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オカルトニシティ  作者: たんたん
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高校2年生

第8章(7月29日)


大きさや犬種の違う5匹の犬とヒカルは、広い芝生の上で遊んでいた。立派な家の縁側にイッペイがひなたぼっこをしていた。

「イッペイさん、日焼けしてしまいますよ。」

身なりの良い和服美人熟女がイッペイの左奥の廊下から歩いてきた。

イッペイ「夏なのに、こんなに日差しが気持ちいいなんて不思議っすわ。綾子さんだってよう着物重ねて着れますね。」

綾子「女のたしなみでございます。」

イッペイ「ヒカルー。チワワのクー太郎連れてきてー。」

ヒカルは、1匹のチワワを抱っこしてイッペイのもとに駆け寄った。他の4匹の犬もヒカルを追いかけてくる。

綾子「アカネ。こちらえ。」

綾子さんよりふたまわり若い着物を着た女性が綾子さんとは反対の廊下から、駆け足でこちらに向かってきた。

アカネ「はい。綾子さん。」

綾子「アカネ、他のお犬様をお願いします。」

お犬様?格式高い家では、そう呼ぶのかなとヒカルは違和感を感じた。アカネは縁側の下駄をはき、4匹の犬を芝生に引き連れていった。

綾子「ヒカルさん初めまして、綾子と申します。イッペイさんとは、もう10年の付き合いなります。」

ヒカル「初めまして、ヒカルと申します。本日は、宜しくお願い致します」

イッペイ「最近入った、新人やねん。あんまりいびらんでくださいね。」

綾子「まぁひどい事言いますね、イッペイさん。わたしがいびるのは、身内だけです。」

イッペイは、あぐらをかいてガハガハ笑い、綾子さんは、正座で、右手を口にあて上品に笑った。ヒカルは、日に照らされながらチワワを抱っこし愛想笑いした。先ほどの若いアカネさんの心中を察していた。

イッペイ「こいつ、この前、僕が中国から買ってきたお土産、勝手に使って空飛んで楽しんどったんです。しかもそれ一度きりで、再度僕も試したら、もう空飛べんかったんです。」

ヒカル「ああぁぁー、ひどい。あれは先生の案ですよ。綾子さんに変なこと吹きこまないでください。」

ヒカルは急いで否定した。イッペイは、ヒカルにさらに反撃しヒカルも負けじと反論した。そのやり取りを、にこやかな表情で綾子は、話を聞いていた。

派手ではない紺色の着物を着た髪を整えた清潔そうな若い男性が、イッペイの背後の部屋の奥から近づいてきて綾子さんに耳打ちをした。

綾子「準備ができましたので、イッペイさんよろしいでしょうか。」

イッペイ「承知しました。ほな仕事しよか。」

ヒカルにアイコンタクトをとり、立ち上がって綾子さんの後についていった。ヒカルも下駄を脱ぎ、チワワを抱っこしたままイッペイについていった。

ヒカル「ねぇ、イッペイさん。ここのワンちゃん吠えないんだよ。すごいよね。」

イッペイに歩きながら、こっそり耳打ちした。

イッペイ「せやな。どんなしつけしてはるんやろな?」

イッペイも小さな声で答えた。ヒカルは吠えない上品な犬に育てるしつけ方法を後で、話しやすいアカネさんに聞こうと思った。

日当たりの良い、和室に布団が敷いてあり、そこに男性が眠っていた。他の和室は、掛け軸や机、和彫りの置物など装飾や家具が置いてあるのだが、この部屋には一切何もなかった。

毎度のことながら、ヒカルは今回の依頼を聞いていない。今回は、依頼場所に着く前に依頼について積極的に聞いたのだが、ヒカルは犬と遊んどいて。しか言われなかった。なので今から何が始まるか、わくわくした。ヒカルは犬が大好きであった。大好きな犬がいるので、怖い系の依頼ではないと確信していた。

