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六道教室の隠れ皇族  作者: 三千五千
3/3

第2話 生徒達の思惑と水面下で

 始めの頃は翌日か翌々日以内に投稿するつもりだったのに早速遅れてしまいました…。

 

 新学期初日を終え、暁風鈴は空き教室で二人の生徒と共に意見を交わしていた。

「暮神紅理亞……予想していたとはいえ、一筋縄ではいかなそうな相手ね~。桐芽きりめ沙良さら、貴女たちから見て彼女はどう映った?」


「まず、私達暁家の者が暮神教諭の正体に気付いていることは、既に露見していると考えるべきでしょう」

 満原桐芽みつばら きりめが意見を述べる。

 肩まで伸びた髪を一本にまとめて右肩から前に垂らしている。落ち着いた佇まいから沈着冷静なしっかり者という印象が強い。ちなみに左手には常に黒い革手袋を嵌めている。

 暁風鈴の側近の一人で、スケジュール管理など秘書のような役割を担っている。

「〝心〟を鍛えると述べていましたが、おそらく〝探り合いは望むところ〟という意味でしょう。私達のことなど脅威とも感じていないということです」


「私が気になったのは、クラス全員と関わろうという意思が見えたことかな」

 桃久保沙良ももくぼ さらが唇に人差し指を当てながら答える。

 桃色のショートヘアに四つ葉のヘアピンが映えている。潤いのある瞳、瑞々しい唇、整った肢体を魅力的に見せる物腰。全体的に小悪魔的印象が強い。

 沙良もまた風鈴の側近の一人で、主に身だしなみの管理など美容関係を担当している。

「このクラスの〝特定の誰か〟じゃなくて〝全員〟に探りを入れている感じがする。私達の共通事項を洗った方がいいかもね」


「なるほど~」

 風鈴が頷く。

 満原桐芽と桃久保沙良は技術面や六道士としての実力はもちろん、知能も十分優れている。しかも理論的で合理的な満原桐芽と心理的洞察力に優れた桃久保沙良と、思考タイプも違うので、多角的に物事を考える手助けとなる。

 二人は風鈴の自慢の側近だ。

「桐芽の言う通り私達が探ってることがバレてるなら、開き直って色々手を打ちたいところではあるわね~」


「いっそのこと協力を申し出るのはどう? 私達の目的は『皇家』の後ろ盾を得ることであって、盾突くつもりはないんだし」


「それはまだ早計よ、沙良。『皇家』の目的が私達に損を被る可能性がある。危害を加えるつもりはないと思いたいけど。何にしても、相手の目的を見定めてからすべきよ」


「そうね~。やっぱり沙良が最初に言ってた私達C組の共通事項の確認を優先すべきかしらね~」


「と言っても一年の時の出来事に限られますね。劉邦院学園は関東の全都県に中等部校舎を持ち、私達は中等部時代バラバラでしたから」

 そう。満原桐芽の言う通り、劉邦院学園は中等部の時は別々の校舎で教育を受け、甲乙部に上がると同時に高等部の大校舎に集められる。

「……そして、一年の時のことで真っ先に思い当たることがあるかと言えば……」


「去年八月の災害事故、ね」

 沙良が冷静に述べる。


「やっぱりそうなるわよね~。……星十鬼獣の『顔無ノ鵺カオナシノヌエ』に襲われた……私達が死んでもおかしくなかった、いや、本来なら死んでいた災害。老化による自滅って言われたけど~、私達は最初に『顔無ノ鵺』が放った威圧だけで呆気なく気絶しちゃったから何も知らない。……でも、この時〝何かがあった〟として、実際何があったと思う~?」

