表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/52

第二話 彼女に誘拐されたらしい

「その、女神のギフトっていうのは、良くある異世界転生とかのアレで良いのか? 俺は、死んだよりも召喚されたような感覚だけど……」


 疑問を投げかけた瞬間、彼女は立ち上がり深く頭を下げてきた。角度90度は、いっているかもしれない。

 俺も良く分からないまま思わず立ち上がった。


「ごめんなさい!!」


 急に謝られて、俺は肩を大きく揺らす。その理由は直ぐに分かった。


「その……私、こんな見た目のとおりで、魔法が使えるの」

「えっ……そうなのか? やっぱり、此処は異世界ってことになるのか」


 魔法という単語で、不安だった俺の心に少しだけ面白いという気持ちが芽生える。まさか、平凡な人生を歩んでいた自分が異世界に飛ばされるなんて思いもしなかった。


「うん……そうなんだけど。実は、女神様の魔法を、盗んで……貴方を誘拐(召喚)したのは、私なの!」

「えっ……?」


 ――まさかの彼女に誘拐(召喚)されたらしい。



 少しの間、思考が停止した。


 つまり、あの夢は……誘拐(召喚)する前のフラグ?

 みたいなものだったのか……。


「その……帰る方法が見つかったの。でも、それにはギフトを持たない異世界人が必要で」


 頭を下げたままの結束(ゆいつか)さんに、顔をあげるよう(うなが)すが、真剣な彼女はその姿勢のまま理由を口にする。


「それで、なんで俺だったんだ?」


 これは、素直な疑問だった。彼女が誘拐(召喚)される前に最後に会っていた人間だったとしても、普通なら家族とか身内を思い浮かべる。


 まぁ、俺たちが25歳なんだから、彼女の両親は50歳は過ぎているだろうから無理か……。

 確か、彼女は俺と同じで一人っ子だったはず。


「その……1番に、顔が浮かんだから」

「えっ?」


 両手を擦り合わせるように、モジモジしながら何を言うかと思ったら、まさかの発言に思わず上擦った声がもれた。


「あー、その! 当時から、スポーツ万能で頭も良かったでしょう!? あれから15年も経ったら、きっと頼りになる男の人に成長していると思ったから……」


 少しして顔をあげる彼女は、目を泳がせている。

 恥じらう姿を目の当たりにした瞬間、ドキッと胸の奥が騒ぐのを感じた。


 今まで感じたことがない……。いや、小学4年生のとき、彼女に感じていた気持ちと同じだ。

 思わず左手を胸に当てる。


「その、結束(ゆいつか)さんは、なんのギフトをもらったの?」

「えーっと……大人になった今だと恥ずかしいんだけど……当時は、小学4年生だったから……ま、魔法少女になりたいってお願いしたの!」


 とても可愛らしい願いごとだった。


 でも、そうか……彼女は、俺と別れたあの日から、この白黒(モノクロ)の世界で懸命に生きて――。


「とても、可愛いと思うよ?」

「有難う! そ、それでね! なんで、こんな姿かっていうと……魔法少女は、この世界に合わないから、魔法使いでって言われて……」


 あー……良くある、王道じゃないってヤツか。

 まぁ、この世界は確実に異世界だし。魔法少女は、日本のアニメだからな……。


「それなら世界最強でっ! て、お願いしたら賢者? っていう、魔法なら、なんでも扱える職業(クラス)になったの」


 賢者といえば、どの物語でも最強と呼ばれる職業(クラス)に間違いはない。

 だけど、これで話は終わらなかった。


 複雑な表情を見せる彼女の顔は、曇っている。


「いつ、帰れるの? って、聞いたら。女神様は、こう答えたの。もう(・・)かえれない(・・・・・)

「えっ……」


 その言葉が得体のしれない何かに感じて、ゾクッと身体が震えた。


「帰りたいって訴えたら……ギフトを貰った瞬間から、あなたはこの世界(・・・・)縛られた(繋がった)。だから、もう帰れない……」


 なんだか、ホラー話を聞いている感覚に襲われて、思わず両手をクロスして腕を擦ると唾を飲み込む。

 嫌でも視界に入る白黒(モノクロ)の世界観が、さらに怖さを増長しているように感じた。


「ごくたまに、いなくなった子が、戻ってきたとかニュースであったでしょう? あれは、多分なんらかの形で、ギフトを貰わなかった子供たち」


 彼女と会話することで、だんだんと当時のことを思い出す。

 つまり、ギフトを疑問視した子供たちが、帰りたいと訴えたのかもしれない。


 でも、神隠しに遭うのは小学生以下だ。


「だけど、女神様はこうも言ったの。私の力ではどうにもできないけど、1つだけ方法がある。あの者(・・・)を倒して、この世界の()を取り戻せたら元の世界に戻れるって」


 誘拐(召喚)されて不安になっている子供にいう話じゃないだろう……。

 しかも、まるで脅しのような話だ。


「でも、漫画とかで良くあるのは、特殊なスキルを持ってるタイプか、神や女神かにチート能力を貰わないと、この世界を生き抜けないんじゃ?」

「そこは大丈夫だよ! 特殊なスキルはないけど、異世界人は潜在能力が向上する」


 なるほど……。

 そういえば、高校生くらいに流行っていた漫画に、『魔王を倒してください勇者さま』とかあったな。


 戦闘能力が向上するのは王道。

 つまり、俺の秀でている部分もレベルアップしてるってことか?


 腕を組んで考える。


「それを見る方法はあるのか?」

「魔法使いだけかな。神崎くんが良かったら、私が視るよ」


 そういって、結束(ゆいつか)さんは目をこらすと焦げ茶色の瞳がラベンダー色に淡い光を()びる。透けていて、とてもキレイな目をしている。


「少し恥ずかしいけど、頼む」

「まかせて!」


 人に見られるのは、別に気にしたことはなかったが、彼女に見つめられると、正直気恥ずかしさがあって顔を横に向けた。

 しかも、俺の格好は寝間着である。この世界に町はあるのだろうか……早く、着替えたい。


「うわっ! 神崎くん、すごいよ!!」


 そんな俺の気持ちはお構いなしで、少女のようにその場でピョンピョン跳ねて、はしゃぐ姿は可愛かった。


「えっ……? それは、良い意味で、だよな?」

「もちろん! それじゃあ、読み上げるねー。ちなみに、この世界では、()って文字で分けられているみたいなの」


 彼女が教えてくれたのは、『力、命中力、持久力、敏捷力、知力、精神力、魅力』の7つ。


 良くあるゲーム表記だな。


 それで、俺のステータスは――。



 神崎ナイト

 年齢:25

 性別:男

 レベル:1

 力:150

 命中力:100

 持久力:100

 敏捷力(びんしょうりょく):150

 知力:100

 精神力:100

 魅力:200


 らしい。

 正直言って、無駄に1番高い魅力の意味が分からないな……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