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 左目を押さえた。

 今度は物理的な痛みを伴って、眼球を上から押さえつけられているように痛む。

 時を従えたという白の魔女。そして彼女の由来となった時女神。であるのなら、彼女らのひとっみを通じて踊るこの光景は今に繋がる過去なのか。

 黒く巨大な悪魔めいた影が吠えるとその意を恐れたように玉座の間が震え、自戒していく。

 ひどく目立つのは槍を突きつけ挑む緋色の長い髪をした人。

 熱く鋭い裂帛の呼吸と炎を纏う人。

 緋の髪。皇族。皇主。とぎれとぎれの知識が浮かんでは消えていく。

 戦場にて槍を振るう皇族ならば数多くいた。

 最初の皇王アウィスニアがそうだと言われているが。

 再び瞳を開けると立ちふさがった巨大なヴィルヴィスが崩れ落ちた。全身を穴だらけにされてそれでもなおヘルダルフらを先に進ませまいとするその姿。

 どうしてか、ハルに向かって手を伸ばし、ハルも知らずに手を差し伸べるも距離はあまりにも離れ、届くことはなかった。

 ああ、目の奥が痛い、熱い、破裂してしまいそう。

「樹の化け物風情は炭になるのが似合いの末路だ」

 ヘルダルフが言った。その言葉に、自分でも思ってみなかったほどの感情が沸き上がる。その感情の名前は、怒りだ。

 なぜ、どうして、これだけの怒りを覚えるのかの戸惑い。けれどそれを塗りつぶす程の激しい感情が矛先を定めた。

 瞳が尖ってヘルダルフへ向かう。

 ヘルダルフはハルに近づいて強引に腕を掴み、レイと引きはがすとそのまま壁面に空いた巨大な穴の傍へと連れられた。

 どこまで登ってきたのだろう。都市の街並みなどもうほとんど見えない。うっすらと雲が掛かっている。

 見ると吸い込まれそうな浮遊感があって、足に力が入らなくなりそうだった。

「あの化け物どもを先導したのはお前か」

「知りません」

 ただ祈りはした。間違いなく。あなたたちが破滅しますようにと。

 その時に漠然と思い描いたのは夜闇色の空から降り注ぐ星の怒り。

 主義も主張も関係ない。問答は無用。ただ一方的に終わりを押し付ける機械仕掛けの神。

 神さまの子ども。

 もしかしたら、本当にもしかしたら自分は巫女とかいう存在で、そんな風に願ってしまったから都合良くヴィルヴィスらが立ち上がってくれたとしたら申し訳ない。こんな男をどうにかするために彼らが立ち上がる必要なんてないのだから。

 レーヤダーナは……いまだに瞳が曇ったままのラニーに掴まれている。正気ならともかく今の彼女にとってレイの存在は体のいい人質でしかあい。ヘルダルフの忠実な手足として。

