地雷系女子を愛でる
「地雷系女子って可愛くないか?」
そう思ったのは去年の冬のことで、いつも通り1人で学校から帰っていると、目の前に地雷女がいた。コツ、コツ、と黒のブーツを鳴らしながらマツモトキヨシの店中へ入っていったのだった。
「これが、恋?」
ちがう。これは母性だ。量産型と呼ばれる彼女に個性をあげたいという母性だ。あの濁ったピンクの変な服は、学校での人間関係に失敗し、ネットに入り浸って憔悴し切った、女の心そのものなのだ。そんな彼女を救ってやりたい、導いてやりたい。別に地雷系を卒業してほしいのではなくて、ただ、ただ、笑顔で楽しく過ごして欲しいという単純で純粋なら思いを抱いた。そうだ、あの彼女が店から出てきたら話しかけよう。今の情熱的な僕なら何にでも出来たのだ。
とうとう女が店から出てくると、僕は高鳴る心臓を抑えて話しかける。
「あの、地雷系女子ですよね?」
「あっ………。まあそうですけど?」
彼女は不審に答えた。
「僕、地雷系の人が好きで…。それで!あの…なんで地雷系になったんですか!?」
「えっ!?………いや、学校とかがイヤで…」
「!! なんで学校が嫌になったんですか?」
「えっ!?…ふつうにベンキョーがわからなくて」
「?? どういうことですか? 」
「いや、ベンキョーわかんないし、行くのメンドくさかったんですよ」
「え???親とか友達とかの関係はどうなんですか?悪かったんじゃないんですか?」
「別に友達と話してたし、カレシもいたし。あ、でも親はウザかったなあ。なんか夜に遊んで帰ったらクッソどなられたし、こづかいも全然くれないし」
その瞬間僕はすかさず地雷女に拳を入れて、バリカンで坊主にしてやった。
その後、僕は医者の女と結婚して、今では2人の子どももいる。この2人にはピアノとヴィオラのお稽古に行かせている。そう、地雷女に惑わされないように。