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【完結】異世界誘拐物語 〜女神のギフトは甘い罠〜  作者: くれは
第二章

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第十一話 武器屋シュタール

 後回しにした武器屋は防具屋より一回り大きく、曲がっていない看板に再び目を向けた。


 やはり防具屋よりも繁盛しているようで、窓から見える店内には他にも冒険者の姿がある。

 魔法のメガネをかけたままだったが、冒険者は同じ人種だった。


 お宝なのか、ただの古びた魔剣なのか分からない唯一の武器を手に、中へ入る。


 白黒(モノクロ)なのは変わらないが、冒険者たちのおかげで店内には色があって華やかに感じた。


 カウンターに冒険者の姿はなく、俺たちは自然な素振りで古びた魔剣を置く。

 魔剣なだけあって白黒(モノクロ)ではあるが、その魔力の輝きに店主の目付きが変わった。


「店主、コレを鑑定してくれないか?」

「――嘘だろ。これは……やべぇぞ!! 鑑定しなくても分かる! どこで、こんな代物を!?」


 店主を良く見ると、どこかで見覚えがある風貌に思わず眉を寄せる。

 厳かな出で立ちをしたヒゲを生やした小柄な男――。


「……えっ? 占いの館で、サービスだと言われて貰ったものだけど……」


 取り乱す店主の声で、他の冒険者も様子がおかしいことに気がついて、少しだけ店内が騒がしくなった。

 これには、店主も機転を利かせるように大声を出す。


「悪いが、今日は店じまいだ! 買うものがあったら、持ってきてくれ」


 一旦古びた魔剣を返されると、カウンター奥に通された俺たちは、店内が静まり返るまで大人しくしていた。


「良くある、後々狙われたりしないよな……?」

「うーん……ここは、最初の町だし、ギルドがあるから大丈夫だと思うよ〜」


 長年暮らしてきたヒメの言葉に胸を撫でおろす。


 話し込んでいる間に店内が静まり返ったのを感じて陰から覗くと、店主が店じまいをしていた。

 まだ体感では15時すらいっていないだろう早い時間に申し訳ない……。


 そんな感情を抱く中、奥に顔をだす店主の心当たりに気がついた。


「もしかして、防具屋の店主と似てる……?」

「そうだよ~! 防具屋と武器屋の店主さんは、双子なの」

「あっ? ああ。そういや、その身なりはアイツのところのもんだな。相変わらずの無愛想だったか?」


 無愛想といわれたら言い返せない。軽く話を聞くと、防具屋の店主は弟で、武器屋の店主は兄だとか。

 弟と違ってよく話し笑う姿からもコミュニケーション力が高い兄は、弟を心配しているように感じる。


「つまり、アンちゃんは光適正持ちか! あそこのネエちゃん待ち焦がれてたからな〜」


 武器のことまでは知らなかったようだが、光の魔法が使える剣士を待っていたのは知っていたらしい。

 今一度、鑑定してもらうと先ほど以上に、はしゃぐ店主の姿があった。


「こりゃ、本当にやべぇぞ! 今まで拝んだことのない代物だ」


 どんどん声が大きくなる店主に、鑑定結果を教えてもらう。



 【トワイライト】

 攻撃力 200

 命中力補正 +50

 詳細

 この世界では類をみない優れものと言われる、魔法の力をおびた剣。光の魔法適正があり、剣士のみが扱える。


「コレは……普通に、ハイスペックだ」

「う、うん! 店主さんが興奮するのも分かるよ」


 実は、ヒメが持つ背の高い杖も結構なお宝らしい。

 元神を倒す前に受けた依頼で足を運んだダンジョンボスからドロップしたとか。


「古びてるのは、この(さや)だけだな。ちょっと待ってろ。確か、壊れてどうにもならない魔剣の(さや)だけ売りにきた奴がいたはず……」

「やっぱり、魔剣には専用の(さや)が必要なのか?」


 魔剣は初めてのヒメも分からなかったため、奥でアイテムを引っ張り出す(せわ)しない店主に少しだけ声のトーンを上げる。

 少しして戻ってきた店主の手には、白黒(モノクロ)(さや)が握られていた。


「ああ……魔法が付与されているからな。間違って発動しないように、制御の魔石がついている。そして、魔石には魔力をおびた素材で作られた革が必須だ」

「なるほど……って、物騒だな……魔法が発動するとか」


 古びてはいるが、しっかりと役割を果たしていたらしい(さや)を見据える。

 手慣れた店主が、トワイライトを引き抜くと(さや)を入れ替えた。すると、不思議なほどピッタリ収まった。


「もしかして、これも魔法なのか?」

「ああ、魔力を帯びた素材は、性質を変えるんだ。それでピッタリサイズよ」


 再びカウンターに置かれた魔剣を手にした瞬間、淡い光が店内を駆け抜けるように照らした。

 先ほどまで白黒(モノクロ)だった魔剣トワイライトは、淡い輝きを放ち、夕焼けのような淡いオレンジがかった剣に様変わりする。


 (さや)も色をおびた瞬間は黒い色をしていたのに、トワイライトに合わせるように夕焼け色に変化した。


 これは、俺が装備したと認識されたらしい……。


「キレイだ……店主。(さや)のお代は?」

「良いものを見せもらったから、コイツはオマケだ。それと、これも持っていけ」


 店主に渡されたのは、なんの変哲(へんてつ)もない小型のナイフだった。良くある護身用のナイフにみえる。

 それも俺が触れたことで、(つか)の青いナイフに変わった。


「見ての通り、護身用のナイフだ。魔剣が使えない状況に持っていたほうがいい」

「だけど、鑑定もしてもらって……鞘と、ナイフもタダでなんてもらえない」

「わ、私! お金ならもってますよ!?」


 ヒメも、すかさずアピールするが、店主は首を横に振ると笑顔を見せる。


「金が無いなんて言ってねえ。俺からの餞別(せんべつ)だ! アンちゃんたち、なんだか大変な冒険に出ようとしてるだろ」

「えっ……」


 思わず2人で顔を見合わせると、深刻な顔をしていただろうかと焦るが、次の瞬間思い切り背中を叩かれた。


「イッ……!」

「きゃっ!」

「ガハハッ……! 悪い悪い。昔にも、そんな連中がいたんだわ。若えのに、使命背負ったような。だから、ガンバレや!」


 武器屋の店主も気さくで良い人だと分かり、深くお辞儀して店を出る。



 俺たちは少しの間、店の前でぼんやり空を眺めると同時に息を吐いた。


「なんだか、ジーンときちゃったな~……私は、お世話にならなかったけど」

「ああ……人間って、良いよな? それじゃあ、好意を無駄にしないようギルドに行くか」

「あっ……ちょっと待って! ギルドに行く前に、やることがあるから」


 急に慌てるような表情で、軽く(そで)を引かれるようにして俺たちは店の裏手に回る。

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