「なんだ。何か言いたいことがあれば聞いてやる」

 聞いてやると言いつつその実、何かを聞くつもりはないのだろう。

 手に力が籠る。親が子どもを良いように利用する。その事実に胸がむかつく。

「私が何を言ったところであなたはまともにとりあわないでしょう?」

 自分の見たいものしか見ない。信じたいものしか信じない。そういう部類の男は何を言っても受け入れはしない。

 だからこそあんな他人を操りなんて祈りが現れたと考えれば、ああ、滑稽だ。

 セヴェロは支配すると言っていた。

 笑わせるな烏滸がましい。支配するなんてのはされる側の意思あってのこと。意思なき人形を従えたとて、それを支配するなど言いはしない。

 突きつけてやりたい。

 お前の祈りがどんなものか。

 お前の星の輝きがどんなものであるのか。

 私の言をとりあわないのであればとりあうようにしたらいい。

 であれば知らなくてはならない。

 この男がどう生まれ、どう生きて、今なお生き永らえているのかを。

 ハルは右目を閉じた。

 黄金瞳。白き魔女と同じ瞳。過去と現在、未来を選別すると言われた瞳。片方のみとは言え、その権能を受けてさえいれば。

 出来るのか。出来ないはずはない。この瞳が真実、時女神に連なるモノであれば容易いはずだろう。

 魂が混沌としている。精神は浮遊していて、体はまるで自分のものでないかのように靄が纏わりついている。

 だからこその至り。

 所詮は人間の身の上である自分に扱える代物ではないはずの権力が目を覚ます。

 見通し見定め見極める。あの男の祈り。その根源にあるモノを。

 ヘルダルフの姿を瞳に収めた。

 瞬間、溢れ出してくる判別出来ない言葉の氾濫。感情の津波。情景の嵐。

『お前は王』『王になるべき男』『生き詰まった一族に現れた最後の男子』

 大勢の人間の期待を一身に受けて現れたその子ども。

 そこに笑顔はなく幸福もなかったが祝福だけはあった。

 大人から向けられる期待と邪気。年長の同年代の子息から向けられる羨望と嫉妬。

 それらは彼の自負心を満足させた。

 期待は当然。邪気とは己に損得を見出しているから。羨望こそは立ち位置を再確認する最良の術であり、嫉妬とはその他愚物との優劣を明確にするものであったから。

 頂点であること。

 王となるべく自身に疑いはなかった。自身の才能と力量が同胞たちの誰より抜きんでていたことも彼を満足させていた。

 だからこそ抜きがたく染みついた劣等感を許せない。

『加護がない』『王なのになぜ』『出来損ない』『最低の失敗』

 隠しようもない嘲りと侮蔑の羅列。

 瑕瑾のない玉にあるたった一つ、だが見過ごせずそして見逃されなかった欠落は、無欠であるべきはずの己を無遠慮に暴き立てる。

 優れているのに。勝っているのに。己より明確に劣っている者どもに。

 なぜこの俺が下に見られなくてはならぬ。

 俺は王。王になる男。お前は王になる王になる王になる。そう繰り返したは、お前たち。

 狂信的に廻る祈りは呪いそのもので。そのたびに王となるべきと定められ、それを当然とした男の心は歪んで捻じれ、とある想いが肥えていく。

 加護がない。それは己のせいではない。加護がないのは貴様ら出来損ないのせいだろう。

 罪と言えばこれほどの罪はない。完全無欠の王たるに相応しい加護を宿らせなかった。

 肥大化する一方の自尊心の裏側で、同じように肥太っていく劣等感。

 許しがたい。

 これに対する罰はなされなければならない。さらにそれは重く辛く酸いに満ちたものではなくてはならない!

 だが安心しろ。俺は慈悲深い。俺は聖樹の王。王であるならば、お前ら出来損ないを導かなくてはならない。

 けれどしかし、王たる俺自らの手を煩わせるのもまた大罪。この俺自ら教導など貴様ら出来損ないには過ぎたるもの。

 ゆえにお前ら、意思なき駒となるがいい。

 光栄だろう。王と崇めるこの俺の手足になれるのならば。貴様ら劣等どもにはもったない褒美だ。平伏しろ。感涙して受けとるがいい。

 鬱陶しく煩わしい枯れた枝葉の塵芥ども。その腐った器の全て、せいぜい俺の役に立てるがいい。俺を王と崇め、見下す貴様らならば本望だろう。そうなることでしかお前たちの罪は清算されはしないのだから。

 貴様らの夢見る血の復権はこの俺によって無事なされよう。

 感謝しろ。だがそこにお前ら屑の居座る席など一つもない。枯れ木は枯れ木らしく腐って朽ちろ。それをもって罰となし、贖いと認めてやる。

 ははは、ハハハ、ハッハハハッハアアハハハ!