 風鈴が聞くと、空気が重くなった。

 簡単に一つの推測が成り立つからだ。しかしその推測は信じられない事実の下に成立している。


 桐芽が代表して口を開いた。

「……単純に考えれば、やはり〝C組の誰かが『顔無ノ鵺』を倒し、『皇家』が探している〟となります……ね」


 そう。そしてそれはC組の生徒のほとんどが密かに抱く違和感にも繋がる。


「……私達は一瞬だけど、封印から解かれた『顔無ノ鵺』を見た。そしてその業気を肌で感じた。……あくまで直感だけど、あれが老化した鬼獣のものとは思えないよね」

 沙良が重たい表情で語る。


「もちろん他の可能性も考えられます。〝あの災害事故に裏組織が関与している可能性があり、『皇家』はそれを調査している〟、〝実は『顔無ノ鵺』の極鱗きょくりん黒膜こくまくなどの億単位で取引される重要部位が剝がされていて、その犯人を捜している〟、〝『顔無ノ鵺』の業気の余波を受けた後遺症によって後々C組の誰かが暴走してしまうかもしれないからその監視をしている〟と、あらゆる学術的観点から見ればもっと現実的な理由があります。そもそもその災害事故とは全く関係ない場合も十分考えられるのです。……老化の違和感は私もありますが、それに惑わされないことが大事かと思います」

 桐芽が冷静に話を整理する。おかげで二人もはっと気付き、偏りかけた流れが戻された。

風鈴が「そうね~。ありがと、桐芽。ちょっと視野が狭くなってたわ」と礼を述べる。


 その時、風鈴のポケットからスマホの通知音が鳴った。

 風鈴が差出人を見るや否や視線を鋭くする。素早く内容を確認し、桐芽と沙良に言った。


「今から人と会うわよ~」




 ■ ■ ■




「やっほー! 風鈴! 桐芽と沙良も!」

 風鈴達三人が待ち合わせ場所である自然公園の奥の茂みに囲まれた空間で、クラスメイトの女子が朗らかな笑みを浮かべて出迎えた。


「まさか貴女から連絡が来るとは思わなかったわ~、星川ほしかわさん」

 

 星川羽未ほしかわ はみ

 亜麻色の髪のショートヘアで、前髪の一房をまとめてぴょこんと跳ねている。小顔でくりっとした瞳が可愛らしい。身長は風鈴と大差ないが細身で身軽な体格をしている。明るい、爽やか、といった言葉がよく似合う美少女で、クラスの人気者だ。

 彼女もまた二年C組の生徒であり、さらには風鈴や揆渡見凌駕、新甲斐岳耶と肩を並べる実力者である。桐芽や沙良よりはっきり言って強い。


 羽未が肩を竦める。

「連絡するべきか大分迷ったけどねっ。………ねえ、風鈴。今何が起きてるの?」

 

 羽未の表情は真剣なものだ。大きな事態に発展していることを認識し、踏み込む覚悟を持った瞳だ。


「……逆に聞くわ。何が起きてると思う? 羽未の予想を聞かせて」


「わからないから困ってるんだよね。暮神先生がただの先生じゃないってなんとなく思って風鈴に聞くだけ聞いてみようと思い立ったんだけど……やっぱり、何か知ってるんだね」


 星川羽未は勘が鋭い。超直感とも言うべき天性の感覚を備えている。他人の感情の機微に敏感で、共感して寄り添う優しさを持ち合わせているので、彼女を慕う者は多い。


「……悪いけれど、今言えることは何もないわ。ごめんなさい」


「どうしてもダメ?」

 羽未が少し寂しそうな表情で言う。

「今気付いてる人は少ないけど、これから何かが起きるんでしょ? ……私はね、その時にクラスのみんなが危険な事件に巻き込まれないかが心配なの。六道士を目指す以上危険は付き物だけど………大人の陰謀に理不尽に巻き込まれるのは、違うでしょ?」


 羽未の真剣な眼差しが風鈴に刺さり、その時風鈴は自分達が一つ見落としをしていることに気付いた。

(……確かに、『皇家』の動きに気付いているのが私達だけとは限らないけれど~。しかも『皇家』の動向を正確に探れるイコールそれだけ大きな組織ということ…。暮神紅理亞に集中し過ぎてそっちの警戒が疎かになってたわ…)


 決して気付いてなかったわけではないが、考えが甘かったことに気付かされた。それも何も知らない羽未のおかげで。

 桐芽も沙良も表情には出さないが複雑な罪悪感を抱いていることだろう。


「それでもごめんなさい……言えないわ」

 だがそれでも、やはり言うわけにはいかない。軽々しく口にできることではないし、何より羽未を巻き込んでしまう。

(『皇家』との争いにクラスメイトを巻き込むことはできないわよね…)