イッペイが、その寝ている男性の横に座った。寝ている男性から見て左側である。その横に、先ほどの若い男性が白い光沢のある絹の布を広げた。

イッペイ「ヒカル、クー太郎を俺の横の布の上に置いて。」

ヒカルは、その白い光沢のある絹の上にチワワを置いた。クー太郎は、落ち着きなくその場をクルクル回っていたが、イッペイが背中を撫でてあげると、おとなしく寝そべった。

チワワを置いて、先ほど立っていた自分の位置に戻ろうとすると部屋を大勢の着物を着たこの家の人がヒカルたちを囲っていた。笑みを浮かべているん者、不安な表情、怪しそうに見つめる者、手を合わせて祈っている者、多様な表情を各々のスタイルで立っていた。

イッペイ「ここまで来るのに10年かかりました。今まで、自分の言葉を信じてこの日を待っていただいてありがとうございます。」

数名は、既に泣いている。ヒカルは、今日はラフな依頼の予定である。

綾子「皆、よく耐え凌いだ。若旦那様の看病、お犬様のお世話。本当に感謝する。大奥様もきっとお喜びになっていると思う。」

イッペイは、両手を大きく伸ばし、頭の上で手のひらを一回叩いた。その音は、部屋に響き渡った。そして寝ている男性のおでこ数cm上で触れないように左手で手かざしをし、右手はチワワの背中に置いて撫でていた。

その姿勢を約30分維持した。その間チワワはじっと眠っているように見えた。途中、周りにいた一部の人が懐疑的にざわざわしたが、綾子さんが鋭く睨み、黙らせた。

「っう、うぅん。」

寝ている男性が、小さな声でうなり声をあげた。その瞬間全員が驚き、歓声を上げた。

綾子「うるさい。まだ終わっとらん。」

歓声に負けないくらいの声量で、周りを諫めた。ヒカルはその声にビクっと体を反応させた。ただ犬と遊びに来たヒカルはこの状況に理解が遅れていた。でもなんとなく、イッペイが寝ている男性を手かざしで治療していることは、なんとなくわかっていた。オカルト本で神の左手を持つ人間特集で、手かざしで人の傷を癒すという記事を前、読んでいたためである。

イッペイ「クー太郎では、ここまでが限界です。どうしましょ?」

綾子が「アカネ。マサルをここへ。」

集団の1番後ろにいたアカネは返事をし駆け足でどこかへ行ってしまった。

イッペイ「マサルも、もう10歳になったんですね」

綾子「はい、先日。喜久雄。クー太郎様を向こうの部屋へ。」

綾子の指示で、1人の男性が、イッペイの隣で白い光沢のある絹の上で眠るチワワを絹でそのまま丁寧に包み、抱き上げ別の部屋へ連れて行った。絹がはだけてチワワの足が見えたが、力を失い垂れ下がっていた。