 冷徹さを纏った機械めいた男から垣間見えた情念。

 それは矮小で、卑小で、俗にまみれたありふれたモノでしかない。

 誰もが抱えて誰もが付き合っていくしかない感情。

 つまりは......。

「嫌いですか聖樹の民が」

 ヘルダルフの目尻が蠕動した。そしてそれをハルは見逃さなかった。

「煩わしいですか。あなたを王を持ち上げるのにあなたを見下し、あなたを厭う聖樹の民が」

 真っ暗な銃口が向けられる。

 他者を意のままにする祈り。

 彼が持つ星の光は鋭いがそれだけに向かう先が限定されすぎて、聖樹に縁のない者には効果が薄いのも当たり前だ。

 彼の関心は外の世界にほとんど向いていない。己と己を取り巻く世界しかなく、仮に彼が猟兵などをしていなければカナタには寸毫も意味がなかったかもしれないと、ハルはそう感じた。

「許せませんか。聖樹の加護を授けなかった彼らと聖樹そのものが」

 ハルはヘルダルフを冷たい黄金色の瞳で見定めた。とてもありふれた男だと。だからこそ、厄介なのだとも。

「最も厭わしいのは、そんな人間たちの言動に惑わされる自分自身ですか」

 本当の意味で自分を持っているのなら、他人の見る目を受けれいて、それでも己の意思を貫き通す。それが強い人間なのだとハルは考える。

 その条件に、ヘルダルフは当てはまらない

 そしておそらく先の言葉は、ヘルダルフの強烈な自負心と劣等感を突き刺し、刺激するものであったのだろう。

「憎んで、いるんですか」

 鬱蒼とした目に霜が降る。それは、あの男にして分かりやすい怒りの発露だ。激しているのに外に発せず、だからこそ積もるだけだったそれ。

 三十年余も塞き止められていたそれが、ハルの黄金瞳に貫かれて流れ出す。

「憎いか。憎いか。憎いか。ああ、憎いというのなら憎いのだろう。俺を認めぬとうに詰んだ一族。枯れ老いてなお朽ちきらずに存在する里長ども。俺だけに加護をよこさぬ大樹。それらは全て、唯一王である俺を称えていればいい。反論反駁、疑問疑心は許されない。憎い等と言う言葉は生温い」

「そんなに憎いのにそれでも大樹を求めるのですか」

「求めるのではない。支配するのだ。大樹を支配した時こそ、正しい真実の俺が世界に生まれ出るのだ」

 哀れな男だとハルは思う。

 たった一つの価値観しか持たず、そしてたった一つ、己は王であることを縁に生きる男。

 その依って立つ土台が間違っていることにすら気づかず自制も自省もなく成長してしまった人間を哀れと言わずなんと言う。

「貴様……」

 ヘルダルフの目の奥でくすんだ、けれど絶対に熱を失わない熾火めいたモノが宿る。

「俺を、哀れんだな」

「当然でしょう。あなたに対し、哀れむ以外の感情なんて持てません」

 嘘だ。

 この男の精神性に人間性。振る舞いに所業。レーヤダーナを蹴り飛ばしたことなど赦しがたい蛮行だ。怒り、嫌悪、忌避。受け付けない理由など吐いて捨てるほどある。

 けれど、そんな感情はこの男にとって何一つとして痛痒を与えない。この男が最も心を乱し憤るのは己を下に見られること。ハルはそれを知ったのだ。

 だから敵意と悪意を乗せた微笑を形作ってこう言った。

「あなたは、この世に存在する人間の中で、特別に哀れな人間の一人です」

 良かったじゃあないですか。特別。好きでしょう。他の誰とも違う特異性。

 大多数の中に埋もれるのが嫌で嫌で仕方がない癖に大多数から認められないと自分を肯定出来ないのは特別でもなんでもない普遍的な人間と変わらない。そうであるなら哀れと言う一部分を抜き出して高めてあげるしかないじゃないか。