「……そっか。意思は固いみたいだね」

 羽未はそれ以上食い下がらず、理解の笑みを浮かべた。

「わかった! それ以上は聞かない! ……ただ一つだけ、何か協力してほしいことがあれば私はなんでもするから、遠慮なく言ってね」


 羽未の思いやりの気持ちが風鈴の心に刺さる。

(……羽未のこういうところには本当に敵わないわね)

「ありがとう、羽未」


 普段は羽未とも仲が良く、よく雑談するのだが今日のところは大人しく別れることとなった。




 ■ ■ ■




 羽未と話した帰り道、風鈴、桐芽、沙良の三人は周囲を警戒しながら小声で今後の動向について軽く話していた。内容はクラスメイトについてだ。


「桐芽~、沙良~。実際羽未以外でクラスの現状に気付いてる人はどれくらいいると思う?」

 風鈴が羽未のことを踏まえて聞くと、桐芽と沙良は既にそのことについて考えていたらしく、素早く答えてくれた。


「やはり風鈴様や羽未さんと同じ三級六道士の資格を持つ揆渡見凌駕、新甲斐岳耶しんかい がくや矛梨來火むなし らいかでしょう。

 揆渡見凌駕も野性的な鋭さがありますし、名家落ちしたとはいえ元『御六家』のコネも多少は生きているでしょうから、そこから詳細を知り得ていたとしても不思議ではありません。

 新甲斐岳耶は実直過ぎるが故に今は気付けていないかもしれませんが、そう掛からない内に違和感を覚えていても不思議ではありません。違和感があれば徹底的に調べるでしょう。

 矛梨來火は……言いたくありませんが、万能型の天才です。昨年度の学年別最強決定戦も辞退していましたが、もしかしたら決勝の相手が彼女だったかもしれないですし、洞察力や分析力もあります。勘付いていてもおかしくないです」


「私も桐芽と同じ意見ね。六道士の等級は実力だけで昇級できるものじゃない。実力に加えて戦術理解度や心理テクニックなどの一定の知能指数を求められる。C組の現状に気付くとすれば、まずこの三人が挙げられるわね。

 ついでに言うと、揆渡見凌駕には柳東矢やなぎ とうや、新甲斐岳耶には梁坂理壱はりさか りいちっていう頭の切れる仲間もいるしね」

 沙良が桐芽の説明を補足しつつ、「あと…」と続く。

「その三人以外だと……これも言いたくないけど、鷹篠たかしのくんかなー」


 鷹篠。その名前が出て全員が鈍い表情を浮かべる。


鷹篠隆土たかしの りゅうど……事あるごとに風鈴様や揆渡見さんに突っかかってくる不敬な輩……でも等級は私や沙良と同じ準三級……っ」


「そうね~。悪知恵が働くっていうか、悪意や敵意に敏感っていうか、いつも絶妙に困らせてくるからね~。

 主に注意を払うべきはその辺ね。他でいうと~、薙園千歳なぎその ちとせさん~、駒滝呉刻こまだき ごこくくん~、……あとついでに…椋帷むくのき とばりくんってところかしら…」


 椋帷。その名前が出て全員が微妙な表情を浮かべる。


「椋くんかー。まあそうね。……一応学力だけは高いもんね…。座学だけは学年一位だもんねっ」

 沙良が若干顔を引き攣らせながらよくわからないフォローをする。


「あれはただのがり勉ですよッ」

 対して桐芽の当たりは強かった。

「実技にも活かされてないッ。普段の話し方ものんびりしてるッ。勉強だけやればいいだろうという浅はかな考えが透けて見えますッ」


「……もう、相変わらず桐芽は椋くんに手厳しいわね~」

 激情化する桐芽をやんわり収束するための言葉だったが、風鈴は言ってから火に油だと気付いた。


 案の定、桐芽はヒートアップして。

「だって明らかに非効率じゃないですかッ。学年トップを維持し続けるのはすごいですけど、実戦となれば業気の操作能力及び業気量は五級の平均以下! 勉強の時間をもう少し六道士の修行に割り当てれば幾分かまともになるはずなのにそうしない! 一年の時に私からアドバイスしたら〝僕はそういうのいいです。放っておいて下さい〟って言われたんですよ!? 人の親切をなんだと思ってるんですか!」


