りやがれ! それでも男かァ!」

「そ、そんなこと言っても……。それに、性差別だよ……!? ヒメちゃん、ご、ごめん……」

「ううん、誠さんのペースで大丈夫だよ〜。まぁ、二人と離れすぎない程度にね!」


 優しい声をかけているようで、発破をかけているのが分かるヒメは、俺よりも容赦がない。

 半分までは登ってきたが、階段を上がる音だけでシーンとした空気に少しだけ緊張の糸が(ほぐ)れてきたときだった。


「うわっ!? な、何これ!」

「誠!? どうし――ヒメ!!」

「待って待って! 消えないでっ!!」


 誠が手についた鉄格子が赤い粒子のように消えていくと、他の部分も徐々に消えていくのが目に入る。

 二段下にいた二人に向かって俺は走り出すが、人間の足で駆け下りて追いつけるはずもない。


 飛行魔法は制限され、為す術もなく目の前で誠とヒメが足を踏み外すように頭から地面に落下していく。


 思わず膝をつきそうになる俺の後ろから光速で何かの影が飛び去った。

 風圧で乱れる髪を気にする余裕もなく息を呑む。


 落下して地面から半分くらいのところで二人を掴んだのは多月だった。

 俺は思わずその場でしゃがみ込む。


「クソッ! 重ッ! やっぱり、二人は無理か――ヘタレてんじゃねェよ、ナイトォオ! ヒメを投げるから受け取れェエ!」

「えっ……!? ちょっ、待て――」

「問答無用だァァア!!」


 「キャァァア!!」と悲鳴があがると同時に荷物のように投げられたヒメを必死に抱きしめ、尻もちをついた。

 軽くなったことで、直ぐに誠を連れて羽根だけ竜化した多月たちが戻ってくる。


「うぅぅ……。あ"り"がと"う"……。でも、そろそろ頭に……血が上りそう……」


 ヒメを抱きしめたまま身体を起こした俺は、泣いている誠を良く見ると掴まれているのが足だと分かった。

 宙づりにされた誠の顔は青ざめて大変なことになっている。


 多月の竜化は女神のギフトによる肉体的なものだから、阻止できなかったらしい。

 何かしてくると予想はしていたが、まさか足場を消してくるとは思っていなかったから、どっと汗が噴き出す。



 先ほどのことで意識が変わった誠は、真剣な表情で同じ速度で階段を上っていた。


「本当に、さっきは……僕のせいで、怖い思いさせて……ごめん、ヒメちゃん」

「ううん……。ほんの少しは、怖かったけど……飛行魔法が使えないだけで、手段はあったから。それに……ナイトくんが……。抱きしめてくれたし――」

「えっ……? 最後のほうが、聞こえなかったけど……。でも、他に手段があったなんて、さすがだよ……」


 階段の構造的に俺と多月、誠とヒメが隣り合わせに進んでいる。そのため、話をしている二人の声は聞こえていたが、最後の言葉は拾えなかった。


 緊張感で身が引き締まる中、階段の終わりが見えてきてホッとした瞬間――。


 ガキーーン!!


 何か(・・)からの攻撃を本能で感じ取った多月が竜化させた腕で防いだ。

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