 その点、自分を特別だなんて絶対に思えるはずもないハルは違う。ここまで嫌悪を抱ける人間対して攻撃を控えられる特殊な精神を持ち合わせていなかった。

「誰をも見下しているのに自分だけは見上げられたいなんておめでたい頭ですね。仮にあなたが王さまなんてモノになれたら満場一致でこう言われるでしょう。裸の王さまって!」

 嘲りと侮蔑も込めて言った。言ってやった。恐らくは生涯初めての。

 ハル自身、言いすぎたかと冷静な部分で図るが今まで我慢に我慢を重ねてきたのだ。我慢強い方だと思っていたがどうやらそうでもなかったのかもしれない。吐き出した激情は止まらない。

 我ながら口汚い。これはきっとカナタが移ったのだとも。

 ヘルダルフを見据える。

 粘度の高い目付きはそのまま感情の度合いだ。ハルに向けるそれは悪意を通り越して殺意に届いている。

 だからこそか。銃口をむけたままヘルダルフはハルに近づいた。それこそ手を伸ばせば簡単に降られる距離まで。

「それで、言い残したいことはそれだけか。母体がなくなるのは惜しいが代わりは見つけてやる。もはやお前に価値などない」

「あなたにつけられた価値なんて願い下げです。私を、女を見下しすぎてませんか」

「この高さだ。地上に落ちた後の残骸を、あのガキに見せつけてやる。お前の飛び散った肉片の上で頭吹き飛ばしてやる」

「あの子に手を出すことは許しません」

「貴様の許可など必要ない。俺がそうすると決めたのならそうするまで。大樹の巫女などやはり王の添え物に過ぎん。第一、貴様のような小娘になにが出来る」

 自分になにが出来るのか。それはハル自身知りようがない。目的を定めていただけだ。レーヤダーナを無事に生かす。その一点。

 だから従順と無力を装った。無意味な反抗を控えた。多少は口ごたえもした目を摘むってもらえると助かる。もしかしたらそうすることで道が拓けるかもしれないからと。

 そうして舞台が整えられた。

 多少のことでは動かせない機械じみた男の感情を逆撫でもした。普通なら用心して近寄りもしないだろう。そして無意味に触れてきたりも。

 武骨な煌鉄の機巧が額に突きつけられる。

「命乞いをして見せろ。無様に醜く滑稽に。俺の歓心を買えばあのガキと

一緒に殺してやってもいい。どうだ、慈悲深いだろうこの俺は」

 なにが慈悲深いだ。

 慈悲なんて言葉は生まれた時に誰かに辞書から削除されているくせに。

「面白い冗談ですね」

 本当は正面なんかじゃなくて、出来れば背後から、なおかつもっと油断している時が理想。あくまで理想。理想を望めばどこまでも高くなる。現実的にそんな機会は訪れない。カナタらを見逃した瑕瑾こそあるものの、それはセヴェロの進言があったから、本来ならあの場で命を絶っていただろう。ヘルダルフは決して間抜けでも無能でもない。

 良い機会などそうそう巡ってくるものではない。レーヤダーナとカナタに会えた時に幸運は使い果たしたと割りと本気で信じているハルには次の機会がまた来るなど信じられなかった。

 体の中心。出来れば心臓の程近くが望ましい。恐らく決まれば決定打になる。以前の自分とは煌力の総量、その扱い方が比較にならないほどうまくなっている。なんの修練もなしにだ。

