第十話 占いの館ジュエル
第九話までお読みくださり有り難うございます。
本日から毎日一話投稿していきます。暫くは、朝07:07〜予定。宜しくお願いします。
俺たちは食事を済ませて一息つくと、隣にある占いの館に向かう。
こちらは屋根に看板がなく、代わりに怪しげな模様が描かれた扉に、オープンやクローズドではない、占いの館と書かれた木の札が掛けられていた。
「この、いかにも怪しい店って雰囲気あるよな……占いの館とか」
「うん……私も、最初に来たときは1人だったから、ドキドキしたよ」
扉を開くと、狭い空間が広がっている。オレンジライトのせいか、薄暗く雰囲気をかもしだしていた。
そんな中で、中央には女神が使っていたような水晶型の魔法道具が置かれたテーブルに、1人の女性が佇んでいる。
「おや? おやおや? こんな時期にお客サマとは珍しい……占いの館ジュエルにようこそ~!」
薄暗くて色は判断できないが、どこかインドを想像する妖艶な踊り子のような衣装をまとっていた。
暗がりでも、きわだって視界に入る赤い唇に、黒く艶のあるストレートの髪をかきあげる姿に思わず唾を飲み込む。
「ど、どうも……」
「ナイトく~ん? 今、ゴクリって聞こえた気がするんだけど」
シーンと静まり返っているせいか、ヒメに聞かれていた。
言い訳を口にしようとして一歩足を踏み込むと、テーブルの頭上に吊るされたシャンデリアが一瞬で光輝く。
その光によって女性の顔も鮮明となった。
紫色の踊り子衣装に、金色に輝く装飾をつけた褐色の美人。
水晶は装備アイテムではなさそうだが、年季モノなのか水色をしている。
とはいえ、水晶だから白黒でもさして影響はなさそうだ。
それに、シャンデリアもそうだが……此処の明かりには、色がある。
いや、そもそも電気系統は色がないと夜になったら、すべてが闇に包まれて身動きがとれなくなるよな?
魔法は武器の一種だから、色があるのも分かる。
だけど、思うと……防具屋にしろ先ほどの飲食店では明かりがなかったぞ?
チラッと横にいるヒメに視線を向けると直ぐに察したようで、おでこを押さえた。
「うーん……実は、明かりがなくてもなんとかなるんだよね。白黒を活かしているっていうか……明かりをつけると黒が白になるの!」
「ああ~ここの明かりのことが気になったのかい? コレは、うちの魔法。普通は、こんな感じかな~」
そういって、一瞬でオレンジライトが消えると、続けて周りが白くなる。
明るい朝方に誘拐されたことで、夜の暗い経験も、電気による効果も知らなかった俺は目を見開いた。
「――白黒って、こんな形で光にも影響するのか……」
「んー? 電気も知らないって、お兄さん、異世界人?」
「えっ……」
思わず、バッと音をたてるような勢いで再び横のヒメに向き直ると、平然としている。
異世界人については、周知の事実なのか? それとも、どこかの物語みたいに異世界からの勇者とか、訪れていたり……?
「あっ! 別に異世界人って、知られたらまずいとかないし。この人は知ってるタイプだから大丈夫」
「なる、ほど……?」
「十数年前に、此処の人間じゃない人が沢山きてね~それで知ったのさ」
まぁ、管理者だった元神が遊んでいたくらいだ。
異世界は、俺たちの住む世界より柔軟な考えなのかもしれない。
「それじゃあ、世間話はこのくらいにして、始めようか?」
ヒメに手招きをされて、2人で椅子に座る。
先に金を払うと、当初の目的である適正を調べてもらうことになった。
魔法の適正があれば、俺も初期魔法が覚えられる。
「宜しく……」
「それじゃあ、調べてみるよ~――真相解明!」
また知らない名前の呪文だ。
だけど調べると言っていたから、そういう類いの魔法に違いない。
しばらくすると、彼女にだけ見えている何かに興奮したように前のめりとなる。
「光の適正なんて、何十年ぶりかしら!? お兄さん! スゴいわ」
妖艶な占い師は興奮して立ち上がると、両肩を激しく揺らされた。
「ちょっ……!? 何が、なんだか……ヒメッ」
「すっっっごいよ!! ナイトくん! 私は賢者だから関係ないけど、光の魔法は選ばれた人が持つ魔法だよ!」
ええぇ……。
興奮する2人に、正直困惑して声がでない。
2人は意気投合したように騒ぎながら、その間に初期の魔法を覚える目的は達成される。
「ハイッ! 奮発しちゃう! オマケに、コレ持っていって~。見た目はこんなだけど、とっても強いから!」
オマケに、くたびれた鞘に入った剣をもらった。
一度引き抜いてみると、剣自体は錆び付いてもいないし、妖しい光をまとっている。
「えーっと……なんか、妖しい光が見えるような……白黒で、分からないけど」
「あ~それ、魔剣だから! でも、光属性で適正持ちの剣士にしか扱えないから大丈夫~」
良く分からないまま、俺は魔剣をもらったらしい……。
よくある悪い方の意味ではなく、魔法が付与されているから魔剣なのだとか。
なぜか実家の倉に眠っていて、光属性の適正持ちが現れないことで、何十年も寝かされていたらしい。
「初期魔法のライトは使い勝手もいいし、武器屋のオヤジにヨロシク~!」
何かを口にすることも叶わず、追い出されるように占いの館の扉が閉まる。
「えーっと……最初から、あのテンションなのか?」
「う、うん……。私が初めて顔を合わせた時も、自由だったかな……でも良いもの貰えたし! 気を取り直して武器屋に行ってみよ~」




