第二十五話 女性絶対主義の町
二十二話→閑話に変更。それにより、他の話数字も変更しました。
目的の町が、おぼろげに視界に映ると三本の別れ道に差しかかる。
中央には木で出来た真新しい立て札がそびえ立っていた。
『右に進む者――暗闇の森と呼ばれ、ランクAの魔物がゴロゴロいる道に恐怖せよ。左に進む者――底なし沼が広がり、道と呼ぶには憚られる。中央に進む者――安心安全の町。進むべき道は、唯一つと思うべし』
だが、立て札に書かれた町の名前は――女性絶対主義の町。
――嫌な予感しかしないぞ……。
「えっ……と?」
ヒメと視線が合うと思い切り首を横に振られる。
「私、知らない……こんな名前。前は、カタカナだった気がするし。何より、女性が主導権を握っているようには感じなかったよ〜?」
これも元神の影響なのか……?
それでも、この町を通る選択肢しか俺たちにはない。
「うーん……。あっ! 私の魔法で、ニ人を女の子にして入るとか〜?」
「そりゃあ……名案! とも思ったがァ……女って、結構めんどくせェ生き物だぜ? こんなこと掲げてるくらいだ。バレた方がヤバイ匂いがする」
たまに多月は、本能のように危険を感じとる。
これには俺も多月に賛同せざるを得ない。
それに、さすがに命までは取られないだろう……。強いてあげるなら、労働くらいか。
1番怯えている誠を引っ張っていく多月を先頭に、俺たちは町に続く道を進む。
町は魔物よけの木で覆われていて、結界魔法もかかっていた。
ここは、ヒメの情報と変わらない。
つまり、そびえ立つこの大きな門で入出料を求められるわけだが……。
門の前には、顔が見えるタイプの甲冑を着た、ニ人の女がいる。
俺たちを品定めするように鋭い目付きを向けてくると、大きな音を立てて開門した。
「えっ……入出料を払うんじゃ――」
「女が良いと言うまで、男は口を閉ざせ!」
「此処は、女性絶対主義の町。この門をくぐった男は、町を出るまで自由はないと思え!」
思った以上に厄介かもしれない……。
横目で見た誠は全身を震わせて、足が小鹿のように震えていた。
女性陣も思った以上の過激派に引いている。
少し手間だが、多月に変身してもらって一人ずつ乗せてもらい町を越えるべきだったかもしれない。
「あァッ!?」
「多月……」
遅れて食ってかかろうとする多月を小声で止める。舌打ちをして、大人しくなる様子に少しだけ甲冑の女二人の顔は強張っていた。
何が起こるか分からない町の中に入ると、大きな門は音を立てて閉められる。
男にとっては大きな鳥かごか……。
内部は他の町と変わった様子はない。
ただ、違うところは……。女の前はおろか、一緒に横を歩く男が一人もいないこと。
今までも気にしたことはなかったが、明らかに異様に見えた。
そんな俺たちに近づいてくる甲冑姿の女が二人。
先ほどの門番も槍のような武器を手にしていたが、こちらも同様だった。
「ここのパーティーリーダーは誰だ」
先ほど、女の許可を得られるまで男は言葉を話すなと忠告されたため、俺は目配せをする。冒険者なのだから、リーダーが男でも怪しくはない。
「あァん? それが、人にモノを尋ねる態度かよ! まァ……世間知らずな、お嬢ちゃんたちには分からねェか。うちのリーダーは、コイツだ」
多月は、軽く挑発するような態度で一歩前に出ると大きな声で吼える。その声で、甲冑の女二人は肩を揺らして後退っていた。
まぁ、自然な反応だろう……。
「そ、そうか……リーダーが、男なのは別に構わない。ただ、今はこの町に入った時点で入出料の代わりに、ギルドの依頼を受けさせている」
「そ、それは……強制ですか?」
立て札でも、門番も教えてくれなかった初耳に、嫌な予感しかしない……。
それと、町の中に入って気がついたことがある。表にはなかった立て札が高々と掲げられていた。
男女逆転制度
1.女性の許可なく言葉を発することを禁ずる
2.女性より前に歩くことを禁ずる
3.他人であっても女性と会ったら頭を垂れるべし
4.女性の言葉は絶対(尚、人権に則り、無闇に殺害する行為は禁ずる)
5.対等なのは女性同士のみ。勝敗は、武力
あからさますぎてツッコミすら出ない……。
「町を出たいのなら、ギルドで依頼を達成することが今のルールだ」
「達成できなかったら、どうなるんだァ?」
「それは男なら、ああなる」
一人が指差す方向にいるのは、男女二人組の冒険者のようで、男が馬車馬のように働かされている様子を、見守っている女性の姿があった。
女性が手を出そうとすると、それを同じ甲冑の女が防止している。
――一生奴隷にされかねないぞ……。
青ざめていく誠の表情に、俺も胃が痛くなってくる。
うちのパーティーも、ある意味女性陣は強いが……ギルドの依頼によってはどうなるか。
『――ナイトくん……思っていたより、ハードモードかも!』
突然脳内に響くように聞こえてきた声に驚いて肩を揺らす。
立て札から視線をヒメに移すが、彼女は甲冑の女と向き合ったままだった。
つまり、これは魔法……。
『あっ! 脳内で言いたいことを考えてみて〜! そうしたら聞こえるから』
『えーっと……これは、魔法……なんだよな? テレパシーみたいな感じか?』
『うん! 脳内に直接音を乗せてるの。さすがに、私の魔法で町を一掃するのは良くないから……ギルドの依頼を受けてみよう!』
最近、ヒメから物騒な言葉を聞くことが増えたような……。
今は、目の前のことを考えよう。
パーティー共有は目線などで気付かれる可能性があるということで、俺はヒメと話を合わせると甲冑の女に連れて行かれるままギルドに向かった。
ギルドは、今までの町で1番大きい施設に感じたが、色のなさと中から声がせず閑散としてみえる。
そのまま中に入ると、後ろから誠の泣き叫ぶ声が聞こえてきてバッと振り返る。
「ヒィィィ!? ぼ、僕は何も――」
「許可なく喋るな!」
「オイオイ……どういうことだァ? うちのパーティーメンバーの野郎は、アタシらのもんだ。乱暴に扱うんじゃねェ!」
多月は拳を握りしめ臨戦態勢となり、誠は鎧のみ着飾った別の女に剣を首に突きつけられていた。




