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番外 After the end 2

暴言多めなのでご注意ください……!


 



 聖女に会ったあと、あたしは無理矢理ジェイドに連れ帰らせられて、牢屋にいれられた。

 騒いでも泣いて縋っても一言も話してくれなかった。


 牢屋番のおっさんも、騎士も、神父も、私の前に現れた人はみんな聖女の味方で、私のことを悪者みたいに言ってくる。


 牢屋は汚いし、臭いし、暗いし、ご飯だってほんと残飯って感じで、いるだけで辛い。

 お風呂も入れてなくて、服も髪も爪もぼろぼろ、顔もきっとひどいし、トイレも嫌。


「面会だ」


 牢屋番が雑にあたしを呼んでもあたしは嬉しくなかった。現れたのはジェイドだったけど、ジェイドはあたしに優しくしてくれない。


「アンナ・カンノ、お前に選ばせてやる」


「……なにを?」


「王都に混乱を招いた大罪人として処刑されるか、全ての罪を背負って謝罪するかだ」


 処刑されるのも嫌だけど、謝るのももちろん嫌。

 悪いのはアンネローゼでしょ?

 どうやったのかしらないけど私の御璽(みしるし)なんか薄くなっちゃったのも絶対あの女の仕業に決まってる。


「謝っても殺されるんでしょ?」


 それなら謝りたくなんてない。

 この世界なら『神野杏奈』が主人公で、私に御璽が出るのも、その後に学園に通うのも正規ルートだもん。アンネローゼのほうが転生チートしてるんじゃない。


「きちんと謝罪できれば処刑はしない。

 表向きは修道院に行くことになるが、名前を捨てて、聖女候補として神殿で力の制御法を身につけてもらうことになる」


「ほんとにっ!?」


 驚いて駆け寄る。

 鉄格子がガシャン、と音を立てるけど気にしない。謝ったら聖女候補として神殿で修行できるってこと!?


「やる! 謝ります! もしかして、ジェイドがかけあってくれたの?」


「国民の前に立たされて謝罪するんです。

 処刑のほうが楽かもしれませんよ?」


 処刑のほうが楽ってなんでそんなこと言うんだろ。死ぬなら一瞬だからってこと?

 普通に謝る方が楽に決まってるじゃない。

 人前でも別に緊張とかしないし、あたし。


 こんなに可愛いあたしが泣きながら謝ってたらみんなも許したくなるでしょ!


「……わかりました。

 では、きちんと、心から、謝罪してください。

 私から言えるのはそれだけです」


「ちゃんと謝るね! ありがとう、ジェイド」


 にこって笑ってみたけどジェイドはにこりともしない。まあいいや、聖女候補として本編が始まればまだイグナも取り戻せると思うし。


 あたしはそんなふうに考えてた。

 そんなふうに考えて、なにも、わかってなかった。




 ・・・・・





 今から謝罪しに行く、と言われたあたしは牢屋から出された。手は縛られたままだけど。

 馬車は使わせて貰えなくて、ひたすらに歩かされる。足が痛いって言っても休憩すらしてくれなくてあたしはもう泣き出しそうだった。


「処刑場なんて、ほんと悪趣味」


 しょぼい木製のステージがあって、首吊りの紐と、ギロチンと、よくわからないやつがあった。脅しのつもり?


「聖女様、」


 声の方をみれば、馬車から聖女が降りてくるところだった。あたし徒歩だったのに。


 服だってあたしはボロ布。あの女は、いかにも聖女っぽい白いローブと白いベール。ローブの裾は引きずる長さで、人に持ってもらってる。


 しかも、なぜかまた馬車に乗り、どこかへ行ってしまった。羨ましいし憎らしくてぎりぎりと歯が鳴る。


「壇上に登れ」


 騎士服を着た人にぐいって押されて転びそうになる。転ばないようによろよろ階段を登ったら一斉にみんながこっちをみた。


 目。目目目、目目目目目、人、人人人……。


 無数の目が、ぎろりとあたしを睨んでいた。

 怒ってる。たくさんの怖い目が、あたしを見てる。舌打ちも聞こえる。

 見渡す限り目いっぱいに人がいて、誰も彼もがあたしを睨んでる。


 がくがくと足が震えて、あたしは床にへたりこんだ。


 こわい。

 なんでみんなこんなに睨むの。


「ーーおい」


 誰かの声。怒ってる。


「おい、立てよ」

「そうだ何座ってんだ」


 そんなこと言われても、力が入らない。


「立てって言われてんだろ」「聞こえねえのか」「お前に言ってんだよブス」「はやくしろ」「嘘吐き」「おいなにしてんだ」「いい加減にしろ」「もしかして漏らしたのか?」「そりゃあいい!」「ギャハハ」「くせえぞションベンガキ」「早く立て」「おい」「お前のしたことだろ」「しねよ」「お前なんか死ね」「役立たず」「いい加減にしろ」「謝罪しろ」「お前のせいでどれだけ迷惑かかったと思って」「立てよ」「お前のしたことだろ」「ブス」「死ね」


 やめて。


 やめてやめてやめて。


 ごめんなさい。


 そんな酷いこと、言わないで。


 ぼろぼろと涙が出る。身体に力がはいらない。

 逃げるのもできない。ジェイドの言った通りだ。

 これなら、処刑されたほうがマシだった。


「きゃっ」


 がつん、と何かが当たった。

 痛い。ぼたりと血が落ちてくる。


「痛っ」


 いたい、いし。

 石投げられてるの?


 どうして、


 あたしそんなひどいことした?


 そんなみんなにうらまれることしたの?


 聖女になってみんなに愛されて、幸せになりたかっただけなのに、それがこんなにも悪いことなの?




お読み頂きありがとうございました!

少しでもお楽しみいただけましたら、よろしければ評価やブックマークをお願いします。

続きや続編製作の活力となります!


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