第十三話 討伐依頼は上級者向け?
俺は登録をしてもらっている間、横でボーッとしているヒメに目を向ける。
元の世界で過ごした十年。幼少期よりも、青年期以降の方が記憶も鮮明で、印象も残る。
だが、ギルドで過ごした8年よりも、元の世界に戻りたくて18で旅立った彼女は、レベルやステータスを上げて、7年後に単身で神に挑み……孤独で亡くなった――。
無事に登録を済ませた俺たちは下手な嘘をついてしまったことで、別な依頼を頼まれてしまう。
「実は、結構前に居着いていたドラゴンなんだが……」
「えっ……? ドラゴン!?」
「なるほど……ドラゴンか〜」
ドラゴンという異世界特有の単語と、それに対しての普通に会話をするヒメに俺はギルドマスターと、交互に2度見した。
――いや、おかしいだろう……?
異世界でいうところのボスに近い存在じゃないのか?
色んな漫画を読み漁ってきたが、半数ではドラゴンといったら脅威の存在だぞ……。
いや、賢者の称号を得たヒメには脅威でもなんでもないのかもしれない。
「最近、町に下りてくることが増えて住人が怯えているんだ……。食料を求めてきていると思うんだが、魔物は何をするか分からないからな」
結構前から住み着いているのなら、生態系が変わっていてもおかしくないな。この世界も、魔物とは共存できていないようだ。
それにしても、ドラゴン……。俺には討伐した自分の想像がつかない。
「ヒメ……。だ、大丈夫なのか?」
「ドラゴンくらい全然だよ〜! 大きい魔物ほど攻撃は単純だからね~。それよりも……幻覚だったり、眠りだったりしてくる方が厄介かなぁ」
さすが、見た目が屈強の戦士を選んだだけはある。
多少の不安はあったが、壁側に置いてあった依頼の紙が貼りつけられている掲示板を見ても、肝心の女神の依頼が見つからなかった。
ヒメ曰く、何か条件があるのかもしれないということで、俺たちは『ドラゴン討伐』の依頼を受けることにする。
「それじゃあ、ギルドカードに登録させてもらう。こうすることで、どのギルドメンバーが、なんの依頼を受けているかが分かるようになっているんだ」
「へえ……万一、何かあっても消息はつかめそうだな」
俺たちは1度ギルドからでると、宿屋に向かって歩みを進めながら依頼を確認した。
白黒のせいで夕暮れも分からないが、黒い部分が増え始めたことで、夜が近いことを判断しているらしい。
<ドラゴン討伐依頼>
ここから西にある岩場の洞窟に住み着いたドラゴンの討伐。
討伐すると白黒になることから、素材の一部を持って帰ってくること。
詳細 なし
報酬 金貨10枚
他、ドラゴンの素材
「ヒメ……金貨10枚って、多いのか?」
金貨という単語すら、ファンタジーの醍醐味と頭にあるだけで、実際見たこともない。ヒメが持っていた硬貨は、銅貨と銀貨。
あれは、10円玉と100円玉みたいな感覚で見れたけど、銀貨はキラキラしていてキレイだった。
まぁ、長居する気はさらさらないので、金に関してはヒメ任せになっている。男としてどうなのかとかは、この際気にしない……。
「金貨は1枚で、銀貨10枚の価値だからそれなりかな~。でも、ドラゴン討伐って考えたら……安いかも? 代わりに、素材って感じだね」
「なるほど……ヒメは、ドラゴンを倒した経験はあるのか?」
「あるよ~! でも小型だったかなぁ……」
今回のドラゴンは、人が乗れるほど大きいと、ギルド内にいる冒険者が話をしているのを耳にした。
そして、赤い鱗をしていて、人語を話したとも……。物語とかでも、良くドラゴンは頭が良い魔物だから、仲間になったりする話も多かった気がする。
「俺のレベルが高かったらなぁ……」
「仕方ないよ! まだ、何も倒してないんだし。私に任せて! ナイトくんを守って、討伐もするから。そしたら、パーティーを組んでるナイトくんのレベルも、うなぎのぼりだよ~」
ギルドから宿屋までは、屈強の戦士な姿のままでいるヒメは、とても頼もしく感じた。
宿屋の裏で変身を解く姿を見て少しの間だったにも関わらず、ホッとする自分がいる。
それに同一人物だと分かってはいても、どこか懐かしく肩の力が抜けた。
「それじゃあ、宿屋に入ろうか。部屋は~――」
「当然、ニ部屋だろ……」
「も、もちろんだよ! もう、ニ人とも大人なんだから」
俺たちの考え方は甘かったらしい……。
「ごめんなさいね~。春先だから、冒険者が多くて……一パーティー同室でお願いしているのよ~」
「あー……ハイ。大丈夫です……今日だけなんで……」
「う、うん! ナイトくんとは、健全な関係だしね!?」
誤解を生みそうな発言をするヒメに慌てる俺を尻目に、宿屋の女将さんは口許を隠して笑っている。
確実に勘違いされた……。
まぁ、別に勘違いされて悪い気分ではないし、むしろ俺にとっては役得ともいえるかもしれない。
いや、当然やましいことは一切考えていないぞ……。
部屋に入ると、ニ人部屋なことから、ベッドがニつと、小さな四角いテーブルに椅子がニつある殺風景な室内だった。
まぁ、宿泊するのが目的だからこのくらいシンプルな方がいいのかもしれない。金額も一人銅貨ニ枚という破格だ。