アカネ「綾子様、連れて参りました。」

集団を掻き分けアカネは、5匹の中で先ほどのチワワの次に小さいパグを抱いていた。パグは、おとなしく抱かれていたが、鼻息が荒かった。

綾子が指示し、若い男性が新しい白い光沢のある絹をイッペイの右横に広げ、アカネがそこにパグを置いた。

イッペイ「マサル、よろしくな。」

そう言うと先ほどと同じく、頭上で手を叩き左手で寝ている男性に手かざし、右手でパグをなでた。

最初、4つの足で立ち上がっていたパグは、時間の経過とともに体が地面に着き、寝てしまった。先ほどのチワワより少し時間が長かった。

「はぁぁ。」

寝ている男性がまた小さな声で息を吐く。今回は、歓声が起こることは無かった。

「水をくれないか。」

先ほどとは違い言葉を発した。乾いた声に先ほどとは比べ物にならないほどの歓声が上がり、綾子がアカネに視線で指示を出した。アカネはすぐにどこかへ駆けていった。

綾子「若旦那様の体に障る。お静かに。」

今回は、優しく静かな声で周りを諫めた。

アカネがストローを挿した水の入ったコップを持って、集団を掻き分け寝ている男性に少しずつ飲ませた。

「はぁぁ。綾子そこにいるんですね。」

綾子「はい、若旦那様。この10年ずっと離れず傍に降りました。」

綾子はイッペイの後ろまで行き、正座をして近寄った。

「そうか、あれから10年か。どおりで体が重いわけか。」

イッペイ「若旦那様、イッペイです。覚えてますか?」

「はい、昨日のことのように覚えております。」

イッペイ「まだ、治療は途中でして、体は動きません。目は開けられますか。一様首上まで退けたんですけど。」

関西なまりではあるが標準語を話す努力をしていた、それほどのお方であることにヒカルはすごい方なんだと感じた。

「すみません、眩しくて。」

綾子が後ろを振り向き手で全員に指令を出すと、日が入ってくる方向に全員が立ち日光を遮った。

「ははっ、アカネ。君をいたんだね。そして綾子も。ああ、ありがとうみんな、そんなところで立ってないで一人一人顔を見させていくれ。」

目を開けた若旦那様は、視線を動かし首を動かし周囲を見渡した。

綾子「日光から若旦那様お守りしている故、ご容赦くださいませ。」

綾子は、気を利かせた。逆光で見えずらいが、全員が声を殺し泣いていた。

ヒカルもこのハートフルな光景にウルっときていた。

「そうか、みんなありがとう。イッペイさんは10年経っても変わらないですね。」

後ろに立っていたヒカルに気づく。

「初めましての方がおられますね。私は、この家の当主のリュウジンと申します。」

ヒカルは、慌てて自己紹介をした。自分への丁寧な振る舞いに、この方がなぜ周りに慕われているか分かった。

リュウジン「あぁ。この子が私を救ってくれたのですね。今、何匹目ですか?」

イッペイ「この子で2匹目です。なのであと3匹です。」

リュウジン「そうですか。綾子、さきほどのもう一匹をここにつれて来てくれないか。」

そういうと綾子が、目くばせし若い男性がどこかへ駆けて行った。

リュウジン「母様はどこですか?」

綾子「大奥様は、手を尽くしましたが1年の闘病を経て、2年前にお亡くなりになりました。」

リュウジン「そうか。辛かったであろう。ここまでよく家を守ってくれた、みんなをまとめてくれた。辛かったであろう、大変であったであろう。」

綾子「滅相もございません。若旦那様の苦しきに比べれば、私の苦労など塵と同じでございます。」

綾子は、頭を下げた。かしこまって頭を下げたわけではない。女は決して涙を見せない。これはこの家に来て大奥様から最初に教わることであった。

リュウジン「その積もり積もった塵を、私が一生懸け払おう。」

綾子は声を殺しきれなかった。それにつられて全員声を出して泣いた。ヒカルもつられて泣いてしまった。白い光沢の絹に包まれたチワワを抱いて戻ってきた男性も、こちらにゆっくりと歩きながら泣いていた。