 おそらくは魔女の黄金瞳による恩恵だろう。気味が悪いがこの際、原因はどうでもいい。身体能力の劣る自分がヘルダルフを妥当するにはこれしかない。

 極めて自然に、さりげなく、は無理だが銃口の射線を左手でそらす。嘲るような、ヘルダルフの冷笑が間近に。そうして右手を彼の胸に添える。

 あなたに毒を。二度と立ち上がれないほどの酩酊を。犯した罪に似つかわしくない絶命。それこそ――。

「慈悲というものでしょう」

 幽かな笑み。冷徹で酷薄かつ傲慢なそれは古の魔女の瞳を継ぐに相応しいかもしれないが、ハル個人としては全く不自然極まりない。

 これで終わり。これで終わる。無事に帰れる。無事に戻れる。誰と。誰とだったか。忘れるわけもない。忘れるはずがない。この手をとってくれたあの人を忘れるはずがない。

 黄金瞳に移ったのは誰だったのか。

 事がなされるその間際、ハルが小さな子どもの姿を捉える。

 レイ。レーヤダーナ・エリス。

 瞬間、躊躇した。我を取り戻した。あの子の前で何をしているのか。私は何をしようとしているのか。何を見せるつもりなのか。

 意識が繋がる。けれどそれは遅かったし、放たれた意志は決して止められるものではない。けれどそこにはハル自身の意志が混じり混んだ。

 それがヘルダルフの命運を分けた。

 非力で無力な小娘が、何をしようとも子の俺が傷つけられるはずもない。そう高をくくっていたのに伸ばされる手を見てそれが完全な過ちだと悟った。

「ぐ、ごっ、がぁっ!!」

 触れられた瞬間、ヘルダルフは死が隣で肩に手を掛けるのを感じた。

 体の芯は言うに及ばず、心の真まで捻り潰されるような衝撃は目の前の小娘からもたらされたものに間違いはなく、己の迂闊さにほぞを噛む。

 そんな余裕があることそのものがヘルダルフにとっては以外そのもので、なぜ俺は死ななかったのかとハルを睨み付けると青ざめた表情で後ずさった。

 所詮は小娘。誰かを殺す。命を奪う。その程度のことに躊躇をしたらしい。それも相容れるはずもない敵に。

 許せない。そんな性根の弱い小娘に傷つけられたこと。命を奪われる寸前であったこと。

 報復せねばらなない。目を抉られたのなら目を抉って踏み潰す。歯を折られたのなら折り返して喉奥に突き返す。

 それがヘルダルフの有り様だったがこの斉ばかりは過程よりも結果を優先した。それほどに許せなかったのだ。

 如何に大樹の巫女とはいえ、こんな小娘に遅れをとったこと事実は汚点そのものだ。直ちに濯がなくてはならない。

 ヘルダルフはハルを突いた。

 それは暴力こそないが、けれど明確な殺意を込めたものだった。

 ふわりとした気味の悪い浮遊感。

 どこにいたのか思い出す。

 聖樹の途上。地上は遠く、空にもまた届かない碧落の狭間。

 足から重さがなくなる。代わりに縄にくくられた重石が背中にくくりつけられたよう。その縄を引いているのは死神か。

 死神というのなら。

 レーヤダーナを最後に瞳に収める。

 それは確かにレーヤダーナの顔色が変わった瞬間だった。目と口を開け、ラニーを引き離してわずかにハルに手を伸ばす様は、頼りにすべき灯火を失った迷子のようで。

 ああ、あなたにそんな顔をさせられたのなら、私も案外、無価値で無意味ではなかったのかもしれませんね。

 奇妙な満足感をハルは抱いたのだが、そこで終わらせるほど女神は優しくはなく、あるいは無慈悲でもなく。

「ぐぇッ」

 あげくにカエルが踏みつぶされたような乙女にあるまじき声を出す破目になった。

 急な横殴りの衝撃に、腹から喉へ、空気の塊が走り抜ける。

「冷や冷やさせんな。無茶する奴め」

 やっぱりあたなは来ますよね。

 しかし、仮にも乙女を腕に抱いているのだ。もうちょっと優しい対応は出来ないものか。

「無茶をしないといけなかったんです」

「そういう気合の入ったとこ嫌いじゃない」

「私もあなたのあきらめの悪さは嫌いじゃないです」

 カナタ・ランシアが小憎たらしい悪ガキめいた顔で笑っていた。

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