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オカルトニシティ  作者: たんたん
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高校2年生

第9章(7月31日)


喧嘩から始まる、そんな日もたまには良い。

イッペイ「なんやこのアカウント名は?超常現象調査解決特別部隊<KITAROU>?」

ヒカル「かっこいいじゃん。心霊調査解決団なんて名乗るの恥ずかしいじゃん。現にこの前1人で依頼行った時、超恥ずかしかったし。」

イッペイ「ほな、名乗るな。ボケアホ。あと画像や。なんやこれ。まんまゲゲゲの鬼太郎やないかい。しかもピースしてるし。著作権ってもんを知らんのか?」

ヒカル「いいじゃない。非公式なんだから。」

先生「まぁまぁ。落ち着きなさい。話し合いを心掛けましょう。」

レフェリーにより、両者向かい合い腕を組みながらソファに座り睨み合う。

先生「まず、著作権的な面から画像は変えましょう。」

赤コーナーイッペイが1点先取した。顎を突き出し勝ち誇るようにヒカルを見つめるヒカルは、悔しそうに舌を出した。

先生「このアカウント名にしてから、広告効果として肝心の依頼件数は増えたんですか?」

イッペイ「jfhj件増えてます。」

ヒカル「ちゃんと言えよ。30件増えてます。」

イッペイは、変顔で挑発する。ヒカルは、澄ました顔をする。

先生「すごいですね。ヒカルさん。ひとまずアカウント名は<KITAROU>でいきましょう。」

青コーナーに1点がプラスされ引き分けで、試合は終わった。

先生「大丈夫ですよ、イッペイ君。名詞はまた作り直せばいいのですから。事務所の名前変更やそれに関連した諸々の作業は、私がしておきます。安心して依頼をこなしてください。」

ヒカル「はーい。」

ヒカルは振り向きざまに目を大きく開けイッペイを挑発した。イッペイはヒカルの後ろ姿に向かって指で目じりを下げ、鼻の穴を上げ、口を下げ、なまはげのような変顔で仕返しをした。

イッペイの車でいつも通り、依頼人のもとへ向かった。

ヒカル「今日は、どこでどんな内容?」

必ず依頼人に会う前に、聞くことにした。反省を生かして成長しているヒカルである。

イッペイ「いつから対等になったんや、お前は部下や。部下の中でも下の下や。」

リング外で喧嘩は続いていた。

イッペイ「今日は、依頼で結界張った所の定期確認しに行って、依頼人のとこ行くで。お前あのノート持ってるか?」

ヒカル「えっ。マジ?スエちゃんのノートに書いてある住所行くんですか?」

トートバッグから、スエちゃんとのオカルトノートを出した。ヒカルはお守り代わりにノートをいつも街歩いていた。

イッペイ「多分、上から4番目の住所や。」

ヒカル「蔵?」

イッペイ「せやで。ホンマ不思議やわ。そのスエちゃん言う友人。ヒカルは、スエちゃん亡くなってからその住所行ったん?」

ヒカル「はい。1カ所行ってはみたんですが、たどり着きませんでした。たぶんスエちゃんと一緒じゃないと行けないんだと思います。」

イッペイ「ふぅーん。」

ヒカル「あっそうだ、気になってたんですけど、結界を張らずに祓うという選択肢はないんですか?」

イッペイ「その土地と繋がってしまっている場合、祓うとその土地もダメージを受けるから結界を張って土地の力で浄化するっていうのが最善やねん。例えると、ニキビやな。触ると余計悪化するから、自らの治癒力に頼るみたいな感じや。」

ヒカル「なるほど。あのスエちゃんとの井戸は土地と繋がっているってことか。」

分かりやすい例えをスルーされたイッペイは、別の例えをヒカルに言い直した。ヒカルは、車の外を眺めて考え事をしていた。イッペイはそれを見て諦めるように運転に集中した。山道を抜け、ロードサイドにお店が並ぶ田舎にしては栄えた街を通り越し、山を背に大きな蔵のある平屋の一件が見えてきた。周りには近くにぽつぽつと家がある。イッペイは、その平屋の敷地に車を止めた。