リュウジン「ははっ。母様が見たらなんていうか。」

流石当主。リュウジンは冷静にみんなの温かな気持ちを受け止めていた。

リュウジン「私の枕元につれてきておくれ。」

イッペイが、リュウジンの枕元左右に、力の抜けたパグと若い男性からチワワを受け取りチワワを並べた。

リュウジン「ありがとう。私が眠っている間に大きくなったね。クー太郎、マサル。」

イッペイ「覚えておられるんですね。」

リュウジン「私が眠る前の最後の記憶だからね。すまない、とても疲れてしまった。クー太郎とマサルと一緒に少し眠らせてくれないか。」

リュウジンとの再会を惜しみながら、部屋の扉を閉め皆出て行った。


別の和室で、ヒカルとイッペイは昼食接待を受けていた。豪華な日本食にイッペイは終始うまいと発言し食べていた。

綾子「ヒカルさん、お口に合いませんでしたか?代わりのお食事をお出しいたしましょうか?」

綾子の目はまだ赤く腫れていたが、イッペイとヒカルのお食事の接待をこなしていた。

ヒカル「今回の依頼、どういう内容だったのですか?とてもいい結果にひとまず終わってい    ることは分かりますが、なぜか心が晴れなくて。」

綾子は、イッペイを見た。イッペイは慌てて口の中の食べ物を一気に飲み込んだ。

ゴックン

イッペイ「そんな見んといてください。言うたらこいつ反対するって分かってたんですも      ん。」

綾子は、ため息をついて話してくれた。

綾子「ヒカルさんの心が晴れないのは、おそらくクー太郎様とマサル様の事でしょう。順を   追ってお話しいたします。少し長くなりますがご容赦くださいませ。」

  「私共の家系は、もとは武士でございました。今はもう石垣だけになっていますが、、   昔は立派なお城でございました。ヒカルさんはご存じですか。」

ヒカル「はい。江戸中期に栄えた、徳川家の家臣のお城でしたよね。」

イッペイは、感心した。

綾子「よくご存じですね。博識なお方で安心いたしました。」

ヒカルは照れて、自慢げにイッペイを見た。イッペイは、目をそらし湯豆腐を箸でとる。

綾子「名を滝龍仁。徳川幕府とともに城も衰退していったそうです。」

ヒカル「リュウジン?って若旦那様も同じ名前ですね。」

綾子「はい、この家に長男として生まれたご子息は皆、リュウジンの名を引き継ぐしきたりとなっております。幕府とともに衰退した私たちの家系が今日までいかに生きながらえたのか。それは、最後の城主3代目滝龍尽が、一族繁栄の対価にある呪いをかけたと言われております。その呪いとは、当主となる男は、必ず16の歳で一生目覚めることのない夢に捕らわれてしまう。という内容でした。呪いどおり必ず当主となられるご子息は、16の歳で目覚めぬ夢に捕らわれ、一方で一族は、廃れることなく今日まで繁栄してきました。そして、現リュウジンである若旦那様が15の歳、あと数ヶ月で16の誕生日を控えていたある日のこと。大奥様が、イッペイさんを連れてお戻りになられました。」

イッペイ「ある政治家さんの紹介でな。」

綾子「事情を聴いたイッペイさんは、依頼金と報酬金の話、そして5匹の産まれて間もない   大きさ犬種の違う犬を飼いなさいと仰いました。話を聞いて、大奥様と私たちは条件に合う犬を探し回りました。大奥様はお金に執着がございませんでしたので、依頼金と報酬金がどんなに高くても気にするそぶりは見せませんでした。大奥様の内心は、分かりかねますが、少なくとも私は半信半疑でございました。」

イッペイ「そりゃそうですわ。あの時は、信じて動いて頂きありがとうございます。」

すき焼きの牛肉を生卵にくぐらせ、幸せそうな顔で咀嚼しているイッペイを見て、ヒカルもすき焼きを食べた。

綾子「いえ。大奥様の意向には絶対でありましたし、他にすがる手段を持ち合わせていませんでしたので。半月後、条件の合う5匹の犬を見つけ、イッペイさんにご連絡差し上げますと、ご当主に名を決めてもらい、犬が10歳になるまで、大いに愛情を注ぐ事を仰せつかりました。その際、併せて今後のお話もお聞かせしていただきました。」

