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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第三章

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第十九話 出会い頭に要注意

「えっ……穴? いやいや、どうして……ってか今の声、この中から!?」


 濃い霧の中で、地面から少し離れた位置にポッカリと開いた黒い空洞のような穴。


「あー……(うるさ)い……耳障り……僕の睡眠の邪魔をしな――」

「あァん!? なんラ……もう朝――」


 ゴンッ!!


 首を下に向けていた多月は急に頭を上げた。

 その瞬間、穴から顔を出した男の(あご)に石頭の音が響く。


 これは、痛いヤツだ……。


「ぐぅぅぉぉお――!!」


 (もだ)えるように穴の中へ消えた男のうめき声は、途端に聞こえなくなる。

 角が刺さらなかったのは不幸中の幸いかもしれない。


「おーい……大丈夫かぁ? 明らかに、アンタも異世界人だろう?」


 俺は一歩下がったところから、一切中が見えない穴の中に声をかける。


 こんな空間魔法のような能力をもった現地人がいるわけがない。

 数分して、赤くなった(あご)を押さえたまま(おび)えた様子で顔を出す男に眉を寄せる。


「……あんたも、って……ことは、君たちも? 本当に、僕の他にも……いたんだ」

「悪いが、今話している余裕はないんだ。アンタのその能力が何か分からないが、助けてくれないか?」

「えっ……僕の、空間に……入りたいって、いうの? ムリムリムリ! 他人とか、入れたことないし……!」


 穴から顔を出した男は、黒い前髪が長すぎて俗に言う目隠れだった。

 たどたどしい口調も合わさって、色々と察する。


 そんなとき、微かに耳に届く声に空を掴むように片手を伸ばした。

 すると、何かに触れて掴まれる。

 多月を片手に力を込めて引っ張ると、短い悲鳴とともに腹部に柔らかい感触がした。


「ヒ、ヒメ……!?」

「ナ、ナイトくん……!? よ、良かった――」


 思わず握っていた手を放して両手を上にあげる。

 多月を支えていたことも忘れ、そのまま男へ一直線で突っ込むと再び鈍い音が響いた。


「ヒッ……!」


 間一髪で男は穴の奥に引っ込んだことで2度目の頭突きを回避する。


「いッ……てェな、このヤロウ!!」

「うわっ……! ぼ、僕のせいじゃ、ないからね!?」


 先ほどと違って痛がる様子に、ガシガシと頭を擦る多月は幻覚から解放されたようだ。

 男の許可無く穴には入れないことが証明される。


「今のことから、その穴にはアンタの許可がいるんだろう? 頼む、少しの間だけでいいから助けてくれ」


 もう1度頭を下げて頼み込んだ。

 嫌な予感がする……。


 その予感は的中すると、足から何かが地中を這っているような振動が伝わってきた。


「――来る……!」


 地中が盛り上がり地割れのような亀裂から、巨大な根っこのような物体が1本、上空に反り上がる。

 伸びた茶色い根は、細長い先から振り下ろすように地面に叩きつけられ、衝撃で俺たちは空中に飛び上がった。


「わ、分かったよ……! 但し、ぼ、僕の領域では、僕が王様だから……き、気をつけて!」


 いざ、目の前で同じ異世界人の俺たちが危険にさらされていることを理解したのか、男は長く細い腕を伸ばしてくる。

 俺は、地面に着地する寸前に男の手を握ると、ヒメに手を伸ばした。


 ヒメは、魔法を唱えると多月と共に俺の身体に引き寄せられるようにしてくっついた。

 どんな魔法か検討もつかなかったが、急に腕の中にヒメの温もりを感じて思わずドキドキする胸を抑えながら、男に導かれるまま穴の中に消える。



 穴が暗かったこともあって、眩しい光が照らされると思わず目を瞑った。


「まぶしっ……」

「さ、さっきまで……霧の、中に……いたから、じゃないかな……」


 薄く目を開くと、空間内は元の世界のように明るく、すべてに色がついている。

 そして、いつの間にか身体から離れていたヒメと、多月はへたり込むように座っていた。


 今一度、男に視線を戻すと少し顔を上げる。

 俺よりも10cm近く身長が高い。


 腕は細いが引き締まった身体つきをしている。

 まぁ、目は相変わらず前髪に隠れてまったく見えない。


「あっ……有難う。助けてくれて」

「い、いや……目の前で、あんなの……見せられたら、ね……」

「そうだ。俺の名前は、神崎ナイト。異世界人だ。それで……」


 会話を続けようとすると、空間内に一瞬で木の椅子が三つ増え、座るよう(うなが)される。

 加えて、いつの間にかテーブルの上にマグカップが三つ増えていた。


 すると急に甘い匂いがしてきて、砂糖とビターな香りと色で、すぐに何か分かった。


「ココアの良い香り……はぁ、心が癒やされるよ〜」

「ああ……そうだな。そういえば……ご飯や飲み物なんかも、色があったよな?」


 白黒(モノクロ)と色の感覚が次第に分からなくなってきて頭を抱える。


「あれじゃないかな? 食べ物は、ほとんど生きた食材を使っているから……亡くなったら色は失われるけど、料理として(よみがえ)る……みたいな!」

「うーん……少し、強引な気もするが……見栄えは大事だからな」


 俺は、再び深く考えるのを放棄した。基本は、白黒(モノクロ)。何かの条件によって、色があると思うことにしよう。

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