ヒカル「もう住んでいないんですか?」

平屋の窓から屋内を望むと、家財道具はそのままだった。

イッペイ「荒れてるやろ。やっぱ人が住まんといかんな。住んでた依頼人さんは、長野の別荘にいんねん。のんびり釣りでもしとるんやろな。知らんけど。」

イッペイは、依頼人から預かっている蔵のカギで南京錠を開け、蔵の中へ入っていった。ヒカルもイッペイの後を追う。

蔵の中は、かび臭く小さな窓が2カ所しかないため、薄暗かった。骨とう品や家財、鎧などなんでも鑑定団でありそうな物がゆとりをもって置かれていた。小さな光るペンダントが壁にずらっと飾られていてヒカルは1つ欲しくなった。イッペイは、蔵の中央にぶら下がっている物の傍で、立っていた。そのぶら下がっている物は、リンゴほどの大きさで、形は球体に近いが凹凸がある。周りを包帯で巻かれており、お札が幾重にも張られていた。よく見ると蔵の屋根四隅から中央のぶら下がっている物へと紐が伸びている。

ヒカル「そのぶら下がっている物なんですか?」

イッペイ「これなぁ、亡くなった赤ん坊のミイラやねん。」

ヒカル「それって合法なの?普通に捕まらない?」

イッペイ「今やったらな。依頼人曰く、代々受け継いで、守っているらしいわ。年代が分からんけど、明治ぐらいまで遡れる由緒ある家柄らしいで。不幸があって早くに亡くなったのか、ミイラ作るために産まれた後に命奪われたんか分からんけど、これ相当なエネルギー量やで。ちゃんと祀ってあげれば、生者に福を招いたり、災いから守ったりしてくれるらしいねん。」

ヒカル「なんで、赤ん坊なんですか?」

イッペイ「もっと長く生きたかったという思念の強いエネルギーが生者に向きやすいんやろな。」

ヒカル「縁起物ってことですか?なら結界張る必要ありますか?」

イッペイ「強いエネルギーを秘めてるのは、明らかや。ただ粗末に扱えば災いが、崇め供養すれば幸福が後ずれる。そしてその物にはそれに合った崇め方や供養があるねんけど、依頼人はそれを知らん。依頼人さんは、両親を同時に急に亡くされている。やから両親から伝わることなく依頼人に受け継がれてもうたんや。」

ヒカル「2人同時に急になくなることってありますかね?あやしいですね。」

イッペイ「俺もそう思う。たぶん粗末に扱ったんか、両親自体も扱い方を教わっていなかったんかもな。両親が亡くなって蔵を整理していたら、これを見つけたらしい。依頼人自体この存在を知らんかったらしいで。ほんで知人頼って今俺が悪させんように結界張ってんねん。この人金持ちで、はぶりがええから好きやねん。毎月ちゃんと振り込んでくれるお得意様やな。祓わない理由さっき聞いてたけど、こういう理由もあるねんな。」

ヒカル「ゲスゥー。」

得意げにニヤけるイッペイを呆れた顔で見上げた。

イッペイ「商売上手言うんやで。でもちゃん結界張ったり定期的に以上ないか見てんねんで。悪徳ではないやろ?ボランティアで、依頼されてない所もやってんねんから、こうでもしないと事務所潰れるわ。まぁ子供には経営の話は、まだ早かったわ。ほな異常ないから帰ろか。」