綾子は、先ほどまでのすらすらと話していた口調が急に止まり、言いにくそうな表情を浮かべた。

イッペイ「ほな、こっからは僕が話しますわ。」

漬物を口直しに食べ箸を置いた。気を利かせたイッペイの行動に綾子は甘えた。

イッペイ「ここから悲しい話やけど、お前が聞きたい言うたんやからしっかり聞いとけよ。」

ヒカルも箸を置いた

イッペイ「10才を迎えたサイズの小さい犬から、ご当主の呪いをその犬に移していく。移した犬は呪いに耐えられず亡くなる。」

ヒカルは、薄々気づいていた事実が明確になり、残りの3匹の犬が頭に浮かんだ。

イッペイ「スケープゴートって知ってるか?」

ヒカルは、悲しみをこらえる為に唇を上に湾曲させた。その表情はほうれい線がくっきり見え、そんな表情でうなずいた。

イッペイ「スケープゴートにする代わりに、10年という長い年月愛情をあげ育てる。10年犬の中で蓄えられた正のエネルギーは、俺を伝わって若旦那様にいく。正の強いエネルギーが負のエネルギーを押し出すように俺を通り犬に移動する。ご当主様のかけられた呪いを移動するには、10年という長い年月が必要やってん。大きさに関しては、急に大きい体の犬だと、その分大きな正のエネルギーになる。いきなりは、体がもたんから小さき体の犬から始めたんや。犬種に関しては、犬種で大きさがバラバラで成長した時にイメージしやすいからや。」

綾子「お辛い部分をお話しいただいてありがとうございます。ここからは私が。若旦那様に名を頂いた5匹をお犬様として丁重に私たちはお育ていたしました。若旦那様は次第に衰弱しついに16の歳の日に、お目覚めにならなくなりました。それからもイッペイさんの言葉を信じ、こうして10年が経ちました。数か月に一回、イッペイさんも大変なお仕事の合間にお越しいただいておりましたので、信じぬくことが出来ました。これが今回の全てでございます。」

綾子さんの目は再び赤みを帯びていた。若旦那様の命、5匹の犬の命。若旦那様を失う辛さ、5匹の犬を生贄する辛さ。どちらを選んでも心は晴れないだろう。大事な人を失うか、救うために誰かを犠牲にするか、今後、ヒカルは大きな選択を迫られる。こういう仕事をしていれば必ず来るとヒカルは感じていた。

大きな門の前、イッペイと綾子さんは、これからについて話していた。近いうちに10歳になる残りの3匹についてと、イッペイの予定を確認していた。奥で芝生を駆け回る3匹の犬をヒカルは見ていた。アカネさんがテニスボールを投げ遊んでいた。この家の人がどんな気持ちで、お世話をしているのか。赤ちゃんから育てた10年という年月は、あまりにも長すぎる。

イッペイ「ほな、2週間後ぐらいにまた来ます。」

綾子「本日は、大変お世話になりました。10年間この日の為に生きてきた甲斐があります。」

イッペイは、笑顔で会釈して別れを告げた。

テニスボールがこっちに転がってくるのが見えたヒカルは、駆け寄りボールを拾う。一番大きな体のゴールデンレトリーバーがヒカルに近づき、テニスボールを持っている右手を舌で舐めた。

アカネ「すみません、ヒカルさん。こちらに投げていただけました。」

ヒカルは、綾子さんの方に振り返りゴールデンレトリーバーの名前を聞いた。

ヒカル「あんずちゃんか。かわいい名前だね。」

ヒカルはテニスボールを投げた。あんずは尻尾を振りながら走って取りに行った。あんずに背を向け、イッペイと綾子さんのいる門に向かった。後ろから膝を押された。振り返るとあんずがいた。尻尾を振り、ヒカルの足元にテニスボールを置いた。ヒカルは今度は思いっきり遠くへ投げた。あんずは勢いよく走っていった。ヒカルは、走ってイッペイの車に向かった。イッペイはヒカルの分も綾子に、あいさつし車に向かった。助手席の扉の前でヒカルは、上を向いて立っていた。イッペイが車を開錠するとヒカルは急いで乗った。イッペイが運転席の扉を閉めた瞬間、大きな声で泣いた。イッペイの車に響き渡り外へ漏れるほど大きな声で泣いた。

イッペイ「よう我慢したやん。大奥様も、はなまる満点くれるんちゃう?」


イッペイは、エンジンをかけ高速ではなく下道で帰った。


第8章(完)


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