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オカルトニシティ  作者: たんたん
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高校2年生

第二章(7月24日)

ちょうどスエが亡くなって一か月。私は、あの時の井戸の前にいた。少し怖かったから昼間の太陽が一番高く暖かい時間を選んだ。

ヒカル「スエが好きだった月刊オカルト雑誌7月号持ってきたよ。今回も、ちょー面白かった。助五郎さんの実話がやっぱ一番良い。ってスエ助五郎派じゃなかったよね。スエの好きな慢さんは今回出てなかったわ。まぁせっかく持ってきたから読んでよね。」

井戸付近にそっと雑誌を置いて、手を合わせて話す。

ヒカル「あれからね、色々聞かれたんだ。でも記憶がない。って警察官やスエのお母さんにそう言っちゃった。私のお母さんには覚えてるとは言ったけど深くは言わなかった。お母さんも気を利かせてくれてそれ以上は聞いてこなかったしね。だって、おかしいもん。スエと一緒に井戸見に行ったら、既にスエは井戸の中で亡くなっていた。なんて言っても誰も信じてくれないもん。」

 ・・・・・・・・・太陽が5度傾いた。

ヒカル「私に見つけて欲しかったんだよね。、いくらオカルト好きの私もいざ体験してみると頭の中整理するの大変だったけど。っあ。それと悲しいお知らせなんだけど、オカルト同好会廃部になっちゃった。まぁそりゃそうだよね。でも安心して。2人で書いたあのオカルトノートの解明できてない事件事故は私が引き継いで絶対解明してみせるから。ちょうど夏休みに入ったから私、スエの分まで頑張るね。」

暖かな日差しが辺りを包み込み、スエのぬくもりを感じたような気がして空を見上げた。

ヒカル「寂しいよ」

ヒカルは、しばらくしゃがんでいた。

「邪魔や。」

ヒカルは驚き、後ろを振り返った。そこにはスーツを着た男性が立っていた。長髪ストレート前髪は2:8で分けられ、歯はギザギザ。サングラスをかけたサラリーマン風の男はハッとした表情でヒカルを見ていた。

男「ま、また来たんか?懲りない奴やなぁ」

ヒカル「えっっ。もしかして救急車を呼んでくれた方ですか?」

さらに男はハッとした表情で、ぼそっと

男「しまった。」

その言葉を逃しはしない。

ヒカル「あの、教えてほしいことがあるんです。」

男「あぁん、何や。」

嫌そうな顔で睨む。

ヒカル「私たちを見つけたあの日、ここで何をされていたんですか?」

さらに嫌そうな表情で、少し声を張る。

男「あぁぁん。何でもええやろ。はよ帰れ。邪魔や。」

ヒカルは負けない。

ヒカル「嫌です。絶対嫌です。お願いします。質問に答えてください。」

なぜそこまで意地を張っているのか。男は理解できなかったが、ヒカルにはそこまで意地を張る理由がある。

ヒカル「私は、最初通報してくださった方について、もしかしたら亡くなった友人が通報してくれたのかも。と思って自分の中での着地点にしていたんですが、今日あなたが現れた。私は、絶対引きません。ここは友人との最後の場所なんです。さっき友人と約束したんです。2人で見つけたオカルトを解決するって。そしてあなたが現れて決心しました。ここが私達の最初に解決する案件にします。だから何か知っている事があれば教えてください。この井戸は何ですか?」