イッペイが蔵のカギをかけ、蔵の周りに車から取り出した一升瓶を振り蒔いて一周した。

ヒカルは、助手席に乗り込みオカルトノートに詳細な情報を新しく書き込んだ。

イッペイ「良かったな、一個解明できて。」

ヒカル「はい、ありがとうございます。」

たまに来る素直モードにイッペイは戸惑う。

イッペイ「ええで。他の場所も今後寄ったるわ。」

ヒカルは、オカルトノートを胸の前で両腕で抱きしめ、次の場所に向かう。


高速道路を使い、昼過ぎに依頼人の場所に着いた。

イッペイ「来たでぇおっちゃん。とりあえず何か食わして。」

イッペイはそう言って建物の中に入っていく。片側1車線の道に面した大きなドラッグストアの隣にある骨董品屋さんであった。

人通りはあるが、ここはがらんどうである。色々な不気味な骨董品が店外へ飛び出し通行人に向けてディスプレーされているようにも見えた。所狭しと並んでいる骨董品で入り口が狭くなっていた。おそらく中も狭そうだ。店の前の街路樹と電柱に、犬の糞の注意喚起のポスターが色んな角度、配置で置いてあった。

「ここは、骨董品屋だぞ。飯食いてぇんなら帰れ、不労者。」

イッペイ「おっちゃん、それはよう言わんで。」

店の奥から二人の笑い声が聞こえてくる。ヒカルは、腰を曲げて店に恐る恐る入っていった。

イッペイ「ほら、お土産や。高く買い取って。」

ヒカル「っあ。」

ヒカルは大声を出した。その声にイッペイの隣にいた男性がヒカルに気づく。

「なんや娘?このネックレスは欲しいんか。」

ヒカル「違います、店主さんこれ盗品です。警察呼んでください。」

ヒカルの予想外の言葉にイッペイと店主は爆笑した。

「お嬢ちゃん、面白い事言うね。」

イッペイ「電話で話した新人、あの先生が認めた逸材やで。おっちゃん今のうちに媚売っとき。」

「馬鹿たれが。わしが売るのは骨董品だけじゃ。」

イッペイ「上手い事言わんでえーねん。」

また2人は笑い合う。この乗りに新人はついていけない。

ヒカル「初めまして、ヒカルです。」

「おう、よろしくな。お嬢ちゃん。」

イッペイ「このおっちゃんは、この店の店主の須藤さんや。すとうちゃうで、すどうや。」

体形は細身で丸坊主、丸眼鏡にメガネストラップを首にかけ、二重の垂れ目には、エネルギーを感じる。身なりは洒落ており、真夏でありながら白シャツにベージュのベストを着ている。英国紳士のような格好である。汚い雰囲気の店内には不釣り合いである。

須藤「お嬢ちゃん、腹ぁ減ってるか?焼うどん食べていきな。」

口調が江戸っ子な感じが、身なりに不釣り合いである。

イッペイ「俺もやんな、それ?食うてええんやろ?焼うどん。」

須藤「ああぁぁん?お前は、店の外の電柱の犬の糞でも食っとれ。」

そう言うと、すだれをくぐり店の奥へと消えていった。近くにあった1人掛けのソファに座り、座りながら右手でヒカルにも座れる椅子を用意してくれた。値札が付いている、おそらく店の商品である。ヒカルは立つことにした。しばらくするとソースか焦げるいい匂いがしてきた。2人ともお腹が鳴り、目を合わせてニコっと笑った。

