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さあ、とことんレベルアップをしよう! 外伝 ‐ベンゲルハウダーの新人冒険者‐  作者: えがおをみせて
第2章 ベンゲルハウダーの中堅冒険者

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第45話 しっくりきますね。踏ん張りも効いている気がします




「レベル19ね」


「レベル20よ」


 ニクシィさんとレッティアさん、それぞれのレベルだね。レベル20になったけど残念、レッティアさんはコンプリートしてない。


 そろっていい感じに目が死んできてるけど、まだまだ甘い。二人はハイパーレベリングを知らないんだからさ。

 アレってボクたちにはできないんだよ。なぜって、そこまで強くないから。背負子(しょいこ)レベリングをするには背負った人を必ず守り切れるって自信がないとダメなんだ。あんなのは十ジョブくらい重ねて前衛ステータスが強くないと危なくってできるわけない、そんなすごいレベリングなんだよ。


「そ、そうか。大丈夫なのか?」


 ギリーエフさんが心配そうだけど、大丈夫だよ? 別に目を回したり泣いたりしてないでしょ。


「わたし、王都の冒険者から聞いたことがあるの」


 なんかやさぐれたレッティアさんぼそっとこぼした。


「なにをだ?」


「つい一年くらい前なんだけどね、レベル10を超えたら限界ギリギリまで潜って、五日でレベルがひとつ上がれば上等なんだって」


 そんなころもあったんだ。

 ボクらにしてもメンターがいなかったらそうだっただろうし、マルチジョブでスキルがたくさんだからやってられるのかもしれないね。


「なんで二日で五つも上がってるのかしら」


「そ、それはまあ、みんなのお陰だろ」


「感謝はしてるよ、もちろん。ただ、普通の冒険者ってなんなんだろうね」


 言いたいことはわかる気もするけど、今はそうなんだからでいいじゃない。古い冒険者だって新しい考え方でがんばってる人たちもいるんだからさ。ほら『誉れ傷』の人たちとか。



「俺たちは若いし、いい時代に冒険者になったって考えればいい。しんみりすることはないさ。それよりシエラン、収支はどうだい」


 空気を入れ換える感じでギリーエフさんがシエランに振ったよ。


「三パーティなので大雑把ですが、なんとかぎりぎりたぶん黒字だと思います」


 すっごい回りくどくシエランが報告してくれたけど、ホントに黒字なの? なんかあやしいんだけど。


 というわけで『ラーンの心』も参加した交流冒険、今日の結果発表会の途中だよ。場所はいつもどおり、事務所の食堂だね。

『夜空と焚火』の人たちは疲れた顔してるけど、それでもちょっと嬉しそうだ。レベルも上がって黒字だもんねえ。


「俺たちは全員レベル16だ。ありがとう」


 ギリーエフさんたちがまたまた頭を下げるし。もうそれはいいって。

『ラーンの心』はけっこうがんばってレベリングをしたみたい。あっちは元々レベル14くらいだったからちょうどよかったのかな。同じくらいのレベルだもんね。


「ウチはプリーストが多いからね。メディハとフェウリィを出しても二人いる」


 はいはい、レアードさんが自慢げだねえ。自分はファイター、ウォリアー、ナイトでバリバリの前衛なくせして。

 でも『ラーンの心』って講習で教わったとおりのジョブ構成なんだよね。ウォリアー、シーフ、プリースト、ウィザードがまんべんなくいる感じ。エンチャンターはまだみたいだけど、次のジョブでやる気なんだろうなあ。



「ウルはレベル14だぞ」


「わたしもです」


 ウルとシエランもマスターレベルを超えたんだね。順調じゃない。

 でも『おなかいっぱい』の全員で24層まで行ったら、いやいや今ならブラックリザードを狩ったときみたいに30層だって。ジョブを重ねて、スキルがたくさんなボクたちだったら。


「どうした、ラルカ」


「う、ううん。なんでもないよ」


 フォンシーに肩を叩かれてハッとしちゃった。ボクはなにを考えてるんだろ。

 なんかこうさ、ふっとカースドーさんやオリヴィヤーニャさんたちが思い浮かんだんだ。


「フォンシーさ、強くなりたい?」


「そりゃまあな。そうしないとウハウハできない」


「あいかわらずだねえ」


 フォンシーは笑ってるけど、ちょっとだけ前と違う気がする。


「ウハウハで大笑いするには、周りも笑ってないとな」


 そういうことだよね。それだったらボクにもわかるよ。

 みんなが笑ってないとごはんがおいしくないもんね。フォンシーが言ってるのは、じゃあそのためにはってことだ。ボクたちはそれを考えなきゃならないのかな。



 ◇◇◇



「いいな!」


「いいね!」


 ウルが土の庭を駆け回ってる。もちろんボクもだよ。

 ザッティ以外のみんなでブーツを試してるとこなんだ。ザッティが仲間外れってわけじゃないよ。鎧を着にいってるだけ。


「そうだろそうだろ。冒険っていうのは、まずは靴からってね」


 家の前で腕を組んでるパッハルさんが嬉しそうだ。


「こんなに変わるのね」


 びっくりしてるミレアの横で、シエランとフォンシーが頷きあってる。

 ホント、これってすごいや。なんていうかこう、ピタってして、きゅって感じで、ぎゅっとしてるんだよね。


「ぐってして、ばってできるぞ!」


「ウル、わかってるー! そうそう、ボクもそう思うよ」


「二人の言い方はアレだけど、わたくしもなんとなくわかるわ」


 なんだよミレア。言い方ってさあ。


「しっくりきますね。踏ん張りも効いている気がします」


「ああ、これで移動系スキルを使ったらどうなるか。迷宮で試すのが楽しみだ」


 あ、シエランとフォンシーがそれっぽいこと言ってるし。ズルいぞ。



「……どうだ?」


 みんなでワイワイしてたら、家からザッティが出てきてた。


「いいね!」


「かっこいいぞ! ザッティ」


「……ラルカ、ザッティ。そうか。いいか」


 うんっ、すごくいい。ザッティが着てるのは新しい革鎧だ。


 注文通り色は濃い緑。パッハルさんの話だと『オリベ色』って言うんだって。そんな緑はキラキラしてない。けどツヤが全然ないってわけじゃなくって、ほんの少しだけツヤってしてるかなってところだ。