「落ち着いて! 桐芽! ね? もうそれ愚痴になってるから!」

 慌てて沙良が宥める。

 冷静な桐芽であるが椋帷の話となると少々ヒートアップしがちだった。

 しっかり者の桐芽からすれば、椋帷のようないい加減なタイプは嫌悪の対象なのだ。


桐芽は持ち前の冷静さをすぐに取り戻し「ふー、ふー。申し訳ございません。取り乱しました」と謝罪する。

風鈴も煽った自覚が少しあるのか「いいえ~。私も面白がっちゃったわ。ごめんね」と素直に頭を下げた。


「とりあえず、今まで以上に広範囲への危機意識を高めるということでいきましょ」

 沙良が一旦締め括る。


 ………しかし、三人は知らなかった。

 事態は水面下で激しく動きつつあることを。




 ■ ■ ■




 揆渡見凌駕は都内にあるスポーツジムで筋トレに励んでいた。183センチの筋肉質な体にトレーニングウェアを着用し、今は酸素の薄い運動室でランニングをしている。

 小一時間走り終えた凌駕は上がった息を整えながら休憩用のベンチに座り込む。


「へー、結構熱気すごいかと思ったけど意外と澄んでるんだ。空調ちゃんとしてんだな。やるじゃん」


 突如、偉そうにジム評論をする失礼な輩が凌駕の横に間隔をあけて腰掛けた。

 何の前触れもなかったが、凌駕は至って冷静にその人物を認識し、睨みつけながら言葉を返した。


「何の用だ。……鷹篠たかしの

 

 鷹篠隆土。

 赤髪短髪で少し顎を上げ常に他人を見下す姿勢の男だ。世の中を舐めたような軽薄な顔つき、他人に諫められてもやめない脱力した体、しかし頭の回転は速く決して侮れない。上っ面な表情に隠した明確な敵意が漏れている。C組の中でもトップクラスに侮れない男である。


「おいおいそんな殺気放つなって。冷静なように見えて短気だよな、揆渡見って」


「お前の日頃の行いが悪い所為だ。自分が嫌われてることを自覚しろ」


「ははっ、これは一本取られたっ」

 鷹篠が薄気味悪く苦笑する。

「そんなことよりさー、ちょーと聞きたいことあるんだけどいいー?」


「お前と話すことは何もない」


「へー、そんなこと言うんだ。……だったらどうしよっかなー。このジムに黒藤くろふじ達も呼んで入り浸ろっかなー」

 

「てめぇ…ッ」

 鷹篠の言葉に凌駕が怒りを露わにする。鷹篠とよくつるんでいる三人の男女はとにかく素行が悪い。


 沸騰寸前の凌駕を煽り立てるように鷹篠が続ける。

「このジムって会費安い割に設備整ってていいよな。学校からは離れてるけど隠れた名店ってやつ? ほんと、俺みたいな庶民や……お金持ちじゃなくなったどこかの誰かさんにはぴったりだよなァ」


「その辺でやめようか、鷹篠くん」

 ぽん、と鷹篠の肩に手が置かれた。


「ありゃ、鞍馬くらまもいたんだ」

 

「確かに凌駕は集中し過ぎて視野が狭くなりやすいところがあるけど、そんな程度の低い煽りに乗っかるほど単純じゃないよ。だから無駄なことはやめな」

 鞍馬奏多くらま かなた

 男にしては少し長めの髪を首のところでまとめた男だ。優し気な表情と雰囲気を纏いながらも、友達のこととなれば臆せず前へ出る譲れない芯を備えている。

 今も凌駕をからかいつつも、鷹篠を皮肉っていた。揆渡見凌駕の親友である。ここにはいないが、もう一人柳東矢やなぎ とうやという親友もおり、凌駕を中心としたこの三人グループが風鈴達三人と対を成す男子の最強チームと言われている。


