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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第二章

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第十二話 ギルド ~旅立ちの夜明~

 武器屋の裏手は、人1人が入れるほどの狭さではあるが、家同士は密着していない構造らしい。


「実は……私、異世界にきて、ギルドマスターに育てられたの」

「えっ……!?」


 気にはなっていたが、聞くに聞けなかった内容を急に告白されて思わず、大きな声がでる。

 ギルドは、表通りにあるため裏通りに面するここは、多少騒いでも人がくることはなさそうだ。


「実は、少し……いや、ずっと気になっていたんだ。でも良かった……良い人に巡り合ったんだな?」

「うん……今でも感謝してる。でも、私は死んだことになってて混乱しかねないから、変身するね!」


 ギルドでは亡くなったことがバレているとのことで、ヒメは変身魔法を使う。

 女性のしなやかな身体から、なぜか見覚えのある……いや、俺よりも長身の男に化けた。

 思わず見上げてしまう姿は、俺とは違って筋肉も盛り上がり、屈強の戦士のような風貌に、なぜかソフトモヒカン。


 服装も魔法使いにすら見えない。モンク……でも、難しそうだが僧侶のような布製の服にみえる。


「えーっと……まず、なんで男なんだ……?」

「な、なんとなく! 男女2人パーティーよりいいかなーって……本当は、変身でもナイトくんと他の女性が一緒なのが嫌なだけ……」

「えっ? 最後の方、声が小さくて聞こえなかったんだけど……」


 男女2人パーティーの後が、まったく聞こえなかった。

 なぜか首を振って誤魔化す様子から、口に出していた自覚はなかったようで、聞かれたくない内容だったと判断した俺は、それ以上聞かないでおく。



 準備が整ったことで、ギルドがある表通りに戻ると、裏通りとは違い、この時間帯でも関係なく行き交う住人を目にした。

 市場(いちば)もあるようで、遠くの方から店員だろう呼び込みの声が聞こえる。


 ギルドは、大きな屋敷という見た目で、もちろん建物に色はない。

 初めからギルドを造る予定だったのかは分からないが、他の施設とは異なり、中と外が見える窓がなかった。


 代わりに、中の様子が少し分かる造りになっている扉からカウンターまで見える。ヒメが生活をしていたということもあって、先頭を行くのをついていった。

 すると、見慣れない男2人である俺たちは直ぐに目をつけられ、屈強な男たちの眼光が突き刺さる。


 ――ここはヤクザの溜まり場か……なんて思ってはいない。


 だが、俺の前に立ったのは、身長が180cmは超えているヒメだった。

 お互い屈強な男ではあるが、ヒメの圧に負けた男たちは、舌打ちをするだけで絡んでこない。


 いや、見た目が屈強な男だからって強すぎだろう……。

 ギルドが家だって言っていただけあって慣れているのかもしれない。


 そんな中、奥の隅にある写真が目に入る。それは、少し幼さが残ってみえる彼女の写真だった。


 少し上から感じる視線に気がつくと、表情が暗くなるヒメの姿に歯がゆさを感じて言葉がでない。


「私の、(いつわ)りの家族……」


 そんなことを言う彼女に、言葉を絞りだそうとしたとき、俺たちに気がついたギルド職員らしい男が近づいてきた。

 写真を見ているのに気がつくと、薄い笑みを浮かべた優男は手に持っていた花をそえる。


「初めての顔だな? もしかして、この子の知り合い……だったりするか?」

「えっ……あ、少し……だけですけど」


 とっさに嘘がつけず、事実を口にしてしまった。隣をみると、屈強の男に変身しているヒメが顔を押さえている。

 これは、失敗したといってもいいだろう……。


 そう思った矢先、優男は俺の肩を両手で掴んで揺らしてきた。


「ちょっ……!」

「この子は、1人で亡くなったと思っていた! まさか、友人がいたなんて……それで、どこまで知っているんだ!?」

「いや、数日会話したくらいな……俺も、亡くなったのは少し前に知ったので」


 嘘と事実を混ぜることで大分罪悪感は減り、それでも肩を落とす姿は痛々しくみえる。横目でヒメをみると複雑な表情をしていた。

 両手を離されると、カウンターに戻る優男は自己紹介を始める。


「あー、取り乱して申し訳ない。実は、私は彼女の親……みたいなもので、ここのギルドマスターをしている」

「えっ……あー……なるほど。それじゃあ、彼女の事情は知っていたり?」


 ヒメが複雑な表情をしていた理由が分かった。パッと見ギルドマスターには見えない容姿だが、ここに来た目的は1つ。女神の依頼を受けること。


 それには、登録は必須だよな……。


「もしかして、君たちも……異世界人なのか?」

「ハイ。それで、女神の依頼をこなしたいと思っています。ギルドに登録は必要ですよね?」

「そうか……。ああ、それと……君たちが、あの子の友人ということなら、頼みたい依頼がある。まぁ、その前に登録を済ませようか」


 やり方を知っている屈強の男に変身したヒメが、手本として先に再度ギルド登録をする。

 同一人物ではあるが、この世界は緩いらしい。変身魔法の有無を調べることはせず、血を垂らしたり痛いこともしないため、変身して姿を変えていたら別人として登録できるという。


「そのナリで!?」

「え? おかしいですか? 魔法使い」


 職業欄に、魔法使いと書くのを見たギルドマスターは、驚いて声をあげた。

 まぁ、見た目がどうみても戦士……。俺は深く同意して頭を上下に振る。


 賢者と書いたら、怪しまれるからここは魔法使いだ。

 さて、俺は……剣士で登録っと。

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