「絶妙のマット感だろ?」


 うん、よくわかんない。


 そして形だけど、今まで使ってた借り物と違って、ちょっとだけ分厚くなってる。全部じゃなくって、体の動かすところはブラックリザードの下地のまんまで真っ黒だ。それ以外の肩とか腕とか足とか胸回りなんかのパーツにそれぞれ厚みがある。けっこう目立つのは首回りだね。そこだけ薄いけどちょっとだけ盛り上がって首の横から後ろを囲んでる感じなんだ。


「可動域もきちんと考えてあるよ。特にクウィラスにはこだわってみたね。あとアンタら冒険者はカラテカも流行ってるんだよね? なんでヴァンブレイスなんかもね──」


 うん、全然わかんない。


 足元はもちろん特注のブーツだ。鎧より濃い緑でほとんど黒いかな。脛から足の甲までは鎧と一緒で分厚い板みたいのがくっついてる。


 じゃあ手先はっていえば、こっちは鎧と繋がった籠手(こて)になってる。もちろん取り外しはできるけど、いきなりすっぽ抜けたりはしないように金具で固定されてるよ。これがまたすごくってザッティの手にピッタリのサイズでさ、革の下地にちゃんとスライムとアーマーツリーの硬い板が張り付けられてるんだ。しかも指一本ずつ、関節ごとにだよ。

 これなら剣を持つときも不便しないし、思いっきり殴ることだってできそうだ。



「いやあ面白かったよ。下地にブルースライムゼリーを挟んでアーマーツリーを積層させた──」


 えっと、わかんないね。


「ブラックリザードで耐刃性を稼いで、スライムを被せて耐衝撃、アーマーツリーで耐魔法ってかい。うんうん、これなら結構深くまで付き合えるんじゃないかな」


 えっと、その、ごめんなさい。シエランとフォンシー、それにミレアがふんふんってしてるけど、わかってるの!?



「注文通りどころかそれ以上だ。いい仕事をありがとう」


 なんかフォンシーが見たことないくらい爽やかな笑顔だよ。そんなにすごいのかな。ボクなんてかっこいいってくらいしかわかんないんだけど。


「現物の確認もできました。こちら六領分で132000ゴルドです」


 ごくり。すごい大金だよ。もらった報奨金より高いじゃない。


「ブーツはレベリングと相殺だったね。だけど先払いでいいのかい?」


「パッハルさんは職人ですから。わたしはパン屋の娘なんです」


 なるほどたしかにお店屋さん同士だね。


「はははっ、物づくりをする者同士の矜持ってね。任せといてよ。次は誰のかな?」


「フォンシーとシエランよ。フォンシーが先ね」


 ミレアが一歩出た。本人からは言いにくいもんね。エンチャンターのシエラン、これからウィザードになるフォンシー。当然そうなるよね。

 でもなんでフォンシーが先なんだろ。もうすぐコンプリートだけど。


「なあにパーツは大体揃ってるんだよ。あとは組むだけだからそうだね……、一日一領ずつでいいかな?」


「早いのね。ええ、お願いするわ」


 ぽんぽんとミレアが話を進めちゃった。けどまあ考えもあるんだろうし、いいか。



「けれど装飾がないわね。どうしたらいいかしら」


 パッハルさんに頼んだ時には言われてたんだ。そういうのは専門外なんだって。しかもベンゲルハウダーに来たばっかりでツテもないから、知ってる人に教えてもらえってね。


「でも、冒険者の鎧だよ? あんまりゴテゴテするのも」


「そこはさりげなくするのが気品というものなのよ、ラルカ」


 うええ。気品ってどうやったらどうなるの?


「修繕を考えるとな。高くつくんじゃないか?」


「くっ!」


 あ、なんかフォンシーが勝ちそうな感じ。直すのとかそういうのも考えなきゃダメなんだね。


「大きなクランとか老舗だと、クランやパーティのシンボルとかエンブレム? 紋章を付けているところもあるみたいです」


「それだよシエラン!」


 うん、みんなでお揃いの紋章を付けるのって、いいじゃないか!



「なるほど、悪くないわね」


 おおっ、ミレアも納得してくれてる。


「そうなるとデザインね。『おなかいっぱい』に相応しいデザイン……」


「肉がいいと思うぞ!」


 あ、なんか嫌な予感がしてきたんだけど。


「……盾がいいな」


「金貨なんかも悪くないな」


「わたくしはこう、剣と杖が交差したような」


「素敵なデザインにできるといいですね」


 みんなさあ、勝手なことを言いながらなんでこっち見てるの? そういうこと? またなの?


「ここはほれ、我らがリーダーに決めてもらうところじゃないか?」


 フォンシー!


「そうね。わたくしたちはそうしてきたものね」


 ミレアぁ。


「ウルはステーキが好きだぞ!」


「はははっ、やっぱりアンタらは面白いね!」



 まーたコレだよ。だいたいさあ、誰に頼むかだって決まってないんだけど。



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