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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第三章

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第三十三話 ドラゴン(多月) VS 巨大ナマズ

「イケるな……よっしゃァア! ナイトのことは、ヒメに任せた!」

「えっ!? あっ、了解~!」

「多月ー! 何する気だ!?」


 背中の服が破けると大きな二翼が姿を現した。一瞬サラシの前がはだけかけると、ヒメが慌てて魔法で縫合する。

 俺は多月の後ろにいたから、背中のサラシが破ける姿しか見ていない……。


 ――セーフ……だよな?


 勢い良く飛び上がった多月は、上空から思いきり息を吸い込むと、それに気がついたナマズも大ジャンプして、そのヒゲを伸ばしてくる。

 一瞬のことで、攻撃魔法を唱えようとしたヒメより先に、ナマズのヒゲが多月の腹部に巻きついた。


「スゥゥ〜――おととい来やがれ!!!」


 巻きつかれた瞬間、多月が開いた大きな口から炎が溢れだしてナマズに直撃する。

 ナマズは、まともに炎を顔面に喰らうと横に長い口が半開きとなって黒い煙を吹き出した。

 多月に巻きついていたヒゲもスルりと抜け、そのまま沼地に落下する。


 ヴァッシャアアン!!


 勢いよく音を立てて水しぶきがあがる。再び、津波が襲いかかってくるが、ヒメの魔法によって防がれた。


「す、凄まじいな……」

「う、うん……なんか、昔の怪物映画みたい。()られ方が……」


 少しの間、大きな泡が水面にボコボコと出ていたが、暫くするとシーンと静まり返る。

 バサバサと、多月の二翼が羽ばたく音が部屋に響く中、白い腹を見せたナマズが水面に浮かび上がった。


 すると、沼の水が魔法陣に戻るように吸い込まれていき、身動きが取れるようになる。

 ダンジョンボスの巨大ナマズだけが取り残され、魔法陣は端から消えていった。


「――終わった、のか……?」

「そう、みたいだね? 演出は、それなりに派手だったのに……ほぼ、一瞬のうちに」

「レベル50ごときが、アタシの敵じゃないぜ!」


 ずっとドラゴンブレスが撃てなくて我慢していたのか、満足顔の多月が地面に降り立つと、羽根が肉体に戻っていく。

 魔法のように消えるんじゃなく、収納型らしい……。

 背中を良く見ると、微かに羽根が収まっていそうな部分があった。


 興味深く見てしまっていると、背後から圧を感じて振り返り、鬼のような形相(ぎょうそう)のヒメに息を呑む。

 その直後、ひとりでに閉まった扉が再び開くと同時に、コトッと音がして振り返ると、倒れたナマズの前に赤い宝箱が出現していた。


「あっ……宝箱。これで、任務達成か?」

「そうかも……でも、開ける前に、ちょっと待って!」


 ヒメは多月のサラシと服をアレンジしているようで、素早い手付きで羽根の位置を確認して衣服を作りあげる。

 その姿は、完全に神輿を担いでいそうな装いだった。


「おっ! サンキュー。それじゃァ、開けるぜェ!」


 勢いよく宝箱を開く多月の背後からニ人で覗き込む。

 一瞬眩しい光に目を瞑るが、中には装備一式のような鎧が入っていた。

 魔法使いの鑑定では、装備品は調べられないため分からなかったが、なんとなく沼地に関係ありそうな気はする。


「おっ……見てみろよ。ナマズの近くに、またコインが落ちてたぜ?」

「あっ……本当だ。ミミックも、ユニコーンもそうだったし、雑魚じゃない魔物が持っているのかもな」

「もっと気軽に異世界探索が出来たら、このコインの謎も解き明かしたいんだけどね〜」


 ヒメは未所持らしく、現在手持ちにあるのは、ユニコーン、ミミック、ナマズの三枚だ。

 何枚存在しているのかも不明で、尚且ドロップする魔物も分かっていないため、残念ながら冒険を楽しむ余裕はない。


 ナマズのヒゲは太くて長いことから、何かに使えるかもしれないとトワイライトで切り取って、装備一式と共にヒメがアイテムボックスに収納する。


「そんじゃ、誠も待ってるし、帰るとするかァ!」

「あー……上の、水流ってどうなっているんだろうな」

「うーん……でも! 地下ニ階は広いし、ダンジョンボスを倒したことで魔物も一時的に出てこないだろうから、多月さんにナイトくんを抱えてもらって、水流が抜けるまで待つって手も使えるよ!」


 再び荷物のように抱えられるのかと思うと顔が引きつった。

 ヒメの魔法で塞いだ地下一階に上がる階段の前まで戻ってくると、軽く杖を振って解除する。


 ボロボロと崩れるように石畳が消えて階段の上が見えると、シーンと静まり返っているのが分かった。


「ダンジョンを攻略したから、トラップも解除されたのかもしれないな」

「それなら良かった~。帰りは楽だね。あ、でも歩いていくと時間がかかるし……」

「よっしゃあ! アタシに任せな!」


 ――とても嫌な予感しかしない。


 再び荷物のように抱えられるかと思っていたら、まさかの両肩を手で捕まれる形で飛行する羽目になった。


「これなら――荷物みたいに、抱えられた方が……マシだー!!」

「あァん? VIPサービスに文句つけるんじゃねェよ! 漢だろォ!!」

「ナ、ナイトくんファイト~! あとで、回復するから!」


 思った以上の速度に顔の肉も揺れ、必死で歯を食いしばる。

 ……というか、空気抵抗で息をするのもやっとだぞ!?



 ――町で待っている誠が、羨ましい……。

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