すだれをくぐり、焼うどんが盛られているお皿2つを両手に持ち、それぞれ渡した。フォークがうどんに挿さっていた。

須藤「食え。」

2人とも会釈しうどんを勢いよくすすった。ヒカルはもちろん立って食べた。その間、須藤はイッペイから手渡されたネックレスを小さなルーペで鑑定していた。

ヒカル「あの蔵から取ってきたんですか?」

須藤「黙って食え。」

ヒカルは怒られ、須藤に小さく頭を下げた。イッペイは、焼うどんをすすりながらヒカルを見てニヤけている。どうやらこの店のルールらしい。

イッペイ「ごちそうさまでした。おっちゃんごっつうまかったで。関東最強や。」

須藤「アマチュアに言われたって嬉しかねぇよ。あとで皿洗え。」

ヒカルが食べ終わるのを見計らい、イッペイがヒカルの分のお皿を回収し、すだれをくぐり消えていった。

ヒカルはポケットティッシュで口を拭いて、ティッシュを丸めてトートバッグに入れた。

須藤「ここの半分は、イッペイが持ってきたもんだ。お嬢ちゃんは、それを盗品と呼ぶが持ち主は道具が決める。人間じゃない。」

変な哲学とイッペイの犯罪歴が垣間見れた瞬間であった。

イッペイ「せやで。蔵にあっても、しゃぁないやろ。俺は、新しい持ち主に出会えるように手伝ってるだけや。」

すだれをくぐってきたイッペイに、悪びれる姿は無い。ヒカルは適当に返事を返しイッペイに聞いた。

ヒカル「依頼内容ってなんですか?盗品運びじゃないですよね?」

イッペイ「当たり前や。俺の職業は盗賊ちゃうからな。」

自分で盗賊って言ってしまった、みたいな顔で明後日の方向を向いた。ヒカルはツッコむと面倒くさいので、スルーした。須藤は、高さ1mのカウンター下から片手ほどの円柱のクッキー缶を取り出した。

イッペイ「おっちゃん、そんなとこに入れてるんかい。」

須藤「馬鹿野郎。お前がこの缶に結界張って、この中入れろって言ったんだぞ。」

イッペイは脳みそを一周し笑った。

イッペイ「せやった、思い出したわ。ほな、これ全部今から祓うで。」

クッキー缶から、ブローチや腕時計などのアクセサリー類が入っていた。イッペイはお祓いの道具を取りに車に戻っていった。

須藤「骨董品やヴィンテージ品は、人の念が入りやすい。店頭に売り出す前に、こうして祓ってもらっとる。買ったお客さん災いでも起きたら申し訳ないからのぉ。」

ヒカルは、このお店の商品が全てイッペイによってお祓いされている事にホッとした。イッペイが、店の入り口から戻ってきた。

クッキー缶の中を覗きながら、一辺が約20cmの正方形の布をカウンターに広げた。その布は、黒いベロア生地で、魔法陣のようなものが白で描かれていた。

イッペイ「この量、全部お祓いするんやったら20万やな。」

須藤「ぼったくり小僧、焼うどん代差し引かんかい。15万や。」

イッペイ「焼うどん代、高すぎひん?それに普通なら30万は超えんで。20万は、おっちゃんだけのスペシャル価格や。」

須藤「何がスペシャル価格だ。お前の能力不足で料金が上がるなんざ情けないのぉ。修行が足らんのぉ。」

クッキー缶の中から1つの指輪を取り出した。

須藤「じゃぁこれで15万でええわ。」

イッペイ「おっちゃん、流石やね。それが一番厄介やってん。」

イッペイは、呪文のようなお経のようなヒカルの知らない言語を唱えながら、クッキー缶の中身を一つ一つ、先ほど広げたベロア生地の布の真ん中に置いていった。クッキー缶の中身を全てベロア生地の真ん中に置いたら布の四隅を中央で縛り、覆った。

イッペイ「まぁ1週間ぐらい開けずに置いといてな。おっちゃん、それなんなん?ごっつ思念感じるわ。」

イッペイから手渡された先ほど包んだベロア生地の布とクッキー缶をカウンターにしまった。

須藤「生き別れた夫婦の妻の方の指輪じゃのぉ。」

ヒカル「須藤さんももしかしてイッペイさんみたいに能力をお持ちなんですか?」

須藤「まぁな。」

渋い返事に何か事情があることを悟った。

イッペイ「若いころは有名な宮司やったんやで。」

須藤「わしは、イッペイみたいに除霊したり結界張ったりすることはもうできん。じゃが思念を感じることは今も変わらず出来る。」

ヒカル「へぇ。じゃあイッペイさんも年を取るとこの仕事できなくなるってこと?」

イッペイ「そうやないねん、身体的な老いは関係ない。おっちゃんの場合は、自分から辞めてん。でも、思念を感じることに関しては日本でトップレベルやったから、力を押さえてても今だに健在やねん。なっ、おっちゃん。」

