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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第二章

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第十五話 ドラゴン美女はクセが強い

 異世界人同士のよしみで洞窟の中を案内されると、ドラゴンの火で点けたという炎の明かりはオレンジ色をして室内を染め上げている。

 洞窟なだけあって、家具などはなく、ベッドは干し草と盗んできた布で作ったらしい。


 客が訪れたのも初めてということで、座る場所などもあるはずもなく、俺たちは固い石の上に足をおろす。


「悪いけど、粗茶とかもない。水は、隣に湧き水があるから好きに飲んでくれ」

「あ、お構いなく……。えーっと、多月さんでいいか?」

「呼び捨てでいいぞー。アタシのが年上だろうけど……そういう面倒なことは苦手なんだ」


 多月はベッドに音を立てて座るとあぐらをかいた姿勢で、俺たちを吟味(ぎんみ)するように見据えていた。

 俺とヒメはなぜか正座で座る。想定していなかった他の異世界人に、興奮のような、好奇心のような高鳴りを感じた。


 それは、昨日ここにきた俺以上にヒメの方が高揚した様子で、前のめりとなっている。


「あっ! 私は、多月さんで呼ばせて! ナイトくんのことも、くんづけで呼んでいるから」

「んー? まぁ、呼び方は人それぞれだしな! それでぇ? そっちが、ナイト〜。嬢ちゃんは、なんて言うんだァ?」

「あ、私は結束(ゆいつか)ヒメ! 多月さんは、いつから異世界に!?」


 入るスキがないほどに女子会のような勢いで盛り上がっていた。


 ドラゴン討伐依頼がなかったら、2人で女神の依頼を再度受けて元神に挑む予定だったが、俺たち以外でも元の世界に戻りたい人がいてもおかしくない。

 それに、自分たち以外にも異世界人が誘拐(召喚)されていたのを分かっていたのに、すっかり忘れていた。


 仲間は多いほうが勝率はあがる。それは、ゲームであれ現実でも同じ。

 この世界で死んだらどうなるかは分からないが、ヒメが初めに言っていたことが正しければ、存在を失う可能性は高いだろう。


 だから、力が見合わない相手は連れていけない。そういう俺も、今はまだヒメにおんぶで抱っこ状態だが……。

 この人は確実に強い。ドラゴンの能力を保持している時点で、ビンビンに感じる。


 でも、何年もこの洞窟に引きこもっていたのだとしたら……理由を知る必要があるな。

 女神が子供を選ぶ基準は、想像力だと言っていたが、それだけとは限らない。


 きっと、子供たちにも何か理由があるはず……。それなのに、なぜかヒメには聞けなかった。

 今思い返してみると、あのとき……家に帰りたくないと言っていた気がした……もう15年も経ってうろ覚えだし、俺が作り出した妄想かもしれない。


「1つ、聞いてもいいか? 多月……は、女神の依頼を受ける気はなかったのか?」

「あァん? 最初、異世界に誘拐されたときは、ガキだった……女神の依頼は18以降になったら資格を与えられるって言われたが、その前にアタシは絶望させられた……」


 もしもヒメと同じことを言われたのなら、絶望する理由は分かる。

 だけど、この世界を白黒(モノクロ)から元に戻すには、異世界人の能力が必要だと言っていたのも嘘じゃない……。


「えっ……もしかして、多月さんも……女神様のギフトをもらったときに、帰れないって言われたの!?」

「ヒメも言われた口かァ? つーか、普通は小学生のガキを扱うなら、もっと上手く手懐けるもんだけどなァ」

「真実を語って、なお絶望することなく、元の世界に戻りたいと願って元神に挑める異世界人を育てあげたかった……とかなら」


 それでも、俺ならそんな勇者みたいな人間を生みだすよりも、多月がいうように最初から真実は話さず、元神を倒して色を取り戻せたら元の世界に帰れるって言うな。

 あの女神は一体何がしたいのか、まったく分からない……。


「小学4年生のガキは、全員ビビるっつーの。それに……アタシが絶望した理由は、それだけじゃない」


 多月は、たそがれるように視線を外に向ける。どこか、はかなげにみえる姿に、一瞬ドキッとしたのはヒメには内緒だ……。


 そういうと彼女は、理由を語り始める。


「アタシの両親は高齢出産だったんだ。だから、誘拐(召喚)された時はもう、50代。当時は、60くらいで老人って言われていた時代で、アタシが18になる頃にはそれに近いだろ」


 言いたいことは理解できた。つまり、両親の生存が曖昧なこと。

 その前に病気や事故でどうなるかも分からない世の中ではあるが、普通に考えて元神で、この世界の管理者だった男を、18の少女が倒せる気がしない……。


 女神のギフトを貰っていても知らない世界で、そんな精神が強い人間はいないだろう。

 大人で誘拐(召喚)された俺ですら、ヒメに出会っていなかったら絶望していた。

 それと、女神が助けてくれなかったらその前に――。

 考えただけで身体が震える。


「アタシは、引きこもった。そうしたら、もう今年で35になる。両親は生きてても70を超えてるな……。18で動けなかった時点で詰んだんだよ」


 ――何も言えなかった。

 両親が健在な自分にはもちろん。多月が語り始めてから、沈黙するヒメも……。


 だけど、ヒメに誘拐(召喚)された俺には役目がある。

 幽体にされたヒメの肉体の在処(ありか)を知っているだろう元神に会い、身体を取り戻したらソイツの魂を打ち砕き元の世界に帰ることだ。


「――多月の両親が、今も生きている保証はない。だから、こんなことを頼むのも図々しいのは分かってる。だけど、純粋に戦力が欲しい……女神の依頼を一緒に受けてくれないか?」

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