第99話 希望への道標
船に戻った一行は皆にルアルの死を報告した。
皆それぞれ色々な感情でその事実を受け止めた。
「クソッ!! 犠牲者まで出して、収穫はゼロかよ!!」
ロンドは壊れてしまった装置に怒りをぶつけた。
「いや。ゼロじゃないよ。得られたものもある」
アルルはそう言ってポケットからデバイスを取り出すとモニターにつないだ。
「やつらのデータの一部をこっそり盗んできたの」
彼女は盗んだデータをモニター映して見せた。
「おお! でかしたぞ!」
「それで分かったんだけど、サイファーは5か月前からあるものをずっと追ってるの」
モニターに映し出されたのは不鮮明な何かの建物の画像。
森の中にポツリと佇む洋館のような建物だ。
「これは……ブラックウォール邸……」
ニーナが呟いた。
「ブラックウォール邸って、お前の家か?」
フォックスがクリスに聞くと、彼女は頷いた。
「彼はそれを5か月間もしつこく探し続けてる。だからそこにきっと何かがあるんだと思う」
「うーん。宝の山かな~? あ! もし誰かが見つけたらみんなで山分けだからな!」
フォックスは言った。
「いいや、違う」
トラップは言う。
「何が違うんだ?」
「サイファーは今更お金なんか欲しがらない」
「そうなの。だから私はそこに何かサイファーにとって脅威になるものが眠っているんじゃないかと思ったってわけ」
アルルが言った。
「まさか……アンナ……!?」
クリスが言う。
「まさか!!」
「あいつ、いつか必ず戻ってくるって言ってた……。それに、いずれ私達の方からアンナに会いに行くとも……」
「こうなることを見越してたって言うのか……?」
「分からないけど、でもアンナの力ならもしかしたらサイファーにも勝てるかもしれない……」
「ダメだ! ダメに決まってるだろうが!! アンナの恐ろしさを知ってるだろう? あいつが戻ってくれば今よりも状況が悪くなるかもしれない! それにアンナに乗っ取られたら、お前も母親みたいに……」
ロンドはそこまで言って黙った。
「ロンド、大丈夫だよ。お母さんは長い間乗っ取られてたからああなっただけだから……」
「でもあいつに乗っ取られたらお前の意思は消えてなくなるんだろう!?」
「それでも、もう私達に選択肢はないの。サイファーにいずれ見つかって死ぬ運命を待つか、この一縷の望みにかけるかどっちかしかないんだよ」
クリスはそう言って周りにいる皆を見た。
「見て。私達にはこんなに沢山仲間が居る。でもこれまで何人も失ってきた。これからもこの仲間たちを1人ずつ失っていくよりは、私1人失ったほうがきっといいから……」
「そうはさせないぞ絶対に」
ロンドが言った。
「うん。ダメ。分かってて失うなんて私が許さない」
ニーナが言った。
「いいや。そうじゃない。俺も一緒に行く。お前を失うくらいなら俺も共に散ってやろうじゃないか」
ロンドはクリスの手を取った。
「だったら俺達だって!! 海賊団の掟、忘れてないですよね!?」
ピッカーがそう言って手を重ねると、トラップ、フォックスも同じように手を重ねた。
「ハッハッハッハ。これでこそロンド海賊団だな!! というわけだ、ニーナ。俺たちは5人で散るぜ!!」
ロンドは誇らしげに言ったが、ニーナは飽きれた様子で頭を抱えた。
「あなた達にはついて行けない。勝手にして……」
「よっしゃー!! でも、どうやって行くんだ?」
ピッカーが言った。
彼が周りを見渡すが、その方法を知っていそうな人物はいない。
「ブラックウォールの家は不思議な魔術がかけられてて、独りでに動いて場所を変えるの。昔はその頻度もそう高くはなかったんだけど、ここ数年は頻繁に場所を変えるからもう誰もその場所を見つけることができなくなってしまったの」
クリスが言った。
「ミル、あなたなら探し出せる?」
ニーナがミルに聞いた。
「どうかな~? そういう特殊な魔術の場合は難しいかなあ……。私よりもクリスちゃんの方がきっと見つけられると思うよ~?」
「わ、私!? 無理だよ! 実際何度か探そうとはしたんだけど、無理だった。一度出てしまうとあそこには二度と戻れないの」
「そうかな~? 私がクリスちゃんのお母さんだったらもし戻れなくなっても大丈夫なように道しるべを残すと思うけどな。例えばそのネックレスとかね」
ミルはクリスの首から下がっているネックレスを指さした。
「これ? 確かに私が小さい頃お母さんに貰ったものだけど」
クリスはネックレスを首から外して言った。
「ちょっと借りて良い?」
そう言ってミルはそのネックレスを借りると、机の上にチョークで魔法陣を書き始め、その上にネックレスを置いた。
そして彼女は手で魔法陣に触れると、目を瞑りこう唱えた。
「全てを見通す者たちよ。我らの前にこの聖なる遺物の真の意思を示せ」
するとそのネックレスはぼんやりと白い光を放ちながらふわりふわりと宙に浮いた。
そしてくるっと一回転したかと思うと宙に浮いたままピタリと止まった。
「な、何が起きたんだ……?」
「まさかこれ、家の方向を指してるんじゃ……?」
クリスが言った。
「うん、きっとそうだよ~! はいっ!」
ミルはそう言ってネックレスをクリスの首にかけた。
ネックレスの先は相変わらず宙に浮いて一定の方向を指している。
「なるほど。じゃあこの方角に向かって歩いて行けばいいってわけだな」
ロンドはそう言ってさっそく出かける準備を始めた。