「はいはいごめんなさいね」

 鷹篠は鞍馬の皮肉に反応せずに薄っぺらい謝罪だけ述べる。

「けどさ、黒藤達も一緒に入り浸るってのは本気だよ? そこ忘れてもらっちゃ困るなー。僕に質問に答えてくれないかなー」


 依然優勢を示す鷹篠に凌駕が言った。

「お前の聞きたいことはわかってるが、俺だって何も知らないんだ」


「おいおい、落ちたとはいえ元『御六家』がそんなはずないじゃん? 暮神先生の簡単な素性くらい知ってんじゃねえの?」


「知らない。……ただ確かに揆渡見家の諦めの悪い大人達は現『御六家』の動向を探ってる。だが何も掴めていないのが現状だ」


「さーてほんとかなー? なんかそれっぽい言い訳を用意したようにも見えるんだけど」


「証拠は何もないし、証明をする義理もない。お前が勝手に判断しろ。……しかしそうだな。何か情報を掴めば条件次第ではお前に流してやってもいい。俺に取って暮神先生が何者であるかは差して興味はないし、その辺は暁達に任せるつもりでいるからな。

……それにお前も、まさかジムに入り浸るなんて交換条件だけで俺から情報を絞り出そうなどとも考えてないだろう?」


「ははっ、わかってるじゃんっ」

 鷹篠が苦笑する。

 自分有利になるように取引はしても脅迫はしない。脅迫すれば一回きりで以降は無視されて終わりだからだ。その辺を弁えているのが鷹篠の厄介な部分でもある。

「OK。とりあえず今日のところは退いてやるよ。……また話そうぜ」


 意味深な笑みを終始浮かべたまま、鷹篠は大人しくジムを出て行った。

 

 凌駕と鞍馬が残された形となり、鞍馬が鷹篠の帰った方向を溜息混じりに見詰めながら言う。

「……やけにあっさり帰ったね。逆に不気味」


「おそらく今日の目的は話を聞き出すことよりも、この話自体をすることだったんだろう。俺達に印象付けるために」


「なるほどね。いつもながら悪知恵が働くことだ。……本当に鷹篠くんに情報を流す気なの?」


「さあな。ああは言ったが、極力暁の邪魔はしたくない。暁に迷惑掛からないよう俺のところで鷹篠を食い止めるつもりだ」


「そういうわけね。あとで俺から東矢とうやに今のこと伝えとくね」


「頼む。やっぱり何か考えるとなったらあいつの頭が必要だ」


「僕や凌駕より頭いいもんね」


「おい、バカにしてるのか?」


「あははっ、ごめんごめんっ」


 人当りがよく流されずに臨機応変な対応ができる鞍馬奏多、先入観に囚われず多くの情報を的確に処理できる柳東矢。

 二人は凌駕の自慢の仲間である。


(………すまない。奏多、東矢)


 ……だが、凌駕はそんな二人に心中で申し訳ない気持ちを抱いていた。




 ■ ■ ■


 


 深夜を越え仕事帰りで飲んでいた会社員もいなくなった真っ暗な時間帯。

 春とはいえ冷え込む夜の街の、さらに人気が無い路地裏。

 そこに劉邦院学園二年C組に所属する二人の男女が姿を現した。


「ありがとう。まさか二人とも来てくれるなんて、嬉しいわ」

 そして、そんな二人を一人の大人が出迎えた。

 暮神紅理亞。

 夜闇の中では銀髪ロングに赤メッシュと紫色のメイクが尚際立っている。

 

 暮神は魔女の如き笑みを浮かべ、二人の名を呼んだ。


「揆渡見凌駕くん。星川羽未さん。貴方達を歓迎するわ」



「言っておくが俺は家の復興に興味はない。俺個人のみでのし上がる為に協力するだけだ。……にしても、まさか星川も声がかかっていとはな」


「私としては風鈴の仲間になりたかったけどね。どうやら秘密主義みたいで。……みんなに危険が及ぶなら、私が守る。その為にこっちについたの」


 権謀術数が蠢くC組でも、やはり主導権を握っているのは暮神紅理亞だった。




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