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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第三章

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第三十四話 自由と権利

 外に出ると、直ぐにヒメが回復してくれたおかげで大惨事には至らずに済んだ。

 下手したら、女性二人の前で……なんてことも。多月は笑ってそうだが、ヒメには見られたくない情けなさだ。



 少し休んでから、再び町に向かって歩き出す。遠目に見た沼地は、入ってみないと底がないとは思えない見た目だった。


 再び厳重な門が見えてくると、門番の女二人は半日もせずに帰ってきたことに驚いた表情をしていたが、そんなのはどうでもいい。


 門が開くと、そのままギルドに向かう。誠は無事だと思うが、精神面で心配だ。


 平然と戻ってきた俺たちに対して、町の人間も興味をそそられたように視線を向けてくる。

 それを横目で確認しながら、ギルドの扉を開いて中に入った。


 すると、先ほどと変わらない雰囲気だが、カウンターではない椅子に座って話をしていたギルドマスターの女は驚いたように立ち上がる。


「嘘……ですよね? まだ、半日すら経っていませんが……」

「嘘だと思うなら、コレを見てもらおうかァ?」


 相変わらずの態度で多月が吠えた。そして、後ろ手をヒラヒラさせてヒメに向かってアイテムボックスから装備一式を出すように促している。


 アイテムボックスから取り出された、厳かな装備一式を細腕が軽く手にして多月に渡す姿は、目を見張るものだった。


「ほらよッ! 早く、鑑定しやがれ! そんで、誠を連れてきてもらおうかァ?」


 ドサッ


 低い音をさせて丸いテーブルに置かれた装備一式に、誰もが唾を飲み込む。


 口を挟めない空気感と、そもそも男である俺は言葉を話す許可を得られないと会話が許されない。

 たくましい女性陣を後ろから眺めていると、ニ階からギルドに連れてこられたときと同じ甲冑の女が、約束通り無傷の誠を引き連れて現れる。


「み"ん"な"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!」


 初めて会ったとき以上に暗い表情をしていた誠は、俺たちを見た瞬間涙を溢れさせて叫んだ。

 もちろん、そのあと口を塞がれ恐怖で怯えて別な涙を流している。


 それを見た多月は地響きを鳴らすように圧をかけ、ルビーのような一重の瞳は、ギョロッとした竜そのものに変化して女を睨みつけた。


 ガシャン!!


 威圧感によって、女は目を白くして口から泡を吹くと、階段の下で金属音を立てて崩れ落ちる。


 それをみて一番恐怖したのは、助けられたはずの誠だった。


「ヒッ……!!」

「多月さん! 誠さんが、怖がっちゃってるから~!」

「あァん? ビビるんじゃねェよ、誠! 根性見せなァ!」


 「姐さ~ん」と泣く姿に根性は微塵も感じられない。


 早くこの場を納めないといけないことに否応なく急かされるギルドマスターの女は、鑑定を始める。



 【スワンプ一式】

 《ソード》

 攻撃力50、命中力補正+5

 ヌルヌルした魔物に有効。沼の主を倒すと50%の割合で宝箱に入っている。


 《シールド》

 防御力30、水属性+5、重さ補正+5%

 水タイプに強い。濡れても錆びない。沼の主を倒すと50%の割合で宝箱に入っている。


 《アーマー》

 防御力50、水属性+10、重さ補正+10%

 水タイプに強い。濡れても錆びない。泥を浴びることで効果が増す。沼の主を倒すと50%の割合で宝箱に入っている。


 《一式装備補正》

 セットで装備することによって、全ての値が+10される。



「――とのことだ。これは、間違いなくダンジョンボス攻略の宝箱から得られたアイテムだ……」

「つまり、ミッションコンプリート……で、良いですよね?」

「誠ォ! その転がってる女を飛び越えて、こっちに戻ってこい」


 未だに目を覚ますことなく倒れている甲冑の女に視線を向けると、誠は思いきり首を左右に振っていた。


 ――俺も、倒れている相手を跨ぐのは、人道的にどうかと思うぞ……。


 避けるように、こちらへ小走りで戻ってきた誠は涙を浮かべて、俺に抱きついた。

 思わず頭をポンポンと叩いて無言で慰めるが、身長差が恨めしい。


「オイッ! そこは、アタシに泣きつくところだろッ! なんで、ナイトなんだよ」

「えっ……姐さんは、カッコいいけど……さっきのが、まだ――」

「俺も、同感だ……まぁ、男に抱きつかれたのは、学生以来だけど」


 話をしたことで落ち着きを取り戻した誠が離れていくと、なぜか鋭い眼差しを向けているヒメに気がついて首を傾げる。


 いや、さすがに怖い思いをしたからと、ヒメに抱きつくのはなしだ。

 きっと誠も選択肢がなくて俺に泣きついたんだろう。



 バシッ!


 横から音がしたかと思うと、背中を叩かれて再び違う涙を浮かべる誠の姿があった。

 多月には沢山助けられたが、自分の力を分かっていないところが危険だと思う……。


「――大変、申し訳ないことをしました。ギルドの依頼は達成となります。よって、貴方がたの自由と権利をお約束します」

「それじゃあ、もう俺たち男が会話を許されないと話せないのもないんだな?」


 静かに首を縦に動かすギルドマスターに、ホッとして胸を押さえた。横目で確認したヒメも笑顔を浮かべている。

 ――さっきのは、なんだったんだ……。


 俺たちは長居無用と、即座にギルドを後にして一度休憩するため宿屋に向かう。

 既に、俺たちのパーティーについては町全体に知れ渡ったようで、明らかに重い空気が変わっていた。


「ハァ……ようやく、自由になれたな。俺は、何も出来なかったけど」

「そんなことないよ! ナイトくんが出した、光の剣はカッコ良かったし!」

「ああ、良い動きしてたぜェ?」


 終始、多月に運ばれていただけな気がしたが……ニ人がそう言ってくれるなら、素直に受け取ろう。


 部屋に通された俺たちは、他愛もない話で花を咲かせていたが、そんな部屋の隅に丸い穴が一つ。

 晴れて自由の身になったにも関わらず、一人だけ自分の空間内に引きこもっている男がいた。

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