須藤「べらべらしゃべりよって、仕事が出来ねぇ奴は、総じて口が達者じゃのぉ。」

須藤は頭をかきながらカウンターの下から小さな金庫を出し、万札をイッペイに渡した。

須藤「いいかいお嬢ちゃん。仕事でいいもん見つけたらここに持ってくるんだよ。値打ちのある良い物には職人の思念が宿っている。それを見極めるんじゃ。」

イッペイ「こいつに、そんな力ないで。」

ヒカル「はい、私には霊感とかないですし、犯罪者になんかなりたくありません。」

須藤「気の強いお嬢さんじゃのぉ。大事なのは生まれ持っての力じゃない、巡り合わせじゃ。」

若さゆえの気の強さで、盗賊の勧誘を断ったヒカルに、須藤は感心した。

イッペイ「今日持ってきたネックレスの買取金額は次来た時に貰うわ。ほな帰るでおっちゃん。」

須藤「おぅ」

須藤は、カウンター内から右手を挙げた。ヒカルもそれにお辞儀をし店内から出ていった。


ヒカル「霊感って、骨董品を見極める時にも使えるんですね。」

イッペイ「せやなぁ。俺は、あのおっちゃんみたいに物に付いた思念をめっちゃ感じ取るとか出来んから、俺は骨董屋さんは無理やな。」

2人は、車に乗り今日の仕事を全て終え帰った。

ヒカル「あれ?」

イッペイは、運転しながらヒカルの方を見た。ヒカルは左手を前に伸ばして、じっと見ていた。

イッペイ「どしたん?なんや、左手伸ばして。」

ヒカル「左手の薬指に指輪がはまってる。」

確かに指輪をしていた。

イッペイ「それ、さっきおっちゃんが、途中でお祓いするの辞めたあの指輪やん。」

ヒカルは、驚いて急いで左手の薬指から外した。

ヒカル「全然記憶がない。どーしよう、持って帰ってきちゃった。」

イッペイ「はははっ、持って帰ったんちゃうやろ盗んだんやろ。何が犯罪者になりたくありませんやねん。おもろ。もう高速乗ってもうたから、今度店寄る時に返したらええやん。」

ヒカル「えっ。私が返すの?イッペイさん返してくださいよ。お願いします。」

イッペイ「なんでやねん、嫌や。大丈夫や、あの人元々宮司さんやから。」

ヒカル「宮司さんにそんな信頼無いから。えぇ、最悪。」

助手席でへこむヒカルを見ていると、イッペイはすこぶる元気が出た。いつも通りヒカルの家の近くのコンビニに降ろし、日給を渡した。

ヒカル「はぁ。」

イッペイ「まぁそう落ち込むなって。しゃーない、明日の依頼場所行く前に寄ったるわ。」

ヒカルは、イッペイを見て目をキラキラさせた。単純なヤツとイッペイは思った。

イッペイ「その代わり、あさ8時集合やで。その指輪無くすなよ。」

ヒカル「ありがとうございます。」

ヒカルは、車から降りるとイッペイに手を振り帰っていった。


深夜0時ちょうど。ヒカルは気づくと暗い森の中で1人歩いていた。左手を前に軽く伸ばし、誰かにエスコートされているようだった。左手の薬指には、あの指輪がはまっている。声は出せない、体は歩くのを辞めない。左手の指先に握られている感触を感じる。

ヒカルはそのまま暗闇の中へ消えていった。


第9章(完)


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