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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第二章

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第十七話 世界の"いろ"を取り戻せ

 次の瞬間、ヒメの杖が光りだすと目の前にドラゴンの爪や角が現れて、地面にドサッと音をたてて落下する。

 もちろん、多月のような赤い色ではなく、白黒(モノクロ)だ。それに、馬鹿でかい……。


 理解が追いつかず、呆然とする俺と多月を尻目に、いつも見せる笑顔とは違い、魔女のような不敵な笑みを浮かべる姿にゴクリと唾を飲み込む。


「これはね……複製(レプリカ)って言うんだ……。つまり……多月さんの爪と角を複製したの!」

「な、なるほど……。そっちの方がいいかもな。実際に、この洞窟から多月はいなくなるわけだし」

「なんだ、そういうことかよ! それじゃーオマエら、荷づくり手伝えッ」


 大晦日の大掃除ならぬ、引っ越し作業が始まった。


 とはいえ、元々家具などは一切ない。それから、女神から金は支給されないらしく、物資だったとのことで、持ち運ぶものはほとんどなかった。

 まぁ、小学生に金を与えても無駄なものを買いそうだから、分からなくはない。


 俺たちは、あらかた片づけを終えると洞窟から外にでる。

 すると、多月が洞窟の前に立ち肩慣らしを始めた。


「そんじゃ、他はアタシの炎で燃やしてっと――ドラゴンブレス!」


 多月が(うな)るように叫んだ瞬間、大きく開かれた口から赤い炎が吐き出される。

 一瞬のうちに残っていた簡易ベッドなどが灰になった。

 これが俗にいう証拠隠滅(しょうこいんめつ)……。なのだろうか。


 もしも調査隊が来たりしたら、すべて屈強の戦士にみえるけど、実は魔法使いだというヒメがやったことになる。

 考えることを放棄して、森を抜けると俺たち3人は町に戻って来た。



 多月も(あつか)いは魔法使いの部類らしく、変身魔法も使えたことで角と尻尾などは隠している。

 ギルドはパーティーメンバーすべてが登録する必要はないとかで、イレギュラー扱いにした。

 もちろん、町に入る前にヒメも先ほどと同じ屈強の戦士風魔法使いへ変身する。やはり、見慣れないし……なぜか多月のことを気にしてみえた。



 早速ギルドのカウンターで、ヒメの魔法で作った本物にしかみえない複製(レプリカ)を置く。

 ゴトッと硬い石のような音をたてる爪と角を目にしたギルドマスターは、なんともいえない表情をしていた。


 もちろん鑑定もされるが、ヒメの魔法は賢者という特別製のため、本物と同じ扱いをされるらしい。ちなみに、素材のもつ効果なども同じだ。

 これはもう、贋作(がんさく)ともいえないだろう。元の世界にあったら騒ぎになるレベルだ。


「間違いない……本物だ。さすが、あの子の友人だな! これで、町の平和は保たれる。これは報酬の金貨だ」

「有難う。それじゃあ、少し掲示板を――」


 依頼が達成されたことの証明であるハンコを押された瞬間、背後から眩い光が(あふ)れ出す。


「あっ! 光ってる――! 私のときと同じだ……」


 俺たちはギルドの依頼板に貼られた虹色に輝く依頼紙に釘付けとなった。

 最初来たときは、色のついた紙などなかった。女神の依頼に間違いない。


「ん? 何も光ってなんていないぞ?」

「えっ……? もしかして、異世界人だけが見えるのか……じゃあ、依頼内容も、違っていたり――」

「うん! あのときも、ギルドマスターには別の依頼として見えてたよ」


 虹色に輝く紙に惹かれるように掲示板前に立つ。



 <女神の特別依頼>

 あの者の魂を討伐せよ。

 詳細は、全異世界人に事前に伝えてある。


 報酬

 あの者を倒して、この世界に色を取り戻した(あかつき)には、元の世界に戻れることを約束する。



「うそくせェなァ!」

「ああ……すべてが真実じゃないだろうな」

「うん……でも、依頼受けないで討伐するのもモヤッとするからね!」


 ヒメは虹色の依頼紙を()がすと、輝きは消えて普通の紙になった。

 そして、もう一度内容を確認してみて気がつく。ヒメの言うとおり、依頼内容は『世界の調査』と書き換わっていた。


 それをカウンターに渡して依頼を受ける。

 次はきっと戻れない。


「……挨拶とかは、いいのか?」

「うん……この世界での思い出はあるし、それは大事だよ〜? ずっと、忘れない……。けど、私は元の世界に戻りたい。だから、何も言わないでお別れ……」


 固い決意のヒメに、それ以上言葉は口にせず、軽く挨拶だけ交わしてギルドの外へ出る。


「よし、これでようやく任務開始だな」

「うん! ここからがスタートだね。多月さんも加わったし、三人で頑張ろう~」

「まぁ、アタシはぼちぼちだけどな。オマエらを見ていたら、もしも……両親が生きていたら、親孝行の一つくらい……したいなって思わされた」


 八重歯を見せるように笑う多月の姿が、俺には痛々しくみえて何も言えなかった。



 白黒(モノクロ)で判断するよりも早い、ヒメの魔法で時間を確認すると、ちょうど昼で思わず腹部を擦る。

 お腹が空いているような感覚は間違っていなかったようだ。


「それじゃあ、お昼にしてから町を出ようか。腹が減っては戦ができぬ~」

「そうだなぁ……正直、腹は減ってる。またあの店に行くか?」

「ううん! 今度は、表通りにある店でオススメがあるんだ~。あ、そこの陰で変身解いてからね!」


 さすがに、ここで育っただけあるヒメはなんでも知っていて頼もしい。

 だけど、なぜか最後の言葉だけ強く感じたのは、屈強の戦士風は嫌だったのだろうか。


 まぁ、25の女性でアレはないとは思う。

 変身したのは本人なのだが……乙女心は分からないな。

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