よぉしゃべる女やなぁ。オカルトぉ?男は、色々言いたいことが頭に浮かんだが、少し興味本位で聞いてみた。

男「ほな、まず俺の質問に一個答えろ。そしたら一個だけ質問に答えてやる。」

この交換条件が、二人のターニングポイントとなることを今はだれも知らない。

思いが通じたという喜びと、絶好のチャンスであるというこの状況に胸が高鳴った。ヒカルは大きくうなずき、交換条件快諾のサインを送った。

男「どうやってこの井戸の事を知った?」

ヒカル「この井戸を見つけたのは私ではなく、亡くなった友人なんです。グーグルマップで見つけたそうです。」

男「はぁっ?」

男の驚いた表情を無視し、ヒカルが強引に被せる。

ヒカル「はい。答えました。では私の番ですね。」

男「ちょっちょっと待てぇ。それは無いで。確認してみぃや。」

答えたのに、答えてくれない不満と何で私が調べないといけないの?という感情でヒカルは、男を睨んだ。

男も睨み返したが、ヒカルに分があることを悟った男は、不服そうに自分のスマホで調べ始めた。

腕組みをしてその様子を眺めるヒカルの態度はすぐに変わった。その男のグーグルマップには、確かに井戸なんてものは映っていなかった。

焦ったヒカルは自分でも調べ始めた。その様子をギザギザの歯を見せニヤニヤして男は眺めていた。

ヒカル「えっマジじゃん。どういう事?」

男「せやろ。その友人が見つけられるわけないねん。結界張ってるんやから。」

男は、自分の発言にぞっとした。ヒカルはハンターのように隙を見過ごさない。

ヒカル「結界って?」

男「ですよねぇ。」

劣勢に立たされた場合、人はなぜだか標準語になる。だがさすが。この男、機転が利く。

男「結界についての質問にお答えします。」

と結界についての知識についてべらべら話し始めた。ネットで調べれば簡単に出てくるあれである。

ヒカル「すとーーっぷ。ずるい。卑怯よ。てか全然質問の内容に合ってない。」

男「はぁぁあ。質問にちゃんと答えてるやろがぃ。」

ヒカル「趣旨を全然汲んでない。私は結界の意味じゃなくって、あなたの発言の結界について聞いてるの。」

男「ああぁぁーもおぅ終わりや終わり。てか邪魔やねん。なんでここにおんねん。はよ帰れ  や。」

ヒカルは、今までのヒカルではない。亡き友人のカルマを背負っているのである。絶対に引かない。

ヒカル「じゃぁ質問代えるわ。なんで私が邪魔なの?ここで何を今からするの?」

質問二つしてるがな。呆れたと同時に男は疲れを感じた。

男「はぁ。もうええわ。なんかごっつ疲れてきたわ。今から何するかは言わんが側で見とき。それ見たら黙って帰れ。なっ?」

渾身の妥協案であった。ヒカルは悩んだがうなずき男の後ろに回り少し下がった。

男は、持っていたカバンから見たことのない道具を取り出し、せっせと作業を進める。

男が。お経?のようなものを唱えた瞬間、太陽が雲に隠れ、少し暗くなったように感じた。上を見上げたヒカルの眼には、太陽は雲に隠れてなどいない。しっかり太陽光が地上を照らしていた。不思議とは思ったが、それを気にするほどアマチュアではない。

男「うっし。」

男がそそくさと道具をカバンにしまうのを見て、ヒカルが駆け寄る。

男「おしゃべりは無しや。帰れ。約束やろ。」

ヒカルは黙って、あるノートを開き、男に見せた。男もそれに気づき一瞬この女の賢さを悟った。

男「はぁあん。しゃべられへんから今度は、文字で会話でっか?よぉ頭回る女やなぁ。」

あしらい気味にノートに目をやると、言葉通り目が飛び出した。

男「この場所。・・・なんで知ってんねん。」

そのノートには、住所と地図の経度、緯度。そしてそこに何があるかが書かれていた。ヒカルは律儀に黙っていた。それを察した男は

男「おしゃべりラウンド2や。」

ヒカル「これは友人との二人だけのオカルトノート。この住所は全て友人が見つけてきたもの。そして私はこれからここを友人の分も調べて不可思議を解明していこうと思ってるの。」

男「はぁああぁ。それはやめとけ。てか何でそこを知ってるんや。てかなんで今俺に見せた  んや。」

ヒカル「そりゃ不思議を解明したいけど、正直死にたくはない。だから危ないところを予め  聞きたいと思って、見せました。多分あなたと会えるのはこれが最後な気がしたので。」

男「はぁああぁ。なんじゃそれ。もう意味わからん。ぜぇえんぶ意味わからんなってきた。  お前のせいで頭ぐちゃぐちゃや。」

ここまでの長い死闘に疲れ、追い打ちを食らった男は、そのノートに住所を書いた。


男「明日、ここに来い。あとそのノートも持ってこいよ。」

そう言い残し帰る男の背中を両手で手を振り見送った。


第二章(完)


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